インタビュー記事

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宇宙飛行士 油井亀美也さんや、スペシャルゲストへのインタビュー!

【大西卓哉宇宙飛行士×小山宙哉】スペシャル対談ー宇宙への旅立ち編ー (後編)

【大西卓哉宇宙飛行士×小山宙哉】スペシャル対談ー宇宙への旅立ち編ー (後編)
 2016年、国際宇宙ステーションで115日間の長期滞在を終え、帰還後も精力的に活動を続けている宇宙飛行士・大西卓哉さん。なんと今回、JAXAの協力で大西さんと小山宙哉とのスペシャル対談が実現! 宇宙での貴重な体験をたっぷりと聞いてきました。打ち上げの瞬間から帰還シーンまで、ドラマチックなエピソード盛りだくさんで、順次公開していきます!(前編はこちら

高度約200キロの軌道に投入!宇宙を実感する前に立ちはだかる、ハードなミッション

小山宙哉(以下、小山) 大西さんのなかで、「ついに宇宙に来たー!」と実感できた瞬間って、どのタイミングでした?

大西宇宙飛行士(以下、大西) それがですね、正直なところ軌道に投入した直後は、宇宙空間を実感している余裕がありませんでした。というのも、私が座っている左側の席はレフトシーターと呼ばれていて、いわゆる副操縦士のような役割があるんです。ロケットの仕事というのは宇宙船を軌道に投入させるまでで、そこから国際宇宙ステーションとのドッキングは宇宙船で行うため、色々な機器を立ち上げなければなりません。アンテナが展開されて機器が正常に作動しているかや、エンジンのパラメーター、船内の温度、燃料タンクの圧力、ほかにも色々なパラメーターが許容範囲に入っているかを確認しなければならないですし、軌道の高度を調整するエンジン噴射が数十分後に迫っているので、それに向けた姿勢を確立するなど、とにかく一気に忙しくなり、無重力で気持ちが悪くなっている暇さえないくらいです。

小山 そうなんですか。同乗しているほかの宇宙飛行士も同じように?

大西 右席の人はあまり仕事がないので、睡魔とコックリ闘っています(笑)。こうした一連の仕事が終わった時に、ふと自分のペンがふわふわと目の前で浮いているのが見えて、「ああ、本当に宇宙に来たんだな」と実感できました。

小山 宇宙ステーションへのドッキングは、打ち上げから2日後でしたよね。

大西 今はもう6時間で行けるんですが、私たちはちょうどソユーズが新型に切り替わったタイミングの初号機で、色々と性能の確認をしながらだったので2日かかりました。以前はそれがスタンダードなやり方だったんですけどね。

小山 宇宙ステーションに入る工程は、モックアップで何度も訓練されていたと思いますが、新鮮味はありました?

大西 ある意味、見慣れた光景でした(笑)。実物大のモックアップがアメリカのヒューストンとロシアのモスクワにあるので、本当に見ていたそのままでしたね。最初に感じたのは匂いです。病院みたいな匂いがしたんですよ。たぶん、綺麗に消毒されているからだと思うんですけど……。でもすぐに慣れちゃいました。どこの部屋もだいたい同じような匂いでしたね。

小山 お気に入りの空間とかモジュールはありました? 日本のモジュール「きぼう」は静かだというのをよく聞くんですが。

大西 「きぼう」は静かですよ。一番大きいモジュールですし、広々としていて気持ちがいいです。私は断然、「きぼう」が好きでしたね。静かに話せるので交信イベントで使われたり、家族と交信したりする時に、ほとんどの人が「きぼう」を利用していました。

寝る時は「ノード2」というモジュールに一人一室、個室というか電話ボックスくらいのスペースがあって、そこが唯一、プライバシーのある空間です。「宇宙兄弟」でも描かれていましたよね。メールを打ったり、仕事の手順書を確認することもありますし、通信速度は遅いですけど、インターネットも見られます。初日はもう疲れていたし、いわゆる宇宙酔いで気持ちが悪いというのもあって、ぐっすり眠ってしまいました。

小山 実は僕も、飛行機で無重力体験に挑戦したんですよ。最初にかかってくるGもすごいですし、そこから浮き上がって、ジェットコースターの落ちる直前のもっとひどいのが来るっていう感覚ですよね。

大西 そうです。あれが基本的にずっと続いているという状態です。でも慣れちゃいますよ。人間の体ってすごいなと思ったのは、どんな空間でもいずれ適応してしまうということ。私も1週間くらいは気持ちが悪くて酔い止めの薬を飲んだりしましたけど、そのあとはもう普通でした。

打ち上げ前は、ゲン担ぎもきっちり遂行!連日行われる、謎の習慣の数々

小山 「宇宙兄弟」でもエピソードとして登場させているんですが、打ち上げ台に向かう途中でバスから一旦降りて、バスの車輪へおしっこをかけるというゲン担ぎって本当にやるんですか?

