南波 六太 | 『宇宙兄弟』公式サイト
なんば むった
南波 六太
NAMBA MUTTA
所属
NASA CES-66
“ジョーカーズ”
JAXA宇宙飛行士
嫌いなモノ・苦手なこと
弟の悪口
弟の悪口
誕生日
1993.10.28
サッカーワールドカップ予選敗退の「ドーハの悲劇」の日生まれ
サッカーワールドカップ予選敗退の「ドーハの悲劇」の日生まれ
出身地
日本・東京都出身、実家はたけのこニュータウンにあった。 両親はセカンドライフをするためたけのこニュータウンから車で1時間ほどの郊外へ居を移す。 ムッタ本人は現在アメリカ・ヒューストンに在住。
日本・東京都出身、実家はたけのこニュータウンにあった。 両親はセカンドライフをするためたけのこニュータウンから車で1時間ほどの郊外へ居を移す。 ムッタ本人は現在アメリカ・ヒューストンに在住。
身長
181cm
ヒビトより1cm小さいことがちょっと気になる
ヒビトより1cm小さいことがちょっと気になる
家族構成
父 長介、母 真弓、弟 ヒビト、アポ
父 長介、母 真弓、弟 ヒビト、アポ
略歴
ミラクルカーコーポレーション入社。進行中のプロジェクトがボツになり梅茶菓支店へ出向、梅茶菓支店メンバーとグッドイカスカー賞を受賞、本社へ戻る。
上司への頭突きをしてミラクルカーをクビになったのち、宇宙飛行士選抜試験を受け合格。アメリカに渡り数々の訓練を経て宇宙飛行士に認定、ビンスらのCES-62の打ち上げではキャプコムを務める。
CES-66ジョーカーズの一員として遂に月へ。日本人4人目のムーンウォーカーとなる。月面で転んでしまい、人類初の月面第一「手」を残した。
月の地下空洞であるカルロム洞窟を発見。
ジョーカーズとして様々なトラブルを乗り越え、シャロン天文台建設のミッションを完遂。フィリップと共に月に残り、NASAとロスコスモス、そしてJAXAの協力を経てヒビトらと合流し、月面で様々なミッションを遂行。遂に地球帰還の日を迎えるが――?
ミラクルカーコーポレーション入社。進行中のプロジェクトがボツになり梅茶菓支店へ出向、梅茶菓支店メンバーとグッドイカスカー賞を受賞、本社へ戻る。
上司への頭突きをしてミラクルカーをクビになったのち、宇宙飛行士選抜試験を受け合格。アメリカに渡り数々の訓練を経て宇宙飛行士に認定、ビンスらのCES-62の打ち上げではキャプコムを務める。
CES-66ジョーカーズの一員として遂に月へ。日本人4人目のムーンウォーカーとなる。月面で転んでしまい、人類初の月面第一「手」を残した。
月の地下空洞であるカルロム洞窟を発見。
ジョーカーズとして様々なトラブルを乗り越え、シャロン天文台建設のミッションを完遂。フィリップと共に月に残り、NASAとロスコスモス、そしてJAXAの協力を経てヒビトらと合流し、月面で様々なミッションを遂行。遂に地球帰還の日を迎えるが――?
初登場
#1~

words言葉

11巻
11巻
#107

本気でやった場合に限るよ。本気の失敗には価値がある。

11巻
#107

俺の敵はだいたい俺です。

17巻
17巻
#165

宇宙服は俺らの味方だ

16巻
16巻
#157

ちょっとだけ無理なことに挑戦してこーぜ

19巻
19巻
#185

今のあいつは俺から見れば最強の宇宙飛行士です

21巻
21巻
#199

言葉での説得が難しい人には──やっぱり行動で訴えていくしかない

21巻
#203

これを発表したら 俺らの任命(アサイン)は帳消しにされるかもしれねーけど
それでも……あれだ…… ISSは俺らで守ろう

24巻
24巻
#232

「ねえ シャロン……この先また怖くなっちゃったりして “生きる意味”とかに迷っちゃってもさ 最後には必ず “生きる”ことを選んでよ。生きてて欲しいんだよ」

25巻
25巻
#233

「約束……果たしてくる」

26巻
26巻
#249

「なんだか……弟に会えた気分です」

29巻
29巻
#271

「俺は大丈夫だよ。そのためにここに来たから」

31巻
31巻
#295

「できれば俺が月にいる間に『完成したよ』――って シャロンに伝えたいんだよ俺から」

32巻
32巻
#297

(大それた使命感に囚われるな 俺のやっていることが…世界の為になるかどうかは――「結果」だ 「結果」でいい――俺はただ―― 一人を思ってやればいい)

