吾妻滝生 | 『宇宙兄弟』公式サイト
あずま たきお
吾妻 滝生
Azuma takio
所属
NASA CES-15
JAXA宇宙飛行士
嫌いなモノ・苦手なこと
にぎやかすぎる場所・集団で騒ぐこと・髪が伸びること
にぎやかすぎる場所・集団で騒ぐこと・髪が伸びること
誕生日
1979/1/30
出身地
日本
日本
身長
182cm
家族構成
妻、長男 聡一、次男 光一
妻、長男 聡一、次男 光一
略歴
高校時代は野球をしておりポジションは捕手。甲子園出場経験を持つ。防衛大学を卒業後自衛隊に入隊、航空自衛隊パイロットとして訓練を積む。その後宇宙飛行士となり、2012年~2020年で計3回ISSに長期滞在。船外活動合計時間は50時間にのぼり、8年間で「日本人一宇宙空間にいた人」となる。
CES-15では日本人初の「司令船パイロット」として月調査兼月物資運搬ミッションに参加、「初めて月周回軌道を回った日本人」として賞賛を浴びる。
2028年ヒビトの後に月面ミッションへ参加、月の大地を踏んだ。2029年ロシアのLPK-29クルーとしてレスキューミッション“FMTE”(From the Moon To the Earth)を行うべく月へ向かう。自身が所属する”マクシム4”そしてムッタ、フィリップとともに月面ミッションを完了し、いよいよ地球帰還の途へつくが――。
高校時代は野球をしておりポジションは捕手。甲子園出場経験を持つ。防衛大学を卒業後自衛隊に入隊、航空自衛隊パイロットとして訓練を積む。その後宇宙飛行士となり、2012年~2020年で計3回ISSに長期滞在。船外活動合計時間は50時間にのぼり、8年間で「日本人一宇宙空間にいた人」となる。
CES-15では日本人初の「司令船パイロット」として月調査兼月物資運搬ミッションに参加、「初めて月周回軌道を回った日本人」として賞賛を浴びる。
2028年ヒビトの後に月面ミッションへ参加、月の大地を踏んだ。2029年ロシアのLPK-29クルーとしてレスキューミッション“FMTE”(From the Moon To the Earth)を行うべく月へ向かう。自身が所属する”マクシム4”そしてムッタ、フィリップとともに月面ミッションを完了し、いよいよ地球帰還の途へつくが――。
初登場
#46~

words言葉

5巻
5巻
#48

「『38万キロ』くらいなら近所です」

6巻
6巻
#52

「ヒューストン 申し訳ないが これを表現するには………『言葉』じゃ足りない」

6巻

「死ぬ覚悟はありません。考えるなら 生きることを考えます」

6巻
6巻
#63

「これだけ人が大勢いても わかってくれる奴が一人もいないなら……今の方が孤独だ」

6巻

「日々人……俺もブライアンの言う通りだと思ってるよ お前ならきっと誰よりも 最初の一歩は軽やかだろう」

7巻
7巻
#62

「打ち上げ成功 おめでとう」

8巻
8巻
#84

「そうだヒビト!立て!“BRIAN”から酸素を受け取れ!」

8巻
8巻
#85

「俺の判断じゃないですよ クラウドさん ヒビトの兄の判断です ナンバ ムッタ もうすぐ我々の仲間になる男です」

14巻
14巻
#136

「兄を自分と同じ目標に向かわせることで 奮い立つタイプであると 俺は見ています」

17巻
17巻
#164

「まあ……それでもダメならそん時は――本当の兄貴に話せばいい お前にはいるだろ “もう一人の兄貴”が」

22巻
22巻
#206

「やめてしまうのは簡単だ 続けた先に得るものは必ずある」

36巻
36巻
#332

「イヴァンに呼ばれてここへ来た時点で もう決まってます よろしくお願いします」

39巻
39巻
#365

「まあいいじゃないかみんな 俺たち次第だ―― 俺たちがこのミッションを成功させたら これが新しい“儀式”に加わるんじゃないか?」

39巻
39巻
#366

「遠くでボソボソ言ってる意見なんていつでもそんなもんです」

42巻
42巻
#387

「1億90点の仕事に乾杯!」

43巻
43巻
#396

「おかげで まだ生きてる」

profileプロフィール

ヒビトが尊敬する日本人宇宙飛行士。
元甲子園球児。防衛大学卒業後航空自衛隊パイロットを経て宇宙飛行士となる。
寡黙で口数が少なく、怒っているような表情が通常のため周囲に誤解されがち。



