<せりか基金通信インタビュー>せりか基金はALS治療 研究開発の力になれるか 京大iPS細胞研究所 井上治久教授
シャロンが患って闘っているALS、せりかのお父さんが患って亡くなった病気であるALS。未だに原因も治療法も解明されず、徐々に体の運動機能を失っていく恐怖や、知力、痛み、かゆみ、寒さなどの体の感覚が保たれたまま意志を伝えることができなくなる恐怖、自分の命の意味と闘うALS患者の方の、希望を叶える支援をしたいという想いがあります。せりかの夢の実現を現実のものに。
昨年のせりか基金賞で審査員長を務めていただいたのが、井上治久京都大学iPS細胞研究所教授です。
2018年審査員長に就任 井上治久教授
そして今年。どうしてもまた井上先生に関わっていただきたくお願いし、引き続きの審査員長就任を承諾いただきました!
私たちとしてはこの上なくありがたい話なのですが、ところで井上先生はせりか基金の活動の、どのあたりを評価いただいて、お付き合いいただけているのでしょうか?
「ALSの研究が進むために、『知ってもらう』ことは重要だと思います。一般的にALSという存在については、なんとなく名前は聞き覚えがある、でも詳しくは知らないという人が多いのではないでしょうか? せりか基金はまずもって『宇宙兄弟』という人気漫画のストーリーから生まれて、一般への高いアピール度を持たれています。ALSのことを、『聞き覚えがある』だけの状態から、もう一歩深く知ってもらうきっかけに、大いになっていると思っています」
昨年のせりか基金は、藤澤貴央先生、浅川和秀先生というふたりの受賞者を輩出することができました。
「これからの研究活動にますます期待がかかる研究者おふたりに受賞してもらえて、本当によかったです。研究というのはどんな内容であれ、ひとりの力で完結できることなどまずありません。常に次代へと受け継がれていくことが重要なんですね。若い研究者の受賞が、そうした流れの契機になれば何よりです」
昨年の賞でおふたりへお渡しできた助成金は、藤澤先生へ300万円、浅川先生に250万円。世にはさまざまなグラント(研究開発のための助成金)がありますが、この金額の多寡はいかがでしょう。
「研究者、中でも若手の方にとっては、大きなグラントだといえるのではないでしょうか。たしかに世の中にはもっと巨額のグラントもありますが、『これだけあれば充分』という金額を決めることは難しいです。
せりか基金によって、ALSの研究が一歩でも前に進むことが重要です」
せりか基金では、「ALSを治療可能な病気にすること」を目的に定めています。お金を理由に研究が進まない、という障害を取り除くために基金を活かしていきたいのですが、はたしてどれくらいあれば、ALSが治る道筋は見えるものなのでしょうか。
「私たち研究者はALSが『治る』ことをゴールとして見据えつつ、その手前に『治療法候補を見つける』という目標を置いています。そのためには基礎研究と開発のどちらも必要で、それぞれに莫大なお金がかかります。
たとえば、ある薬の候補があって、臨床試験をしようということになると、それだけで億を超える費用が必要です。その費用が調達できずになかなか先へ進めないというのはあり得る事態です。薬のような治療法という花の種を見つける基礎研究だけでなく、それを花まで育てる薬の開発には、かなりの費用が必要になります」
それでは、せりか基金はいくら集めていけば、研究者の方々への有効なサポートをしているといえるでしょう?
「『これだけあれば充分』という金額を決めることは難しいですが、研究するための資金が無ければ、研究が進んで、治療法まで到達できません。
資金だけではありません。昨年新たに、脳梗塞の薬の一つが、ALSの経過のある時期ではありますが症状を緩和する薬として承認されました。
これはひとりの医師が『ALSに効くんじゃないか』と直感し、コツコツと試験を繰り返され、製薬会社も動かすこととなって実現したものです。資金自体もそうですが、治療法への強い意思という原動力が必要と言えます」
せりか基金としては、また井上先生に審査員長を引き受けていただいて、心強いかぎり。昨年の審査員の方々には、みなさん継続して審査に携わっていただけることも決まりました! いっそうスケールアップしたせりか基金の活動、多くの人に見守り支えていただけたらうれしいです。
ライター:山内宏泰(@reading_photo)
井上先生への昨年のインタビューはこちら
せりか基金通信インタビュー「難攻不落の難病ALS。原因や治療法の研究は、どうして難しいのでしょうか」京大iPS細胞研究所 井上治久教授
さあ、はじめよう 想像ではうまくいってる byムッタ
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