南波 六太(ムッタ)

なんば むった
南波 六太
誕生日

1993年10月28日
サッカーワールドカップ予選敗退の「ドーハの悲劇」の日生まれ(本人談)

出身地

日本・東京都出身、実家はたけのこニュータウン
現在アメリカ・ヒューストンに在住

身長

181cm(ヒビトより1cm小さいことがちょっと気になる)

職業

JAXA宇宙飛行士

家族構成

父・長介、母・真弓、弟・日々人、アポ

略歴

ミラクルカーコーポレーション入社。進行中のプロジェクトがボツになり梅茶菓支店へ出向、梅茶菓支店メンバーとグッドイカスカー賞を受賞、本社へ戻る。
上司への頭突きをしてミラクルカーをクビになったのち、宇宙飛行士選抜試験を受け合格。アメリカに渡り数々の訓練を経て宇宙飛行士に認定、CES-62の打ち上げではキャプコムを務める。CES-66ジョーカーズの一員として遂に月へ。日本人4人目のムーンウォーカーとなるが、人類初の月面第一「手」を残した。
月の地下空洞であるカルロム洞窟を発見。
月面での様々なトラブルを乗り越え、シャロン天文台建設のミッションを完遂。
フィリップと共に月に残り、地球帰還を目指す。

初登場
#1~

言葉

「本気でやった場合に限るよ。本気の失敗には価値がある。」
「俺の敵は 大体 俺です。」
「宇宙服は俺らの味方だ。」
「ちょっとだけ無理なことに挑戦してこーぜ」
「今のあいつは俺から見れば最強の宇宙飛行士です」
「この…シャロン天文台の発案者である カネコ・シャロン博士からの……期待と 信頼です。それなら多分 誰にも負けてません」
「言葉での説得が難しい人には――やっぱり行動で訴えていくしかない」
「これを発表したら 俺らの任命(アサイン)は帳消しにされるかもしれねーけど それでも……あれだ…… ISSは俺らで守ろう」
「ねえ シャロン……この先また怖くなっちゃったりして “生きる意味”とかに迷っちゃってもさ 最後には必ず “生きる”ことを選んでよ。生きてて欲しいんだよ」
「約束……果たしてくる」
「なんだか……弟に会えた気分です」
「俺は大丈夫だよ。そのためにここに来たから」
「できれば俺が月にいる間に『完成したよ』――って シャロンに伝えたいんだよ俺から」
(大それた使命感に囚われるな 俺のやっていることが…世界の為になるかどうかは――「結果」だ 「結果」でいい――俺はただ―― 一人を思ってやればいい)
「決めるなら――“意志の強さ”で選んで欲しい」
(言わねえぞ このミッションが――シャロンとの約束が――ちゃんと全部光り輝くまで「くたびれた」とは言わねえぞ)
「俺たちもそれでいいんだよ 自分のやってることの“意味”を探す必要はない 
やったことの結果が誰かの“意味あること”になればいいんだ」
「感じていたのは 心の“ブクブク”だ」
「ああ…兄の俺が言うのもなだけど…日々人(あいつ)…頑張ったんだなあ…!」
(“元々の運動神経”とか…“才能”だけで片付けちゃだめだよな 紫さんが舞台で活躍できるのは 誰よりその準備ができているから フェイクに見せて “本物”だ)

プロフィール

主人公。初登場時31歳、シャンプーがよく泡立つモジャモジャ頭。日本人最年少宇宙飛行士であり日本人初のムーンウォーカーである南波ヒビトの兄。
好きなスポーツはサッカー、得意な楽器・トランペット。料理はヒビトよりうまいらしい。尊敬している人物として天文学者・金子シャロンの名を挙げている。

小学生の頃ヒビトとUFOらしき光を発見し宇宙へ行く約束をするも、いつの間にか宇宙飛行士になることを諦めて過ごしてきた。自動車の設計に携わりグッドイカスカーを受賞歴もあるが、ヒビトの悪口を言った上司に頭突きしクビになってしまう。