<『日本人初』の賞賛とマスコミ>

ブライアンからは「パワフルな働きっぷりとは裏腹にとても繊細な男」と評されている。
『日本人初』の司令船パイロットの経験、船外活動時間の長さから有名人となりマスコミから注目を浴びるが、記者会見では笑顔が少なくコメントも堅苦しいためテレビには向かない人であった。
司令官パイロットとして月周回軌道を一人で回ったことで、帰還後連日「その時間が如何に孤独だったか」をマスコミに連日問われ疲弊する。
吾妻自身はヒューストンとはもちろん、家族とも通信の時間があり孤独を感じていなかった。
しかしエスカレートしたマスコミが遂に妻や息子たちにマイクを向けたことは、吾妻にとって耐えがたいものであった。



<ブライアンへの憧れと、”死ぬ覚悟”>

ムッタがまだ新人宇宙飛行士だった頃、吾妻は紫から「チームワークは大事にするけれど『友達』という関係になろうとはしない人」と評されている。

多くの宇宙飛行士が憧れているように、吾妻にとってもブライアン・Jは憧れの存在であった。また兄弟のいない吾妻にとっては兄貴のようでもあり、理解者だった。
生きているときも死んだ後でも悩んだときにはブライアンに問いかけている。

吾妻のブライアンへの憧れがみてとれるシーンがある。
初めてISSで船外活動を行い通信が入った。通信相手はブライアン。そのとき吾妻は思わず「本物…?」と興奮し表情を緩ませている。

その際、ブライアンから『死ぬ覚悟』を問われた吾妻。
吾妻は“NO”と答える。
「その質問に”NO”と答える奴は信用していい」。ブライアンは笑いながら言った。

やがてベテラン宇宙飛行士となった吾妻は、南波兄弟に同じ質問をした。
二人の答えは “NO”。
「兄弟だな」
吾妻は嬉しそうに呟いた。



<月に行くのは、吾妻かヒビトか>

周囲に誤解されがちな吾妻は、日本人初の月行きがヒビトに決定したことでNASA内でも噂を立てられていた。
本来順番的にはヒビトより先に吾妻が先に月面に立つはずだ。誰もがそう思っていた。
だがヒビトに先を越された吾妻はヒビトを妬んでいる――そんな噂だった。

真相は違う。
吾妻の繊細さを理解したブライアンが『日本人初』の月面にはヒビトがいいだろうと推薦したためである。
かつて『日本人初』の肩書で吾妻が背負った重責を知っていたからこそのブライアンの配慮だろう。

実のところヒビトも自分が吾妻より先に月へ行くことに躊躇いを感じていた。
だがムッタが吾妻本人そして吾妻の妻と話し感じたこと聞いたことをビデオメッセージにしてしたため、月面着陸前のヒビトに送った。

吾妻はヒビトの第一歩をとても楽しみにしていること。「『日々人こそ日本の第一歩にふさわしい男かもしれない』と呟いていたそうだ」というものだった。
そのメッセージを見てヒビトは晴れ晴れと月面に降り立つことができた。

ヒビトの月面着陸の報を受けた吾妻は、ムッタに打ち上げ成功おめでとう、と祝福を伝えている。



<ヒビトの大恩人>

ヒビトとダミアンの月面事故に遭った。吾妻は地上側で二人の救出のため動く。

クレーターの底に落ちた二人が救助を待てない状態にあり「移動している可能性」がある。JAXAからの提案も加味しつつ“最悪のケース”を最悪でなくすため、吾妻は酸素生成装置“BRIAN”を向かわせることを提言、指揮を執る。
吾妻の判断によりヒビトたちの移動先に間に合った“BRIAN”は、酸素がなくなりかけていたヒビトの命を救った。
吾妻は、ヒビトの命の大恩人の一人である。

そしてヒビトたちのクルーと入れ替えに、吾妻はルーニエ2号でプガチョフ、セルゲイと共に月へ。
月面基地で吾妻と再会したヒビトは吾妻に深く頭を下げた。吾妻もヒビトの生還を喜び、二人は笑顔で固い握手を交わした。

