南波 日々人(ヒビト)

なんば ひびと
南波 日々人
誕生日

1996年9月17日「栄光の日」生まれ(ムッタ談)
野茂英雄投手がノーヒットノーランを達成した日。

出身地

日本・東京都出身、実家はたけのこニュータウン。NASAを去り現在ロシア・モスクワ在住。

身長

182cm

職業

JAXA宇宙飛行士

家族構成

父、母、兄、アポ

略歴

大学卒業後JAXA宇宙飛行士選抜試験を受け合格。
日本人最年少宇宙飛行士であり、史上最年少ムーンウォーカーの記録も打ち立てた。月面でのクレーター落下事故から奇跡的な生還を果たすも、パニック障害を発症。リハビリ訓練の末現役復帰試験をパスしたもののNASAでの宇宙飛行士現役復帰を見込めずロシアに渡る。ロシアでの訓練に参加し、月ミッション“トルストイ4”のバックアップメンバーに選ばれ、アストロノートからコスモノートになる。
太陽フレアの影響によりアクシデントが起きているNASA月面ミッションのクルーを帰還させるため、NASA・JAXAとの協力体制ミッションFMTEに任命される。“マクシム4”のクルーとしレスキューに特化した訓練を行い打ち上げが間近に迫る。

言葉

「ムッちゃん 俺今なんとなく 将来は宇宙飛行士になってさ。月に行くような気がしたよ」
「もし諦め切れるんならそんなもん夢じゃねえ」
「だって…天国も地獄もどっちも生きてる時に見るもんだ」
「ブライアン…やっぱり来てくれるんだな あんたは」
「俺らは生きて一緒に月面に立とうぜ」
「楽しいだろ?宇宙って(ムッタの月への打ち上げ時メールにて)」
「俺がラインの上を真っすぐ歩けたのは 飛行訓練のおかげじゃない。PDの時と比べれば 大したことないなって気付いたからだ」
「フラれたからって相手を嫌いにはならないだろ?俺は今もNASAを好きなままだよ。ただ…諦めただけだ。諦められないことのために 諦めることもあるんだよ」
「“諦め”――って ある意味では――“決意”に似てるよな」
(握りしめたんだよな オリガ…… “絶対”を)
(これが…ロシアのブルースーツ……ワッペン以外は大きな変化はないけど…気分は変わるもんだ)
(一生消えないなら 受け入れるしかない 内ポケットの不発弾も月まで連れて行く)
「初心を思い出してさ これはスイッチのさらに先にある“気合”みたいなもん “スイッチ”自体は――もう ずっと入ってる」
「宇宙飛行士としてダメになってた僕を 兄はフワッと救ってくれました 今度は僕が――兄を救いに行く番です」

プロフィール

南波ムッタの弟。
JAXA史上最年少で宇宙飛行士となり、日本人初のムーンウォーカーという記録を持つ。

小学生の時に兄弟でUFOらしき光を見て以来「自分は将来なんとなく宇宙に行く気がし」、宇宙に行くことを決意。自分の中に『絶対』を持って宇宙に向かい真っすぐ歩んできた。
約束をしたその日から兄ムッタも同じく宇宙飛行士になるのだと信じて疑わず、迷い立ち止まっていた兄を様々な形で引っ張っていく。

好きなスポーツは野球、高校時代はピッチャー。
体力づくりを兼ねてNASAには自転車で通い、訓練以外でもNASAの一角でキャッチボールをするなど常に体を動かしている。ロシアでももちろんヒビトは自転車を愛用。32kmくらいは近所だと、ロシアの街中を疾走する。

得意な楽器はギター。兄ムッタと共に、子どもの頃からずっとシャロンの元で音楽を楽しんでいた。打ち上げ前のバーベキューパーティーなどでもその腕前を披露しており、アメリカに行っても続けていたようだ。

宇宙船のアポロの「ロ」を省略した「アポ」というパグ犬を飼っている。
アポはブライアン家で飼われていた「ジェミニ」の子。ブライアン逝去後生まれた、左前脚にハートマークのある一匹をヒビトが譲り受けた。