退社後しばらくフリーターとして過ごしていたが、ヒビトと母の計らいによりJAXAの宇宙飛行士選抜試験で書類審査を通過。どうせ自分なんかと思いながらも、仲間との良い出会いやシャロンなど周囲の応援により無事合格。
うまくいかない事を何かと「ドーハの悲劇」生まれのせいだとし、優秀な弟と比べ常に自己評価が低くネガティブ思考だったが、その発想力やハッタリは時に周囲をハッとさせ、さりげない気遣いと優しさで本人も意識しないうちに周りを助けている。

宇宙飛行士選抜試験、合格後の様々な訓練を経て、自分が今置かれている状況や何か求められているか、何をすべきかを理解し、解決するため前向きに行動できる人になっていった。

試験中に出会った真壁ケンジとは歳が同じということもあり意気投合、唯一無二の親友である。また、閉鎖環境試験で出会った仲間たちは互いにとって一生の友人となるだろう。

場を和ませようとハッタリをかましたりするため誤解されることもあるが、南波ムッタと深く関わった人たちは皆彼に厚い信頼を寄せている。
無茶を突き付けられた時にも何とかしようと考え、動く。より良い方向へ行くため、希望を現実にする為の道を模索し、可能な限りの方法を生み出していく。そんな彼の周囲には自然と人が集まるのだ。

また、工学部出身で自動車開発に関わっていたことから技術方面も得意で、様々なアイデアを思いつきその思考回路と実行力で周囲を驚かせる。
技術者寄りのムッタの考えはピコとビンスの幼馴染であるリックにも通じる部分があり、ピコとビンスとは一緒に飲む仲。ピコ、ビンスを始め技術者たちからの信頼も厚い。

宇宙飛行士選抜試験からの同僚・伊東せりかに淡い恋心を抱いている。
せりかがどれほどISSに人生をかけているのかを近くで見て知っていたムッタは、譲れるものなら彼女に席を譲りたいと申し出る。
またジョーカーズが新人だらけという理由で一度出された月ミッションへのアサインが先に別のチームであるボルツに渡ってしまう。それを奪還するためボルツと競いISS廃止署名を集めの話になった際にも、「ISS存続のための署名」を集めるため尽力した。

せりかの方もムッタが空に描いたのがバルタン星人ではなくハートマークだったことにISS滞在中に気付き、徐々に意識し始めているようだ。
ムッタとせりかの恋の行方が楽しみである。

シャロンとは小学生の頃シャロン天文台を訪ねた頃からの付き合い。英語を始めたくさんのことを学んだり相談したりしてきた。ムッタとヒビトにとって、もう一人の母のような存在である。
シャロンの夫が見つけた小惑星“シャロン”の姿を見たい、月に望遠鏡を建てたいというシャロンの夢を、自分が叶えると約束した。

途中宇宙飛行士をあきらめたムッタはその約束を忘れていてくれないかなと思ったこともあった。しかし宇宙飛行士への挑戦と様々な困難を乗り越えたムッタは遂に宇宙飛行士となり、再びシャロンの夢を叶えるため月行きを目指す。
シャロンがALSにかかってからはその想いが更に強くなり、「誰よりも早く月に行ってシャロン天文台を建てる」べく奔走。シャロンたちが作り上げた計画書や、シャロンが録音し残した方法を何度も聴き込んだ。

一度ボルツにアサインが渡った際には「たとえ自分が行けなくても誰かが建ててくれれば同じ」と自分に言い聞かすも、何度も何度も聴き込んだシャロン天文台建設計画のシャロンの声を聴き奮いあがる。
そして遂に月ミッションにアサイン、月面へと降り立った。

遂に月に降り立ったムッタだったが、なんと月面第一歩目は着陸船オクトパスの足にひっかけて転倒してしまい、人類初の月面第一「手」を残すという歴史的記録を残した。

天文台建設に必要な資材のパラソルアンテナが消失した際、アンテナ捜索中に月の地下空洞を発見する。
ムッタとカルロが発見し探索したことから「カルロム洞窟」と命名された。ムッタ自身は第一発見者である自分の名前が「ム」しか入っていないことがちょっぴり不服だったが、せりかに「ムッタさんの名前が入っている」と呼ばれ喜ぶ。