33巻
33巻
#312

「決めるなら――“意志の強さ”で選んで欲しい」

35巻
35巻
#327

「俺たちもそれでいいんだよ 自分のやってることの“意味”を探す必要はない 
やったことの結果が誰かの“意味あること”になればいいんだ」

35巻
#329

「感じていたのは 心の“ブクブク”だ」

38巻
38巻
#357

(“元々の運動神経”とか…“才能”だけで片付けちゃだめだよな 紫さんが舞台で活躍できるのは 誰よりその準備ができているから フェイクに見せて “本物”だ)

40巻
40巻
#375

「地球ができて生命が誕生したのが“奇跡”ってことは それ以降に起こったことも 全部“奇跡”ってことだよな」

40巻
#376

「もう…なんて言っていいのか…宇宙に来てからずっと…地球を眺めるたびに――関わって来たたくさんの人たちに“仲間”以上の何かを感じていたんですけど日々人と再会して…そして『マクシム4』に出会えてその気持ちが何か分かりました――We are “Space brothers”(僕たちは“宇宙兄弟”です)」

41巻
41巻
#381

「ああ ありがたいことだよ “最高のこれから”があるってのは」

42巻
42巻
#387 

宇宙飛行士も天文学者も医者も科学者も開発者も きっと目指す先はそうなんだ “未知にピントを合わすこと” 私たちはそんな仕事に携わってるんだ 地球に帰ったら日々人と会いに行くよシャロン もうすぐ帰る

43巻
43巻
#396

私もだ 火が消えたとわかった瞬間から――鼓動が聞こえてきて…そう思った「まだ生きてる」

43巻
#398

「みんなが納得してくれるなら 俺と日々人でソユーズに行くよ」

profileプロフィール

主人公。初登場時31歳、シャンプーがよく泡立つモジャモジャ頭。日本人最年少宇宙飛行士であり日本人初のムーンウォーカーである南波ヒビトの兄。
好きなスポーツはサッカー、得意な楽器・トランペット。料理はヒビトよりうまい。
尊敬している人物として天文学者・金子シャロンの名を挙げている。



<弟コンプレックスを抱えたネガティブな日々>

12歳の時にヒビトとUFOのような光を発見。
その光を見た南波兄弟は一緒に宇宙へ行く約束をするも、兄であるムッタの方はいつの間にか宇宙飛行士になることを諦めて過ごしてきた。
アニメ映画『宇宙兄弟#0』では原作第一話の前日譚が描かれており、自動車の設計に携わり出向先で出会ったメンバーとともに新世代の自動車を提案する“グッドイカスカー賞”を受賞するなど輝かしい受賞歴もある。
しかしヒビトの悪口を言った上司に頭突きしクビになってしまう。

退社後しばらくフリーターとして過ごしていたが、ヒビトと母の計らいによりJAXAの宇宙飛行士選抜試験に(いつの間にか)応募され書類審査を通過。
どうせ自分なんかと何度も思いながらも、目的を同じくする仲間との出会いや小さい頃から自分を見守ってくれたシャロンの応援を受け無事合格。

うまくいかない事を何かと「ドーハの悲劇」生まれのせいにし優秀な弟と比べ常に自己評価が低くネガティブ思考だったが、その発想力やハッタリは時に周囲をハッとさせ、本人も意識しないさりげない気遣いと優しさで周りを助けていることも多い。

宇宙飛行士選抜試験合格後様々な訓練を経て、自分が今置かれている状況や何か求められているか何をすべきかを理解し解決するため、前向きな発言や行動ができる人になっていった。

試験中に出会った真壁ケンジとは歳が同じということもあり意気投合、唯一無二の親友である。また閉鎖環境試験で出会った仲間たちはお互いにとって一生の友人である。



<信頼される人柄と培ってきた技術力>

場を和ませようとハッタリをかますこともあるため周囲に誤解されることもあるが、南波ムッタと深く関わった人たちは彼に厚い信頼を寄せている。
無茶を突き付けられた時にも何とかしようと考え、動く。より良い方向へ行くため希望を現実にする為の道を模索し、可能な限りの方法を生み出していく。そんな彼の周囲には自然と人が集まるのだ。

また、工学部出身で自動車開発に関わっていたことから技術方面も得意で様々なアイデアを思いつく。その実行力で周囲を驚かせ、技術者たちからの信頼も厚い。
技術者寄りのムッタの考えはピコとビンスの幼馴染であるリックにも通じる部分があり、ピコとビンスとはムッタを気に入り一緒に飲む仲となった。

