~宇宙を「広報する」って?~
「宇宙学生」はいろんな方面から「宇宙にまっすぐ」な学生を現役大学生の宇宙フリーマガジンTELSTAR編集部が取材・インタビューして、宇宙の魅力を伝えます。
宇宙フリーマガジンTELSTAR編集部が、様々な分野の「宇宙にまっすぐ」な学生をインタビュー!
インタビューを通して宇宙の魅力を全4回にわたってお届けしていきます。
みなさまはじめまして、TELSTARです!
さて、宇宙兄弟には元ロケットエンジニアの福田直人さんや天文学の分野から宇宙を研究しているシャロン博士などいろいろな人物が登場しますね。
しかし、実際の世界では工学や理学のみでなく様々な方面から宇宙を志す「宇宙学生」がいるのです。この連載ではその「宇宙学生」に焦点を当て、その活動や想いをお届けしたいと思います。
第一回は、「フリーマガジン」を通して宇宙の魅力を伝える活動をしている私たちTELSTARの自己紹介も兼ねたインタビューコラムです!TELSTARの代表・城戸彩乃さんにインタビューしてきました!
宇宙を広報するって?
記者:”研究”や”開発”という単語と比べて、”広報”という単語は宇宙と一見結びつかないようにも思えるのですが、そもそも「宇宙を広報する」ということはどういうことなのでしょうか?
城戸:広報って、普通は企業の製品とか理念とかイメージなどを一般の人に伝えるものですよね。でも、宇宙は自動車などに比べてまだ馴染みがないものなので、それぞれの企業や機関がそれぞれのやっていることを伝えるだけでは、その状況は変わりません。
この状況を変えていくためには宇宙の情報をよりわかりやすくまとめて発信し、一般の人たちにとって身近なものにしていかないといけないと思うんです。
その宇宙の情報を一般に向けてわかりやすく発信する役目を私たちTELSTARでやろうということですね。
記者:そもそも一番はじめに「宇宙を広報しよう」と思ったきっかけはありますか?
城戸:もともと宇宙のことにはあまり興味がなかったのですが、高校生の時にスペースデブリ(=宇宙ゴミ)に出会って、「こんな綺麗な星空がゴミだらけだなんて許せない!」と思ったのが、宇宙に興味を持ったきっかけです。ですが高校二年生の終り頃に理転したので周りに遅れをとってしまって、結構苦労しました。そういったことがあって、もっとはやく宇宙に出会っていればという思いが強くあってそれが一つのルーツにあるのかなと思います。
そして実際に大学に入って宇宙業界というものに片足を突っ込んだとき、出会った人たちがみんなエネルギッシュでキラキラしていて、「俺がこれをやると宇宙はこうなってこうなるんだよ!」って仕事に誇りを持って、すごく熱く話してくれるんですよね。なんとなく大人は日々やることに追われて仕事に疲れているイメージがあったので、その姿がとても印象的でした。
でも、そういう熱くて、かっこいい話は突っ込んで聞かないとあまり話してくれないんです。その時にすごくもったいないなと思いました。
自分は研究室のみんなが5分できるものに一時間以上かかってしまうこともあったりして、研究者には向かないのかなとも思っていました。
研究や開発ではなくて、自分はなにができるのかなと考えたとき、進路選択をする高校生たちに宇宙の魅力やかっこよさを伝えていきたい。そして、宇宙かっこいい!自分も宇宙やりたい!と思ってくれる人を増やしたいと思い、広報しようと思いました。
記者:広報しようと思ったとき、イベントやWebページではなく、なぜ紙のフリーマガジンを選んだのですか?