太陽フレアの発生で、翌日のミッションで接続するため月面に出しっぱなしだったスーパーコンピュータ“SHARON”が磁気嵐に遭うかもしれないとの危機が迫る。
磁気嵐を浴びてただの箱となってしまうことを防ぐため、基地まで運ぼうと提案。リミットは12時間。エディと共に向かった。

エディとはお互い兄弟の“兄”同士であるため、兄としての話や弟の話をたくさんした。
途中、過電流で故障したバギーのバッテリーを取り換える為ヒビトが落ちたリッテンディンガー峡谷へと立ち寄る。ヒビトの落ちた場所を体感するムッタ。
底に降りて改めて、ここで酸素が少なくなり事故に遭い怪我をした仲間を連れて生還したヒビトの凄さを想う。

弟ヒビトには昔からコンプレックスを抱きつつも、誰よりもヒビトを理解し彼自身のことを想い応援し信頼している。
13歳の誕生日にヒビトからプレゼントされた「ドーハのきせき」のDVD-Rを大切に持っており、月へ行くヒビトに預けた。
後にそのDVDを月面基地内で見つけ確かに“ここ”にヒビトが居たことを感じた。

時に悩み、重い気持ちを抱えていたムッタが、成長し周囲の人間にとってかけがえのない存在になっていく。宇宙飛行士として、支えられる側の想いを受け止めそれを叶えるために彼ができる方法で叶えていこうとする。

ところが、である。天文台完成を前に、太陽フレアによる影響がムッタたちを容赦なく襲う。

月面の滞在日数の延長、船内での活動の決定――。ヒューストンから伝えられる内容に、天文台完成は間に合わないのではないかという不安がよぎる。

キャプコムのビンスは続ける。

外に出られる時期が来たら天文台建設を再開すること。太陽フレアの放射線量が落ち着くタイミングで船外活動を実行してもらうこと。天文台建設のための延長ではないが、延長することによってシャロン天文台を完成させられる可能性が出てきたこと。

――そして、ヒューストンは最後までやり通すつもりであること。

宇宙飛行士が何を一番辛いと思うか…宇宙行きの延期より、地球行きの方が辛いだろう。伝える順番は、自身も宇宙飛行士であるビンスなりの配慮だった。

想定外はまだまだ起こる。
太陽フレアによる放射線の次は、過去最高レベルの大量のプラズマ放出だ。

地球でも各地で停電が起きると予想されるほどのプラズマ。ヒューストンからISSや月面基地への通信は途絶えることが予想され、月面基地の電子機器類は電源から落とすことになった。

大量のプラズマが月を襲う。月面基地は停電。バックアップとして従系がすぐに動いたものの、再び停電が起こり真っ暗に。
従系の次に切り替わる非常灯さえも消えた「もしものもしものもしも」まで想定されて作られているマニュアルで訓練を続けていたジョーカーズは、暗い不安の中でも非常事態を受け入れ、仲間と共に冷静にやるべきことを行っていた。

非常灯で過ごす月面基地。天文台の続きができないことにやきもきしつつ、ムッタはフィリップと共に基地内の点検や修理を進めていた。残る修理ができるまでの2時間。ずっとシャロン天文台についての情報を眺めているムッタに、フィリップが尋ねる。

「シャロン天文台 やっぱ完成させたい?」

そりゃそうだよ、と即答するムッタ。なぜなら、自分が宇宙飛行士になった一番の目的だから。
もちろん次のチームが終わらせてくれればそれでよいけど、できれば自分が月にいる間に「完成したよ」と伝えたい。

笑顔で話すムッタの言葉を聞いて、フィリップは「ムッタの夢を俺の次の夢にしよっ!」と決める。

『シャロンの夢』であった月面天文台が『ムッタの夢』『天文学者の夢』となり、自分が月面にいるうちに天文台を完成させたいというムッタの夢を、仲間が『自分の次の夢にしよう』と言ってくれる。