宇宙飛行士選抜試験から同僚である伊東せりかに淡い恋心を抱いている。
一度NASA側からISS行きを提案されたムッタ。しかしムッタはせりかがどれほどISSに人生をかけているのかを近くで見て知っていたため、譲れるものなら彼女に席を譲りたいと申し出た。
同時期、一度はアサインされたはずの月ミッションが“ジョーカーズが新人だらけ”という理由で別チーム“ボルツ”に渡ってしまう。
アサインを奪還するには“ボルツ”とISS廃止署名を競うようゲイツに指示されるが、せりかのISSへの情熱を知っていたムッタは自分たちのアサインがなくなっても「ISS存続のための署名」を集めるために尽力。

やがてせりかもムッタの好意に気付き、徐々に意識し始め少しずつ距離が縮まっている。



<自分を見守ってくれたシャロンとの約束>

小学生の頃、ヒビトと二人でシャロン天文台を訪ねた頃からの長い付き合いであるシャロン。
英語を始めたくさんのことを学び相談しており、ムッタとヒビトにとってはもう一人の母のような存在である。
シャロンの夫である金子博士が見つけた小惑星“シャロン”の姿を見るため月に望遠鏡を建てたいという夢を持つシャロン。少年時代のムッタはその夢を自分が叶えると約束した。

数多くの挑戦と様々な困難を乗り越えて宇宙飛行士となったムッタは、シャロンの夢を叶えるため月行きを目指す。
シャロンがALSにかかってからはその想いが更に強くなり「誰よりも早く月に行ってシャロン天文台を建てる」べく奔走。その努力と情熱で、一度はなくなりかけた月ミッションへの切符を手にし、遂に月面へと降り立つ。


月面での天文台建設作業が進む中、天文台に必要なパラソルアンテナが消失。アンテナを捜索するなかで月の地下空洞を発見する。
カルロと一緒に見つけたその洞窟は「カルロム洞窟」と命名された。
第一発見者である自分の名前が「ム」しか入っていないことがちょっぴり不服だったムッタだが「ムッタさんの名前が入っている」というせりかの言葉で笑顔になるのだった。

その後も天文台建設は様々なトラブルに襲われる。
翌日のミッションで接続するため月面に出しっぱなしだったスーパーコンピュータ“SHARON”。磁気嵐の影響でただの箱になる可能性がある。ムッタとエディはリミットの12時間以内に基地まで運ぶため、ともに“SHARON”へ向かう。
同じ “兄”同士であるムッタとエディは、このミッションでたくさん話をした。

天文台は自分たちのミッションで管制できる筈だった。しかし太陽フレアの影響は容赦なく襲い掛かり計画の変更を余儀なくされる。
月面の滞在日数の延長、船内での活動の決定――。ヒューストンから伝えられる内容に、天文台完成は間に合わないのではないかという不安がムッタの頭をよぎる。
ビンスは計画変更による悪い点を伝えるとともに、滞在日数が延長されることで天文台を完成させられる可能性が出てきたことも伝える。ヒューストンは最後までやり通すつもりであることも。
宇宙行き延期よりも地球行き延期の方が辛いだろう。ビンスが配慮した「伝える順番」。天文台完成の目標ができたことで、ムッタの士気があがっていく。



<いつの間にか『皆の夢』になる>

だが想定外はまだまだ起こる。
太陽フレアによる放射線の次は、過去最高レベルの大量のプラズマ放出だ。

月面基地は停電。バックアップがすぐに動いたものの再び停電。
「もしものもしものもしも」まで想定されたマニュアルで訓練を続けていたジョーカーズは、非常事態を受け入れ冷静にやるべきことを行っていた。

非常灯で過ごす月面基地。修理ができるタイミングを待つムッタとフィリップ。
シャロン天文台についての情報を眺めているムッタに、フィリップは尋ねた。

「シャロン天文台 やっぱ完成させたい?」
そりゃそうだよ、と即答するムッタ。
なぜなら、自分が宇宙飛行士になった一番の目的だから。
もちろん次のチームが終わらせてくれればそれでよいけど、できれば自分が月にいる間に「完成したよ」と伝えたい。

笑顔で話すムッタの言葉を聞いて、フィリップは「ムッタの夢を俺の次の夢にしよっ!」と決める。
『シャロンの夢』であった月面天文台。『ムッタの夢』『天文学者の夢』となり、それが仲間の夢になる。
少年ムッタとシャロンが交わした夢は、いつしか『皆の夢』となっていた。

