- 出身地
- アメリカ、ミネソタ州ポットヒル
- アメリカ、ミネソタ州ポットヒル
- 家族構成
- 妻、息子 ビンス
- 妻、息子 ビンス
- 初登場
- #108~
words言葉
「ビンス…いつまで続ける気だ?例のロケット作り…」
「“モデルロケット”なら簡単に飛ばせるじゃないか なんでわざわざ」
「なんでそんな突拍子もない 周囲に笑われるようなことを言ったんだ」
「現実が見えてない夢など ただの空想的な願望にすぎん」
profileプロフィール
NASA宇宙飛行士、ビンセント・ボールドの父。ポットヒルで働く鉱山技師。
ポットヒルの郊外にあるバカでかい鉱山。
ポットヒルの生活源はこの鉱山の露天掘りである。町の男たちのほとんどが鉱山で働いており、ビンスの父も鉱山技師の一人であった。
毎日ハードワークで疲れた顔で帰宅するものの、たまに珍しい石をビンスに持ち帰るなど、父として “鉱山技師”として、息子への想いはあったのだろう。
ビンスが宇宙に憧れ、ピコとリックと夢中になっていた14歳の頃。磁鉄鉱(じてつこう)という珍しい石を持って帰ってきた父は、ビンスに言った。
「お前 授業中にみんなの前で 将来は宇宙飛行士になるとか言ったそうだな」
「なんでそんな突拍子もない 周囲に笑われるようなことを言ったんだ」
“周囲に笑われる”。誰も笑ってなどいなかった筈だと小さく答えるビンスに、父は更に言う。
そうでなけりゃ父さんの所まで噂が届くはずがない。幼い子どもが言うのならまだしも14で夢見がちである、と。
その頃のビンスは父を恐れ、自分の将来を怖れ、不安で不安で仕方がない状態だった。町の男はほとんどが当たり前に鉱山技師になる。ポットヒル出身者にとって宇宙飛行士とはあまりにも現実から かけ離れ過ぎた職業だったのだろう。
昔、大統領になると公言した男は笑われ恥をかいて終わった。今その男がどうしているかは誰も知らない。お前の言ったことはそれと変わらん。
父は14歳の頃のクラスの出来事を話す。宇宙飛行士という夢を語ってもあんな風に笑われるだけだ、恥をかくのはお前だ、やめておけ、と諭すかのように。
「現実が見えてない夢など ただの空想的な願望にすぎん」
父を将来を恐れたビンス。父の言葉に恐れや不安を抱きながら、クローゼットに入りノーマン・フィッシャーの小説 “ムーンワーカー”の朗読テープを聞く。
真っ暗な空間に宇宙が広がる。ビンスが“ムーンワーカー”という者に憧れた瞬間だった。
宇宙に憧れ、宇宙を目指す友人を得ていたビンスが、宇宙を諦めることはなかった。それからもずっとピコとリックと共にロケットづくり、疑似打ち上げ・着陸、ISSを眺めるなど“ムーンワーカー”を目指していた。
3年後。相変わらず息子のビンスが宇宙に夢中であることを、父は快く思っていない。将来は自分と同じ鉱山技師になるものだと思っている父は、17歳になった息子のビンスに鉱山の就職説明会に来るようにすすめる。
鉱山の説明会よりもISSを眺めることを優先したビンス。ところが前回行かなかったことで「説明会に来るように指導してください」と父が学校へ連絡を入れる。父を恐れていたビンス。いよいよ進路を決めなければならなくなった彼は遂に逆らうことができず、次の説明会には参加することを決めた。
ピコと二人、リックを裏切る形になってしまったビンス。
その選択を、ビンスをピコは死ぬほど後悔することになった。ともに宇宙を目指していたリックが、就職説明会の日に事故で死んだからだ。
リックを失った大きな悲しみと強い後悔で、ピコとビンスはもう迷わずに宇宙を目指すことを決めた。
そう決めたビンスは、きっともう父を恐れることはなかっただろう。