少年だった頃シャロンと交わしたムッタの夢は、『皆の夢』となっていた。

停電騒動から10日が経ち、放射線量の影響が低くなり、待ちに待った天文台ミッション再開の日がやってきた。
ムッタ、フィリップ、アンディの3人は天文台建設地へと向かう。

共に船外活動をするムッタとフィリップは、建設地に向かう途中シャロンとの思い出の話をたくさんした。シャロンがみたいもの。深宇宙。シャロンの旦那さんが発見した小惑星の姿。いつか見せてあげると約束した少年の日とのこと。
「フィリップの夢」にもなった天文台の完成。ムッタの思い出話を聞きながら、フィリップのテンションも上がっていったことだろう。

天文台建設の再開はまずソーラーパネルの設置からだった。
アンディが操作するアームロボ「JOCK」とブギーと共に一つ一つ手際よく設置していく。

やっていることは、電気工事士のような仕事。
けれど舞台のせいか衣装のせいか――なにかとんでもない、それこそ世界を救うような…そんな大それた使命感を感じかけたところで、ムッタはとどまる。

大それた使命感に囚われるな
俺のやっていることが…世界の為になるかどうかは――「結果」だ
「結果」でいい――
俺はただ―― 一人を思ってやればいい

交代で3日かけ、ソーラーパネル設置とケーブルを接続。
天文台の中心にスーパーコンピュータ“SHARON”を設置し起動させれば、いよいよシャロン天文台は完成だ。

様々な船外活動ミッションが続く。
ある時ムッタは足元にハート型の石を発見した。ふと、隣に感じる気配。
ピントが合いまくりなせいか、低重力の影響か、宇宙の神秘か…その気配はいつも弟ヒビトなのだが。

ムッタたちが月面ミッションを進めていく一方で、せりかたちISS組はまもなく地球帰還を迎えようとしていた。ムッタは拾ったハート型の石をISSの方向に向けながら、無事に帰還できるよう願掛けをする。

ブギーを通してせりかたちの帰還映像を見届けたムッタは喜びのガッツポーズをした。一連の様子を見ていたカルロは、最初の娘(コ)と二人目ではリアクションに差があることを不思議がり、それを受けてブギーは「(伊東せりかを)モシカシテ…好キナンジャナイノ?」とムッタにツッコむ。
管制にも会話を聞かれているんだぞ!に焦り照れるムッタだが、せりかがISSで念願の実験を成功させたこと、誹謗中傷を越え帰還前の会話で笑顔だったこと、無事地球に帰れたことを心から喜んでいたに違いない。

天文台建設は佳境を迎えていた。
ISSクルーの見事な帰還を見届けたあと、ジョーカーズの話題は帰還した後の楽しみに話が及ぶ。しかしその話題は「自分たちはちゃんと地球へ帰れるのだろうか」という余計な考えを、皆が一瞬持ってしまったからかもしれない――。

そんな不安を感じ取ったムッタは、ミッション中通信全員と「今 月でやりたいこと」を話す。

ムッタがやりたいこと。
スパコンを入れ込むための横穴の掘削作業。
スパコン“SHARON”の設置と接続。
光学望遠鏡の設置。
月面を散歩。

そして――シャロン月面天文台を完成させて電源を入れたら、その全体を見渡すこと。

“シャロンへの感謝”とか“約束を果たした達成感”とか“俺が宇宙へ来た意味”とか。
そういうものがすべて一望できるであろう瞬間のために…。

太陽フレアが落ち着いてからのミッションは概ね順調に進んでいた。
そして、遂に帰還日程がヒューストンから告げられる。
再び太陽活動が活発になり始め、フレアの影響を強く受ける前に帰還する。
残り5日間で天文台完成と帰還の準備をすることが決定した。

