第19回 南波家の年越し天ぷらうどん
南波家では年越し『うどん』だった。
19巻#182に登場、家族4人で初めてヒューストンで迎える年越しうどん。南波家ではうどんが年越しの定番のようだ。世間の大半は年越し『そば』だと知った時にはムッタは鼻から麺が出たらしい。
あの日とは逆の…。
かつて庭先で月を眺めながらムッタはヒビトに言ったことがある。どうせ宇宙飛行士になどなれない、月に行けるわけがないと。お前とは違うのだと。
そんなムッタに対してヒビトはつまらないと言い、兄を発奮させた。
年越しうどんを食べ終わり、ヒビトは一人庭先で月の思い出写真を懐かしそうに見る。そしてクリスマスパーティーの夜の、バトラー室長とのやりとりを思い返していた。
部屋の中から漏れる、父のモノマネや母の楽しそうな笑い声。父の新しいモノマネを見るよう呼びに来たムッタは、普段とはどことなく違うその姿にムッタは何かを感じ取り、アポもまたヒビトの傍へと寄り添う。
もしかしたら…俺はもう月に行けないかも
ヒビトの口から出る、まさかの言葉。月で大事故に遭うも仲間の窮地を救い見事生還。それが原因でパニック障害になりながらも、たくさんのキツイ想いを乗り越えて宇宙飛行士現役復帰試験をクリアしたヒビト。わき腹が痛む程走って駆け付けた先に見たヒビトの笑顔に、ムッタはもう大丈夫だと心から安心したに違いない。
そのヒビトから、まさかの言葉を聞く。
な…っ 何言ってんだよお前!
もうPDも克服したんだから
な~~んも心配することないだろっ
PDを克服したヒビトのことは、誰もが本心からもう何も心配ないと思っていたに違いない。当のヒビトもだ。だが全くアサインされる気配がなく、ヒビトも気付いてしまった。
俺の中からパニック障害(PD)が消えても…
周囲(まわり)の頭ん中からは消えねーんだ
”ナンバ・ヒビトはパニックを起こした宇宙飛行士”
――っていう事実はもう消せねーんだよ
言葉に詰まるムッタ。こんな時こそ兄として何か言ってやらなくては。
焦るムッタだったが適切な言葉が出てこなかった。この夜のことをムッタは長く後悔したに違いない。
年が明け、ムッタは管制官としての訓練で「なんとかなるもんだ」と手ごたえを感じていた。かつてのどうしようもなかった自分が、当時は不可能だと思っていたことが今はできている。だからヒビトもきっと―。
あの日、何も言えなかった自分を恥じて「なんとかなる」と伝えようとしたムッタだったが…それを伝えられることなく、ヒビトは突然姿を消した。
材料(2人分目安)
生エビ(ブラックタイガーなど) | 大4尾 |
---|---|
茹でうどん | 2玉 |
白だし+水 | メーカーにより。概ねだし:水=3:7 |
長ネギ | 15cm程度お好みで |
かまぼこ | 4枚 |
天ぷら粉+冷水 ※卵が必要な場合もあります。 | メーカーにより。概ね粉:水=2:3 |
揚げ油(サラダ油・菜種油など) | 適量 |
今回は白だしを使用しますが、もちろんつゆのお味はお好みで♪白だし、天ぷら粉ともに各メーカーの基準に合わせてくださいね。
作り方
【1】
先にかまぼこ、長ネギを切っておきましょう。かまぼこは0.7mm程度に、長ネギは小口切りにしておきます。
【2】
エビの下処理をします。皮をむき、内臓や卵の部分が付いていれば取り除きましょう。
【3】
エビの腹側に何か所か切れ目を入れます。切れ目に指を入れてエビぞりにし、背中の筋がブチブチと切れるようにしましょう。これでほぼ真っすぐになります。
最後にしっぽの先を切り落としましょう。
【4】
てんぷら粉と冷水を混ぜます。分量はメーカーにより異なりますので合わせてください。少し粉が残る程度にさっくり混ぜましょう。
【5】
油を180度まで温めます。混ぜたてんぷら粉を少し油に落とし、しゅわーっと上がってきたら揚げ時です。
【6】
尾をもって全体的にてんぷら粉をまぶし、尾を持って頭の先の方から油に静かに落としていきます。2~3分が目安。エビが浮き上がってきますので引き上げましょう。
【7】
鍋に水とだしを混ぜて火にかけ、沸騰させます。間に別の鍋でうどんを一度茹でましょう。
【8】
茹でたうどんを器に入れ、だしを流しいれた後にかまぼこ、ネギ、天ぷらをもりつけ完成。
月面で会おう。
ヒビトはいつも突然いなくなる。子どもの頃、気づいたらいなくなっていたヒビト。父と母は「しょっちゅういなくなる」と慌てた様子はなかったが、ムッタは弟を探しに向かった。結局見つからず戻ってくるとヒビトはいつの間にか帰ってきて寝る準備をしていた。公園におとめ座の写真を撮りに行っていたという。
