- 所属
- 宇宙飛行士人形
- 初登場
- #80~(エディ人形・元バズ人形)&#82(ブライアン人形・元ニール人形)&宇宙兄弟#0
profileプロフィール
かつて、この人形を月に立たせようと約束した兄弟がいた。
エディ・J&ブライアン・J。NASAの大英雄である宇宙飛行士兄弟だ。
いつかの少年時代。
クリスマスを前に、J兄弟はおもちゃ屋の前で釘付けになっていた。
“宇宙空間でも壊れない”バズ人形とオルドリン人形に夢中になる弟ブライアン。今度のクリスマス、サンタさんにお願いしよう、と無邪気に言う弟。
決して裕福な家庭ではないことを既にわかっている兄エディは、一体90ドルという高さに考えつつも「兄ちゃんがサンタに手紙出しとくよ」と答える。
しかし、この人形たちは本当に宇宙空間でも平気なのだろうか。そう疑問を口にしたブライアンに、エディは提案する。
「試してみるか、ブライアン。俺らが月に行った時 一緒に月面に並べよーぜ これ」
兄弟で月に立つ。
その約束は、ここから始まった。
時を経て、二人はともに宇宙飛行士となる。
月ミッションが決まった際、ブライアンはクローゼットの奥にあった人形を引っ張り出し、元・バズ人形をエディに渡す。
「いつか“月に行くべき時は来る”」――。
日本人最年少宇宙飛行士南波ヒビトはその積極的な姿勢を買われ、宇宙飛行士やNASAスタッフたちからも一目置かれるJ兄弟の弟、ブライアン・Jのバックアップクルーに大抜擢される。
ブライアンに可愛がられ、鍛え上げられたれたヒビトは宇宙飛行士として成長していく。
だがその矢先――月ミッションを終えたブライアンらを乗せた帰還船が、パラシュートが開かず地面に叩きつけられるという大事故が起こり、ブライアンは還らぬ人となる。
兄弟で月に立つ。
J兄弟のその約束は、永遠に叶わぬものとなった。
悲しみに暮れるヒビトたちだったが、ブライアンはNASAの仲間に充てて遺言を残していた。
「勇気」を持つこと。「勇気」だけを持っていくこと。
NASAはブライアンの言葉を胸に、再び進み始めた。
ブライアンのバックアップクルーを務めたヒビトは、CES-51メンバーとして月へと打ちあがる。ところが、ヒビトを待ち受けていたのは月面での大事故だった。クルーのダミアンと共に、リッテンディンガー峡谷の深い谷底へと落ちていく。
ダミアンの宇宙服の体温調節機能の故障、ヒビトの宇宙服の酸素ボンベの故障。通信が届かず、空には満点の星が輝く谷底の暗闇の中、持ち前の勇気と決して諦めない心でヒビトはダミアンを連れ無事峡谷から脱出した。
だが――峡谷を抜けてもヒューストンとの通信は回復せず、ヒビトの残り酸素ボンベは8分を切る。
ダミアンの無事を確認したヒビトは「死」を覚悟し、一度やってみたかった“一人で月面散歩”に出かけた。
どうせ死ぬなら、また谷に落ちて満点の星を見ながらがよい。
ヒビトは、そう覚悟を決めた。その時――視界の端に、キラリと輝くものを認める。それは、宇宙飛行士の間でも噂になっていた「謎の光」だ。
どうせ死ぬなら、謎の光の正体を知ってからがいい。
ヒビトは谷底に落ちる前に謎の光に向かって歩き出す。
謎の光の正体は、太陽の光を受けて輝く、一体の宇宙飛行士人形だった。
胸には、手書きの文字で“BRIAN”と書かれている。
直に触れて、そこに確かに“ある”ことを確かめるヒビト。
ブライアン人形の裏には、少年時代それぞれの人形を抱えたエディとブライアンの写真が貼り付けられていた。
兄弟で月に立つ。
その願いを込めておかれたであろう人形に、“兄弟”に、ヒビトは想いを馳せる。
ふと足元に目をやると、自分のものではない足跡が着いていた。
今は亡きブライアンは、確かにここにいたのだ。月面の、自分と同じ、この場所に――。
だが。
「悪い、ムッちゃん」
“兄弟で月に立つ”という願いは、自分自身も叶えられそうにない。
ヒビトの宇宙服の酸素がなくなってゆく。
薄れゆく意識の中で、ヒビトはブライアンの声を聞いた。
「来てやったぞ ヒビト 助けてやろうか?大先輩ブライアン・Jが」
ブライアン人形から語り掛けられるようなその言葉に、ヒビトは「まったくだ 今こそ…… 助けて欲しいね」と答える。
酸素が切れ死が襲い掛かるヒビトに、再びブライアンの声が響く。
それはヒビトを助けるためにアズマが指揮した、酸素生成ローバー“BRIAN”の姿だった――。
“BRIAN”から酸素を受け取ったヒビトは一命を取り留めた。
手足を動かし、生を実感するヒビト。
ついさっきまで死のうとしていた。
あのとき視界の端に謎の光が入らなかったら。
ブライアンは、確かにそこに居て、ヒビトを呼び止めたのだった。
ヒビトは、ブライアン人形を観ながら微笑んだ。
ビートルで駆け付けたフレディとバディに助けられ、月面基地へと帰るヒビトとダミアン。彼らを、ブライアン人形は静かに見送っていた――。
エディは月への志願をしていたものの、遂に月ミッションにアサインされることのないまま年齢を重ねた。
次が最後のフライトになるだろうというとき、思わぬ“依頼”をバトラー室長から受ける。
それは、月ミッションに向かうジョーカーズをまとめるリーダーとなること。
“月”の経験がない自分への依頼にエディは驚き、断る。
エディの意志を尊重したのか、はたまた作戦なのか、バトラーは去り際にとある写真をエディに見せた。
そこに写っていたものは、まるでエディを待っているかのようなブライアン人形の姿だった――。
ISSにも常にエディ人形を携帯していたエディ。
彼は、人生の最後に月を目指すことを決意する。
ジョーカーズの月でのミッションは予想外の大波やトラブルの連続だった。
月の洞窟の発見、水の可能性など人類の大発見もあれば、月面建設用のパラソルの消失や太陽フレアによる機器のトラブルなど。
様々な困難の途中エディ自身が怪我を負うこともあった。
そんな中だったが、エディはムッタと共に“あるポイント”に到着する。
約束を、遂に果たすために。
ブライアン人形の隣にエディ人形が置かれる。
二人の兄弟は、長い時を経て約束を果たした。
かつてブライアンもそうしたように、エディは通信をオフにし呟く。
「ヒューストン こちらエディ&ブライアン
ここから…地球が見えます
俺たちの目のように青いです」
二つの人形―二人の兄弟―は、今、地球に向かって並んでいる。
まるで少年時代「宇宙飛行士ごっこ」をしたときのように、仲良く。