明るく天真爛漫、天才に見られがちだが、その実誰よりも努力し苦労を周囲に見せずにいる。ただし基本的にはおおざっぱな性格で、細かい部分を面倒くさがる癖がある。マニュアルもあまり読まず体で覚える実践派。
NASAではサムライ・ボーイと呼ばれており、多くの先輩宇宙飛行士・同僚から親しまれていた。
誰もが憧れるJ兄弟の弟ブライアン・Jとは特に親しく、新人時代のヒビトの積極的な姿勢を買い、自身のバックアップクルーとしてヒビトを大抜擢し鍛え上げる。
連載開始時では既に宇宙飛行士として月に挑むところであり、兄ムッタが追いかける対象であったヒビト。
原作第一話より前の物語となるアニメ映画『宇宙兄弟#0小山宙哉Specail Edition』では新人としてまだ未熟なヒビトの訓練の様子や、NASAの同僚たちとの時間、ブライアン・Jとの日々、南波家の物語を観ることができる。小山宙哉監修、原作に続いていく物語なので未見の方はぜひご覧いただきたい。
T-38飛行訓練では兄と同じくデニール・ヤングに師事。初フライトでは何度も吐くも、もう一度乗せろと嬉しそうに言ったらしい。この訓練の成果か否かは不明だが、初の宇宙では既に宇宙経験のあるバディですら若干酔っている中、まったく宇宙酔いをすることなく楽しんだ。
月ミッションの最中クルーのダミアンと共にリッテンディンガー峡谷の谷底へと落ちる大事故に遭う。
ダミアンの宇宙服の体温調節機能の故障、ヒビトの宇宙服の酸素ボンベが破裂するなどの大変な命の危険にさらされる。本来は事故の場所で待つのが鉄則だが、通信ができず宇宙服が故障している状態では事故の場所から移動し脱出を急ぐしかない。
持ち前の前向きさと困難に向き合う強い心を持ち決して諦めないヒビトは、自分を置いていけというダミアンに必ず助けると誓い、共に無事峡谷から脱出。

JAXAから事故の報せを聞いたムッタは「ヒビトは多分じっとしていない」と脱出ポイントを予測。JAXAを通じてNASAに連絡が入るものの、“移動しない”という鉄則からNASAは元々の救出ポイントに向かっていた。

しかし先輩宇宙飛行士の吾妻が兄ムッタの提案を受け止め、自分が指揮すると酸素生成ローバー「BRAIAN」を向かわせる。
一方、谷からは抜け出したもののフレディたちの到着前に自身の酸素が尽きると悟ったヒビトは、満点の星空を見ながら谷底に落ちて死のうとしていた。
ところが視界の端に光るものを見つけ、それを確認してからにしようと光ったほうへと移動する。
ヒビトが向かった先で見たものは――ブライアンの最期の置き土産“ブライアン人形”だった。
ブライアンが、自分を呼び止めてくれたのだ。

一度は酸素が尽きたその時、吾妻が指揮する酸素生成ローバー「BRAIAN」が到着。一命をとりとめたヒビトは救助にきたフレディたちの前で立ち上がりピースサインをして見せた。彼の持ち前の明るさが、皆を笑顔にさせる。

自身が移動するであろう場所を予測して示してくれた兄ムッタ。
ムッタの予測を信じ、その場所へと「BRAIAN」を向かわせた吾妻。
死のうとした自分を呼び止めてくれた、ブライアン人形の持ち主・ブライアン。
自分の命を助けてくれたこの3人に、ヒビトは心から感謝するのだった。
月ミッションからの帰還後、CES-51クルーをモデルとしてTVアニメ「Mr.ヒビット」が誕生。世界各国で放送されている。
主人公のヒビットはヒビトがモデル。誰もがイメージするヒビトそのもので、明るく天真爛漫、勇気と元気を持っているウサギだ。

ところが――ヒビトは月面事故の影響でパニック障害を発症。宇宙服を着ると呼吸困難や冷や汗などの症状が出るようになってしまう。
大きな困難に立ち向かい、いつでも前向きに走り続けていたヒビトから笑顔が消えた。彼が初めて見せる苦しみは、読者にとっても大変つらいものだった。
それでも宇宙飛行士であることを諦めないヒビトは、バトラー室長には必ず復帰すると宣言し吾妻の紹介でパニック障害克服のためロシアに渡る。
ヒビトが世話になったのはロシアの英雄イヴァン・トルストイ。彼の父もまた、パニック障害で苦しんだ宇宙飛行士だった。

