インタビュー記事

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宇宙飛行士 油井亀美也さんや、スペシャルゲストへのインタビュー!

【大西卓哉宇宙飛行士×小山宙哉3−2】スペシャル対談 ~帰還&宇宙の未来編~(後半)

【大西卓哉宇宙飛行士×小山宙哉3−2】スペシャル対談  ~帰還&宇宙の未来編~(後半)
2016年、国際宇宙ステーションで115日間の長期滞在を終えた宇宙飛行士・大西卓哉さんとのスペシャル対談企画、第3弾! 途中からはなんと、油井亀美也宇宙飛行士も合流し、さらに豪華なメンバーに! 帰還する側・迎える側からのエピソードや、宇宙開発への想いを熱く語っていただきました。(前半はこちら

 

地上で日々繰り広げられている、驚くべき意思決定のプロセス

小山宙哉(以下、小山) NASAの同僚から言われた「カプセルから出る時、笑顔だけは忘れるな」というアドバイスは素敵ですね。実際は重力で頬が下がっちゃいそうですが(笑)。

大西宇宙飛行士(以下、大西) 一番ビックリしたのは、日本のメディアの方からインタビューを受けた時に、なぜかすごく喋りづらかったんですよ。ろれつが回らなくて。不思議に思っていたら、舌の重さを忘れていたんです。それに気付いて、「うわ、すごいなこれは」と。

小山 重力で思い出したんですが、ロシアの訓練で「セントリフュージ(遠心加速器)」はやりました? 帰還の時は4Gなのに、あれは8Gまでいけるんですよね。

大西 やりました。最大で8Gまでかけましたね。8Gまでいくと頬が下がっていくのがわかるし、自然と涙がツーッと出てきて。眼球の表面の水分が後ろに飛んでいくんです。腕も重いし、呼吸も意識して腹式呼吸をしないと苦しい感じ。胸部を誰かに押されている感じですね、ずっと。

小山 ロシアの回転イスもやりました?

大西 打ち上げ前にやりましたね。気持ち悪くなりました。あれ、油井さんは平気だったんですよね。

油井宇宙飛行士(以下、油井) 私は、全然気持ち悪くならなくて。「お前は、これ以上やっても意味がない」と言われてしまいました。

大西 ロシア人が油井さんのことを「あいつはサムライだ!」って言ってましたもん(笑)。油井さんがハードルを上げてしまったので、私の時は「ちょっと止めて!」と。確かマックスで、15分か20分ですよね。「油井はそこまでやった」と言っていましたから。

小山 油井さんは航空自衛隊の戦闘機パイロットを経験しているので、慣れるんですかね。

大西 体質もあるんじゃないでしょうか。私も、最初は2分くらいで気持ち悪くなっていたんですけど、毎日やっていたら少しずつ伸びていって、最後は8分~9分程度までは持ちこたえられるようになりました。

小山 話題が少し変わりますが、訓練中に管制室の職員たちと一緒に何か作業する機会ってあるんですか? キャプコムになれば、管制側にも参加できますけど……。

油井 JAXAでもNASAでも、宇宙飛行士の訓練をやっている時に、意思決定のプロセスを知る機会はあまりないですね。

ただ、私の場合は打ち上げが予定より2ヵ月伸びたので、そのあいだに色々な会議に顔を出して挨拶回りをしていました。そこで、「ああ、こうやって物事が決まっているんだな」と知ることができたんです。この経験は、宇宙ステーションに滞在していた時に役立ちましたね。

大西 私がフライトディレクターをやってみたいと思っているのも、自分が知らない地上サイドをよく知りたいというのが一番の理由ですね。どういう調整をしているのか、知っているのといないのでは宇宙飛行士としても大きく対応が変わりますから。

油井 実際、宇宙ステーションにいる側からしたらすごくシンプルな確認事項でも、地上では1日中真剣に会議をやっていたりするんです。

小山 たとえば、どんな内容ですか?

大西 たとえば、宇宙ステーションにある物が置いてあるとします。よく人が通る場所なので、別の所に動かしたいとするじゃないですか。宇宙ステーションでは物品も全て管理されているので、地上に「これ、こちらに移動していいですか?」と聞いても、すぐには回答がきません。なぜかというと、それを動かすことによって空気の流れが変わる可能性があるからなんです。

宇宙ステーションでは二酸化酸素を一ヵ所に溜めないことや、酸素を循環させることがすごく重要で、「それを動かすことで設計された空気の流れを変えてしまわないか?」という観点で見ている人がいるわけです。

だから返答に時間がかかる。でもこのプロセスを知らないでいると、「なぜこんな簡単なことを許可してくれないの?」となってしまいますよね。

油井 これがモジュールごとでも違ってくるので、アメリカの物だったらさらに複雑になります。国と国との調整になってきますから。

ランニングマシーンをどこに設置するかだけでも大変な議論ですよ。たとえば「きぼう」に入れた場合、その振動が実験に影響を与えないかや、宇宙ステーションの本体自身に振動が積み重なって負荷を与えないか、とか。

大西 タンパク質実験でじっとしていなきゃいけないのに、その横でランニングしていたらマズイですもんね(笑)。

 

広がる宇宙開発の未来と、それを繋ぐ技術への期待

小山 最後に宇宙開発の未来についてお聞きしたいのですが、今後、どのような点に期待していますか?

