ベティ・レイン | 『宇宙兄弟』公式サイト
ベティ・レイン
Betty Rain
所属
NASA CES-66
"ジョーカーズ" 宇宙飛行士
嫌いなモノ・苦手なこと
料理・絵を描くこと
料理・絵を描くこと
誕生日
1986/7/12
出身地
アメリカ
アメリカ
身長
165cm
家族構成
父、母、夫 タック・ラベル(故人 2023年逝去)、息子 クリス
父、母、夫 タック・ラベル(故人 2023年逝去)、息子 クリス
略歴
宇宙飛行士として管制官などを経験。タック・ラベルとの結婚、出産を機に一時期現場を離れる。2023年に夫タック・ラベルをCES-43の事故で亡くして以来一旦はNASAを去る。2026年頃息子クリスの応援で宇宙飛行士に復帰。CES-66ジョーカーズに任命され2029年ムッタらと共に初の宇宙、月面へ。数々のミッションをこなす。帰還に使用する月離脱ステージ<ライブラ>の異常検知を確認に行った際、タンクの破裂に巻き込まれ大怪我を負い、月面とISSでの手術を経て無事地球に帰還した。
宇宙飛行士として管制官などを経験。タック・ラベルとの結婚、出産を機に一時期現場を離れる。2023年に夫タック・ラベルをCES-43の事故で亡くして以来一旦はNASAを去る。2026年頃息子クリスの応援で宇宙飛行士に復帰。CES-66ジョーカーズに任命され2029年ムッタらと共に初の宇宙、月面へ。数々のミッションをこなす。帰還に使用する月離脱ステージ<ライブラ>の異常検知を確認に行った際、タンクの破裂に巻き込まれ大怪我を負い、月面とISSでの手術を経て無事地球に帰還した。
初登場
#172~

words言葉

「悪いけど 面倒なのよね 待ってるの」

「だけど3年ほどしてあの子―地球儀がほしいと言い出して また宇宙の話をしはじめたの。私はそれがうれしくて 父親のかわりに……私があの子の問いに答えるつもり」

「誰も許してはくれないのに私一人NASAに復帰する勇気はなかった…でも息子のクリスだけは許してくれたわ」

「息子のクリスが「ママを応援してる」―って言ってくれたこと―」

「ほっといても倒れるんだから…っ あんたに賭けるわ!」

「クリス見てる?ママ月をスキップしてるわよ」

「キレイな言葉を並べたって 気持ちが入ってなきゃ伝わんないのよ」

「珍しく…言葉少な目ね いいんじゃない…?今のは…伝わったわ…」

「あと少し…だったのに 最後の最後で…みんな ごめん…」

「もし私に…なにかあったら…クリスに伝えてくれる…?『あなたのおかげで 宇宙を思う存分楽しめた』――って」

「『私はあなたの母親だけど あなたの父親にもなりたいと思ってた』――って」

「そうね…見られたのは…あんたが初めてだわ」

「カルロ…!ありがとう」

「ねぇ…言った通り ママ…ちゃんと還ってきたでしょ?」

「ただいまクリス」

profileプロフィール

宇宙飛行士。美人でたくましく、カルロ曰く「男よりも男らしい」。

左肩に月と、恐らくクリスの「C」をデザインしたタトゥーを入れている。夫のタックも「C」をデザインしたタトゥーを入れていた。

タック・ラベルがISS滞在ミッションを行っていた時には管制官を務める。タックと結婚し出産の為一時期現場を離れていた。息子のクリスが誕生し幸せな日々を送るも、CES-43の事故で夫であるタックを亡くす。

以降両親や親戚中に反対されNASAへの復帰を断念するも、クリスが宇宙の話をしだしてから復帰を決意。女手一つでクリスを育てながらも宇宙へ行く夢を持ち続けていた。

タックと「自分たちの子どもなら宇宙に興味を持ってくれたら嬉しい」と話していたベティ。タックが亡くなってから宇宙の話をあまり口にせずにいたが、3年ほど経った頃クリスが「6歳の誕生日に地球儀が欲しい」といったことがたまらなくうれしかった、とムッタたちに語っている。

“再起にかけたシングルマザーの美人宇宙飛行士”として世間から注目を浴びた。『サンデー・ドキュメント』でのインタビューでは「子育てに際し実際には両親や友人の協力があり女手一つとは申し訳なくていえない」と発言している。

訓練が始まり「おじいとおばあの言うことを聞くように」とクリスに伝えていることから、かつてNASA復帰に反対していたベティの両親も今は彼女を応援していることだろう。訓練で会えていない時は毎日クリスと電話で話をしている。