放射線量の影響が低くなり待ちに待った天文台ミッション再開の日がやってきた。
ムッタ、フィリップ、アンディの3人は天文台建設地へと向かう。

再開はソーラーパネルの設置から。やっていることは、電気工事士のような仕事。
けれど舞台のせいか衣装のせいか――なにかとんでもない、それこそ世界を救うような…そんな大それた使命感を感じかけたところで、ムッタはとどまる。

大それた使命感に囚われるな
俺のやっていることが…世界の為になるかどうかは――「結果」だ
「結果」でいい――
俺はただ―― 一人を思ってやればいい

3日かけて交代でソーラーパネル設置とケーブルを接続。
天文台の中心にスーパーコンピュータ“SHARON”を設置し起動させれば、いよいよシャロン天文台は完成となる。

太陽フレアが落ち着いてからのミッションは概ね順調に進んでいた。
再び太陽活動が活発になり始めたため、フレアの影響を強く受ける前に帰還することが決定。残り5日間で天文台を完成させる。すべてが急ピッチで動き出した。



<予期せぬ大事故>

このCES-66ミッションで、エディは生涯最後の船外活動となる。
最後はムッタ、エディ、アンディの3人でスパーコンピュータ“SHARON”を設置すること。移動中、空気を読まないブギーが「最後の船外活動はどんな感じか」をエディに問うた。
「これが最後かもしれない」と思いながらやってきた。いつもと変わらない、と答えるエディ。
「お疲れ様――エディ」。
エディの姿を見つづけ、最後の船外活動を共にしたムッタは、エディにそう声をかけた。

ムッタとフィリップが引き続き天文台建設ミッションを進めている一方、月離脱ステージ「ライブラ」の様子がおかしいという報告を受けベティとカルロは様子を見に行く。
亀裂の入っていたライブラは破裂し、それによりベティが大怪我を負ってしまう。
カルロが執刀した緊急手術により一時的に乗り越えたものの、ベティが大変危険な状態であることは変わりない。

帰還予定日まで1日を残し、アメリカ政府とヒューストンは「ベティの命を最優先」のためベティ含む四名を緊急帰還、成果を残すため「天文台を完成させる」二名を月に残すことを決定した。



<ジョーカーズの別れ>

誰が月に残るか?
ベティとカルロを除く四人全員が挙手。そこで更に高く手を挙げたムッタとフィリップ。
残りの天文台建設に誰が適任であるかを考えたら、答えはもう出ていた。

「俺ら2人が残るんだ」。
ベティの事故を聞き基地に帰還するビートルの中で、二人はそう決めていたのだ。

決めるなら、“意志の強さ”で選んで欲しい。さっき挙げた、“手の高さ”で。

月面に残るのはムッタとフィリップに決まった。

残ったムッタはエディからコマンダーを任される。
それはムッタと共に月面に残りムッタを全力で応援すると決めたフィリップたっての願いでもあった。
エディが身に着けていたコマンダーとしての“印”。アポロ11の時バズ・オルドリンガ着けていたのと同じ時計を渡されたムッタは、エディと約束を交わす。
「地球に帰って必ず返せ――約束だ」

「どこにいようと最後の最後まで――俺たちは“ジョーカーズ”だ」
四人は地球へ向かう。
月面にはムッタとフィリップ、そしてブギーだけになった。



<くたびれた>

天文台建設はラストスパート。
だが、電力不足という表示と光らないアンテナ。原因不明のため一度基地に戻るよう指示されるムッタとフィリップ。

「今日で終わる」
そう思っていたところで、どっと疲れてしまった。
「くたびれた」
思わずそう口に出そうになったが、ムッタはぐっと飲みこむ。

言わねえぞ
このミッションが――シャロンとの約束が――ちゃんと全部光り輝くまで「くたびれた」とは言わねえぞ

口には出さないものの、ムッタとフィリップは空も見えないのに天を仰ぐ時間が多くなった。ベティの状態や帰還組への想い、太陽フレアや帰還への不安。そんなものが頭をよぎる。

そんな中帰還組からISSでベティの手術が行われたこと、ベティの体がもう心配なくなったことがエディから伝えられた。
二人はジョーカーズの不安が一つなくなったことに喜び。久しぶりの船外活動にもテンションがあがった。
また、二人が感じているであろう様々な不安を払しょくさせるように、地上で公表されている内容や帰還準備のことを淡々と伝えるビンス。
その無表情が、こんな時こそ優しいとムッタは感じた。