ヒビトたちの地球帰還は吾妻がシップ・ベルを鳴らして送り出す。



<ヒビトとの信頼関係>

月面事故をから生還したものの、ヒビトは地球帰還後パニック障害を発症し長く苦しむこととなった。
そんな苦しみと戦っているさなか、吾妻はブライアンの墓前で偶然ヒビトと会う。
ブライアンの命日にはいつもユリの花を手向けている吾妻。
ヒビトに「ユーリ」・ガガーリンと「ユリ」をかけていることを指摘され、「まさか…」と珍しく照れていた。

パニック障害のことは兄には黙っているというヒビトに対し、吾妻は「兄貴と話せ」と背中を押した。ヒビトにロシア行きをすすめイヴァンを紹介したのは吾妻だ。

吾妻と話したことをきっかけにヒビトは心の中にいるブライアンと話し、“本当の兄貴”であるムッタに長く秘密にしていた病気とため込んでいた想いを話した。
その時間と少年時代の数々の「宇宙への憧れ」を思い出し、ヒビトは心軽く宇宙飛行士復帰試験にのぞむ。

一方吾妻はヒビトが宇宙飛行士として復帰できるようバトラー室長に訓練開始するよう提言するなど陰ながら行動していた。
またこの間、紫を通じてムッタたちが集めている“ISS存続のための署名”にも協力している。
かつてブライアンがそうしてくれたように吾妻もまた、南波兄弟を見守りサポートしているのだ。



<レスキューミッション>

ムッタらジョーカーズが数々のトラブルに見舞われ、地球帰還のAチームと天文台建設完成のBチームに分かれた。
Bチームは天文台を完成させたものの、地球帰還が非常に困難な状態となっていた。

NASAは他国に協力を求め、アメリカ、日本、ロシアが協力するレスキューミッション“FMTE”(From th Moon To the Earth)が立ち上がる。
ロシアは元々予定していたイヴァン達大ベテランの“トルストイ4”メインミッションにレスキューミッションを追加することを決定。『月面のアストロノーツをロシアのコスモノートが救う』ため動き出す。

吾妻はロスコスモスに呼ばれ、室長ボルシュマンから「手を貸してほしい」と依頼される。まだイヴァンからは「手を貸してほしいどころか“参加”してほしい」と告げられた。
自分が参加するということは”トルストイ4”から一人抜けことを意味する。イヴァンがいれば自分が入る必要はないと思うが…と尋ねる吾妻に、イヴァンは言った。

クルー全員誰かが抜けるのは承知のこと。
「私は月に行ったことがない どうだアズマノフ “トルストイ4”に入ってくれるか?」

吾妻は答える。
「イヴァンに呼ばれてここへ来た時点で もう決まってます よろしくお願いします」


ところが事態はどんどん変化していく。
太陽フレアの影響非常に大きく、地上、月面に大停電を起こすほど。
レスキューミッションの難易度はどんどん上がり、本来予定していたメインミッションはかなり縮小または単発のミッションと差し替えになる可能性も出てきた。

ボルシュマンはイヴァンを呼びだし、レスキューミッションに“本当に相応しい4人”を選ぶとしたら誰になるだろうかと尋ねる。
その言葉は、クルー全員を入れ替えるという意味を持っていた。

ここまで精神を集中させ月へ行くエネルギーを積み上げてきたベテラン揃いのメンバーだ。当然誰も承服しないだろう。イヴァンは一晩悩んだ。

国が積み上げてきた英雄を危険なマスには置けない。
“トルストイ4”には本来のミッションを存分にやってもらいたい。
それが、ロシア上層部の考えと方針だ。


国の方針に加え、自分たちはレスキューミッションを行うにはジジイすぎる。
次の世代の新たな英雄を世に出す時かもしれない。
そしてそれは同等の訓練を積んできた自分たちのバックアップクルーであるべきだ。
それが、イヴァンの出した答えである。

かくして技術系コマンダーのマクシム、医療担当のフランツ、そして月面経験者の吾妻とヒビト。これが、レスキューミッションを任せるメンバーに選ばれた。

ロシアのチームに日本人が二人という前代未聞の人選だが、吾妻とヒビトはNASA機はもちろんロシア機の実践経験もありNASAに精通している。またこれならばJAXAの管制もフルでつき、三国で見守る体制ができる。

