- 初登場
- #76~
words言葉
「ダミアンとヒビトの通信が途絶えました ブランブルック山付近です」
「20秒間の発光なら 間違いなくダミアン達の照明弾だ!」
「“BRIAN”は全機走行可能です!」
「助かった…!」
profileプロフィール
ヒビトらCES-51月面ミッション時の管制室スタッフの一人。ネットワーク担当。
ヒビトとダミアンが乗っていたローバーの信号が途絶えたことを捉え、フライトディレクターのクラウドに報告。通信不可という不測の事態に緊張感をにじませつつ、考えられる可能性を探り、二人の状況を注意深く見続ける。
発光弾を確認した管制室スタッフはすぐさま緊急会議を開いた。
“最悪のケース”を最悪にしないために、通信が途絶えた位置まで無人ローバーを遠隔操作で向かわせて欲しい。
そう吾妻が提案すると、ネットワークスタッフである彼は今何がありどれを向かわせることが可能か提示。ヒビトとダミアンのバギーが通ったわだちを辿らせ、遠隔操作でBRIAN 3号を向かわせた。事故現場の谷を映してみたものの、真っ暗で何も見えない。
ヒビトとダミアンは、無事でいるだろうか――。
だが、事故に遭ったヒビトとダミアンはそれぞれに宇宙服の故障を抱えてしまっていた。事故現場で救助を待つ猶予のない二人は、谷底からの脱出のため地上を目指し移動していた。多くの困難を経て、ヒビトとダミアンは地上への帰還を果たす。
脱出後のヒビトとダミアンの宇宙服のアラート信号を捉えた彼は、管制に報告。通信ができないもののダミアンとヒビトが生きているとわかり、管制室は安堵に包まれた。だがその安堵は一瞬にして緊張に変わる。
二人は、事故現場から20kmも離れた場所にいたのだ。
事態は急を要していた。ヒビトの酸素残量がもたない。急ぎ、ヒビトたちの救出にクルーや管制が動く。酸素生成ローバー“BRIAN”3号も、ヒビトたちがいるポイントへ進む。ヒビトの酸素が一度切れたその時―― “BRIAN”が到着した。大先輩、ブライアン・Jの姿をして。
ヒビトは無事酸素を受け取り、生還。奇跡の瞬間だった。
この時“BRIAN”を操作していたのは、恐らくネットワークスタッフの彼だろう。
「助かった…!」
事故以降、ずっと緊張した顔をしていた彼。ヒビトの生存を確認した彼の表情には、心からの安堵の表情が伺えた。
瞬間、管制室の皆が後ろを振り返る。誰もがそこに、大先輩 ブライアン・Jの姿を見た。ヒビトの命を救った酸素生成ローバー“BRIAN”。それは、偉大な宇宙飛行士が月面に残した置き土産だった。
全身に生き渡った酸素。体が動くことを確認したヒビトは、立ち上がりピースサインをする。彼は、そのピースサインにピースサインで答えた。
CES-51月面ミッション管制室、ネットワークスタッフ。
彼もまた、宇宙飛行士・南波ヒビトの命を救うため、地上で全力を尽くした一人である。