版画の技法がアクセントに。宇宙兄弟マトリョーシカのレトロなかわいさを探る!【cupiporoさんインタビュー後編】 | 『宇宙兄弟』公式サイト

版画の技法がアクセントに。宇宙兄弟マトリョーシカのレトロなかわいさを探る!【cupiporoさんインタビュー後編】

2017.11.26
text by:西谷涉
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こんにちは。スタッフのアユミです。

10周年記念の「宇宙兄弟 ジョーカーズ マトリョーシカ」
引き続き、作り手のcupiporo(チュピポロ)さんへのインタビュー後編をお届けします。
インタビュー前編はこちらから

ーーそれでは、ここからはコラボ作品について伺っていきたいと思います。2013年のトリビュートアート展のときのマトリョーシカは、ムッタとヒビトとアポ。今回10周年記念のモチーフは、ジョーカーズですね。

cupiporoさん「前回と同じような、南波兄弟の案も出していたのですが、まさかこちらが選ばれるとは思わなかったので、びっくりしました。ふつうに考えたら南波兄弟と、マトリョーシカにしてかわいらしいアポってゆうのが定番というか、しっくりくるだろうなと思い、たぶんそっちに決まるだろうなという感じだったのですが、ジョーカーズも作ってみたいなと思って提案したら、そちらが選ばれたんです。10周年の今のタイミングだからこそつくれる作品をみてみたい、とおっしゃっていただいて。

顔が両面あるので、制作にすごく時間がかかりました。デザイン案を書いてるときから、ジョーカーズに決まったらすごく大変だろうなと思っていたら、本当にそちらに決まってしまって(笑)」

ーー今回はコラボ作品ということで、小山さんの漫画のキャラクターをご自身の作品に落とし込むにあたって、難しかったことや、意識されていたことはありますか?

cupiporoさん「どの程度原作に近づけて、どの程度自分のテイストを入れるかというバランスが難しかったですね。そっくりでも違うような気がするし、はっきり自分の世界感に寄せてしまうのも違うような気もするしというので、すごく悩みました。でも結局、前回作ったマトリョーシカを気に入ってくださったので、それをベースに考えようかなと思いました。」

見れば見るほど細やかな筆感で、細部までのこだわりにうっとりしてしまうcupiporoさんのマトリョーシカ。宇宙船ひとつとってみても、ムッタたちの宇宙船アレスのロゴマークや、NASAのマークまで。

ーージョーカーズは6人もいますが、それぞれの顔の特徴をしっかりと抑えていますよね。

cupiporoさん「小山先生にも一度監修をしていただきました。ベティとカルロの顔が似やすいから、髪型や眉を気をつけるように言ってくださって、小山先生もこんな風に気をつけてるのかなと思ったり。あとは、ブギーがウォーズマンに似てるから気をつけて、とか(笑)」

ベティとカルロ。原作を読んでいても特に意識したことはなかったものの、こうして見比べてみると、たしかに顔の特徴に似ているところが。

マトリョーシカ作りは、ヤスリかけから始まります。

ーーいったいどれほどの工程があるのだろうとファンのみなさんも気になると思いますが、cupiporoさんのマトリョーシカ作りの手順について、かんたんに教えていただけますか。

cupiporoさん「まずは、ヤスリがけなどの下準備からはじまります。

ロシアで作られている市販の型を使っているのですが、クオリティに差があるというか、人形が閉まらなかったりするので、ちゃんと閉まるようにヤスリで削ったり。描く前も、下準備が必要なんですよね。全く同じところで買ったのに、それぞれの形が全然違うこともあるので、実際に手にとってみないとわからないという(笑)」

cupiporoさん「デザインが決まって、下準備もすんだら、白木のマトリョーシカに下書きをしていきます。そして、黒のアクリル絵具で、木型全体をまっくろに塗ります。」

cupiporoさん「そのあとは、まっくろに塗った人形にさらに絵の具を重ねて、絵を描いていく作業になります。

東京の美大に通っていたころは銅版画をやっていたんですけど、そのときに使っていたニードルという道具を今も使っています。

小さいときに、クレヨンで下地にいろいろな色を塗って、上から黒いクレヨンで塗って削っていくというのをやりませんでしたか?
その逆バージョンのような感じで、下地に黒を塗ってその上から色を重ねて、このニードルと呼ばれる道具を使って削っていくという方法で描画しているんです。」

色を重ねて、削りだす。
深みのでる表現をさがして、たどりついた独自の画法。

ーーニードルで削ることで、はじめに塗った黒が出てきているということですか?

cupiporoさん「そうです。同じ黒でも、上から描いている部分と、削って出てきている部分とがあります。そうすることで、ふつうに描くよりは深みが出るというか、ただ描いただけでは出せない味わいができるので、気に入ってその画法を取り入れています。」

