宇宙学生

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「宇宙にまっすぐ」な学生を、現役大学生の宇宙フリーマガジンTELSTAR編集部が取材!

『宇宙学生』第二回ーー宇宙開発は理系のモノ?

『宇宙学生』第二回ーー宇宙開発は理系のモノ?
第2回
井上榛香~宇宙開発は理系のモノ?~
「宇宙学生」はいろんな方面から「宇宙にまっすぐ」な学生を現役大学生の宇宙フリーマガジンTELSTAR編集部が取材・インタビューして、宇宙の魅力を伝えます。
宇宙フリーマガジンTELSTAR編集部が、様々な分野の「宇宙にまっすぐ」な学生をインタビュー!インタビューを通して宇宙の魅力を全4回にわたってお届けしていきます。

「宇宙開発がしたければ理系に進まなければいけない。」「文系に宇宙開発は無関係。」
そう考えている方は多いのではないでしょうか。

しかし、宇宙開発が進んでいくと、宇宙開発は理系の研究者やエンジニアだけでなく、法律や政治に関わる人にも関係してきます。

第2回は、将来宇宙に関するビジネスをすることを夢見て大学で宇宙法を学びながら、宇宙のすばらしさを伝えるべくライターとして様々な記事を書いたり、イベントを開催されたりなど幅広く活躍されている井上榛香さんへのインタビューコラムです。

宇宙法って?

記者:井上さんが学ばれている宇宙法とは、あまり聞いたことがない方もいらっしゃると思うのですが、どのようなものですか?

井上:宇宙法には大きく分けて国内法と国際法の2つがあります。例えば日本だと、国内法には、今後の宇宙開発の基本的な方針や予算などを定める宇宙基本計画を作成しなければならないと定めたものなどがあります。国際法は、例えば宇宙飛行士が不時着したときに当然彼らはパスポートを持っていないわけですが、彼らを不法入国として扱うことをせず救助のための措置をとらなくてはならないなどという、国家間の関係を取り決めるものです。国内法と違い国際法には強制力がなく、守らなかったからと言って刑罰が決まっているわけではありませんが、皆で守らなければならないルールみたいな感じです。

記者:宇宙法を学びたいと思ったきっかけは何ですか?

井上:実は私は、高校生の時は物理オタクで法律には全く興味がありませんでした。大学も物理学科か地球惑星学科に行こうと思っていました。でも、第一志望のところに4点足りなくて落ちてしまって、そこで自分には向いていないのではないかと思い、進路を考え直しました。その時に塾の先生に「ロケットはもしかしたらほかの国に墜落してしまうかもしれないでしょう。だからロケットを打ち上げるときも法律が必要になるんだよ。」と言われて、国際法に興味を持ち、調べていくうえで宇宙法というものがあると知りました。将来宇宙に関連したビジネスをやりたいと思っていたのでそのためには宇宙法を知っておかなければならないと思い、勉強しようと思いました。

記者:高校生の時は法律には興味がなかったとのことでしたが、宇宙法を学んで考え方などはどう変わりましたか?

井上:先ほども話したように私は高校生まで物理や地学といった「せまい」宇宙しか知りませんでした。しかし、宇宙法を学ぶようになって宇宙のあり方がとても広がった気がします。宇宙法はそれだけを勉強していればいいわけではなく、他にもいろいろなことを学ばなければなりません。例えば、先日大学のゼミで宇宙エレベータの話を勉強したのですが、宇宙エレベータは海中に基盤を作ることになるので海洋法が関わってきます。そこからケーブルも伸びていくことになるので航空法も考えなければなりません。また、宇宙開発には国家が大きく絡んでくるので、政治についても学ぶ必要があります。このように宇宙開発をやっていく上では、一つのことだけでなく、いろいろなことに目を向けなければいけないと考えるようになりました。

※宇宙エレベータ:地球の周りの軌道に打ち上げられたターミナルと地上の施設を結ぶエレベータ。現段階では構想段階である。

記者:宇宙法を学ぶ意義は何だと思いますか?