大西 私は自分のパッチ(ミッションエンブレム)に、月とその先に火星を入れています。夢はやっぱり、地球以外の天体に降り立って、そこから地球を見てみたいというのがあって。これは一人の人間としての夢ですね。

小山 月は僕も行ってみたいです。そこから地球を見てみたいという願望はあります。

大西 以前、NASAで月の研究をしている方とお話する機会がありまして。アメリカは1度、月に行っているので、もう1回行くことはそんなにハードルが高くないと私は思っていたんですが、月面着陸はすでに55年以上前の話で、その時のノウハウや技術は、図面でしか引き継がれていないそうなんです。

なので、図面のここにバルブが付いていることの意味や、設計者の元の意図など、どうしてもわからない部分があるらしくて。

月に行くとすると、それをまた1から設計しないといけないので大変なのだと、エンジニアの方が話されていました。

それがすごく印象に残っていますね。技術って人から人へ、「人」に宿るものなのだなと、強く感じました。

小山 技術もやはり、続けていかないと途絶えてしまいますよね。……でも、その当時からするとかなり進歩しているはずですし、安心して行けそうな気もしますが。

大西 かなりいいものができると思いますけどね。宇宙空間で使う物って「枯れた技術」と言われているもので、地上で何回もテストされて、宇宙空間でも何回も長時間テストした結果、不具合や異常がなく作動するものだけを使っているので、物自体は意外と古いタイプが使われていたりするんです。

たとえば、スペースシャトルに搭載されていたコンピューターよりも、みなさんが今持っているスマートフォンのほうが性能はいいはずです。

小山 最先端の技術を取り入れると、まずいことがあるのでしょうか。

大西 実験装置や情報機器とか、壊れてもすぐに取り換えればいいもの、そういったものは地上と同じような最先端の技術を使っています。

でも私たち宇宙飛行士の命に直結する部分では、なかなか最先端の技術は使われていないですね。信頼性が一番大事なので。

先ほど、トイレが壊れるという話(【大西卓哉宇宙飛行士×小山宙哉2-1】スペシャル対談  ~国際宇宙ステーション滞在編~(前半)参照)がありましたけど、宇宙ステーションは地上から400キロの所を飛んでいるので、物が壊れても交換したり新しい物を次の補給船で届けたりしてもらうことも可能です。

でもこれが火星を目指すとなったら、すぐには補給がきかないですし、物が壊れたら今自分たちが持っているもので直さない限り、その機能を取り戻せなくなります。そうなった場合の精神的なプレッシャーを考えると、私たちが今持っているテクノロジーで火星に行くというのは、まだ相当ハードルが高いなというのは感じますね。

小山 人工知能を搭載したロボットが直してくれるとか、宇宙ステーションで挑戦できるといいですよね。トイレにしてもそうですけど、地上で進歩するきっかけにもなりますし、火星を目指すために、色々な部分を発展させていける気がします。

大西 日本はそういう物作りが上手なので、得意だと思います。

それに、テストベッドとして宇宙ステーションを使うというのは、私はとてもいいアイデアだと思うんです。今使っているトイレは、ロシアの旧式のものなんですよ。最新技術でトイレを作り、それを宇宙ステーションの中で時間をかけてテストで使ってみて、次のもっと遠くを目指す時の本番で使ってみる。

そういった動きはどんどん始まってほしいと、個人的には思っています。

小山 民間企業の有人ロケットとかね、夢見ちゃいますね。

大西 民間が宇宙旅行を始めるとか、どこかで底上げされると、相乗効果で全体も上がっていきますから。私も色々なところで講演やお話をさせていただいていますが、「宇宙兄弟」の影響力って本当にすごいんです。小山さんには、ぜひこれからも頑張っていただきたいです。

小山 頑張ります。まあ僕自身はマンガを描いて楽しんでいるだけなんですが、次世代の宇宙飛行士が、「宇宙兄弟を読んで、宇宙を目指しました」と言ってもらえるのが僕の希望なので。大西さんも油井さんも、これからのご活躍を楽しみにしています。本当にありがとうございました!

大西油井 こちらこそ、ありがとうございました!

 

構成・文/秋山美津子(SUPER MIX)

【プロフィール】
秋山美津子(フリーランス・ライター)
高校時代、自ら天文学部を発足するも、なぜか放送部に吸収合併された経験アリ。『宇宙兄弟』に出会ってからは、ISSの観測を楽しんでいます。自宅のベランダからは、北の空がまったく見えないのが悩みのタネ。
公式HP: http://www.spmx.jp/


大西卓哉宇宙飛行士×小山宙哉 スペシャル対談 過去掲載分はこちら☆

【大西卓哉宇宙飛行士×小山宙哉 1-1】スペシャル対談ー宇宙への旅立ち編ー (前半)

【大西卓哉宇宙飛行士×小山宙哉 1-2】スペシャル対談ー宇宙への旅立ち編ー (後編)

【大西卓哉宇宙飛行士×小山宙哉 2-1】スペシャル対談  ~国際宇宙ステーション滞在編~(前半)

【大西卓哉宇宙飛行士×小山宙哉2−2】スペシャル対談  ~国際宇宙ステーション滞在編~(後半)

【大西卓哉宇宙飛行士×小山宙哉3-1】スペシャル対談  ~帰還&宇宙の未来編~(前半)

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