- 初登場
- #146~
words言葉
「ヒビトには立派なポジションが与えられたんだ あたたかく見守ってやれイヴァン」
「イヴァン どうして日本人の飛行士にそこまで肩入れするんだ」
「お前の親父と 同じ病気だからか」
profileプロフィール
"ロシア連邦宇宙局の職員の一人。
NASA、JAXA間の決定をロシア側として承認できる立場にいる。イヴァンとの付き合いも長い様である。喫煙者。
パニック障害のリハビリのためロシアを訪れていたヒビト。
だが、バトラー室長と一部宇宙飛行士・スタッフしか知らなかったパニック障害を、NASA上層部であるゲイツが気づいてしまった。
NASA、JAXA双方のやり取りの結果、ヒビトはNASAに戻り “安全スーパーバイザー”というポジションに就くこととなった。
その決定を後から知ったイヴァンは、休憩室にいたガザエフを問い詰める。
なぜヒビトが帰らなくてはならないのか、リハビリはまだ途中で、安全スーパーバイザーなど宇宙飛行士を引退してからでもできる仕事である、と。
ガザエフは、NASAとJAXAの合意であり、他国が勝手に口を出す訳にはいかない、他国との関係を保つことが最優先であると答える。
飛行士としてまだやれる、なんとかできるはずだと引かないイヴァン。
何故日本人宇宙飛行士にそこまで肩入れするのか不思議がるガザエフだったが、思い当たるフシがあった。
イヴァンの父もまた、宇宙飛行士でありパニック障害を発症したからである。
宇宙飛行士がパニック障害を発症することは珍しいことではなく、10年に一人二人は必ず出てくるもの。克服できる者もいればそうでない者もいる。
ガザエフにとっては、ヒビトもそんな“珍しくない”者の一人であり、それ以上でも以下でもないのだろう。
「お前の父親がどうだったかは知らんがな」と加えたガザエフに、イヴァンは力強くこう返す。
「私は父の残した言葉で揺ぎなく信じているものがある
『宇宙飛行士(コスモノート)は人種に拘らず』
『皆――尊敬すべき英雄である』
私の父も ヒビチョフもそうだ」
だがその言葉を聞いてなお、ガザエフの心は動かなかったようだ。
時間だろ、訓練に戻れ。
ガザエフはイヴァンにそう告げた――。"