自分は宇宙飛行士失格だと苦しむヒビトにイヴァンは言う。「一人になるな」と。
宇宙服を着て歩く。その当たり前の感覚を取り戻すためイヴァンとヒビトの極秘訓練が始まる。「大事なのは“できる”という経験を得ること」。
こっそり見せてくれたイヴァンの娘オリガのバレエの成長記録。彼女の頑張りを知り、ヒビトは自分の気持ちを奮い立たせ、少しずつ少しずつ感覚を取り戻していく。
だが、現実は無常だった。
秘密は長く維持できず、NASA上層部の一存でヒビトは安全スーパーバイザーというデスクワークに飛ばされる。それは実質、飼い殺され二度と宇宙へは上がれないということ――。
安全スーパーバイザーとしてデスクワークや無意味と思える会議が続く日々。ある日アメリカに戻ったヒビトの元にイヴァンから大きな荷物が届いた。それはロシアでのリハビリに使っていた防具や衣装だった。ヒビトはローリー、オリビアの協力を経て再びリハビリを開始、遂に手ごたえを得る。
ところがいよいよ宇宙飛行士復帰試験の時間を作ってもらう直前に再び発作が起こってしまう。
ムッタにはずっと内緒にしていたヒビトだったが、自分をイヴァンに紹介してくれた吾妻や天国のブライアンからの言葉に、遂にムッタにパニック障害を告白。
驚いたムッタだったが、ヒビトにかける言葉は“本当の兄”だからこそ言えるものばかりだった。

ヒビトは心の中に“絶対”を持っているから。
今度発作が起きそうになったら「プリティ・ドッグめ」と呟け。
宇宙服は俺らの味方だ。
試験当日、兄から届いたプリティ・ドッグの“お守り”を身に着け、ヒビトは宇宙飛行士復帰の試験に臨む。
度重なる警告で不安になるヒビトに届いたのは、共に月へ行ったCES-51の仲間たちの声だった。月でのミッションを思い出しウサギのように飛び跳ね、楽しそうに試験を終えるヒビト。溢れる笑顔。

ヒビトは再び宇宙飛行士として歩みだせるだろう――誰もがそう確信した瞬間だった。
だがそんなヒビトに追い打ちがかかる。
NASA上層部はヒビトの宇宙飛行士現役復帰を了承することはなく、今後ヒビトにミッションが下される可能性はほぼないと決まった。その残酷な事実を告げられたヒビトは、誰にも知らせず長い間失踪する。
やがて『宇宙飛行士・南波ヒビト』であるために彼はある決断をした。

UFOらしき光を見たあの日から、宇宙飛行士になるべくロケットのように真っすぐに進んできたヒビト。パニック障害を克服するも現役復帰は叶わず、宇宙飛行士から遠ざけられ自身も死んだように生きるも、彼は再び前を向き宇宙への道を歩き始めた。
「月面で会おう。」
ヒビトからの連絡を待っていたムッタに送られたメール。
それはアストロノートからコスモノートに変わる決意をした、決して諦めないヒビトらしいメールだった。

ムッタが月へ向かう時には、こんなメールが届く。
「楽しいだろ?宇宙って。」

ヒビトはNASAを去り、新しい道へと飛び込んだ。
ロシアに渡ったヒビトにロスコスモスの室長ボルシュマンはイヴァン一家との接触を禁じる。その理由はヒビトが「客でも家族でもないから」。
その言葉に、ヒビトは考える。それは“ロシアにとって”という意味なのだろうか――。
ロシアでいちから宇宙飛行士を目指すヒビトの生活は、NASA時代から一変した。
新人宇宙飛行士が宿泊するアパート“プロフィ”は、星加曰く“小規模で貧相な暮らし”。
部屋は小さく狭い。蛇口から出るお湯は黄色く、テレビは砂嵐。
スマートフォンの通信が入る場所はベッドの角のわずかな空間だけ(しかもLTE!)。
引っ越しの挨拶で洗剤を渡しに行った隣人からは気味悪がられる。
とぼとぼと部屋へ帰るヒビト。
電話越しの母の「月へ行ったのにまだ“新人”なの?」という問いに、プロフィの小さな自室を見つめながら己に言い聞かせるようにヒビトは言う。

「まあ俺はNASAをやめたからね。やめて次に始める時は……やっぱり新人だよ。ここでロシアの宇宙飛行士として一からのスタートだ」

NASAとロシアは人の雰囲気がまったく違う。知ったつもりになっていた“ロシア”はイヴァンの一家だけだった。
食堂で一人過ごすヒビトに、一言だけ送ることを許されたというイヴァンからメールが届く。
「キノコと名乗ったからにはカゴに入れ。」
変な一言だったが、何を言いたいのか何となくわかる。
「コスモノートと名乗ったからには――」。

ヒビトはNASAと決別し、コスモノートとなる覚悟を決める。

よく考えたら一人で宇宙に行くわけじゃない。
ヒビトは積極的にロシアに飛び込んでいく。共に訓練を行うマクシムたちと食事をとり、会話をする。

ある晩、アパートの隣人であるマクシムとベランダで会ったヒビトは、なぜロシアなのかと尋ねられた。
ヒビトは自身のパニック障害を告白。それを聞いたマクシムはヒビトを酒に誘う。以来マクシムを中心にヒビトはロシアの同僚たちと酒を酌み交わし、会話をし、会うたびに少しずつ心の距離を縮め人としての温度を上げていった。
だが決してヒビトのパニック障害のことを口にしなかったマクシムに、ヒビトは信頼を寄せていく。

