『宇宙兄弟』の大好きなシーンや、心に刻まれたキャラクターの言葉。そしてそれを読んだときに湧き上がった感情。漫画を読んでいない瞬間にも、そうした『宇宙兄弟』から受け取ったものと、一緒に暮らしていけたら……
今回は、商品企画のささきが、4年間一緒に過ごしてきた「ムッタとせりかの手巻き時計」についてコラムをお届けします。
「端末の空き容量が残りわずかになっています。
空き容量がなくなると、動作に大幅な遅延が生じる可能性があります。」
携帯画面に、そんな通知が届いた。
ほうほう、日々にせいいっぱいになったときの私と一緒だね? と心で冗談を呟いて、
目新しいアプリも入れていない私の携帯が重たそうに抱えているのは写真データだったので、昔の写真を整理する。
そういえば、一番古いのはどのデータかな。
するするとスクロールするなかで目に留まったのは、4年前の日付で、ちょっと背伸びをして買った腕時計の写真。
黒くてシックな箱のなかで、ミリタリー感のある腕時計がおふとんに包まれるみたいに、クッションに巻かれている。
箱の内蓋には、まるで腕時計を照らすような位置に、金色の星が3つ並んでいる。
そんな写真が、1枚ではなく、2、3枚、
別角度で、光の差し方が変わるように撮影されている。
ああ、そうだった。
この腕時計が家に届いた日、嬉しくて、緊張して、
私の手で何かを損ねてしまわないかと、
怖々、慎重に、触ったんだった。
もう4年も経ったのか……。
生まれてから何年。
社会人になってから何年。
あの人と出会ってから何年。
いろんな数え年を毎年更新して、
どんな年も、あっという間に過ぎていって、
あっという間じゃないものなんてないんじゃないか、って思う。
でも、ぼうっとした私が「あっ」としている間に、
この4年、たしかに実際、いろんなことが起きていた。
遠くに引っ越しをして、それは気持ちがいいことだったけれど、どうしてもあの町に、もう一度戻りたいと思う夜がある。
会社では、信頼していた、気の合う先輩が退職してしまった。
けれど、力のある後輩が笑顔で入社してきてくれた。
プライベートでは、あの人との関係がどうしてか途絶えてしまった。
でも、思いもよらない関係も生まれて、今はその人と話をするのが楽しい。
おおきな変化は意外にするっと日常に入ってきて、
ささいな日常こそ、やけにドラマチックだったりする。
4年間のすべてなんて全く覚えていないし、
人間の記憶っていうのは、ほんとうに乱暴なものだなと思うけれど、
わがままになって、この4年間、
思い出せる限りのいいところを心に取り出してみる。
目を瞑って、深呼吸するみたいに、私の日々を肯定する。
いい気持ちになって、携帯を持った手元に視線を戻すと、今では、この腕時計が手首に馴染んでいる。
思い出した4年のなかでも、外にいる私は、ほとんど大体、腕時計を身につけていた。
写真を撮影するときに腕時計が画角に写ってどこか誇らしくなったり、心細さを感じたときに安心毛布みたいに時計に触れたり、手首に腕時計をつけたときのヒヤッとした感触で冬を感じたり。
腕時計が人生を大きく展開させることはないけれど、
おかげで嬉しい瞬間が増えただろう。
病めるときも健やかなるときも、そばにある。
飽きっぽいはずの私が、こうして、ゼンマイを巻き続けている。
たまに手首に巻くのすらサボった休日も少なくなかったけれど、今日は、こうして腕時計を身につけている。
買った当初は触るだけでドキドキとしたけれど、
今では一連の動作が日々に溶け込んで、
巻くときにも、何か別のことを考えていたりする。
だから、今夜、手首から腕時計を外すときには、
昨日よりも丁寧に外して、そっとやさしく置こう。
そして、明日の朝は、この腕時計が届いた日のことを思い出しながら、ゼンマイを巻いてみよう。
久しぶりに、23巻を読んでもいいかもしれない。
今では、私の手巻き時計。
もうすぐ、この腕時計を身につけて5周年になります。
2019年に発売された「ムッタとせりかの手巻き時計」とのエピソードコラムでした。
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今回コラムに登場した宇宙兄弟グッズ
ムッタとせりかの手巻き時計
2019年版は販売終了となっておりますが、
現在、ムッタとせりかの手巻き時計 復刻版 を販売中です。
▶︎手巻き時計が出てくるシーンを振り返る記事はこちら
▶︎ムッタとせりかの手巻き時計復刻版の製作秘話はこちら
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