ムッタとフィリップを救うため、吾妻はヒビトと共に月を目指す。



<笑顔をたたえて>

新生マクシム4の訓練が始まった。訓練、食事…マクシム4は技術を磨き、親交を深めていく。ちなみにマクシム、フランツからは「タッキー」と呼ばれている。

メディア出演もミッションクルーの仕事の一つ。
とある番組で、吾妻が加入してからチームはどう変化したのかという質問にメンバーはこう答えている。

引き締まった、プロ意識が前より高まった、実のリーダーはタッキーであると思ってる、など。
吾妻は「まあ…自分はサポート役くらいに思ってます」とコメント。
穏やかな笑顔をたたえた吾妻は、頼れる先輩宇宙飛行士としてそこにいた。


また別のラジオ出演の日、吾妻とヒビトはラジオには出演せずにキャッチボールをしていた。二人にとって “大事な用”があったからだ。

「キャッチボールしませんか?」

いつか、ヒビトは吾妻にそう声をかけたことがある。
ラジオ出演を休み、月へと向かう前に果たされた約束。吾妻からボールを受けるヒビトの表情は少年のようであった。



<そして月へ>

遂に“マクシム4”はロケット発射場へ。
宇宙飛行士としていくつもの“しきたり・ジンクス・ゲン担ぎ”を行う四人。
様々なゲン担ぎは、正直ロシア人でも面倒臭いと思ってる、と呟くマクシム。
フランツは「それでも受け入れて溶け込もうとしてくれるヒビチョフとタッキーの姿勢は同じチームとしてありがたい」と話す。

そんな会話をしたからか、マクシムとフランツはちょっとした遊びを仕掛けた。
それは“宇宙飛行士(コスモノーツ)は飛行場で靴を脱ぐ”ということ。
幾度となくロケットを打ち上げてきた――ここの地面のパワーを裸足で感じると運気が上がるというものだ。

最もらしい理由を話したマクシムから「だよなあ」と目くばせされた吾妻は「あ~そうだな打ち上げ成功のゲン担ぎだった」と若干躊躇いながらもマクシムの遊びにのって靴を脱ぎ始める。

フォトセッションで「なぜ裸足なのか」とざわつくマスコミに、ようやくヒビトはそれが嘘であることに気づく。
軽~く遊んだつもりだったと言うマクシム、ネット記事に載るやつだよ、と微妙な表情になるフランツ。

「まあいいじゃないかみんな 俺たち次第だ――
俺たちがこのミッションを成功させたら これが新しい“儀式”に加わるんじゃないか?」
笑顔でそういう吾妻は、この状況を楽しんでいるようだった。

ロシアの宇宙飛行士たちに新しいゲン担ぎが加わった――かもしれない。

打ち上げ間近。発射場には観客やインタビュアーも多く訪れ大変賑わっていた。


吾妻とヒビトに、日本の記者からの最後のインタビューがされる。
「今回 日本人のお二人揃ってのフライトですが心境は?」その質問に、ヒビトは嬉しそうに答える。
心強いし一緒に行けることが本当に光栄。最近はいつも一緒にいるのでお互いの考えや気持ちが話す前から分かってる気がする。

かつて周囲から勝手に仲の悪さを推測され噂されていた吾妻とヒビト。
ヒビトの言葉は命の恩人であり自身のパニック障害をともに歩んでくれた吾妻への信頼と尊敬、そしてミッションをともにできる喜びに溢れているようだった。

そこに別のテレビ局の記者が割って入る。彼はパニック障害やNASAを去ったことについての憶測をまくしたて“みんなの意見”として言葉を繰り出す。
ヒビトは何を聞かれているのかすぐに理解できず戸惑うが、吾妻はこのように切り返す。

二人がキャッチボールをし一人がナイスキャッチをしたが水たまりに入ってびしょ濡れになってしまった。
離れた場所から見ていた主婦たちは疎ましそうに不注意だからあんなことになる、という。
別の場所で見ていた男は下手な奴が暴投してできる奴に迷惑をかけるという。
また別の場所で見ていた男は嫌がらせではないのか、ワザと水にはまるように投げていたという。
当の二人は、ただミスをしてただ水にぬれただけ。何事もなくキャッチボールを楽しんだ。

「遠くでボソボソ言ってる意見なんていつでもそんなもんです」

事実と、憶測で勝手にものを言う周囲。
かつてマスコミに追いかけ回され憤りを感じたことのある吾妻だからこそ、そんな質問や“みんなの意見”はそんなものである、と実感しているのだろう。