訓練は順調に進んでいった。
雪の中のサバイバル。ボロいバス。コスモノートとしての証明、氷の張ったスター湖への入水式。使わない釣り具セット。
伝統を重んじ、使える物は大事に使うロシアのローテク感。
仲間たちとの会話。

ヒビトは思い出す。
少年時代、同級生にからかわれ宇宙を諦め始めた兄の姿、兄の背中。
“侘しさ”“憤り”“諦め”。
けれど自分をかばい相手に頭突きしていった兄の姿を見て気付いたことがあった。
“諦め”は、ある意味で“決意”に似ている――。

NASAを許せないのではないかと尋ねるマクシムに、ヒビトは答えた。諦めきれないことの為に諦めることもある。
宇宙飛行士でいることを諦めない為に、ヒビトが選んだ道。

ロシアの宇宙飛行士が伝統的に行う“氷の張ったスター湖に飛び込む”ゲン担ぎ。口頭試問である適性試験に対する仲間たちからのアドバイス。
ヒビトは“ロシアの宇宙飛行士”として果敢に挑み、自然とメンバーの中に溶け込んでいく。

適性試験問題の「ひっかっけ」にひっかかってしまい、落とされるのではと焦ってしまうこともあった。そんなときヒビトはオリガの成長記録を見始める。
自分と同じ行動をしたオリガを見て、ヒビトは「そうだよな」と微笑む。

トルストイ4のメンバーを選ぶと言われたとき。
次の舞台の主役を選ぶと言われたとき。
二人とも「自分のことだ」と心の中でつぶやいた。“絶対”を握りしめて。

第二回の適正試験はユーモアを交え余裕で終了。ロシア人宇宙飛行士ですら挑むことを躊躇う者がいるスター湖の “本番”入水式も飛び込んだ。

個人面談で、ヒビトはボルシュマン室長からこんな言葉を受ける。
「過去のことは知っているが知ったことではない」
「選ばれなかったとしてもそれは君の過去のせいではない」

パニック障害があったとしても、それとは無関係に評価される――。その喜びに、ヒビトは嬉しそうに笑った。
そして最初に言われたこと――「客でも家族でもない」その答え合わせをする。

自分からロシアに飛び込んだので客としてもてなされる立場ではないこと。
家族ではないのは、ロシア人でもないよそ者なので、イヴァンのような英雄に世話になる境遇ではないということ。
ヒビトはそう答えた。だが一つ間違っているとボルシュマンは答える。

「まだ」家族ではない。

驚いた表情のヒビトに、ボルシュマンは続けてこう言葉をかける。
「私は… “言葉足らず”とよく言われる」。
ヒビトは嬉しそうに返す。
「俺も…同じです」

かくしてヒビトは、コスモノートになった。
ロシアの(ちょっとだけ色味の違う)ブルースーツを纏い、“トルストイ4”のバックアップクルーとして月面ミッション特別訓練のステージへと進む。

プロフィを出て“スター湖”の見える高層マンションの8階に引っ越してきたヒビト。マクシムも同じマンションの10階に引っ越し、新しい生活が始まった。
ヒビトがコスモノートになったことを祝し、オリガから手作りのターコイズネックレスが送られた。ターコイズは勇気と行動力をくれる“人生の旅の守護石”だ。
パニック障害でロシアを訪れた際には、笑顔で別れることが出来なかった二人。
太陽フレアの影響で“星の街”でもオーロラが見える夜。
それぞれの道を頑張ってきた二人は、お互いのプレゼントを身に着けてオーロラの下で笑いあう。

バックアップクルーとなったヒビトは久しぶりにイヴァンと再会した。
“宇宙飛行士の顔”をしていたヒビトを見て、イヴァンは嬉しそうに笑う。

再会の時間の中、ひょんなことからイヴァンとの腕相撲することになったヒビト。
もう少しで勝てそうだったところ、イヴァンがオリガの名前を呼び、ヒビトはその昔ながらの戦法に気を取られ負けてしまう。
“もう少しで勝てそう”だったその感触に、ヒビトは震える。

“人間力”は叶わないけれど、“腕力”でなら――。

何度も腕相撲をした大先輩、ブライアン・J。
イヴァンに勝てたのならきっとブライアンにも勝てたような…そんな気持ちが湧き出していた。

“トルストイ4”のバックアップとしての訓練をすべて終えた時、本当の意味でロシアの“家族”になれる。そう思い、自分の中でそう決めて、ヒビトは今日も訓練に臨む。
“絶対”を握りしめて――。

