宇宙学生「宇宙の魅力をもっと身近に」
「宇宙学生」はいろんな方面から「宇宙にまっすぐ」な学生を現役大学生の宇宙フリーマガ ジンTELSTAR編集部が取材して、宇宙の魅力を伝えます。
みなさんは宇宙を研究している人、宇宙開発に携わっている人をはるか遠い存在だと思ってはいませんか?今回はそんな宇宙の研究者やエンジニアとそうではない人たちとの間を取り持つ役割を担う宇宙学生へとインタビューをしてきました。今回インタビューした南保さんは東京ドームシティにある宇宙ミュージアム「TeNQ(テンキュー)」でスタッフとして働いており、『宇宙兄弟』に登場するNASAのジェニファーの如く、宇宙の魅力を伝えています。そこにはどんなやりがいと魅力があるのでしょうか?
「軽い気持ちで宇宙に親しんでほしい」
−TeNQでのお仕事について教えてください。
基本的には館内の案内やアトラクションの説明などを行っています。しかし、それ以外にも「火星と金星はどちらの方が地球に近いの?」「火星って地球より大きいの?」という子どもたちからのシンプルな疑問や「何のために火星を調査しているの?」などの質問に答えることもありますね。答えた時の反応をリアルタイムでみられるのが楽しいです。
−お客さんに聞かれた時のために自分で勉強をすることもありますか?
もともと宇宙が好きなので、本を読んだりしています。私はTeNQのスタッフの中でも結構宇宙好きな部類ですが、スタッフがそれぞれ調べたりすることもあります。それを共有するのも新しい発見があったりして面白いです。
スタッフの中には、火星まで新幹線のスピードで行くとしたらどのくらいかかるのかを自分で計算してみたりする人もいますね。
−実際に宇宙の研究をしている様子が見られる場所があるそうですね。
はい。TeNQの施設内には、来館されたお客様と宇宙について研究している研究者との境目がたったガラス一枚で隔てられている場所があります。火星の地質についての研究を行っている東京大学の宮本研究室、「リサーチセンター」です。お客様が実際の研究の様子を見ることができるようになっています。
これは宮本先生の意向で、「自分でもできそうじゃないか」という印象を若い世代に持ってもらいたい、という理由があります。
研究室のなかにホワイトボードもあって、それがただの展示でなく実際に使われているということを教えてあげると喜んでもらえることが多いです。
−ズバリTeNQスタッフとしてのお仕事のやりがいはなんですか?
TeNQのコンセプトに「東京で宇宙を感じてもらう、軽い気持ちで宇宙と親しんでもらいたい」というものがあります。それを直に感じる瞬間が一番やりがいを感じますね。
たとえば、お客様からの質問に答えて反応してもらえた時や、感謝して頂けると嬉しいです。
また、TeNQのイベントで漫画『宇宙兄弟』でも登場したホワイトパズルをお客様に体験してもらったことがありました。そこで何人の宇宙飛行士候補者がこのパズルを完成させたか、というクイズを出題したのですが、誰も完成させられなかったということを発表すると意外と驚かれるので楽しいですね。やはりみんなどこかで宇宙飛行士は遠い存在だと思っているから、この瞬間に宇宙飛行士に親しみを感じてもらえるようで、面白いなと思います。
空に対するまっすぐな気持ち
−南保さんは大学でDNAやRNAに関する研究をしていらっしゃるとお聞きしました。一見宇宙と関係がないように思えますが、その分野を学ぼうと思ったきっかけはなんですか?
高校時代までさかのぼるのですが、理科の科目を選ぶ時、物理の授業で物体がどう落ちるのかを計算するよりも、生命のメカニズムがどうなっているのかということに興味があったので生物を選択しました。また、生物の授業でDNAには4つしか部品がなく、その組み合わせで髪や皮膚や内臓が作られているということを知り、素直にすごいなと思ったのがこの学科に進んだ理由です。
現在、大学で生命の起源についての研究をしていますが、それは生物の研究の中でも宇宙に近いと思ったからです。生命の誕生は未だに解明されていませんが、一説では宇宙からやってきたとも言われています。そういう考え方もあると知って生命の起源に迫ってみたいと思ったんです。
−鳥人間コンテストに出場するサークルへ参加したり、自ら天文部を立ち上げるなど、様々な活動をなさっているようですが、それらはどのような想いで活動しているのでしょうか?
小学生のころから空が好きだったんです。空は流体とか化学反応とか、様々な科学で説明できてしまいます。でも、見た目はその時々によって色も姿も違う。それにすごく惹かれて写真をたくさん撮っていました。
そしてある時、空の先に宇宙があるんだって気づいたんです。そのまま、星空も好きになって、プラネタリウムも好きになって、解説者にもなってみたいなと思い解説員のおじさんと仲良くなったこともありました。
大学1年生の時に北海道で初めて天の川と流れ星をみて「すごい!」と思って、天文部をつくって部長をやったり、授業で天文学をとって、金星の太陽面通過という観測結果から金星の公転周期を計算で出したりして、発表させてもらったりいろんなことを経験しました。鳥人間コンテストに出場するサークルに入りましたし、心のどこかで空へ近づきたいという想いがあるのかもしれません。
ほかの宇宙学生さんたちよりも遠回りをしているかもしれませんが、見据えている先はずっと一つなのかなとも思いますね。
−読者のみなさんにメッセージをお願いします。
宇宙の研究や開発に直接携われなくても、宇宙と関わる方法はたくさんあります!宇宙だけに拘らず、夢中になれること、興味があることにたくさんチャレンジしてみてください。それから、私自身がそうだったのですが、好きなことを周りにも言ってみると自分では見つけられなかったチャンスに巡り合えるかもしれません。遠回りかもしれないけれど、好きなことをずっと好きでいれば、関わる機会はきっとやってくると思います。
一見遠い存在とも感じてしまう宇宙の研究者やエンジニアですが、今回インタビューした南保さんは、そんな研究者やエンジニアとそうではない人との間を取り持つ架け橋の役割を担っているのかもしれません。ぜひみなさんも宇宙ミュージアムTeNQへ足を運んで本物の宇宙に触れてみてはいかがでしょうか?
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宇宙ミュージアムTeNQ(テンキュー)
東京ドームシティ 黄色いビル6階
営業時間 11:00-21:00 土日祝・特定日は10:00- (最終入館20:00)
料金 一般1,800円他
※入館は15分毎
※4歳未満入館不可(ファミリーデーを除く)
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About TELSTAR
私たちは大学生を中心とした団体で星空や宇宙開発の内容を取り上げたフリーマガジンを 発行する活動をしています。年4回、主に高校や科学館などに配布しており、2013年2月の 設立から累計約11万部を発行しています。 詳しくはこちら!→http://spacemgz-telstar.com/
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「宇宙学生」前回の記事はこちら
「作って動かす」ローバ研究は楽しい!
「宇宙学生」その他の記事はこちら☆
第一回 宇宙を「広報する」って?
第二回 宇宙開発は理系のモノ?
第三回 宇宙科学研究所の学生ってどんな人?
第四回 大学生がロケットに関わるには?
第五回 宇宙建築って何だ?
第六回 一歩踏み出すこと」の大切さ
第七回 とりあえず手を動かすことから始めよう