ムッタとフィリップの帰還のため、地上ではアメリカ、ロシア、日本、三カ国が合同となる史上初のミッションが進む。そのミッションで打ちあがったロケットには、かつて一緒に試験を受けた福田の尽力もあった。

天文台建設は今度こそ本当に最後の時に向け途方もない作業をする二人。フィリップの「これって意味あんのかな」に、ムッタは福田の話をする。

自分たちを助けるために日本のロケットで打ち上げられたソユーズ。
初の試みに相当なプレッシャーがあったであろうこと。
そのための途方もないチェックを一つ一つやったであろうこと。
その結果自分たちが助かるから、福田さんの仕事はすごく意味のあったこと。

俺たちもそれでいいんだよ
自分のやってることの“意味”を探す必要はない
やったことの結果が誰かの“意味あること”になればいいんだ

それは殆ど自分への言葉だった。意味など探すな、自分が楽しんだ結果喜ぶ人がいる。これ以上のことがあるか…?これが、私の天職だ――!

最後の調整を終え、ムッタとフィリップはお互いの仕事をたたえ合った。

私たちが来なければ ここは暗闇だった。私たちが来なければ ここは動かない景色だった。“シャロン天文台”という私たちがここに来た証を点灯します。

月面のパラソルアンテナのすべてに光が灯る。
思わず目を閉じてしまうほどのまぶしい景色。
シャロンとの約束が、遂に果たされた瞬間だった。

「くたびれた――」

誰が見てもハッピーエンドなこのシーン。
地上にいるシャロンを思いながら、ムッタたちは基地へと帰る。
ビートルに乗る前、振り返り天文台を眺めたムッタは、不思議な気持ちに包まれていた。
約束を果たした安堵感だけではなく、“ザワザワ”したような“ワクワク”したようなそんな感じ。ワクワクを超えて、心が“ブクブク”したんだ。


天文台完成を受けてシャロンから届いた動画は、ムッタの肩を震わせ、目頭を熱くさせた。
辛い現実が悩ませたでしょう。
だけど、少年の頃の夢のまま約束を叶えてくれたことが本当に嬉しいこと。
必ず帰ってきて、もう一度笑顔を見せてほしいこと。ついでにハグもして欲しいこと。
天文台の夢を叶えたムッタに、シャロンとの新しい“約束”が交わされた。



<再び宇宙飛行士としてそこにいる弟>

地上と月面で帰還の準備は進むものの、試練は続く。
だが今が耐え時であるとも知っている二人は、できることを進める。
ある日ヒューストンからの連絡に、ムッタは驚きの光景を目にする。
自分たちを救うためのミッションのためロシアで組まれた“トルストイ4”。
そのクルーにはかつて弟を救ってくれた吾妻、そして弟ヒビトがあった。

「宇宙飛行士としてダメになってた僕を 兄はフワッと救ってくれました
今度は僕が――兄を救いに行く番です」

画面の向こうには、当然のように“らしい”ヒビトがそこにいた。

天文台建設という大きな目標を終え “やりきった感”で次への意欲を失いかけていたムッタ。しかしヒビトが来る知らせに、小さな火種が燃える音が聴こえた。
ゴールラインは、次へのスタートラインだ。

ジョーカーズ帰還組四人は無事地球へ。それは「自分の一部がちゃんと地球に還った感じ」であり「自分の一部がまだ月に残っている…」。
ジョーカーズはまだ誰も“卒業”できてないままなのだ。



<たくさんの人々の想い>

地球への帰還を待つムッタとフィリップ。
救援物資が乗ったルナランダーが遠い位置に着陸してしまったため、ヒューストンでは二人の長距離移動をサポートする「タイガーチーム」が作られた。
ビンス、ケンジ、新田が希望し、険しい道をどう走れば良いか何度も何度もシミュレーションを重ねた。通信で久しぶりに再会したムッタは、画面の向こうのケンジと固い握手を交わす。
そして遂に示されたルナランダーまでのルート。友が示してくれたその道を信じ、ムッタとフィリップは月面基地を出発した。
中継地では先輩宇宙飛行士・紫三世が仕掛けた2年越しのイタズラに驚かされたりしながら、ムッタとフィリップは順調にルートを進んでいく。
月面での遠隔作業を可能とするために、紫はどれほど準備してきたのだろうか。イタズラっぽい面だけでなく、元々の運動神経や才能だけで片付けてはいけない。
ムッタはそんな「フェイクに見せて、“本物”」な先輩に想いを馳せた。

