宇宙学生

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「宇宙にまっすぐ」な学生を、現役大学生の宇宙フリーマガジンTELSTAR編集部が取材!

『宇宙学生』第三回ー宇宙科学研究所の学生ってどんな人?ー

『宇宙学生』第三回ー宇宙科学研究所の学生ってどんな人?ー
第3回
総合研究大学院大学 外岡学志
~宇宙科学研究所の学生ってどんな人?~
「宇宙学生」はいろんな方面から「宇宙にまっすぐ」な学生を現役大学生の宇宙フリーマガジンTELSTAR編集部が取材・インタビューして、宇宙の魅力を伝えます。宇宙フリーマガジンTELSTAR編集部が、様々な分野の「宇宙にまっすぐ」な学生をインタビュー!インタビューを通して宇宙の魅力を全4回にわたってお届けしていきます。

宇宙学生第三回はより実際の宇宙開発へ近づいてゆき、総合研究大学院大学という大学院に籍を置き、宇宙科学研究所で研究を行っている学生さんへインタビューしてきました!
宇宙探査機に使われる新たなエンジンの研究開発とはどんなものなのでしょう?
宇宙科学研究所で研究している学生さんは普段どんなことを考え、どんなことを感じ、どんなことをしているのでしょうか?

学生の立場から最先端の宇宙開発

記者:「宇宙探査機に使われる新たなエンジン」ってどんなものなのですか?
外岡:有人火星探査の実現に向けて、プラズマロケットという推進器の一つ「MPDスラスタ」の研究をしています。宇宙空間で使うもので、惑星探査機などについているものです。低燃費と強い出力の両立を目指す推進器を研究、開発しています。
有人火星探査という究極の目標の実現するためには、地球と火星の間を往復で、かつ高速で移動し、大型物資を運べるロケットが必要です。これまでにない「燃費が良い強力なロケット」として新型プラズマロケットの実現が期待されています。

※プラズマロケット:プラズマという高いエネルギーを与えられた物質を利用したロケット。
※推進器:探査機などに推進力を与える装置。

記者:そのエンジンの開発ってどんな風に何をしているのですか?
外岡:基本的にはコンピュータを使って推進器がどのように熱を持つのかなどを計算する「シミュレーション」と、実際に製作したプラズマロケットを実験装置内で動かし、データを取ってそれを考察する実験の二つが多いですね。

記者:学生というと黒板にむかってノートをとるというイメージですが、大学院の学生となるとやはり実験が多くなるのですか?
外岡:毎週報告会があって、こういう実験をやろうと思っていますということを発表して、先生の意見をもらったりディスカッションをしたりすることもあります。
全く座学をしないかというとそうではなくて、新しい測定に挑戦するときそれに対する知識がないときは文献を当たったりすることももちろんあります。

記者:その研究活動をするなかで、やりがいを感じるとき、充実していると感じるときはどんなときですか?
外岡:機械いじりは小さいときから単純に好きだったので、何か組み立てて、繋げて、ピコピコやるというのは楽しいですね。
また、新しいことを始めたとき、予想外のことが起こったときにしっかり結果が取れて、今まで世界の誰も知らなかったことを数字できちんと知れたり画像で見えたりするというのもすごく嬉しいです。

記者:逆に研究をしていてつらいな、大変だなとおもうことはなんですか?
外岡:研究をしていて、基本的に滞りなくうまくいくということはないんです。うまくいった前回と同じ方法でやってもうまくいかないこともあります。限られた実験期間のなかで、そういう問題が起こっているときは大変だなぁと思いますね。

記者:研究というとすぐに芽が出ないような地道なイメージがあるのですが、モチベーションはどこからくるのでしょうか?
外岡:僕の行っている研究の究極的な目標は有人火星探査です。いろんな人の意見があると思いますが、いつ達成されるのかというともしかしたらちょっと先のことなのかもな、と僕は思っています。だから研究へのモチベーションが下がるということはなくて、こういう研究はいずれその目標が達成されるための必要な、欠けてはいけない一つのピースであることは確かなんです。
この研究はすぐに日の目をみることはないかもしれないけど、大きな流れで見たときに必要なプロセスだと思っています。


DSC_3773MPDスラスタの実験の様子

夢の有人火星探査にむけて

記者:一番最初の宇宙への興味が起こったきっかけや出会いというものはありますか?
外岡:これというきっかけがあるわけではないのですが、小学生の時の理科の先生や親といっしょにやった化石掘りや天体観測、スライム作りなどの遊びのなかで理科が好きになっていったのかなと思いますね。
宇宙に関しては同じ北海道出身の毛利さんの話を聞いたことや兄と科学館に行ったことなど、小さな積み重ねがあるのかなと思います。
あとは小学校のときの担任の先生が結構大きく影響していると思います。理科が専門の先生だったのですが、絶対に教室で理科の授業をせず、毎回実験をさせてくれました。授業が終わったあともさせてくれましたし、放課後理科準備室に行ったりもしましたね。

記者:宇宙が「好きなもの」から「研究」に変わるきっかけのようなものはありますか?
外岡:僕らの世代は火星というものに結構影響を受けてきた気がしています。雑誌で隕石から有機物が見つかったという記事があったり、NASAが火星に探査機を送ったり、火星が何万年に一度の大接近をしたりと、火星が注目されていた時代ではありました。それで火星への憧れがあっていつかは火星に行きたい!と思い始めたのかなと思います。
高校生、大学生くらいになると火星には簡単にいけるというような雰囲気があったのに、必要な技術がまだ揃っていないということを知り、自分も参加できる余白があったというのがわかったので、研究の道に進もうと思いましたね。


宇宙学生_006実験装置と外岡さん

記者:自分が何年後、何十年後にどうなっていると思いますか?
外岡:夢としては自分が今やっている分野かはわからないですが、「探査」というところで研究を続けられていればいいなと思いますね。その中でもやはり「有人」というのは自分の中で結構大事なポイントかなと思います。

記者:なぜ有人なんでしょう?
外岡:大義としては人類の活動領域を広げる、とか地球はいつか滅びるからほかの星に生命を残すというのもあるのかなと思います。個人的にはまだ行ったことのないところへ行きたい、まだ見たことがないものを見たいというのがあります。
でも宇宙開発に携わるかどうかは関係なく人間にはこういう感情が潜在的に備わっているんじゃないかなとも思いますね。

記者:宇宙兄弟に自分が出ているとしたら、どんなポジションでどんなことをしていますか?
外岡:ムッタと一緒に火星探査の仕事ができていればいいなと思いますね(笑)。
ムッタが乗る宇宙船のエンジンをつくっていたらすごく楽しいなと思います。有人火星探査には小さいころから憧れがあるのでムッタの想いは結構わかる気がします。

記者:最後にこのコラムを読んでくださっている読者さんにメッセージをお願いします。
外岡:なにかしらみんな好きなものはあるはずで、それを見つけるというのが大事だと思っています。難しいことを考えず、好きなものを探してひたすらやり続けてください!

宇宙開発というと遠い世界の話のように感じてしまいますが、単純に「宇宙が好き」という原動力が一番大切なことなのかもしれません。「まだ見たことのないものを見たい。まだ行ったことのないところに行きたい」という探究心を大切にしていくことがこれからの時代を作っていく秘訣なのかもしれませんね!

次回第四回は学生だけの力で作り、打ち上げるロケットサークルで活動したのち、ロケットの研究をしている宇宙学生へと迫ります!お楽しみに!

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