- 初登場
- #111~
words言葉
「なんや?」
「別にかまわねえよ タイル貼り替えんの?」
「そこらにあるのは 何年も前の客の忘れ物だ 欲しけりゃもってけ」
profileプロフィール
アスキャン訓練後に行われたカムバックコンペティションのときにムッタたちが宿泊したホテルで清掃員をしていた男性。
「CAP」帽子を被り眼鏡をかけ、名札には「OSOHJI」と書かれている。
コンペの前日夜、局地的な雨が降り、ローバーの走行コースの一部を濡らしていった。他の班は大して問題視しなかったが、スポンジタイヤで挑もうとしているムッターたちE班にとっては大問題。
E班は二手に分かれ対策を練る。
ムッタとせりかは宿泊しているホテルの生活備品で使える物がないか探しに戻った。
せりかはドライヤーを、ムッタは清掃員の男性に頼んでホテルの倉庫を見せて貰う。
倉庫で見つけたのはタイルの目地剤―「シリコンポンド」だ。
シリコンボンドは乾くとゴムみたいな防水シールになる。
薄く塗り、ドライヤーで乾かしたスポンジタイヤは、見事伸縮性を持った防水タイヤとなった。
ドタバタとしながらも、このコンペに参加することはチームワークの向上だけでなく、日程や経費、プログラミングや打ち上げ、パラシュートでの着陸。
そのほか一連の流れが、そのままNASAや技術者たちがやっていること。宇宙開発の縮小版であると感じていた。
ムッタがもう一つ倉庫で見つけたもの。それは「宇宙飛行士」のレゴ人形だ。
自分たちが作ったローバーに宇宙飛行士を乗せて、ムッタたちE班のローバーは戦った。
全体で5位、アスキャンでは2位。
ゴールすること自体が難しいカムバックコンペで大健闘したのであった。
命を預かる側、命を懸ける側。
ムッタら将来の宇宙飛行士たちと技術者側であるピコ。
互いの役割に懸ける気持ちを知り分かち合えたのは、気前よく備品を貸し「宇宙飛行士」を持って行かせてくれた清掃員の男性も一役かっている。