- 初登場
- #102~
words言葉
「あ~そりゃピコの口グセだ スイッチがオンだのオフだのってのはな」
「ピコはただのふざけたヨッパライじゃねえぞ…あー見えてちゃんとした技術者だ」
「もしピコがやってたなら ブライアンは生きてた!俺はそう思ってるね」
「ブライアンたちが死んだ日…その夜…それでもピコは一人で約束のパブへ行った」
profileプロフィール
デンバー社の職員であり技術者。デンバー社は主に帰還船の開発を任されており、NASAの下請けにあたる。
ピコとは旧知の仲であり、ピコのことを「ぐうたらピコ」と呼べる間柄。
カムバックコンペティションで宇宙飛行士候補生のサポートをする技術者の一人。A、E班以外のどの班のサポートとなったかは明らかになっていない。
ムッタとケンジは同じサポート技術者であるピコについて、食堂に居た彼に尋ねた。
「スイッチがオンだオフだ」「人生はいつ終わるかわかんねーからどーのこーの」というピコの口グセはよく知っているが、彼にはピコのオンとオフの区別はつかない。わかる人が言うのはオンの時はちょっとだけ真面目らしい…とのこと。
ムッタとケンジは、ピコらがNASAの職員ではないこと、デンバー社が主に帰還船開発を任されていることを知る。
ムッタを驚かせたのは、“グダグダでヨロヨロな人”であるピコが、帰還船開発のパラシュート展開システムのサブ・プロジェクトの総合責任者であるということだった。
ヒビトの帰還への不安、ブライアンたちの事故がムッタの脳裏をよぎる。
だが、ピコはただのふざけたヨッパライではない、と彼は続ける。
シャトル時代に失われたパラシュート帰還のノウハウを、試行錯誤を繰り返しようやくシステムとして使える形に仕上げた技術者がピコである。
その後ももっと確実でより良いシステムにするために試験を続けた。その途中で一度だけ想定外のミスをした。本来開くはずのパラシュートが絡まり合い墜落。パラシュートを折りたたむ際に左利きの者がおり、たたむ方向にズレが生じたことによる人的ミスだった。
この想定外のミスが原因となり、ブライアンが帰還する船のパラシュートシステムはデンバー社からニューエアー社に変わることなる。
結果――ブライアンたちの墜落事故は起こってしまった。
「もしピコがやってたなら ブライアンは生きてた!俺はそう思ってるね」
当時のNASAの技術責任者がピコを理解していなかった。
同じ技術者であり、ピコの仕事を間近で見て知っている彼はそう確信している。
ピコの同僚である彼から聞いたピコの話。
ムッタとケンジの中で、ピコへの、そしてローバー作りへの意識が少し変わったことだろう。
ちなみにムッタとケンジと話している間、ハンバーガーを頬張りセットメニューをモリモリと平らげた彼は、食堂を出た後もさらにスナックバーを購入し口にしていた。なかなかの大食漢である。