井上:昨年、アメリカで天体や小惑星の資源探査ビジネスを許可する法案が上院で可決しました。しかしこれは宇宙のものは一つの国家が独占してはならないという宇宙条約に違反しているのではないかと問題になっています。このように宇宙開発が進むにつれてこれまでは考えられてこなかった問題が発生して来ると思います。その中で新たな法律が作られたり、解釈が増えたりして宇宙開発を行う上での宇宙法の重要性は大きくなっていくはずです。だから今後宇宙ビジネスをやろうとしたときに、宇宙法を知っておくことは大きな強みになると思います。
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あなたにとっての宇宙は?

記者:宇宙に興味を持ったきっかけはありますか?

井上:少し宇宙兄弟みたいかなとか思うんですが、私が宇宙を好きなのは、妹のおかげなんです。小さいころに妹が亡くなってしまって、その時、両親や祖父に「死んだ人は星になるんだよ。」と言われました。それから私は妹の星を探そうと思って、「この星雲にいるのかな」といろいろ調べました。そのあと、結局亡くなった人が星になるわけではないということはわかったのですが、それでも変わらず宇宙は好きでした。

記者:井上さんの将来の夢は何ですか?またそのきっかけはなんですか?

井上:将来は宇宙探査か、宇宙を使って皆がハッピーになるような宇宙ビジネスをやりたいです。
きっかけは、高校1年生の時にはやぶさがかえって来たのを知ったのが大きかったと思います。私はそれまでどちらかというと星などに興味があったのですがはやぶさを見て宇宙探査に興味を持ちました。あと私はサプライズで何かしたり人を楽しませたり、喜ばせたりするのが大好きというのもありますね。
それから、宇宙の魅力をたくさんの方に伝えるためにライターになるのもいいなと思います。実は現在もライターとしていくつかのサイトで記事を書かせていただいていて、主に政治やビジネスという視点から見た「宇宙」について書いています。先日はお正月ということから「お年玉×宇宙」で人工流れ星が100万円で打ち上げられるという話や月の土地の話について書きました。

記者:お話を伺っていると井上さんがどれだけ宇宙が好きか伝わってくるのですが、宇宙の魅力は何だと思いますか?

井上:宇宙のことはどれだけ考えても尽きないところです。あとは人間の本能だと思います。わからないことは知りたいと思うし、ディズ二ー映画「リトルマーメイド」のアリエルが「地上に出たい」「踊りたい」と思ったのと同じように人間も「宇宙に行きたい」「無重力を体験したい」と思うのではないか思います。

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記者:宇宙兄弟に自分が出るとしたらどのようなことをしていると思いますか?

井上:ムッタと一緒に宇宙のスピンオフ技術を使ってなにかやったり、イベントを開いたりしたいです。宇宙を使ってみんなをアッと驚かせて楽しませたいですね。

記者:最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。

井上:私は宇宙の魅力をたくさんの人に伝えたいと思い、活動しています。先ほどお話ししたように宇宙に関連した記事を書いたり、バーの一日店長をして「宇宙人っていると思いますか?」というような宇宙の話をしたりしています。しかしこれはみんなに宇宙を好きになってもらうためだけに活動しているわけではありません。私は高校生の時、宇宙が好きだったことでいろいろなことを頑張れました。同じように、たくさんの人に好きなものを見つけてほしいと思っています。そして何かこれが好きということをみつけたら、それを多方面から見て自分がやりたいこと、進路を見つけて、ぜひ夢中でやってください。夢中で何かをすることの素晴らしさをたくさんの人に感じてほしいです。

私達は宇宙というと物理学や天文学や工学といった「理系のもの」というイメージを持ちがちです。しかし、今後の宇宙開発に必要なのは、理系や文系といったくくりにとらわれず多様な視点から宇宙をみていくことなのかもしれません。

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