ルナランダーのハッチを開きまずムッタが目にしたのは、自分たちを支え応援してくれる人々からのメッセージが書かれたバナー。
NASAから、JAXAから、スイングバイ――多くの人々の言葉がムッタの目に飛び込む。
ムッタとフィリップを地球に帰すため動くたくさんの人々の想いが、帰還への道をひらく。

<国境を超えて…史上初の試み>
月面で共にミッションにのぞむ仲間がいる。
地上で応援し力を尽くしてくれる管制チームがいる。
ヒューストン、JAXA、ロシア。国を超えて、多くの力が結集する。


ロシアからマクシム4が打ちあがった。
地球に向かうヒビトの様子が月まで届く。ヒビトの嬉しそうな表情に、ムッタまで嬉しくなってしまう。

ヒビトとの1年半ぶりの再会の日。
今まであったこととか何もなかったような顔をして、当たり前のように家のように扉を開ける――そんなヒビトの姿が見えるような気がした。

月面着陸を待つ。
だがロシア側のなんらかのトラブルにより通信が遮断。ヒビトたちの様子がわからなくなった。地上側は原因と復旧を急ぎ、マクシム4は手動で着陸するだろう。

予定場所に先行させたギブソンのカメラでは着陸が確認できなかった。
その日の作業を終えたムッタは自分たちも向かうことをヒューストンに提案。酸素生成装置のブライアンも共に向かわせる。
しかし…そこにもヒビトはいなかった。

ムッタとフィリップは二手に分かれ、アンテナを使い着陸船の電波を探す。
電波をとらえた方向へ、歩みを進める。
昔ヒビトとした会話を思い出しながら。

宇宙雑誌を読んでいた小学生のムッタは、地球ができて生命が誕生する確率がどれほど奇跡的なことであるかを知る。
「地球ができて生命が誕生したのが“奇跡”ってことは それ以降に起こったことも 全部“奇跡”ってことだよな」

ヒビトは言った。
自分とヒビトが兄弟になったこと、宇宙を好きになったこと。
今まで自分たちに起こったこと。月で会うこと。そのすべてが。
「まあどっちでもいいんじゃない?奇跡かどうかは」

“必然”と考えればそれもそう。だからどちらでもいい、会えるなら。
宇宙飛行士となったヒビトも、小学生のあの日と変わらない答えを言う。

雑音とともに、よく知っている弟の声が聞こえる。
降り向かえば、後ろから歩いてくるヒビトの姿がある。
兄弟は、遂に月で再会を果たした。

今の心境を尋ねたビンスに、ムッタはこう答えた。

もう…なんて言っていいのか…
宇宙に来てからずっと…地球を眺めるたびに――
関わって来たたくさんの人たちに“仲間”以上の何かを感じていたんですけど
日々人と再会して…そして『マクシム4』に出会えてその気持ちが何か分かりました――We are “Space brothers”(僕たちは“宇宙兄弟”です)



<60年後も続いていることを願って>

マクシム4を新しい基地へ案内するムッタとフィリップ。
終始嬉しそうに、そして懐かしむヒビトを、ムッタも嬉しそうに見つめる。
歓迎会を行い酒を酌み交わす。

地上との通信で家族も再会だ。
「存分に楽しみ直せよ」
父の言葉、マクシム4のワクワク感。
地球が恋しくなっていたムッタだったが、もう一度月を楽しみ直す。


帰還が最大の目的だが、せっかくの月だ。NASA、ロスコスモス、そしてJAXAが調整して月面の“水資源調査”が行われることになり、ムッタはEVAの指揮をとることとなった。

アポロ月面着陸から60周年。
60年後、月面でNASAクルーとロシアクルーが合流した。
日本人飛行士であるムッタの言葉を、NASAのエルドン長官は宇宙開発における世界共通の合い言葉として残したいと各国のリーダーと話し合い、シンボルマークを作った。
ケーキ形の模様は一つのpiece。“世界各国”や“我々一人一人”を表している。
“We are Space brothers”。
60年後も続いていることを願って――。



<兄弟一緒のミッションと大発見>

クルーが揃い、帰還準備と同時に新たなミッションが加わった。
それは月の水資源調査だ。

ムッタがコマンダーとなり、ヒビト、マクシム、フランツの四人はカルロム洞窟へ向かう。

発作のことをすっかり忘れているであろうヒビトは、テンション高く洞窟を進んでいく。
まるで小学生の頃の兄弟がそのままいるかのようにムッタとヒビトは「どちらが先にキラキラを見つけられるか」競争を始めた。