デザートラッツ訓練やタックとの生活でも描かれている通り、料理はかなり苦手らしい。絵もそれほど得意ではないようだ。

「強い態度と物言いがバリアでも張っているようで近づきがたい」とバトラーに評されていた彼女だったが、訓練を経て、ジョーカーズのクルーたちと良い関係を築いている。

母親宇宙飛行士初として月面を踏む。月面着陸ではいきなりの船外活動に興奮し月をスキップ。数多くの想定外のトラブルに見舞われながらも次々とミッションをこなしていった。

息子クリスとの通信は毎日行っている。だが最初の頃は興奮して色々話してくれたクリス態度が徐々にそっけないものになっていく。遂にはアニメ『タワシボビー』が始まるからと通信を終わらせられた。がっかりしたベティだったが、エディから「そんなもんだ」と言われる。宇宙飛行士の誰もが実証済みの経験であるらしい。

太陽フレアやプラズマの影響で多くのトラブルに見舞われたジョーカーズ。地球への帰還が延長されたり、急遽帰還することが決まったりと慌ただしく予定が動く。帰還までの5日間で天文台を完成させるため、ジョーカーズは一丸となってミッション遂行にあたっていた。

しかし帰還に使う月離脱ステージ<ライブラ>の圧力タンクの警告が検知される。ベティとカルロは予定を変更しライブラに向かった。

ライブラに向かう途中ずっと星空を見上げていたベティ。彼女は息子クリスに「月で見る星空がどんな感じ」なのか、伝える言葉をずっと探していた。カルロはいつものように詩的な言葉を次々と並べるが、ベティは全然入ってこないと一蹴。相手はクリス。「キレイな言葉を並べても気持ちが入っていなければ伝わらない」のだ。

ライブラに到着し、ベティは外観をチェックする。ぱっと見何の異常もない。ベティはアクティブに動き回り、タンク部分に近づき問題のあった3番タンクを詳しくチェックする。上の方にうっすらと筋があることを確認――したと同時に、タンクが破裂。ベティはその衝撃で吹き飛ばされ、途中岩や破片にぶつかり胸を強打してしまう。

カルロがベティに駆け寄る。バイオスーツには目立った傷はないが、すぐに診断が必要だと判断したカルロはベティをバギーに乗せ急ぎ基地へ向かった。
ベティの意識はある。
苦しそうに呼吸するベティに、カルロは言う。

「大丈夫だベティ 俺が助ける」

真剣な表情で言葉少なに言うカルロに、ベティは今のは伝わった、と返した

「もしかしたら最期になるかもしれない」痛みと苦しみに息を切らしながら星空を見上げるベティ。それでも、未だにクリスになんて伝えればいいのか、言葉は見つかっていなかった。

カルロの診察、地上からの遠隔で診ているクジョーの診察により、ベティは骨折であると診断された。

ツイてない、そう漏らすベティにカルロは「『月で骨折』なんて人類として貴重な経験だよ 研究材料にもなる」といつもの感じで言う。

ところが――ベティのサチュレーション(※血液中の酸素の量。酸素飽和度)が下がってきた。“気胸”または“血胸”ではないかと診断したカルロは月面基地で緊急手術を決める。

“気胸”は肋骨の骨折で肺に穴が開いて血管が破れたりし“胸腔”というスペースに漏れた空気や血が溜まり肺を圧迫し、そのままでは呼吸困難で死に至るというもの。

やったことないんじゃないの、と尋ねるベティ。
カルロは淡々と「あるよ」と答え「医師免許も持ってるっていったろ?」と続けた。

“どこまでがウソでどこまでが本当かわからない”カルロの言葉だが、カルロはいつでもその最後には“本当”にする――。

無事に気胸手術を終え、ベティのサチュレーションは戻った。しかし安心はできない。クジョーは医師として一刻も早いベティの帰還をNASAに促す。月ではCTもレントゲンもない。隠れたところに大きな怪我をしているかもしれず、次にベティの状態が悪化した場合、月面の医療設備では救えないかもしれないのだ。

ハガードは“人命最優先”とし、天文台建設を中止し帰還の準備に入ると決断した。なにより、クリスにとってたった一人の肉親だ。タックの事故を知っているからこそ、ベティの命を優先する。

