オレグ・ボルシュマン | 『宇宙兄弟』公式サイト
オレグ・ボルシュマン
Oleg Boltzmann
所属
ロスコスモス
宇宙飛行士室長
嫌いなモノ・苦手なこと
寒さ・ビール
寒さ・ビール
誕生日
1974/3/10
身長
175cm
初登場
#282~

words言葉

「君は客でも 家族でもないからだ」

「君たちの協力なしに成長できぬのなら――立派な飛行士になどなれん」

「ヒビトには――「ロシア人になる」くらいの覚悟が必要だ。宇宙飛行士(コスモノート)として「我々の一員になる」と宣言した以上はな」

「君の過去のことは知っている。知ってはいるが…同時に 知ったことではない。」

「これだけは憶えておけ。もし君が月行きに選ばれなかったとしても それは 君の過去のせいではない」

「私は…“言葉足らず”とよく言われる」

profileプロフィール

ロシア連邦宇宙局ロスコスモス宇宙飛行士室長。以前も室長であったが家族の事情があってモスクワを離れており、ヒビトがロシアに渡ったころ帰国、再び室長の席に座る。
前室長ガザエフ氏よりも厳格だといわれており、考えが読めない難しい人物らしい。
彫りが深く厳しい表情であることが多い。
書類ファイルの背表紙に自分で印刷したタイトルを貼り付けるなど、ちょっとした事務作業は行い、室長室の書類棚はファイルがきっちりと揃えて並べられている。

ヒビトが宇宙飛行士(コスモノート)となるべくロシアに来た際、ロシアの英雄であるイヴァン・トルストイとその一家と会うこと、メールのやり取りをすることを禁じた。

八方美人で時間をかけずに誰とでも仲良くなれるイヴァンはロシア的でなく特殊であり、英雄であるイヴァンに憧れトルストイ一家と仲良く成りたがっているロシア宇宙飛行士は大勢いることを伝えた。宇宙飛行士(コスモノート)になると宣言した以上はヒビトには「ロシア人になる」くらいの覚悟が必要である――と。

「貝より硬い」といわれているボルシュマンは、イヴァン曰く実際「貝より硬かった」。
一言だけならメールを送ることを許す、とのことでイヴァンがヒビトに贈った言葉が、「キノコと名乗ったからにはカゴに入れ。」であった(ただし件名は『一言』ではなかったのはイヴァンのささやかな抵抗…かもしれない)。

昔ソユーズが帰還時大きく軌道を外れ遭難したことを教訓に、“ウィンターサバイバル72”と呼ばれる訓練が行われている。
ボルシュマンは訓練の中で誰が一番名前を呼ばれるか、自分の見立て通りの結果か答え合わせをしていた。最も名前を呼ばれた人物がヒビトであったことに驚く。

ロシアの宇宙飛行士たちには、プロフィの横にあるスター湖が凍ったら穴を開けて服を脱いで飛び込むという伝統的なゲン担ぎの儀式がある。
何十年も続くその儀式はロシアの男性宇宙飛行士は全員やるものであり、“男”と“運気”を上げるもの。そして今や“証明”だ。
“入水式”本番足を運んだボルシュマン。ロシアの宇宙飛行士たちの伝統儀式であるそれを、ヒビトが行うことに驚く。

彼は思い出していた。かつて自分が宇宙飛行士だった頃、“入水式”で躊躇っていたところを文字通りイヴァンに背中を押され飛び込んだことを。
冷たすぎる湖、宇宙飛行士(コスモノート)は誰でもなれる存在なのか?というイヴァンの問い、冷水と我々の関係・これをやる利点、その答えが出なければ入る気がしない、と行動なき自問自答をした自分。

「答えは常に“踏み出した先”だ」「お前の考えが正解かどうか答え合わせをしてみろ」
イヴァンの言葉が鮮明に思い出される。
自分が見立てた考え。それが正解かどうか…。
思い切りよくスター湖に飛び込むヒビトと観客たちの歓声、そして仲間たちの称賛。ボルシュマンの“答え合わせ”の答えが出た瞬間だった。

夜の宴では、宇宙飛行士たちとボルシュマンの個人面談があった。
ヒビトの酒を断るボルシュマン。飲まないのではなく、自分が人を選ぶ立場になったが故――選ばれる側の者が注いだ酒には不要な含みを感じてしまう。

ヒビトの過去のことを、ボルシュマンは知っている。パニック障害になったこと、それが原因でNASAを去りロシアに来たこと。
そしてボルシュマンは言葉を続ける。
「もし君が月行きに選ばれなかったとしても それは 君の過去のせいではない」と。

ボルシュマンは表情も殆ど変わらず、厳しく冷たく固い人物であるようにもとれる。だが彼が人を選ぶ基準は、例えロシア人でなくとも過去に何かあったとしても無関係だ。評価しているのは『今』である――という公平な姿勢を感じられる。

ヒビトの目元が赤くなったのは、酒に酔っているだけではない。過去のせいではない――その言葉が、NASAで大きく傷ついた彼の気持ちを大きく救ったことは間違いないだろう。
笑顔になったヒビトは“何の含みもなく”ボルシュマン室長のグラスにビールを注いだ。

バルコニーに出た二人は互いに告白する。「ビールをうまいと思ったことは実は一度もない」と。
そしてボルシュマンは尋ねた。かつて自分が「客でもなく家族でもない」と言ったことに対するヒビトの答えを。

「客ではない」はもてなされる立場ではないこと。自分からロシアに来たのだからそれは当然。
「家族ではない」は「ロシア人ではない」「あくまでよそ者である」ということ。イヴァンのようなロシアの英雄の世話になる境遇ではないということ。

そう答えるヒビトに、ボルシュマンは一つ間違えている、と言う。
「家族ではない」というのは「まだ家族ではない」ということなのだと。

この夜二人はもう一つお互いのことを告白した。自分が“言葉足らず”だとよく言われることを――。

イヴァンたちのバックアップクルーの一員に選ばれたヒビトに、笑顔で「おめでとう」と声を掛けるボルシュマン。
宇宙飛行士(コスモノート)として「家族になった」ヒビトを、見守っていくことだろう。

ちなみに表情が殆ど変わらない彼だが、ブルースーツに対する「ブルー」の色味についてNASAへの対抗意識は強いようだった――。

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