"アスキャン訓練後に行われたカムバックコンペティション。
ローバーを制作して走行距離を競うこのコンペで、ムッタたちE班のローバーに乗った小さな宇宙飛行士である。

コンペ前日の夜、局地的な雨が降り、ローバー走行コースの一部を濡らしていった。他の班は大して問題視しなかったが、スポンジタイヤで挑もうとしているムッターたちE班にとっては大問題。
ムッタとせりかは宿泊しているホテルに戻り、備品など何か使える物がないか探しに戻る。その際ホテルの倉庫で見つけた“何年も前の客の忘れ物”が小さな人形の彼であった。

――“姿勢”として俺らにはこれを乗せる意味がある。
ムッタは完成したローバーに小さな宇宙飛行士を乗せた。パラシュートを開く責任が増した、と言うせりか。わかってるじゃねーか、と言うピコ。

人形の宇宙飛行士はピコの発案により“HIBITO”と名付けられた。
宇宙飛行士“HIBITO”を乗せたローバー、ピエコは全体で5位、アスキャンでは2位。
ゴールすること自体が難しいカムバックコンペで大健闘したのであった。

あの日偶然出会った人形 “HIBITO”。

人の人生を預かる側の技術者。
命をかける側の宇宙飛行士。

宇宙開発に人生をかけるそれぞれの想いを繋いだ、小さな宇宙飛行士である。"