ところが――政府から、天文台は完成させつつ帰還させる命を出す。天文台は未完成、大怪我した人間が帰って来るだけとなれば、ミッションは“失敗”とみなされるからだ。

この無茶な指示に、NASAはジョーカーズを2つのチームに分けることを決断。帰還するAチーム、月に残り天文台を完成させるBチームだ。

ジョーカーズは帰還するAチームと天文台建設のBチームに分かれるわかれることとなる。

「あと少し…だったのに 最後の最後で…みんな ごめん…」悔しさをにじませるベティ。誰も、彼女を責める人はいない。

ベティ、ベティに寄り添う医療担当のカルロ、エディ、アンディの4名がAチームと決まった。

普通の与圧服を着れないベティは、寝袋タイプの与圧服を着用。想像以上のイモ虫姿になった自分を恥ずかしがる。写真を撮ろうとするアンディに抵抗するも、必ず笑い話になるというエディの言葉に「1枚だけよ」と了承。だがアンディは連写したのだった…。

地球に向け、帰還船オリオンが出発する。

ベティの状態は芳しくなく、出血量がどんどん増えていた。このままでは帰還時の着地の衝撃そのものに耐えられない…カルロと、地上から容体を見守っているクジョーに「ベティを帰還させられないかもしれない」という焦りが滲む。クジョーはハガードに、ISSに立ち寄って手術することを提案した。

カルロからISSに立ち寄ることを伝えられたベティ。
「月もISSも両方行けるなんて史上初だよ ラッキー&ラグジュアリーな旅になるね」
いつものように言うカルロだったが、ベティは自分の状態がISSで手術しなくてはならない程に良くないことを察したのだろう。
「ありがとうカルロ…覚悟はできてるわ なんとしても…生きることだけ考えとく」
カルロも真剣に答える。
「ああ…俺もだ なんとしても…救うことだけ考えてる」

状況は切迫していた。ベティに血を見せないように隠していたカルロだったが、時間が経つにつれベティの出血量は増えていく。

無理をしてでも自分でできることはやろうとするベティだったが、痛みでそれもままならない。オムツも換えているカルロが、体を拭いたりシャンプーをしてくれた。
ベティは恥ずかしながらも素直に従う。
髪を櫛でとかしまとめるのもあまりにも手慣れているため、まさか美容師までやっていたなんて言わないでしょうね、と尋ねるベティ。
「やっていたことある」そう答えたカルロ。ベティは、もう面倒だから全部信じることにしたらしい。

ISSへ到着、クルーたちと地上の管制室によって急ぎベティの手術の準備が進められた。

ロボットを使い、無重量状態での遠隔手術。さすがのベティも「少し…怖くなってきた…」と珍しく弱音を漏らす。

「もし私に…なにかあったら…クリスに伝えてくれる…?『あなたのおかげで 宇宙を思う存分楽しめた』――って」

ベティはカルロにそうお願いをする。続けて、もう一つの願いを口にした。頷いたカルロは、大丈夫、君の口から伝えられるよ、と返す。

遠隔操作をするクジョーにとっては難しい手術ではない。準備は整った。地上と宇宙での手術が始まった――。

ベティは、ISSへの道のりの途中、カルロに尋ねたことがある。
月で手術をしたときに、カルロでも緊張したのか、と。
しなかった、とあっさり答えたカルロ。手術をしている間は水中に潜っているような感じで、月の手術は簡単だったからすぐに顔を出せた。次の――ISSでの手術も余裕だ。クジョーにとっては“浅瀬”なのだ、と。
そんな例えに、ベティの不安も少し和らいだことだろう。

手術中、ベティの過去が描かれている。

クリスが今よりもっと子どもの頃、公園で父親と遊んでいる子供たちを見てクリスにベティに尋ねたことがあった。
「パパとボクってぇ… どんな遊びしてた?」
“高い高い”をしていたタックと笑っていたクリスを思い出したベティは、“無重力ごっこ”と答える。

しかしタックを亡くしたときまだ3歳だったクリスにはもうほとんどタックとの記憶がないようだった。しかも、宇宙飛行士として訓練が始まり母親と過ごす時間も少ない。

デザートラッツ訓練で焚火を囲んで互いのことを話したあの夜、ベティはこんなことも口にしていた。

「私…今回が最後でもいいと思ってる このミッションを本気で思いっきりやって――クリスにいいとこ見せて…帰ってきたとき クリスの母親に戻る――それが…今の私の夢」

男性宇宙飛行士すら驚くほどの“男まさり”。
男を寄せ付けないほどの強さ。
それは父親を早くに亡くしたクリスにとって、父親でもありたいと願ったベティの覚悟と姿なのだ。