城戸:宇宙の魅力をより多くのターゲットに伝えるためには、より多くの読者が気軽にTELSTARを手に取ることが出来る必要があります。そのために一番効果的なのは無料であるからこそ、さまざまな場所で配布でき、無料であるからこそすぐに手に取り、持ち帰ることのできるフリーペーパーという形態です。もともと自分は雑誌やフリーペーパーが好きで、さほど興味がないものでも手にとってしまうことがあったんです。かわいい表紙のフリーマガジンを何気なく手に取って読んでみたら初めて知ることや「へぇ」と思うこともあったりして、そういうことを宇宙というものに対して体験してもらうのが一番いいと思いました。
また、イベントにしろ、Webにしろ、自分からアクションを起こさない限りそこにアクセスできないですよね。宇宙が好きな人は自分でJAXAとかのホームページを見てイベントに行ったり情報を得たりしますが、そうでない人にそうやって情報を知れ、というのは無理な話なんです。だから、アクションを待つのではなく自分から高校生の生活圏に入っていくことが大切かな、と。
さらに、Webは一度見たらその後同じものを検索することがなかなかないのに対し、フリーペーパーは、一度しまわれてもまた見つけたときに開いてもらうことが出来るある種の保存性のようなものがあります。学生という利益を度外視して集まれる仲間がいるからこそできること。掛け値なしでたくさんの人が協力してくれるからこそ、私たちは最強の媒体であるフリーペーパーを選ぶことができました。

記者:城戸さん自身は個人として、将来の宇宙へどう関わっていきたいですか?
城戸:宇宙を日本の基幹産業にするという大きな目標に向かっていく中心にいたいなと思っています。エンジニアや研究者の人たちの開発や研究の「作る」の中心ではなくて、その人たちをまとめて、進む道筋を見せられるような人になりたいなと思ってます。
若手エンジニアや大学院生の人とは宇宙をもっと基幹産業にしてかないと!ということを話すことが多いのですが、まだその方法を模索している最中で、具体的なはっきりとしたビジョンはありません。でも、自分はまだまだ知らないことがたくさんあるので、まずは自分が世界や社会のことを知らなくてはならないなと思っていますね。
TELSTARとしては、日本中が宇宙を「得体のしれないモノ」としてではなくて、「好きなもののひとつ」と思ってもらえるような社会になることがひとつのゴールなのかなと思います。自動車業界と聞いてピンと来ない人はほとんどいないけど、まだ宇宙ではそうじゃない。だから、フリーマガジンを読んでもらって、もっと宇宙が身近な社会にしたいなと思います。

城戸:わたしの目標は日本の宇宙開発を世界に誇る一大産業にすることなので、民間の宇宙開発ベンチャーの社長をやっているのかなと思います。
ロケットなのか衛星なのかはよくわからないですが、これから主流になるような再利用できるロケットやデブリ除去の事業とかをしてたら面白いですね(笑)。
記者:これを読んでくださっている読者の方にメッセージをお願いします。
城戸:宇宙は工学や理学の分野だけじゃなくいろんな分野があります。
今はまだない分野を開拓していけば第一人者になれるかもしれません。
それくらい宇宙は可能性溢れるもので、わくわくするものだと思うので、自分が好きなものと宇宙をつなげたらどんなことになるのかなということを少しでも考えてくれたら嬉しいなと思います。
***
宇宙兄弟をはじめとした宇宙を題材にした漫画やドラマのおかげで宇宙そのものや宇宙開発ということが少しずつ身近になっているといえますが、小学生時代のムッタの周りのようにまだまだ「得体のしれないモノ」として考えている人は多いのかもしれません。
そんな人に宇宙の魅力、面白さを「伝えてゆく」ということも一つの宇宙開発なのかもしれませんね。
宇宙フリーマガジンTELSTARはホームページでのPDF版ダウンロードや定期購読、私たちの活動を応援する「一口宇宙飛行士」も受け付け中です!興味をもって頂けた方はぜひチェックしてみてくださいね。
次回は宇宙と法律の関わりを考える「宇宙法」について研究をしている宇宙学生に迫ります!
お楽しみに!
About TELSTAR
私たちは大学生を中心とした団体で星空や宇宙開発の内容を取り上げたフリーマガジンを発行する活動をしています。年四回、主に高校や科学館などに配布しており、2013年2月の設立から累計5万7千部を発行しています。