宇宙兄弟リアル

宇宙兄弟リアル

『宇宙兄弟』に登場する個性溢れるキャラクターたち!そのモデルとなったリアル(実在)な人々を宇宙開発最前線の現場『JAXA』の中で探し出しリアルな話を聞く!

〈宇宙兄弟リアル〉私の『宇宙兄弟』的、瞬間  ~上垣内茂樹 宇宙飛行士・運用管制ユニット長 編~

〈宇宙兄弟リアル〉私の『宇宙兄弟』的、瞬間  ~上垣内茂樹 宇宙飛行士・運用管制ユニット長 編~
Credit:JAXA

『宇宙兄弟』には、ムッタを始めとする宇宙飛行士たち、また宇宙開発に従事する人々が、宇宙への夢と情熱を胸に、さまざまな困難に直面しながらも仲間と共に乗り越えていく様子が感動的に描かれています。彼らが壁にぶちあたり、その壁を乗り越えた瞬間を『宇宙兄弟リアル』では、「『宇宙兄弟』的、瞬間」と呼び、実在の人物が実際にどんな壁に遭遇し、そのとき何を考え、どう乗り越えたのか?また壁を乗り越える糸口となった人との出会いや言葉などを、具体的なエピソードを交えて紹介します。

今回は宇宙飛行士候補者の選抜に深く関わる日本の有人宇宙開発の生き字引、宇宙飛行士・運用管制ユニット長・上垣内茂樹さんの「『宇宙兄弟』的、瞬間」を伺いました。

〈宇宙兄弟リアル〉上垣内茂樹/宇宙飛行士・運用管制ユニット長 ~宇宙飛行士の支援業務と『きぼう』管制を統括する責任者~

前半

後半

思いもよらぬ伝言

あるスペースシャトルでのミッションで、前回は上手く作動しなかった実験装置を改良し、リベンジに再び宇宙に飛ばした。ところがいざスイッチを入れると、すぐに電源が落ちてしまうのだ。

NASAとスケジュールを交渉し、上のクルーに指示を出しながら2時間ほど修理を試みたが、どうしても満足に動かない。他の実験も目白押しの中、都合3回計6時間ほど修理に時間を取ってしまい、NASAの管制官からも「上垣内、諦めろ」と声が掛かった。

諦めきれないものの、我々からは宇宙飛行士に「残業して何とか頑張ってくれ」とは絶対に言えないし、言ってはいけない暗黙のルールがある。頼まれた宇宙飛行士は断りずらいし、無理をしてしまう恐れがあるからだ。

落胆していた頃、宇宙飛行士とプライベートな通信をしたフライトサージャン(医者)を通じて、ある伝言が届いた。上のクルーが「もし日本の実験チームにこの装置を直せる手立てがあるんだったら、俺たちは休日を使ってトライしてもいいと伝えてくれ」と言ってきたというのだ。

すごく嬉しかった。結局エンジニアと修理の方策を念入りに練って、上のクルーに休日を返上して4回目のトライをしてもらった。結果、装置は上手く作動して実験も完遂する。あの時は、涙が出るくらい嬉しかった。実験がきちんとできたというのと同時に、彼らの心意気が頼もしく嬉しかったのだ。無理をさせたことを美談にするつもりはないが、地上と宇宙とで居る場所は違っていても、宇宙開発を推進する仲間としての絆を改めて感じた出来事だった。

Credit:JAXA
閉鎖環境適応訓練設備の入り口前で。

『宇宙兄弟リアル』次回登場のリアルは!?

スイングバイ技術社員/福田直人、のリアル!

次回の『宇宙兄弟リアル』は、スイングバイ技術社員/福田直人のリアル、植松洋彦さんが登場。

六太と同じ宇宙飛行士選抜試験に最年長54歳で受験。3次試験まで残るも、遂には夢を果たせなかったロケット開発技術者の福田直人。日本初の有人ロケットを作り、それに乗って宇宙に行くことが子供の頃からの夢だった。一方、JAXAでHTV技術センター長兼チーフエンジニアを務める植松洋彦さんも、宇宙船の開発に見果てぬ夢と熱い情熱を注ぐ男だ。宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)は、改良次第では有人宇宙船と成り得る潜在能力を秘めている。「こうのとり」初号機の打ち上げの日、出勤する植松さんは玄関口で見送る奥様に、「歴史を変えてくる」と言い放った。次回は、そんな熱い男の熱い話がほとばしる!乞うご期待!!

ご本人に質問したい事があれば、筆者ツイッター(@allroundeye)に書き込み下さい。読者の皆さんから頂いた質問内容を可能な限り反映してインタビューを進めて参ります!また連載に関して感想・希望などあれば合わせてお寄せ頂ければ幸いです。頂いたご意見を交え、さらに充実した連載にしていきます。

【宇宙兄弟リアル】が書籍になりました!
『宇宙兄弟』に登場する個性溢れるキャラクターたちのモデルともなったリアル(実在)な人々を、『JAXA』の中で探し出し、リアルな話を聞いているこの連載が書籍化!大幅加筆で、よりリアルな宇宙開発の最前線の現場の空気感をお届けいたします。

 

今までの『宇宙兄弟リアル』はこちら

 

<筆者紹介>  岡田茂(オカダ シゲル)

NASAジョンソン宇宙センターのプレスルームで、宇宙飛行士が座る壇上に着席。
気持ちだけ宇宙飛行士になれました。

 

東京生まれ、神奈川育ち。東京農業大学卒業後、農業とは無関係のIT関連の業界新聞社の記者・編集者を経て、現在も農業とは無関係の映像業界の仕事に従事。いつか何らかの形で農業に貢献したいと願っている。宇宙開発に関連した仕事では、児童書「宇宙がきみをまっている 若田光一」(汐文社)、インタビュー写真集「宇宙飛行 〜行ってみてわかってこと、伝えたいこと〜 若田光一」(日本実業出版社)、図鑑「大解明!!宇宙飛行士」全3巻(汐文社)、ビジネス書「一瞬で判断する力 若田光一」(日本実業出版社)、TV番組「情熱大陸 宇宙飛行士・若田光一」(MBS)、TV番組「宇宙世紀の日本人」(ヒストリーチャンネル)、TV番組「月面着陸40周年スペシャル〜アポロ計画、偉大なる1歩〜」(ヒストリーチャンネル)等がある。

 

<連載ロゴ制作>  栗原智幸
デザイナー兼野菜農家。千葉で野菜を作りながら、Tシャツ、Webバナー広告、各種ロゴ、コンサート・演劇等の公演チラシのデザイン、また映像制作に従事している。『宇宙兄弟』の愛読者。好きなキャラは宇宙飛行士を舞台役者に例えた紫三世。自身も劇団(タッタタ探検組合)に所属する役者の顔も持っている。