「私より弱い男(ひと)に「俺が君を守る」とか言われても――「説得力ないわ」――って断れるでしょ」

かつてカルロにそう話していたベティ。

誰よりも鍛え、その腕でクリスを持ち上げたり遊んであげるために。クリスの母親でもあり父親でもいるために、彼女はその生き方を選んだ。

ベティがカルロにお願いした2つ目の言葉。
「『私はあなたの母親だけど あなたの父親にもなりたいと思ってた』――って」

ベティの生き方を知ったカルロ。

「大丈夫だ…俺が守る」

バイオスーツを着て、月面でスポーティーに跳んでいたべティ。
また跳べるようになる。
絶対に助ける、その強い想いでカルロは手術を続けた。

遠隔通信の障害がありながら、クジョー、そしてカルロによって手術は見事に成功する。

意識が目覚めたベティに、カルロが声を掛ける。
彼女の目に映ったのは、地球。クリスのいる地球だ。

「ちょっと気が早いけど…「ただいま」――って思っちゃった」

ISSでの手術からしばらく――ベティは壁に固定されなくとも大丈夫なほどに回復していた。
ただし無重量環境では筋肉の衰えが早く、傷を癒す時間を取ると同時に着地の衝撃に耐えられる筋力が残っているうちに帰還しなければならない。

いよいよ、ジョーカーズAチームの帰還が迫っていた。

そんな折、ISSでは減圧騒ぎが起こる。小さな穴による空気漏れが帰還船のオリオンで発生していた。自分たちの帰る船だということで、エディが内側をアンディが外側の修復にあたる。

カルロはベティの抜糸を行っていた。自分の体にも空いている穴にベティは少々ナーバスになっているようだった。

カルロはベティに付き添い、互いにたくさんの話をする。

帰還後自伝を出版する予定のカルロ。カルロム洞窟のほか、ベティの話も書く予定だという。その中では、手術の前後でベティがどんなことを思っていたのか考察も書くのだそうだ。

自分でもぐちゃぐちゃなのに他人が説明できないと思う。そう言うベティにカルロは軽やかに答える。

「ベティ…俺は君の“胸の中”を見た男だよ?」
ベティは頬を赤らめ、しばしの間を置きながら恥ずかしそうに言った。
「そうね…見られたのは…あんたが初めてだわ」

大きな危機を乗り越えた2人には、仲間以上の絆が生まれていた。

いよいよジョーカーズAチームが帰還する日が来た。
ISSを離れる前に4人は月面と交信する。
「お前たちが還って来るまで 俺たちはジョーカズのままだ!地球で会おう」
エディが力強くムッタとフィリップにそう伝える。4人は月面の2人に笑顔を見せた。

遂にオリオンは着陸態勢に入った。
ベティの脳裏によぎるのは悪いことばかり――。

ライブラの亀裂、吹き飛ばされた自分。フィリップが塞いだオリオンの穴は自分の傷と重なっただろうか。意識の遠くに、クリスの顔が見える。
タックの事故を経験しているベティ。無事に還れるのか、クリスを一人にしないだろうか…そんな不安が彼女の中でいっぱいになっていたのかもしれない。

ベティのストレス値が上がっていく。
ふっ、と目の前に手が差し出された。隣に座っているカルロの手だ。
その手を強く握るベティ。
帰還と着水衝撃がベティを襲う。

「大丈夫かベティ!?」
心配そうにベティを見るカルロやエディ。

ベティはいつものような気の強さで「衝撃でちょっと痛みが走っただけ」と答え、続いて着水は衝撃が弱いんじゃなかったのかと愚痴った。

その言葉を聞いて安心したのか、カルロはいつもの調子に戻り言葉を紡ぐ。
「…ふっ まあ…一応ね 俺の詩のように優しく軽やかだっただろ?」

ベティは重力の重さをひしひしと感じていた。
髪の重さ、ほっぺたの垂れ、傷の痛み…。自分が“生きてる”ことを実感する。

帰還後の離別はあっという間だ。
まずは病院に向かわせるベティが最優先で運び出される。
あまりにも慌ただしい別れに驚くベティだったが、彼女は仲間の一人一人に声を掛けた。命の大恩人でもあるカルロには「ありがとう」と力強く。

「チャオ!」

いつもの調子の笑顔が、そこにあった。

病院に搬送されたベティ。
クジョーから渡された電話で、息子のクリスと話ができた。

「ねぇ…言った通り ママ…ちゃんと還ってきたでしょ?」
「うん… よかったあ」

母子の間には、タックを亡くしたあの日が思い出される。
言葉は多くはいらなかった。

「ただいまクリス」

完全な回復を待つベティ。
いまだ月面にいる“自分の一部”であるムッタやフィリップの帰りを、待つ。

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