ヒビトがロシアで訓練している間、NASAの月ミッションには重大な問題が起こっていた。
太陽フレアの影響でCMEが起こり、月面基地が停電してしまったのだ。

月面ミッションアクシデントは次から次へと起こる。
ベティの大怪我、それによるクルー四名の緊急帰還。前ミッションのオリオン帰還船の故障により、天文台建設組の二名の帰還船がなくなってしまったこと。
CMEが再び襲い掛かろうとしている危険な状況の中でリスクを冒して帰還船を打ち上げることにアメリカ政府は反対する。
天文台建設組の二人を無事に帰還させるにはどうしたらよいか――NASAはロシア、そしてJAXAと協力し二人を帰還させるためのミッションを立ち上げた。
ロシアの帰還船を譲り受け、日本のロケットで日本から打ち上げ、アメリカのミッションコントロールにより月に残っている二人の宇宙飛行士を地球に帰還させるというもの。国を超えたこの協力体制は、史上初の試みである。

ロシア上層部はこのレスキューミッションを行うため、本来先に月へ行くはずだった“トルストイ4”のメンバーを総入れ替えすることを決定。そのミッションには若き宇宙飛行士であるマクシム、フランツ、そしてヒビトが選ばれた。この若きメンバーに加えベテランの吾妻がクルーとして加わり、チームの名は“マクシム4”と名付けられた。
上層部の意向は“月面経験者”が二人いること。ロシア機はもちろん、NASAのオリオンやビートルなどの実践経験があるヒビトは適任だ。

急なアサイン、吾妻と同じチームにいること、ムッタのいる月へ行くこと。ヒビトはワクワクしすぎて緊張しているが、まだイメージが追い付いていなかった。

バレエの名門校に挑戦するオリガと再会したヒビト。狭き門へと挑戦する彼女は、パニック症を乗り越えて月に挑戦するとんでもない人を知っていて、それに比べれば何でもないことだと言う。
打ちのめされるかワクワクするかは自分で選べばいい。ワクワクしながら挑戦するよ、私――。
オリガの言葉に、笑顔で「うん」と答えたヒビト。
かつて笑顔もなく別れたガガーリン像の前で、あの日聞けなかったガガーリンの言葉の“正解”を尋ねた。
「地球は青かった」ではなく「地球は青いヴェールをまとった花嫁のようだった」。
次に地球を見たらヒビトは何て言うか、そう聞くオリガにヒビトは答える。
「次はたぶん…オリガを思い出す」

ヒビトは今も自身のパニック障害と向き合い続けている。
発作は宇宙飛行士復帰試験直前の雨の夜以来起きてはいない。だが不発弾が埋まっているような感じは未だに持っている。
一人バスタブに潜り、あえて思い出してみる。月で酸素がなくなった時のことを。“一人の時”に息ができなくなった状況も発作の原因の一つらしいから。

一生消えないかもしれない不発弾。けれどクルーの皆は自分を受け入れてくれている。
訓練中集中しているし、PDのことも忘れている様子だから大丈夫、とフランツが言う。
船外活動中一人になることはまずない、だから心配しなくていいだろう、と吾妻が言う。
見張っていないとすぐフラッとどっか行くぜ、とマクシムが言う。

皆が受け入れてくれるように、自分も受け入れよう。
内ポケットの不発弾も月まで連れて行く。ヒビトは月を見上げ、そう決意する――。

より“月面”が再現されている『ワイヤー吊り下げ訓練』。臨場感にこだわった“月面”にヒビトの心がドクンと打つ。
懐かしい “月面”を見つめたヒビトの表情は穏やかだ。足元の感触を確かめ、宇宙服を着る彼は楽しんでさえいるようだった。
ふと隣に感じる兄ムッタの姿。ちょうど今頃船外活動をしているだろうムッタを想う。
“月面”のイメージが追い付く。

ムッちゃんが待ってんだ…
行くんだ 俺も
月に行くんだ

様々なケースを想定しレスキューに特化した訓練を行ってきた“マクシム4”のLPK-29の記者会見が始まった。
かつてNASAで記者会見したときのように、ヒビトは堂々とした姿で会見に臨む。

今 月にいるナンバ・ムッタ飛行士のご兄弟だそうですが お気持ち・意気込みをお願いします――記者からの質問にヒビトは答える。

「宇宙飛行士としてダメになってた僕を 兄はフワッと救ってくれました 今度は僕が――兄を救いに行く番です」

宇宙兄弟が、始まる。