ただ暴投してただ水たまりにはまっただけ。
当の二人は、何事もなくキャッチボールを楽しんだのだ。

寡黙で口数少なくいつも怒っているような表情で周囲に誤解されることが多かった吾妻滝生。
頼れるその先輩宇宙飛行士は、上からの信頼厚く、南波兄弟や若手を静かに見守り陰で熱くサポートする熱い人だった。
LPK-29の頼れる先輩宇宙飛行士は、ユーモアも兼ね備え、穏やかな笑顔で宇宙へと上がる――。



<月面での和やかな時間>

“マクシム4”は通信不能のトラブルに見舞われるも、無事月面へと降り立つ。
そしてムッタとヒビトは、遂に月面で再会する。
We are “Space brothers”。
ムッタのその言葉は宇宙関係者だけでなく世界中を熱くさせた。

ムッタ、フィリップと合流し、歓迎パーティーやミッションの進行など月面基地では和やかで楽しい時間が流れる。
二度目の月である吾妻自身も楽しんでいるが、何よりも楽しそうなヒビトの様子を見て微笑む吾妻。
パニック障害に苦しむ姿とその努力を特に知っているだけに、吾妻の喜びも大きいだろう。

せっかくの月である。帰還ミッションに加えのみならずカルロム洞窟での岩石採掘・測定も組み込まれた。あの、水の可能性がある洞窟だ。

ムッタらが採掘し、その岩石を測定したのは吾妻とフランツ。
結果採掘した岩石から水が検出。月に水がある。この大ニュースに世界中が大いに沸いた。

あっという間に時は過ぎいよいよ地球帰還が迫ってきた。
帰還するとしばらく無人になる月面基地の様々な設備は、クルーたちによって”無人化”の作業が行われる。
最後の仕事を終わらせ、最後の晩餐をし、六人は月面の景色を目に焼き付けメドヴェージに乗り込んだ。



<大きな事故と、決断>

メドヴェージは無事帰還船オリョールにドッキング。あとはオリョールに乗り込み地球へ向かう…筈だった。
ドッキング後、地上との通信が一時不安定になったが、クルーは手順通りオリョールに乗り込み通信回復を待つという判断をした。
ところが――
ハッチを開けた吾妻に、煙が襲い掛かる。
オリョール側で火事が起こっていることはすぐにわかった。
ハッチを閉めなければ大変なことになってしまう。吾妻は急いでハッチを閉めるが、その際右手の中指を挟んでしまった。
火事をどうすればいいのか。
地上側で空気を抜いて消火するかもしれない。しかし、通信が不能の状態で確認することができない。
皆が判断に迷っている一瞬の隙に、ヒビトは装備を整え消火の準備をしていた。
ヒビトに続きマクシムも装備を整えオリョールに乗り込む。二人の消火活動で無事鎮火。大惨事を免れた。

煙を吸った吾妻は頭痛とめまいが発生し、右手中指も骨折しているかもしれない状態となってはいたが、全員無事だった。
「おかげでまだ生きてる」
吾妻のその一言が、重かった。

通信が復活。火事が発生したオリョールは地上側で換気と酸素の生成が実行された。
しかし換気ノズルから空気が出続け、また火事により酸素生成装置が使えないという緊急事態となった。
このままでは地球帰還に必要な、六人全員分の酸素が足りない――。
すぐにいくつかの方法が地上で話し合われた。
全員が帰還するにはクルーを分け月軌道上にあるソユーズに乗り移るしかない。

もちろん即座に名乗り出る吾妻。しかし骨折している手と体調から船外活動は不可能であると、真っ先に候補から外されていた。
乗り移るのは誰か。ムッタ、そしてヒビトが決定した。
そしてメドヴェージは月軌道上のソユーズへと到着し、ムッタとヒビトは残るメンバーと一旦の別れの挨拶を交わす。
吾妻は自身が行けないことを悔やみ謝罪する。
ヒビトはそんな吾妻に、むしろワクワクしている、宇宙遊泳というもう一つの夢が叶う、と笑顔で答える。二人はキャッチボールする約束をし、固い握手を交わした。
そしてムッタとヒビトは船外へ。いよいよソユーズへと乗り移る――。

もっと読む