通信が途切れるほど奥まで進んでしまったヒビト。胸の奥の不発弾が動き出しそうになったが、すぐに追いかけてきたムッタによって不安はすぐに吹き飛んだ。
兄ムッタは、この日もヒビトの背中を照らしてくれたのだった。

「そういえばさ ムッちゃん 二人でこうやって同じ任務(ミッション)してるって “初”だね なんか不思議な感じする…」
その言葉に、ついこの前までは気配だけを感じていたヒビトが隣にいて同じミッションをしていることに“ようやく並んだような”ことを感じるムッタだった。

2029.7.23カルロム洞窟。ヒビトが見つけた「キラキラ」の部分の岩石を採掘し、自分たちがここに来た印を残した四人は洞窟を後にする。


採掘したサンプルの岩石に水資源があるのか否か、期待が高まるなか月面基地で測定が開始。なんとヒビトが見つけたポイントの岩石から少量の水が発見される。
この大発見に世界が沸いた。
今回発掘したサンプルの中に含まれる水の量はおよそコップ半分と推測される。その日の夕食は水で乾杯だ。

水の貴重さを改めて実感したクルーたちはちょっとずつ大切に飲む中、ヒビトだけは遠慮なく水をゴクゴクと飲む。そして机にこぼす。
それを見たムッタは呆れてツッコミをいれるが、そのやりとりがとても兄弟らしくて面白い。



<月との別れ、兄弟の思い出>

とある配信の中で、南波兄弟は自身の名前の由来について語っている。
月に来られるまでの期間を考えると、二度目の月は短期滞在であっという間だ。
その分濃密で楽しい日々を過ごしている。
自分の名前の“日々人”は多分そんな意味。 “日々を生きる人”的な。
この話を聞いたムッタは「そんないい感じの意味だったの?」と驚き、自分なんて当時雑誌に載ってた父ちゃんのラッキーナンバーの“6”からきてる、と語る。
そんな兄弟のやりとりを、南波父と母は嬉しそうに見守っていた。

そして遂に月面船外活動ミッション最後の日。しばらく無人になる月面基地には次に来るクルーのためにしておく作業がたくさんある。
タンク圧をあげる作業では、ベティの事故のこともよぎってか慎重に進めるムッタ。しかし終わらせたくなくて時間をかけてるように見える…マクシムからそう指摘され、ムッタは「終わらせたくない」と思っていた自分がいたことに気付く。
どんどんやっちゃおうと提案し声をかけてきたヒビトの笑顔を見たムッタは気持ちがスッキリしたのか、残りの作業をどんどん進めていく。

続いて南波兄弟はシャロン天文台の無人化とメンテナンスへ向かう。
パラソルアンテナの光に興奮するヒビト。これだけのものをやりとげたムッタの日々を思い出し熱くなる。相当達成感あるよな、いいなあ自分も関わりたかったなあと思いを馳せる。
そんなヒビトの様子を察してか、ムッタはパーツ交換をヒビトに任せる。
作業の様子を撮影していることに気付いたヒビトはシャロンに向けてのメッセージを残した。
「シャロ~ン 見てる?俺も”シャロン天文台”のメンテをやったよ~ イエ~イ」
弟の嬉しそうな顔を見て、兄ムッタは静かに微笑む。

基地への帰り道。ムッタはまだなにかやり残していることがあるような気がしていた。
ヒビトがふっとローバーを停め、「一緒に写真撮ろう」と三脚を取り出した。
並んで撮った写真がなかった。
二人は自転車旅をしたあの京都の夏の日のように、思い出を記録した。
忘れていたものはこれだったのか。
ムッタの中でやり残していたものがこれで全て完了した。
ヒビトがNASA時代に置いていったUFOのディスクも回収し、和気あいあいと食事の時間が終わった。月面最後の晩餐はムッタにとって一生の思い出になった。



<襲い掛かる困難と勇気>

そして帰還の日。
来たきたときよりも美しく。
閉鎖環境試験のときのようにキラキラに掃除を仕上げたムッタは、懐かしそうに基地を見渡す。
月面の風景を目に焼き付ける。長く一緒にいたブギーとの別れを済ませ、最後にもう一度月面の風景を目に焼き付けて静かにそっと呟いた。
「さよなら」

