- 初登場
- #231~
words言葉
(地震 雷 火事 おやじ)
「シャロンさんは私より年上のお姉様ですが ALS患者としては私の方が先輩です」
「つまり六太さんより 私の方が宇宙遊泳の先輩です」
「視力ガ落チタラ “メガネ”ヲカケルデショ?ソシテ自分ノ一部ニナル… 息ガデキナクナッタラ “呼吸器”ヲ付ケレバイイノヨ」
profileプロフィール
"ALS患者の一人でシャロンの友達。モデルは橋本操さん。
JAXAでムッタの会見を待っている時間、JAXAに向かっているシャロンと空が“だんだん文字数が増えてくしりとり”をしていることをレミと空の電話のやりとりで知り、思いついた「地震 雷 火事 おやじ」の12文字をレミに伝えた。
シャロンの友人の一人である幸田は「本物の宇宙飛行士に会いたい」と要望しシャロン経由でJAXAに許可を取ってもらい、田井と共にムッタの会見に駆け付ける。
記者会見を見ることができたこと、ムッタと会えたことをとても喜んでいる。
普段は腕を伝う電気信号で文字を打つ機械を利用し会話をしているが、JAXAの会見時には故障中だったため“口文字”を利用して会話。
“口文字”とはまず患者が口の形で伝えたい文字の母音を表し、ヘルパーが“あ段”など段を順に唱え、患者が言いたい文字のところで“YES”のまばたきをし文字を伝えることである。
「シャロンさんは私より年上のお姉様ですが ALS患者としては私の方が先輩です」
口文字で伝えられた言葉に、ムッタは「なるほど!」と返す。
シャロンの友人が楽しい人であることを感じ、ムッタは嬉しそうだ。
ところで文字数が増えていくしりとりは幸田と田井の間で続いており、次の13文字で田井は「人工着色料」、幸田は「動かざること山の如し」と進んでいた。
「宇宙飛行士は頭が良いからきっとすぐ思いつく筈だ」と幸田と田井。田井はムッタに“シ”で始まる14文字で何かないか尋ねる。
ちょうど到着したシャロンを見て、ムッタは「シャロン月面天文台」の14文字をあげた。その鮮やかな早さに幸田は「おおー!やるう」と驚く。
「宇宙飛行士」であるムッタに、幸田はこんなことも伝えた。
ALS患者は宇宙飛行士と似ている。
コミュニケーションをとるために特殊な技術や装置を使うところはNASAの交信みたいだということ。
人工呼吸器を信頼して“最新技術”と一体となって生きていること。それは宇宙服を信頼して船外へ出る宇宙飛行士と同じということ。
「つまり六太さんより 私の方が宇宙遊泳の先輩です」
負けず嫌いの幸田から出る言葉に、場は笑いに包まれる。
ようやくシャロンが到着し、ムッタとシャロンは少し離れた場所でゆっくりと会話をした。楽しい人たちだねと言うムッタに、彼女達と出会えて本当に良かった、とシャロンが言う。
シャロンは、そろそろ人工呼吸器を着けねばならないことをムッタに告げる。
怖くて仕方がないこと。
自分に生きる意味はあるのだろうかと考えたこと――。
そんなときに出会った幸田と田井の言葉に、シャロンは救われたということ。
会議で意見も言い、講演もし、海外旅行も行くという田井と幸田。
思い悩むシャロンに、幸田はこう言葉を掛けた。
視力が落ちたら“メガネ”をかけるでしょ?そして自分の一部になる。
息ができなくなったら“呼吸器”を付ければいいのよ。
その心強い言葉にシャロンは救われ、人工呼吸器を付けることを決めた。
「人は何のために生きてるの?」
かつてムッタが尋ねた疑問に、シャロンはこう答えている。
私が思うに そんなつもりはなくても 人はね――
誰かに――“生きる勇気”を与えるために生きてるのよ
誰かに――勇気をもらいながら
かつて幸田自身も思い悩み、誰かに貰ったかもしれない勇気。
生きているからこそ、生きてきたからこそ出る幸田の言葉がシャロンを救う。
同じ病気を持つ者だからこそ話し合えることもたくさんあるだろう。
心強い友人を得て、シャロンは自分の新しい一部と共に生きることを決めた――。
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