ここからは急ピッチだ。
エディ、ムッタ、アンディの3人は天文台へ向かい、スパーコンピュータ“SHARON”を設置。エディの、最後の船外活動だ。

最後の船外活動はどんな感じか、とブギーが問う。ムッタもそれを聞きたかったが、遠慮して聞けなかったことだ。
エディは答える。
ずっと「これが最後かもしれない」と思いながらやってきた。いつもと変わらない、と。ずっとエディの姿を見、最後の船外活動を共にしたムッタは「お疲れ様――エディ」と声をかけた。

天文台完成への道のりはあと少し。
いける、月面にいる今日明日中に絶対終わらせる。強い想いでムッタミッションを進める。

だがムッタとフィリップがミッションを進めている裏で、月離脱ステージ「ライブラ」の様子がおかしいという報告を受け様子を見に行ったベティが、ライブラの破裂により大怪我を負ってしまう。カルロによる緊急手術により一時的に乗り越えたものの、危険な状態であることは変わりない。

帰還予定日まで1日を残し、政府とヒューストン側で話し合った結果、「ベティの命を最優先」「天文台を完成させる」ことを両立させるためベティを含む4名を緊急帰還させ、2名は月に残ることが決定した――。

ベティと医師であるカルロの帰還は絶対だ。月に残る2名を決定しなくてはならない。エディを中心とした話し合いで、残りの4人全員が自分が月に残ると手を挙げた。
全員の挙手を受けて、ムッタは更に高く手を挙げる。それを受け、フィリップも両手をさらに高く挙げた。

エディはもう船外はできない。アンディは地質調査がメインで、機械系統は元々ムッタとフィリップの担当分野だ。
ベティの怪我とヒューストンの決定を、月面基地に戻る途中のビートルの中で受けたムッタとフィリップ。
残りの天文台建設に誰が適任であるかを考えたら、答えはもう出ていた。
「俺ら2人が残るんだ」。ビートルの中で、そう決めた。

決めるなら、“意志の強さ”で選んで欲しい。さっき挙げた、“手の高さ”で。

月面に残ることが決まったムッタとフィリップ。しばしの別れを惜しみ、4人は地球へ帰還する。
その前に、ムッタはエディから重要な任務を任された。コマンダーだ。
それはムッタと共に月面に残るフィリップからの、エディへのたってのお願いだった。

訓練歴の長いフィリップの方が妥当ではあるが、ムッタの方が適任であること。今回のミッションはムッタのアシストをすると決めたこと。

ヒューストンの了承も得、エディはムッタにコマンダーとしての“印”を預ける。
エディが宇宙飛行士になった年からずっと着けていた、アポロ11の時バズ・オルドリンガ着けていたのと同じ時計。
「地球に帰って必ず返せ――約束だ」

帰還組の月からの打ち上げを見送ったムッタとフィリップは、自分たちにできる天文台建設に早速取り組む。
予定よりも多少遅れはあったものの、帰還組が無事帰還船とドッキングしたと連絡が届き安堵するムッタとフィリップ。

「どこにいようと最後の最後まで――俺たちは“ジョーカーズ”だ」

エディのその言葉を最後に、帰還船オリオンは月を離脱。とうとう、月面はムッタとフィリップ2人だけになった。「私もイマスヨ(by ブギー)」。

天文台建設はラストスパート。最後のケーブルを“SHARON”に繋ぎ、後は電源を入れるだけ――。
だが、電力不足という表示とともに光る筈のアンテナが途中で止まってしまう。
原因不明のため、一度基地に戻るよう指示されるムッタとフィリップ。

「今日で終わる」
そう思っていたところで、どっと疲れてしまった。
「くたびれた」
思わずそう口に出そうになったが、ムッタはぐっと飲みこむ。

言わねえぞ
このミッションが――シャロンとの約束が――ちゃんと全部光り輝くまで「くたびれた」とは言わねえぞ

天文台のエラーを探るヒューストンのケーブルチェック期間。
口には出さないものの、ムッタとフィリップは空も見えないのに天を仰ぐ時間が多くなった。ベティたちへの想い、太陽フレアや帰還への不安。そんなものがよぎる。

