- 出身地
- 日本
- 日本
- 略歴
- 2025年、宇宙飛行士選抜試験を受験。三次の閉鎖環境試験まで残る。
- 2025年、宇宙飛行士選抜試験を受験。三次の閉鎖環境試験まで残る。
- 初登場
- #19〜
words言葉
「人間もいわば地球という生物の遺伝子です」
「宇宙へ行くのは僕らが地球の遺伝子なら突然変異が必然だからです」
profileプロフィール
2025年の宇宙飛行士選抜試験で3次審査まで残ったメンバーのうち最年少の青年。受験時年齢は25歳。
無口だがさまざまな分野で活躍する著名人の発言、論文、著書などをよく知っており、彼らの言葉を通して富井なりの宇宙に対する考えや哲学を持っている。
特技はルービックキューブ。高速でぴったりと面を合わせる。
閉鎖環境試験では真壁ケンジ、溝口大和、手島有利、北村絵名と同じB班に振り分けられた。
入室後JAXAから最初に出された課題は「一体今何時か」ということ。
3次審査会場から一切外の様子が見えないバスで何時間も移動、途中寝ている時間もあった。全員スマートフォンや腕時計など時間がわかるものは預けている。
B班は考える。ここにくるまでに何かヒントがあるはずだ、しかしそんなヒントはあったのだろうか…。そんななか、ケンジが はたと気づく。
「ちょっと訊くけど…この中に…ずっと起きていた人いる?」
そこでスッと手を挙げたのが富井だった。
具体的に明らかにはされていないが、富井がずっと起きていたことからB班は「午前3時過ぎ」と回答を導き出し正解した。
閉鎖環境試験ではさまざまな課題が次々出されていく。
その中には、お互い疑心暗鬼になるような課題もあった。グリーンカードだ。
仲間のミスによるストレスをどうコントロールし、不測の事態にどう切り抜けるか。ワザと負荷をかけ、ミスをどうカバーするかを鍛える極秘の指令である。
富井はグリーンカードにより真夜中にアラームを鳴らす指令を受けていた。
睡眠を妨げられ、苛立ちを募らせ、不穏な空気になるB班の面々。
しかしグリーンカードのことは誰にもしゃべれない。
グリーンカードの指令は他のメンバーにも出されていく。
次に行われたのは時計の破壊。富井はメンバーの表情を観察し、恐らく手島が犯人であろうことを推察する。当然そのことを他言することはなかった。
富井は無口だが、周囲の状況を把握し記憶する力に長けている。
その力は閉鎖環境試験最終日と前日でも発揮された。
最終日に “自分たちで宇宙飛行士にふさわしい2人を決める”。
JAXAから提示された残酷な試練に、B班は課題を点数制にすることで最終日に高得点の者を選ぶと決めた。
しかしその点数表も、グリーンカードの指令で北村によって消去され、誰が何にどれだけ点数を取ったかわからなくなった。
誰を選ぶかの話し合いには目に見える「差」が必要だと考える溝口は、最終日と前日に皆の数値を入力し再集計する。初日からの記憶、数値を詳細に覚えていたのが富井だ。
ケンジと溝口、リーダーとなる人間の対立。互いを認め合わず各々が一番になることだけを考え黙々と行う課題。グリーンカードによる互いへの不信感。
B班は、最終日間際までずっとギスギスした状態が続いていた。
だがケンジがその空気に疲れたとき、ふと娘 風花の「かぺ」を思い出す。
彼女はずっと、「がんばれ」という意味で「かぺ」と言っていたことを。
ケンジは「かぺる(がんばる)」ことを決め、B班の皆と打ち解け合うために他愛ない雑談を始めたのだった。
まだギスギスしていた頃、課題の中で「宇宙開発に批判的なキャスターへの抗議文を考える」というものがあった。
そのときケンジにどう思うか尋ねられた富井は、以下のような意見をのべた。
バックミンスター・フラーは地球を「宇宙船地球号」という乗り物だと言った。
ジェームズ・ラブロックは地球を「ガイア」という生物だと言った。
富井はこの矛盾が気になっていた。
しかしリチャード・ドーキンスが「利己的な遺伝子」で言った”人間は遺伝子の乗り物(ビーグル)”という言葉でつながった。
人間もいわば、地球という生物の遺伝子。だから利己的だし増殖も続ける。火星のテラフォーミングも考える。
地球は自分の子孫(コピー)を創ろうとする。生き物としてそれは必然。
ミヒャエル・エンデは人間を増殖する地球のガン細胞に喩えたけど富井の考えでは人間は増殖する「生物細胞」である。
誰もが環境破壊に加担していて「ガン細胞」になりうるというだけのこと。
宇宙へ行くのは僕らが地球の遺伝子なら突然変異が必要だから。
他のメンバーが驚いたり眉をひそめる中、この富井の意見を「面白い」と言ったケンジ。
閉鎖環境試験を終え、試験期間中にケンジが完成させた白いジグソーパズル。
そこにはB班全員のサインが書かれていた。
富井のサインには「また宇宙の神秘について語り合いましょう」というメッセージが刻まれている。
宇宙について語った富井の話を面白いと感じたケンジが、最終日までのわずかな残り時間、宇宙について富井とたくさん語り合ったであろうことが見えるメッセージだ。
2025年宇宙飛行士選抜試験で第3次まで残った最年少の富井。
宇宙への想い、力、この宇宙飛行士選抜試験で経験したすべての経験を糧に、彼が再び宇宙飛行士選抜試験を受ける未来もある――のかもしれない。