たくしーのうんてんしゅ タクシーの運転手
- 初登場
- #165~
words言葉
「ああ!今日乗せた客の中で一番ゴキゲンな様子だハッハ――!」
「PD~つったらあれか!パニックのあれだろ?」
profileプロフィール
兄ムッタにパニック障害を告白した夜に、ヒビトが乗ったタクシーの運転手。
「PDの発作が出そうになったらこうつぶやけ 『来たなこのPD野郎 プリティ・ドッグめ』」
「宇宙服着てるかどうかは 発作と関係ないってことだろ」
「宇宙服は俺らの味方だ」
ムッタからの言葉を嬉しそうに噛みしめているヒビト。
タクシーの運転手は“今日乗せた客の中で一番ゴキゲンな様子”と声をかける。
「“PD”って知ってる?」と尋ねられた運転手はパニックのあれだろとパニック障害のことを答えるが、ヒビトはここで更に嬉しそうな顔をし、こう答えた。
「いや…そっちじゃなくて プリティ・ドッグの方だよ」
パニック障害を長い時間、一番身近な家族に言わず抱え込んできたヒビト。
ムッタと酒を酌み交わし、かけられた言葉が、ヒビトの心を軽く強くしていく。
恐らく今までは口に出すのも怖かったこの言葉を、早速口にして、 “PD”は“プリティ・ドッグ”なのだと反芻する。
ずっと嬉しそうにしていたゴキゲンな乗客のことを運転手は翌日にはもう忘れてしまったかもしれない。
だが、“PD”=“プリティ・ドッグ”だと心に刻めた夜として、ヒビトはこのタクシーでの会話を忘れないことだろう。
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