しばらくはほぼ休暇の状態になっていたが、ヒューストン側のチェックが終わり、2人はエラーの原因と思われる部分をチェックしに、気合いを入れなおし久しぶりの船外活動へ出発する。

ムッタとフィリップに配慮しISSでベティの手術が行われたことを黙っていた帰還組だったが、ベティの体がもう心配なくなり2人に月離脱後の顛末がエディから伝えられた。ジョーカーズの不安が一つなくなったことに喜ぶ2人。
久しぶりの船外活動にもテンションがあがりヒューストンからは楽しそうにも見えるが、ビンスはあえてそうしているのかも、と考えた。

地上ではベティのことや2人が月に残っていること、家族には安心してもらえるよう説明してあること、ネットにある憶測やデマを真に受けないようビンスから伝えられる。
そういわれると余計気になる…となったムッタだが、着実に2人の帰還準備を行っており心配はいらない、我々を信じて待っていて欲しい――淡々とプロとして伝えることを伝えるビンスの無表情が、こんな時こそ優しかった。

地上では2人の帰還のため、アメリカ、ロシア、日本、3カ国が合同となる史上初のミッションが進んでいた。
ロシアの宇宙船ソユーズが日本から打ち上げられ、既に向かっているというのだ。
ソユーズのマニュアルも読む必要があるが、ムッタとフィリップが生きるための準備が着々と進められている。
ソユーズを打ち上げたスイングバイに福田の想いを感じ、ムッタは胸を熱くした。

天文台建設は今度こそ本当に最後だ。
ムッタとフィリップは不良個所を点検し、“点灯式”に向けて一つ一つ不良個所を確認していく。
基地でのチェックも含め途方もない作業に、フィリップが「これって意味あんのかな」と呟いた。

ムッタは福田の話をし始める。
自分たちを助けるために日本のロケットで打ち上げられたソユーズ。初の試みに相当なプレッシャーがあったであろうこと。そのための途方もないチェックを一つ一つやったであろうこと。その結果自分たちが助かるから、福田さんの仕事はすごく意味のあったこと。

俺たちもそれでいいんだよ
自分のやってることの“意味”を探す必要はない
やったことの結果が誰かの“意味あること”になればいいんだ

それは殆ど自分への言葉だった。意味など探すな、自分が楽しんだ結果喜ぶ人がいる。これ以上のことがあるか…?これが、私の天職だ――!

自分にとっての金ピカはここにある。完成前に見つけちゃったよ、シャロン。
最後の調整を終えて、ムッタとフィリップはタッチと目で、お互いの仕事をたたえ合った。

私たちが来なければ ここは暗闇だった。私たちが来なければ ここは動かない景色だった。“シャロン天文台”という私たちがここに来た証を点灯します。

月面のパラソルアンテナのすべてに光が灯る。
思わず目を閉じてしまうほどのまぶしい景色。
シャロンとの約束が、遂に果たされた瞬間だった。

「くたびれた――」

誰が見てもハッピーエンドなこのシーン。
もしも自分たちが帰れなくても、ドキュメンタリー的にはこのシーンで終わってくれれば問題ない。そんな想いだ。

地上にいるシャロンを思いながら、ムッタたちは基地へと帰る。
ビートルに乗る前、振り返り天文台を眺めたムッタは、不思議な気持ちに包まれていた。約束を果たした安堵感だけではなく、“ザワザワ”したような“ワクワク”したようなそんな感じ。

天文台建設を終え、日本は沸いていた。
ムッタが言った言葉が茄子田理事長を介して「言ったっけ…?」な言葉に変わっていたが、ニュース記事を読んで約束を果たした後の正体不明だった“心の正体”を知る。
ワクワクを超えて、心が“ブクブク”したんだ。

天文台完成を受けてシャロンから届いた動画は、ムッタの肩を震わせ、目頭を熱くさせた。
辛い現実が悩ませたでしょう。だけど、少年の頃の夢のまま約束を叶えてくれたことが本当に嬉しいこと。
必ず帰ってきて、もう一度笑顔を見せてほしいこと。ついでにハグもして欲しいこと。
天文台の夢を叶えたムッタに、シャロンとの新しい“約束”が交わされた。