ーーcupiporoさんのふだんの作品もそうですが、色の風合いがとても独特ですよね。下地に黒を塗っているぶん、上に塗っている色に広がりを感じるというか。

cupiporoさん「機械というか、ロケットだったり宇宙服とかって無機質なものなので、できるだけ柔らかい雰囲気に見せたいなと思って、宇宙服の白も、真っ白ではなくてベージュに近い温かみが出るような色味にしました。」

ーーどのキャラクターが特に難しかったですか?

cupiporoさん「エディですね。いちばん難しかったです。顔が老け過ぎちゃったり、あとは物理的に、マトリョーシカの中でも人物ではいちばん大きいサイズだったので。

たぶん小さいサイズで作ったら、キャラクターっぽくなってかわいらしくなったと思うんですけど、おじいちゃんで大きめの顔だから、全然かわいらしくならず(苦笑)

マトリョーシカって小さくなるほど、なんでもかわいらしく見える傾向があって、今回もいちばん小さいブギーがいちばんかわいらしなと思っていたのですが、やっぱりエディは難しかったですね。」

cupopiroさんがいちばん悩まれたというエディ。特徴であるブルーの瞳や、目元の雰囲気、ロマンスグレーの髪色など、こうしてみるとしっかりとエディに見えませんか?

ふだんはいたずらっ子で生意気な性格のブギーも、カラーバージョンで親指サイズになってしまって、いつになくかわいらしい姿に。並べてみると、入れ子になっているだけあり、5つそれぞれけっこう大きさが違うんですね。

くすみがかった味わい深い色合い、きゅっとつむった口元、ピンクのほっぺなど、cupiporoさんのもともとの画風を取り入れながら、目元や鼻、髪型、宇宙服などでしっかりと『宇宙兄弟』のキャラクターそれぞれの特徴をとらえています。

塗って、乾かして、削って、また塗って。しあがりまではおよそ1カ月。

ーー製作時間はどのくらいかかりましたか?

cupiporoさん「今回の宇宙兄弟のは本当に時間がかかって、ふだん作っているのの5倍くらいはかかりました。両面に顔があるし、時間がかかるだろうなとは考えてはいたものの、まさかこんなにかかるとは思わなかったです(苦笑)たぶん宇宙服の書き込みが多いというのもあると思います。」

cupiporoさん「いつもだと1セット作るのに描画で1日か2日くらいですかね。時間にしたら10時間くらいかな。ニスを塗ったり、乾かす時間も入れたら、しあがりまで1ヵ月ほどかかります。

塗って乾かして、という工程の繰り返しもあるし、ニスは塗って、また次の日塗ってという風に、そこからもけっこう時間がかかるんですけど、今回の宇宙兄弟とのコラボ作品は、描画する時間がすごくかかりましたね。

それでも、やっぱりすごく人物がみんな魅力的なので、どうしても全員入れたいという気持ちがデザインを描いたときに強かったです。」

いちばん大きい宇宙船のマトリョーシカの裏には、1から6までのシリアル番号付き。

マトリョーシカの物語のはじまりは、箱をひらく瞬間から。

ひとつひとつ、きめ細やかにしあげられたマトリョーシカは、真っ黒のギフト箱に入ってお届けします。ふたを開けると、cupiporoさんのかわいらしい直筆の注意書きのメモが。そして、まるで羊のようなふわふわの綿毛のなかに5つのお人形が包まれています。

ーー最後に、cupiporoさんにとって『宇宙兄弟』はどんな存在ですか?

cupiporoさん「すごく愛があるというか、全てのキャラクターに対してすごく愛着を持って描かれているのがいちばん印象的です。

だからこそ全てのキャラクターが魅力的に見えると思うんですけど、まず設定の時点でNASAの飛行士の話っていうのが、一体どれだけの調べ物があるんだろうと(笑)すごく入念な下調べをされたうえに、あんなに全てのキャラクターに愛情を込めて描かれているのが本当にすごいなと思っています。

ひとつの漫画を10年続けているって、本当にすごいことですよね。」

ーーどうもありがとうございました。

あけるたびに、ジョーカーズのキャラクターたちが登場して、これまでのエピソードがふわっと頭の中に思い浮かんでいくような、物語がぎゅっとつまった宇宙兄弟のマトリョーシカ。

いつもは宇宙船にしまっておいて、元気や勇気が欲しいときに、そっとあけてみたり、ふだんから5つをならべて飾ってみたり、ムッタとブギーだけ出してみたり、小山さんのように気分で自由に飾ってみてくださいね。

▶︎限定6セット抽選お申込みは11月28日0:00から!

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<アーティストプロフィール>
cupiporo(チュピポロ)
作家名のcupiporoはアイヌ語で”月明かり”という意味。“月明かりの下で読む絵本のような物語のある雑貨”をコンセプトに、マトリョーシカ、ブローチ、キーホルダーなどを手がけられています。東京・新宿の豆千代モダン、香川のわたぐも舎をはじめとする全国の雑貨屋さんで作品を取り扱い中。

詳しくはcupiporoさんの公式ホームページ