ビル・ハガード
188cm
NASA管制官 / フライトディレクター
言葉
「さあ~ ドカンと行こうかぁ!」
「想定外の波は来るもんだ」
「……俺が思うに こちらから与えずとも 本人が勝手にうまくやっちまうんじゃないか…?あの男の兄貴だぞ。エディ・Jは」
「“SHARON”のために EVAは必要だ。説得してくる」
「語らずとも そこにいてくれればいい。彼らはよくやった」
「それより我々は……“ジョーカーズ”というチームを もうちょい買いかぶってやってもいいんじゃないか?」
「2人以上が 同じことを褒めてくれたなら――それは間違いなくお前の真実だ。信じていいんだ」
「ただ……進んだ先でどうにかするだけだ」
プロフィール
ムッタらジョーカーズの月ミッションを担当するフライトディレクター。元宇宙飛行士。
大柄で器も声も大きな男性。クジョーからは「声やらなにやら4割に抑えて」と言われる。
管制チームメンバーから「今日“も”派手なネクタイ」と言われていることから、派手なネクタイをよくつけていることが伺える。ちなみにジョーカーズ打ち上げ時のネクタイは「パーティー(打ち上げ)仕様」とのこと。
左手薬指には大きな宝石の付いた指輪をしており、小物は派手なものを好む様子。
昔からサーフィンを嗜む。
バスケットチーム「ヒューストン・ロケッツ」のファンであり、優勝戦の時には仕事をさぼって観に行った。ハガードの部屋には「ヒューストン・ロケッツ」のグッズや選手とのツーショット写真が飾られている。
管制官のメンバーたちからは“ボス”と呼ばれる存在。
ハガードの“やる気スイッチ”は指をボキボキ鳴らすことであり、ビルの指が鳴るとスイッチが入ったと皆理解する(ただし今回キャプコム補佐に入っていたモッシュは骨折している右ヒジに響くのでやめて欲しいと思った)。
判断力・決断力が早い。周囲が多少躊躇う局面でも大胆に決断をくだす。
慎重に慎重を重ねるバトラーとは対極的に大胆な冒険家気質を持っている彼。
アウトプット・タヴァーンを訪れた時には十中八九新メニューを頼む。パーカー曰く「デカい波が好き」とのこと。
数々の“想定外”にクルーたちはベストなパフォーマンスを見せ、月の洞窟・水の存在の可能性という想定外の“大波”に気付いた。この大波に乗らずに見過ごすのか?
バトラーに問いかけるハガード。
胃が痛そうな顔をしながら話を聞いていたバトラーだったが、新作の“スパイシースペーシースパゲッティ”に“トライ”したおかげで「この店で一番うまいもんに今出会えた」と豪快に笑うハガードを前に、バトラーも遂に(汗をかきながらも)笑顔を見せた。
困難がありながらもミッションは進み、時間のロスを取り戻してきたかに見えた。しかし、気になる情報が入る。大規模な太陽フレアだ。
ヒューストンとの通信が途絶え、通信が回復するまで今後のミッションをどうするか話し合うジョーカーズ。基地内タスクに切り替える――その方向で進めようかとなったときムッタが口火を切った。
シャロン月面天文台のメインコンピュータ“SHARON”が翌日の接続準備のため月面上に裸で置いてあることを。
このまま太陽フレアが降り注げば、“SHARON”はただの箱になってしまう可能性がある。“SHARON”を基地内に運ぶ…そう提案するムッタ。
ヒューストンとの交信はできないが、「ハガードなら“GO”と言いそう」というカルロの言葉にエディは決断を下す。
エディも、ジョーカーズの皆も、ハガードならそう判断し言ってくれるだろう――ハガードへの信頼が見えるシーンだ。
ヒューストンとの通信は途切れ途切れだったが最初“メディカル”に反対されたものの、ハガードが丸め込んで返答がかわった。エディとムッタはヒューストンの“GO”で“SHARON”回収へと向かった。
“SHARON”回収にあたっても想定外ばかりが訪れる。
過電流によるローバーの電源の故障、リッテンディンガー峡谷にあるバギーの電源を使おうとムッタが降りている間にエディが怪我をしチアノーゼを起こしてしまったこと。
月面基地への帰り道、無事意識を取り戻したエディはかつてブライアンが残した人形と対面する。そして、その隣にエディ人形を立たせた。
J兄弟の子どもの頃からの約束が叶ったのだ。
実はブライアン人形との対面については、バトラーがミッションに組み込んでくれないかと相談していた。エディが月行きを決めた理由は、ハガードが仕事をさぼってまで「ヒューストン・ロケッツ」の優勝戦を観に行くほど重要なものなのだと。
だがハガードは「本人が勝手にうまくやるんじゃないか」と“想定”していた。なぜならエディ・Jは「あの男」の兄だからだ。
太陽フレアの危険がある中での船外活動はメディカルから反対されていた。しかし準備をしているエディの嬉しそうな笑顔と、彼の足元に置かれた荷物を見て、ハガードはエディが向かう先を確信したのだろう。
エディとムッタの宇宙服搭載カメラの映像を見て、2人に何が起こったのかを知り察したハガード。
バッテリーのために谷を降りた勇気や、遂にブライアンと“対面”したエディに、満足そうな表情を浮かべる。「彼らはよくやった」そう労い、まずは2人をゆっくりと休ませるよう指示した。
だが、太陽フレアの影響はまだまだ続く。
