宇宙飛行士選抜試験〜12年間 語ることができなかったファイナリストの記憶〜

宇宙飛行士選抜試験〜12年間 語ることができなかったファイナリストの記憶〜

これまで5回行われてきたJAXA宇宙飛行士選抜試験。一体どのような試験なのだろうか…? その第5期選抜にて、10ヶ月に及ぶ選抜プロセスの最終試験まで勝ち残った経験を持ち、現在は宇宙船「こうのとり」のフライトディレクタに従事する作者による、大きな挫折と前進の記録。

終章 紡いでいく夢

終章 紡いでいく夢

小さいころ、ぼくは宇宙に憧れた。

なぜ地球にだけ生命があるのか?138億年前に誕生し、いまでも広がりつづけている広大な宇宙。ぼくたち人類が見ているのはそのほんの一部の、ほんの一瞬だけだ。ぼくたち人類が知らないことが宇宙にはまだどれだけあるのだろう?宇宙にはそのヒントとなる宝物がまだまだいっぱい隠されている。

人類はこれまでも活動領域を広げてきた。

木から降り、草原に住み、海を渡り、大陸を開拓し、あらゆるところに街を作り、移動手段を発達させ、地上のみならず空をも制した。今では、地球周回軌道のみならず太陽系の各惑星に探査機を飛ばしている。

一方で、地球が自分たちのものであるかのように振る舞ってきた結果、地球を汚染し、生態系を崩し、もしかしたら将来地球に住めなくなるかもしれない事態を引き起こしている。

知的好奇心からの宇宙進出、次の住処を求めるための宇宙進出という両面で、人類が宇宙に進出しなければならないことはもはや必然ではないか。

ぼくは、地球人全体で協力して、ある一定のリソースを使いながら、種の保存のために宇宙に進出する準備を進めていかなければならないのではないかと本気で思っている。ぼくたちは人類の歴史のほんの1ページを生きているに過ぎない。その1ページで何をして何を残すか?が重要だ。

ぼくは好奇心から宇宙を見てみたかった。宇宙を体感したかった。そして、それ以上に、ぼくは自分の一生をかけて、宇宙を舞台に、人類の次のステージを開拓していく一員になりたいと思っている。それは今でも変わらない。

人類が生きていけない過酷な環境である宇宙に、人類の英知である科学技術をもって挑戦することがカッコイイと思った。

その急先鋒が宇宙飛行士だと思った。だから、憧れた。なりたいと思った。

念願叶って、宇宙開発の仕事をするようになり、近くで見てより憧れを強くした。そんなぼくにチャンスがめぐってきた。精いっぱい頑張った。でもダメだった。諦められなかった。

ぼくのすぐ傍で、新しい宇宙飛行士が生まれていった。

すぐ傍にいたから引きずったのかもしれない。すぐ傍にいたから夢を追い続けられたのかもしれない。

小さいころは、可能性は無限大だった。何にでもなれると思っていた。成長するたびにできることが増えていく。

しかし、あるところからは、実は、できないことが増えていく。

大人になる過程で、夢だったものを、夢のままではなく、現実的な目標にしていかなければならない。

現実が見えてしまい、自分がやれることの限界が見えるようになって、だんだんと夢が狭まっていく。選択肢がどんどん減っていく。その中で、たくさんの夢を捨てなければならなくなる。

ぼくの夢は一度は破れた。

しかし、ぼくの宇宙飛行士への挑戦は、もっと根底にあった『ぼくがやりたいこと』が何だったのかを考えるきっかけをくれた。

ぼくがやりたかった本当の夢は、宇宙飛行士でなければ叶えられないわけでは決してない。

宇宙飛行士でなくても、同じ方向を向いて、同じ目標に向かって、そして宇宙飛行士ともタッグを組んで、もっと大きなことを成し遂げられる確信を持つことができた。

宇宙飛行士に挑戦したことで、ぼくには同じ夢に向かって一緒に頑張れる仲間がたくさんできた。きっとまた人生のどこかでたびたび交わっていくだろう。

夢はけっして終わることはない。

この挑戦から生まれた新しい夢を、ぼくはこれからも追い続ける。

あとがき

2020年6月16日~12月15日まで半年に渡り、連載をご覧いただいた方、本当にありがとうございました。1回も休まず全27回を走り切ることができましたのは読んでくださるみなさまのおかげです。12月5日には、書籍『宇宙飛行士選抜試験 ファイナリストの消えない記憶』が発売となっており、Web連載に加えて書籍を買っていただいた方には、もう足を向けて寝ることができません。ぼくの作品にお付き合いいただきありがとうございます。

このWeb連載と書籍発売に向けた活動の中で、記憶に残っていることが2つあります。

それは、Web連載の1回目でした。

なかなか文章に心の動きを出せないでいたぼくに、コルク代表の佐渡島さんが言った一言。

「もっとウェットに!」

その言葉をもらったその日の夜、勢いのままに、宇宙飛行士挑戦体験の中でもダントツでもっとも感情が動いた10年以上前のシーンを思い出し、あの時の感情をあの時のままにキーボードを叩いて表現しました。

「それ、すごくいいよ」

そして、そのシーンを「第0章 指先まで触れた夢」として連載1回目とすると、いきなり反響が大きく、とてもびっくりしました。ツイッターのフォロワー数が400人増えました。

もうひとつは、10月23日のダブル光一(失礼!ごめんなさい。)会見です。

書籍の「おわりに」を書き終え、気持ちの整理がはっきりとついたと思っていた2日後のことでした。

ぼくの心はざわざわしました。

でも、12年前とは違う感情であることは明らかでした。

書籍を書き終えたら、しばらくは好きな本を読んで、ゴルフを再開して、少しゆっくりしようと思っていたぼくは、リプランを決めました。あと1年、宇宙飛行士挑戦エバンジェリストとして、次世代の同志たちを応援する活動をしよう。

そして翌日の10月24日に、noteを開設しました。

noteはじめます

これからのぼくの活動にもぜひご注目ください!!

宇宙飛行士挑戦エバンジェリストとして、noteで本気で宇宙飛行士を目指す人のポテンシャルをブーストさせまくる活動をしていきたいと思っています!

そして、これはぼくの執筆活動の延長でやりたいと思っていたことでもあるのですが、この宇宙飛行士挑戦に関連した方々との対談も企画しています!

この活動にご興味のある方はこちらへお越しくださいませ!!!

noteマガジンへ

ではまた逢う日まで!アディオスアミーゴ!!


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今までの連載のまとめはこちら

※注:このものがたりで書かれていることは、あくまで個人見解であり、JAXAの見解ではありません

 


この連載『宇宙飛行士選抜試験 ファイナリストの消えない記憶 』の書籍が発売中です!

夢を追いかける人へ
夢を見つけたい人へ
夢を諦めた人へ

本気で宇宙飛行士を目指した挑戦者の姿を御覧ください。


宇宙飛行士を本気で目指す人に向けたnoteの連載を内山崇さんが開始しました。 宇宙飛行士を本気で目指している方へ。こちらから購読いただけます。

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<著者紹介>

内山 崇

1975年新潟生まれ、埼玉育ち。2000年東京大学大学院修士課程修了、同年IHI(株)入社。2008年からJAXA。2008(~9)年第5期JAXA宇宙飛行士選抜試験ファイナリスト。宇宙船「こうのとり」初号機よりフライトディレクタを務めつつ、新型宇宙船開発に携わる。趣味は、バドミントン、ゴルフ、虫採り(カブクワ)。コントロールの効かない2児を相手に、子育て奮闘中。

Twitter:@HTVFD_Uchiyama