メドヴェージにのりこんだクルーたち。
帰還に向けザワザワと賑やかな船内で、マクシムがふと「同じ風景でも2通りの見え方があると祖父に教わった」話をした。
初めてその場を見た時の好奇心と不安が混ざったような“胸騒ぎの風景”。
そこで過ごして見慣れた“安心の風景”。
祖父が言うには安心の風景の中にいても、胸騒ぎの風景として眺めることができる。
なんとなく理解したムッタは、打ち上がったメドヴェージからじっくりと月面を眺めた。

「もう帰るってのに――来た時みたいに胸が騒ぐな…」


帰還船オリョールとのドッキングも成功。しかしオリョールに乗り移るためハッチを開けた吾妻に火の手が襲い掛かる。オリョールはドッキング前に火災が発生していたのだ。
通信障害が発生し地上との連絡が取れない中、クルーたちは即座にハッチを閉める判断をする。指を挟んだ吾妻に替わり、ムッタとフィリップがハッチを閉じる。
すぐ火を消す必要があるが、地上側で空気を抜き消火を行うかもしれない。
通信ができない中、どう動けばよいか…。
「消火器は出したよ 俺はすぐ行ける!」
ほかのクルーが考えているその一瞬に、ヒビトはもう消火器を手にしていた。
危険だとわかっていながらも「じっとしている方が怖い」というヒビトの言葉の意味を理解し、ムッタたちはヒビトとマクシムをオリョール側へと送り出す。
そして無事鎮火。
「ボヤだったよ」と笑うヒビト。その勇気と判断力が皆の命を救った。

「まだ生きてる」
吾妻の言葉に、ムッタも同じことを思った。

安堵したクルーたちは食事を摂る。
これが最期と思った訳ではないが、ふと一番お気に入りの食事を選んでいたことに気付く。

だが、火災が起きたオリョールは無事とはいかなかった。
換気システムで排気している間、何度も姿勢が傾く。やがて酸素漏れの警告が鳴り響く。排気の際に閉じなかったタンクが煙と共に空気を出し続け、タンク一本分の空気がなくなってしまったのだ。
結果地球帰還に必要な六人分の酸素がなくなり、余裕を持てるのは四人分となった。

NASA、JAXA、ロスコスモスで対策を話し合った結果、四人が帰還船に残り、二人が旧型ソユーズに乗り移って帰還する――。太陽フレアも迫る中、大きな決断がされた。
誰が残り、誰が乗り移るか。
元々フィリップとともにソユーズで帰還する予定だったムッタは、真っ先に名乗りを上げる。
吾妻は怪我を、フランツは医師として吾妻とともに。マクシムはキャプテンとして残る必要がある。そしてフィリップは宇宙服の冷却システムが故障し、船外活動を行えない。
旧型のソユーズは日本に引き渡され、管制はJAXAが対応することとなっている。
「JAXAの管制なら 俺とムッちゃんでちょうどいいじゃん」
ヒビトはニヤリと笑ってそう言った。
ソユーズに乗り移るのはムッタとヒビトに決定した。

ところが――酸素が足りない状況であることが気になったり、未体験の無重力船外活動への緊張が入り混じり、ムッタはまったく眠ることができなかった。

起床後僅かな時間を使い、メドヴェージからソユーズへ飛ぶ船内訓練が始める。だが寝不足で集中力もなくなかなかうまくいかない。

目の下にクマができ、あくびを噛み殺している様子に気付いた九条は、ムッタの寝不足をデータで知り本来なら差し止め案件であることを察する。栄養ドリンクを飲み訓練を続けるムッタの姿を確認し、やるしかないこと、信じることにした。
いよいいよソユーズに飛び乗るタイミングが来た。
大丈夫、想像ではうまくいってる。
ムッタは自分に言い聞かせた。

オリョール組との別れの時間だ。
フィリップは目に涙を貯めながらムッタに抱きつく。
長く一緒だったのに最後まで一緒にいられない悔しさを吐露するフィリップ。ムッタもその気持ちを痛いほどわかったのだろう。
「俺たちの地球へ帰ろうぜフィリップ」
ムッタはそう声をかけた。

ムッタとヒビトは推進剤の入ったジェットアームをお守り代わりに二人でわけた。
メドヴェージの外側のハッチを開く前に、二人は “無重力版勇気のポーズ”をとる。
小学校のあの夏の日、どこんじょ豆腐を買うために二人でとった“勇気のポーズ”。

「何やってんだあの二人は」と思われているだろうなという気恥ずかしさを感じながら、ヒビトの笑顔にリラックスするムッタ。
“外に出る勇気”をもって兄弟は遂に宇宙空間へ――。

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