船外活動が制限を受けている中ジョーカーズ地球帰還の延長が決定され、延長されることによりシャロン天文台の建設が完了させられる可能性が出てきた。
伝える順番に配慮したビンスにより、一度は緊張が走ったジョーカーズだったが、喜びに変わる。ハガードはビンスの伝え方に「さすが」と感嘆した。
放射線の次はプラズマが襲い掛かる。過去最高レベルのCME(コロナ質量法則)により月面基地で停電が起こり、ヒューストンでも停電が起こる。
月面基地と通信できない、彼らの生命維持に関わるという事態に、ハガードは「もうちょい買いかぶってやってもいいんじゃないか」とどっしりとした態度で焦る管制官たちに伝えた。
「世界一大きい宇宙飛行士」の称号を持つ。面接をしたアンディが190cmだと聞いてその称号は君に奪われるなと大きく笑ったハガードだったが、「功績の大きさも含めた代名詞的な称号なので、“身長”だけでそう呼ばれることはないと思う」と縮こまるアンディにハガードはこう尋ねた。
「“2人以上”の誰かに――同じことを褒められた経験はあるか?」
「あの人怖い」。
体の大きなハガードとアンディが周囲からよく言われてきた言葉だ。昔は2人共その言葉を言われるたびにキズついてきたことだろう。
「今はもう……“そよ風”です」。
そう答えたアンディに、笑顔で答えるハガード。2人以上に褒められた経験を教えてくれたアンディに、ハガードはこう言った。
「2人以上が 同じことを褒めてくれたなら――それは間違いなくお前の真実だ。信じていいんだ」
面接の時に背中を丸め縮こまっていたアンディ。
ジョーカーズとして月でのアンディを見て、ハガードは彼にこう伝えてくれと言った。
「俺の称号だったフレーズは 今日からお前のモンだ」。
体が大きく目立つハガードは“目印”となり、何かトラブルが起きるたびに “原因”とされてきた。
「問題起こるところに“ビル・ハガードあり”」「“トラブルビル”」と揶揄されてきた。無数の因縁をつけられた彼は聞こえていないフリを極め、“耳の遠い奴”と思われており、彼自身それを知っていた。
ハガードが見つめていたのはトラブルの向こう側だった。数々の因縁も、彼には実際どうでもよいのだ。
“トラブルビル”の名は管制官になってもなお囁かれていた。しかしハガードはそんなものは気にしない。彼が見ているものは、いつだってトラブルの向こう側なのだから。
宇宙飛行士時代、ISSの太陽パネルが作動しなくなって電力がダウンしそうになった時、ハガードはISS全体を回転させ結果ISSの電力は回復。
“トラブルビル”という周囲が勝手に持った印象とは異なり、彼はそんなトラブルを解決した実績をいくつも持っていた。
宇宙飛行士時代を知るエディは言う。
ハガードの本当の“デカさ”ってのは――いろんなもんを飲み込めるデカさだと。
自分が見られていることを知っているから誰よりも強く責任感を持ってトラブルと向き合う姿勢を貫いてきた。
毎回堂々と豪快にトラブルを乗り越えてきた。だからこそ周囲の人間に評価されるのだ、と。
エディたちがそんな話をしているころ、太陽フレアの今後の影響を考慮し、NASAではミッションを中断しクルーたちを緊急帰還させることが決定しようとしていた。
科学者や技術者たちの話を聞きバトラーがその決定を口にした後――ハガードの“デカさ”が発揮される。
“クルーの人命最優先”。しかし彼らがどんな思いで、何の為に月へ行ったのか。
シャロン天文台は完成間近だ。帰還の準備を進めると同時に建設を進める。サイエンスを止めてはいけない。
“スイッチ”である指を鳴らしながらハガードはそう決定した。
しかしながら…さらなるトラブルがジョーカーズを襲う。ベティがタンクの爆発に巻き込まれ大怪我をし、月面での手術を余儀なくされた。
手術はひとまず成功したものの、レントゲンもCTも取れない月では他にどんな状態になっているか確認しようもない。もしまた何かあった時、月の医療設備では救えないかもしれない。
一刻も早く帰還しなければベティの生死にかかわる。
絶対に揺るがない“人命最優先”。今度ばかりはクルーの帰還が決定した。
しかし今度は政府がそれを許さなかった。メインミッションである天文台建設が完了しないとなると、CES-66のミッション=失敗。今後の予算の為にはベティの怪我を打ち消す成果が出なければならない。
結局4人は帰還、2人は月面に残るという決断がくだされた。
しかしオリオンの制御系にもCMEの影響と思われるトラブルが発生。ベティの体調から引き返す選択肢はない。2機あるオリオン帰還船のうちもう1機を使い地球への帰還を急ぐ。
しかしベティの容体が悪化、地球までの持たないと判断したクジョーの提案によりISSでの手術が行われることとなった。
「“前例” を作ってもらうぞ。クジョー」
不敵に笑うハガード。やりましょうと笑うクジョー。
史上初の試みに、スタッフの想いが一丸となる。
クジョー、そしてカルロのバトンによるISSでの手術は成功。
数多くのトラブルに向き合い、そのたびに真摯にそして大胆に解決してきたハガードの“デカさ”。
彼の決断と器に、多くの宇宙飛行士や管制官たちがその命を、その想いを預けてきたに違いない。
ビル・ハガード。宇宙飛行士から管制官になってもきっと「世界一大きい」と呼ばれる、そんな“デカさ”をもった男である。