地上と月面で帰還の準備は進む。
ムッタたちが帰るのに必要な着陸船も無事到着した。ところが――。
位置がずれ、月面基地から80kmという遥か遠い場所へ着陸してしまった。LGPS(月のGPS)がやられたことにより、月面マップと実際の月面との位置にズレが生じたのだ。
食料も限られてきた。ムッタとフィリップの間に絶望的な空気が流れた――。

だが今が耐え時であるとも知っている2人は、できることを進める。
ISSやヒューストンとの交信。モニタに人の顔がうつるだけで、月面では大いなる救いなのだ。

ヒューストンから機体の確認が取れ無事だという連絡が届いた。それと同時に届いた動画で、ムッタは驚きの光景を目にする。
自分たちを救うためのミッションで、ロシアで組まれた“トルストイ4”。そのメンバーにはかつて弟を救ってくれた吾妻、そして弟ヒビトが映っていたのだ。

「宇宙飛行士としてダメになってた僕を 兄はフワッと救ってくれました
今度は僕が――兄を救いに行く番です」

画面の向こうには、当然のようにヒビトがそこにいた。
ロシアでどれほど頑張ったんだろうか。いや、むしろヒビトらしい。自分が知っているヒビトの姿が、そこにあった。

天文台建設という大きな目標を終え、正直なところ“やりきった感”で次への意欲を失いかけていたムッタ。
ヒビトが来る。小さな火種が燃える音が聴こえた。
火種を失くすな。ゴールラインは、次へのスタートラインだ。

エディを始めジョーカーズの4人は無事地球へと帰還した。
“置いてけぼり感”を感じるかと思っていたムッタとフィリップだったが、「自分の一部がちゃんと地球に還った感じ」だ。
だけど、エディたちからしたら逆だろう、とムッタはふと思う。
「自分の一部がまだ月に残っている…」。
ジョーカーズはまだ誰も“卒業”できてないままだ――。

ムッタたち救出のための準備は続く。
ヒューストンでは過去長距離移動を伴う救出チーム「タイガーチーム」を作成。
希望したビンスの他、ケンジ、新田が選出された。

ムッタの不安を考えながら、ムッタに助けられた数々の出来事を思い出しながら、ケンジと新田の訓練は続く。

ケンジと新田らが何度もシミュレーションし決定した、帰還船までのルート。
それをムッタに伝えたケンジは、画面の向こうにむけて手を差し出した。
MEEMO訓練で一度は心が離れたムッタとケンジ。
その握手は、2人にだけわかる、2人にとって大きな意味を持つ握手だ。

タイガーチームが決定したルートのシミュレーション訓練が始まる。
険しい道のりに始めは驚いたものの、他をすべて試して決定されたルートだ。
ケンジと新田が選んでくれたルート。一緒に居てくれるような安心感を、ムッタは感じた。
友が示してくれた道を信じて。
遂にムッタたちは帰還に向け出発した。

途中の中継地で先輩宇宙飛行士・紫三世の2年越しのイタズラに驚かされつつも、順調にルートを進んでいく。
イタズラっぽい面だけではない。
紫が自分を助けるため遠隔操作されるロボット「JOCK」の為に、どれほどの訓練を積んだのだろうと想いを馳せた。
“元々の運動神経”とか“才能”だけで片付けてはだめだ。舞台で活躍できるのは、誰よりもその準備ができているから。フェイクに見せて、“本物”だ。

月面で共にミッションにのぞむ仲間がいる。
地上で応援し力を尽くしてくれる管制チームがいる。
ヒューストン、JAXA、ロシア。国を超えて、多くの力が結集する。

宇宙飛行士の仲間、ジョーカーズの仲間、スイングバイや、宇宙に関わるたくさんのスタッフ。地上でムッタたちの帰還を待っている人々。
ムッタとフィリップを地球に帰すため、たくさんの人々の想いが2人の道をひらく。
読者であるあなたの想いも、きっとその一つだ。