〈宇宙兄弟リアル〉私の『宇宙兄弟』的、瞬間  ~油井亀美也 宇宙飛行士グループ長 編~ | 『宇宙兄弟』公式サイト

〈宇宙兄弟リアル〉私の『宇宙兄弟』的、瞬間  ~油井亀美也 宇宙飛行士グループ長 編~

2019.11.25
text by:編集部コルク
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Credit:JAXA

『宇宙兄弟』には、ムッタを始めとする宇宙飛行士たち、また宇宙開発に従事する人々が、宇宙への夢と情熱を胸に、さまざまな困難に直面しながらも仲間と共に乗り越えていく様子が感動的に描かれています。彼らが壁にぶちあたり、その壁を乗り越えた瞬間を『宇宙兄弟リアル』では、「『宇宙兄弟』的、瞬間」と呼び、実在の人物が実際にどんな壁に遭遇し、そのとき何を考え、どう乗り越えたのか?また壁を乗り越える糸口となった人との出会いや言葉などを、具体的なエピソードを交えて紹介します。

今回はJAXA宇宙飛行士グループ長の油井亀美也さんに「『宇宙兄弟』的、瞬間」を伺いました。

〈宇宙兄弟リアル〉油井亀美美也/宇宙飛行士グループ長 ~新米飛行士が貫くリーダーシップ論~

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ロシアの優しさに抱かれて

ISS長期滞在のミッションにアサインされ訓練が始まった当初、私はロシア語に悩まされました。

ロシアのソユーズ宇宙船で地上とISSを行き来するので、ロシア語の習得は必須。でも正直、ロシア語は大嫌いで、レッスンがある日は「またロシア語の授業があるのか。」と憂鬱になったものです。もう苦手過ぎて「このままの調子だったら、宇宙に飛べないかも。」と落ち込む日々でした。

戦闘機パイロットの頃は、管制官との通信はほぼ英語。スクランブルのときにロシア語を使うこともありましたが、ただフレーズを丸暗記していただけで、しかも飛行機やパイロットに対して使う言葉だったので、普通の会話には役に立ちません。

ロシア語が苦手で大嫌いな気持ちは顔にも出ていたと思います。ですがそんな私を、ロシア語のインストラクター、訓練教官、『星の街』の関係者や住人が本当によく助けてくれました。

ロシア語の先生はまるで小さな子供に教えるように、簡単な言葉を一つずつひたすら教えてくれて、とにかく話し相手になってくれました。また、ちょっとした縁で知り合った方が家に招待してくれたり、ある方は私が自炊だと知っていて、1週間分の料理を作って渡してくれたり。それはもう本当の家族のように接してくれました。

そんな優しさに触れる中で、私の中でようやく道が拓けてきたのです。おかげでロシア語の試験にも合格することができました。面白いものです。航空自衛官の頃、個人的に敵だと思っていたロシアが今の私の一番好きな外国であり、その国の言葉も得意になったわけです。

Credit:JAXA
油井さんにとって思い出深い時間となったロシア語の授業。

『宇宙兄弟リアル』次回登場のリアルは!?

フライトサージャン/久城光利、のリアル!

次回の『宇宙兄弟リアル』は、フライトサージャン/久城光利のリアル、樋口勝嗣さんが登場。

白衣、黒縁眼鏡、首にかけたヘッドホンがトレードマークの久城光利。ゲーム好きが高じ、月面基地にあるパワーショベルの遠隔操作にも腕前を発揮する『器用な医師』。宇宙飛行士の命と健康を守るため、さまざまな場面で適確かつ迅速な判断を下していく。一方、子供の頃の夢を叶えるため、宇宙への『挑戦』を続けてきた樋口勝嗣。その情熱は実を結び、今までの医師の経験を存分に生かせるフライトサージャン(FS)となった。宇宙飛行士の活躍の陰には、地上での訓練から、宇宙でのミッション、そして地球帰還後も、常に宇宙飛行士の健康管理をサポートし続けるフライトサージャンの眼差しがある。中年と言われる年代になって待望の夢を叶えた男の半生と、FSの仕事の醍醐味を聞く! 乞うご期待!!

ご本人に質問したい事があれば、筆者ツイッター(@allroundeye)に書き込み下さい。読者の皆さんから頂いた質問内容を可能な限り反映してインタビューを進めて参ります!また連載に関して感想・希望などあれば合わせてお寄せ頂ければ幸いです。頂いたご意見を交え、さらに充実した連載にしていきます。

【宇宙兄弟リアル】が書籍になりました!
『宇宙兄弟』に登場する個性溢れるキャラクターたちのモデルともなったリアル(実在)な人々を、『JAXA』の中で探し出し、リアルな話を聞いているこの連載が書籍化!大幅加筆で、よりリアルな宇宙開発の最前線の現場の空気感をお届けいたします。

 

今までの『宇宙兄弟リアル』はこちら

 

<筆者紹介>  岡田茂(オカダ シゲル)

NASAジョンソン宇宙センターのプレスルームで、宇宙飛行士が座る壇上に着席。
気持ちだけ宇宙飛行士になれました。

 

東京生まれ、神奈川育ち。東京農業大学卒業後、農業とは無関係のIT関連の業界新聞社の記者・編集者を経て、現在も農業とは無関係の映像業界の仕事に従事。いつか何らかの形で農業に貢献したいと願っている。宇宙開発に関連した仕事では、児童書「宇宙がきみをまっている 若田光一」(汐文社)、インタビュー写真集「宇宙飛行 〜行ってみてわかってこと、伝えたいこと〜 若田光一」(日本実業出版社)、図鑑「大解明!!宇宙飛行士」全3巻(汐文社)、ビジネス書「一瞬で判断する力 若田光一」(日本実業出版社)、TV番組「情熱大陸 宇宙飛行士・若田光一」(MBS)、TV番組「宇宙世紀の日本人」(ヒストリーチャンネル)、TV番組「月面着陸40周年スペシャル〜アポロ計画、偉大なる1歩〜」(ヒストリーチャンネル)等がある。

 

<連載ロゴ制作>  栗原智幸
デザイナー兼野菜農家。千葉で野菜を作りながら、Tシャツ、Webバナー広告、各種ロゴ、コンサート・演劇等の公演チラシのデザイン、また映像制作に従事している。『宇宙兄弟』の愛読者。好きなキャラは宇宙飛行士を舞台役者に例えた紫三世。自身も劇団(タッタタ探検組合)に所属する役者の顔も持っている。