大西 やります!1度宇宙船に乗り込んだら5時間近くトイレには行けないので、これはとっても助かりました。それを言ったら、もう1週間くらい前からゲン担ぎだらけですよ。「今日は2日前なのでこれをやります」と、ゲン担ぎのスケジュールもきっちりこなしていきますから。

ちなみに打ち上げ前日には「砂漠の白い太陽」という、ソ連時代の古い映画を観るんです。残念ながら内容はあまり楽しめる感じではないんですが(笑)、どのクルーも必ず打ち上げ前に家族たちと一緒に観るのが、ここ20年くらい続いている習慣になっていますね。

小山 なんでまた、そんな習慣が生まれたんですか!?

大西 諸説あるようなんですが、私がバックアップクルーで入った時に聞いた話では、当時はまだVHSのビデオデッキが登場したばかりで、あるクルーがバイコヌール宇宙基地にデッキを持ち込んだそうです。打ち上げまでは2週間くらい隔離されてわりと暇なので、そこで観ようと持っていったのがその映画のビデオテープだったと。彼らのロケットは無事に打ち上がって生還もしたんですが、その次のクルーはバイコヌールにビデオデッキがあることを知っていたので、当然、色々な映画のビデオテープがあるんだろうと思っていたら、なんと「砂漠の白い太陽」しかなく、自動的にそれを観る羽目になったそうです。

2つのクルーが続いて無事に帰ってくると、彼らの中ではもはや「それを担がない手はない!」ということで(笑)。次のクルーからも前日にはそれを必ず観ることが習慣になったそうなんです。

小山 2回続いて観てしまったがために! もし別のビデオをもう1本持っていったら、そうはならなかったんですかね。……そろそろ、上書きしたいですよね? 「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー」のビデオとか持っていって、「その映画を観たあとに、これも観てね!」ってお願いして、少しずつポップなほうに持っていくのはどうでしょう?

大西 それを私がやるのは、文化への挑戦になっちゃいますよ(笑)。ほかにもロケットのロールアウトといって、打ち上げの3日くらい前にロケットが打ち上げ台に列車で運ばれていくんですが、プライムクルーはそれを見に行かず、バックアップクルーだけが見に行く、というのもあります。

すごいのは、線路にコインを置いておいて、その列車に轢かせるんですよ。当然ペシャンコになるんですけど、それを幸運のお守りにするんです。これがまた大人気で、みんなこぞって線路にコインを並べていくという……。僕ら日本人の感覚からすると、びっくり仰天です。打ち上げロケットを運んでいる列車ですよ?(笑) でもこうした交流もまた、楽しかったです。ただし日本では硬貨を損傷させると罪になるそうなので、ダメなんですが。

小山 じゃあ僕が「宇宙兄弟」で描かせていただきます(笑)。

大西 ぜひぜひ! あとは、打ち上げ当日にホテル兼訓練所から出ていく時に、30年くらい前のロシアのロックミュージックが流れます。それもまた、「なんでこの選曲!?」というか、クルーのみんなも正直どうノッていいのかが難しい曲なんですけどね(笑)。ホテル出る前には皆で小さな部屋に集まって乾杯しますし。これがちょっと感動するんです。一人ひとり、家族や支えてくれた人たちに感謝の言葉を伝えて、「これから行ってきます!」という気持ちを込めて乾杯するので。宇宙飛行士とその奥さん、バックアップクルー、各宇宙機関のその場にいるトップの人たちしか入れない部屋で行いますが、私は、ほかのクルーたちのコメントを聞いていて、ちょっとウルッときてしまいましたよ。

そのあとは、自分の部屋のドアにサインをして、例の謎のロックミュージックをバーンと流したところで、颯爽と外に出ていきます。

小山 そこで大西さんは、「なぜこの曲なんだろう……?」と密かに思っているわけですね(笑)。

構成・文/秋山美津子(SUPER MIX)

【プロフィール】
秋山美津子(フリーランス・ライター)
高校時代、自ら天文学部を発足するも、なぜか放送部に吸収合併された経験アリ。『宇宙兄弟』に出会ってからは、ISSの観測を楽しんでいます。自宅のベランダからは、北の空がまったく見えないのが悩みのタネ。
公式HP: http://www.spmx.jp/

(国際宇宙ステーション滞在編につづく)
公開は2017年4月予定

 


★次回公開予定★
「国際宇宙ステーション滞在編」
ロシア人宇宙飛行士・アナトーリのカッコ良すぎるひと言や、宇宙食の争奪戦など、宇宙ステーションでの生活ぶりが明らかに!

大西卓哉宇宙飛行士×小山宙哉 スペシャル対談 宇宙への旅立ち編【前半】
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→ https://koyamachuya.com/column/interview/33071/

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