ホッとしつつも少し怒っているムッタにヒビトはテレパシーを送る。面倒臭がりながらもきっとこうだろうと応えたムッタの回答が正解だったらしく、今度からテレパシーを送ると言ったヒビト。
いつだって誰かの心配などよそに、何事もなかったように帰ってくる。
それがヒビトだ。
しかし今回は違った。何日も、誰にも連絡がない。NASAの親しい仲間にも、オジーやオバーにも。普段はのんびりしている父や母ですら心配し始めた。
じゃあこれからはテレパシー使うわ
今度いなくなる時はテレパシーを使う。そう言っていたが、ヒビトからのテレパシーは全然聞こえてこないのだった―。
ムッタの訓練にはミスが増え始め、苛立ちを隠せなくなっていた頃―。
久しぶりに会った新田に誘われ食事をしたムッタは、新田の弟カズヤが家を出るようになり新たな道を歩き始めたことを知った。
それから日本企業で最終面接まで行ったカズヤだったが、一度引きこもった経験があると大事な時にまた引きこもる可能性があるからと面接は通らなかった。だが英会話の勉強を続け今度はヒューストンで就職先を探すという。
たまに世の中のつまらない考え方に残念な気持ちになるだけ。
だけどあいつなら大丈夫という新田の言葉。
カズヤのことや新田のそれらの言葉は今まさに兄として悩むムッタへ、そして苦しい境遇にいるであろうヒビトへの、新田なりの励ましの言葉なのかもしれない。
弟からの連絡を待つムッタにあの時カズヤの連絡を待っていた自分のようだと新田は自分を重ねる。新田が還ろうとしたその時―ムッタの携帯に、ヒビトの着信音に設定している宇宙海賊アバンギャルドの曲が鳴り響いた。
綴られるメッセージにはヒビトの苦しい心情と、NASAを去るという文言が。
しかしその後に続く言葉は…ヒビトらしい、前向きなメッセージだった。
だけど心配はいらねーよムッちゃん
宇宙飛行士を辞めるつもりはねーから
俺の未来はどうにでもなる
月面で会おう
月面で会おう。こんなに、あまりにもヒビトらしいと感じるメールがあるだろうか。月面で命を失いかける事故に遭い、帰還後はパニック障害に苦しみ克服の為の努力を続けてきたヒビト。
悩み苦しみながらも自分の中の『絶対』からブレることのないヒビト。
NASAを去っても宇宙飛行士であり続けることを選択したヒビトには再び困難な道が待っていることだろう。それでもあきらめを知らない彼が、再び『宇宙飛行士ナンバ・ヒビト』として戻ってきてくれる日を、私たちは心から待っている。
宇宙海賊アバンギャルド。ムッタやヒビトが昔大好きだったアニメだ。
ムッタたちが子どもの頃アバンギャルドの声優陣が生でラジオドラマを放送するという日があり、ムッタは部屋の電気を消して布団をかぶりラジオドラマを聴きながら「宇宙」を見た。
この「真っ暗な布団の中で宇宙を見た」経験はビンスの思い出とも繋がって後々ムッタとビンスの交流の一助にもなる。
ちなみにこのUFOライト、株式会社エスキュービズム・テクノロジーさんのエイプリルフール企画で使用・制作されたもの。現在小山宙哉先生の仕事場に飾られているものと、エイプリルフール企画に応募された当選者の方のみが持つ、世界に2つしか存在しないライトなのだ。関連記事はエイプリルフールらしいユーモアに富み、制作コラムは制作スタッフの本気度を感じる熱のあるものとなっている。
こんな遊び心満載のライトが部屋にあったら、見上げるたびに楽しくなってしまいそうである。
【宇宙兄弟コラボ】実物大「UFO SC APOシリーズ1」販売開始のお知らせ
【宇宙兄弟×ユーザブルIoT コラム #003】19巻に出てくるUFOのライトをベースに作成した新製品「UFO SC APOシリーズ1」の舞台裏
エディの参加、それぞれの告白によりムッタたちクルーはまとまり始め、訓練は順調に進み始める。
季節は冬になりクリスマス。ケンジや新田らはいまだアサインされぬまま何の為の訓練をしているのかわからぬ日々を過ごしていた。クリスマスパーティーの夜、遂にバトラー室長から告げられたアサインとは…?
宇宙兄弟19巻、好評発売中!
樹咲リヨコ(きさき・りよこ)
デザインやイラスト、ナレーションなどを仕事にしているフリーランス。宇宙兄弟や宇宙が大好きで、宇宙兄弟や宇宙の魅力をもっとたくさんの人とわかちあいたいと思っている。特に好きなキャラクターはムッタ、好きなセリフは「人生は短いんだ。テンションのあがらねえことにパワー使っている場合じゃねえ」。いつか宇宙に行ってみたい。
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