第９回　新田家のごはん

部屋に閉じこもったままの息子へ届ける母の味。

10巻・#97『ニッタとムッタ』に登場する新田家のご飯。卵焼きや野菜炒めと温かそうなメニューだが、ひきこもりの弟・カズヤの前にお盆に載せた食事を置いて去るシーンは10巻序盤の伊東家・北村家との温度差を感じる寂しいシーンだ。

ニッタとムッタ、２人の兄。

訓練の途中、突然前の場所に戻ると言い出した新田。「順位がつけられるとわかっているものなら全部トップを狙わなきゃダメだ」そう言って誰よりも順位を気にしていた新田が単独で戻ろうとする。

それがどれだけ本気なのかを感じたムッタは、食糧を見つけた後、新田と共に携帯電話を探しに進んできた道を戻っていった。

道中、新田は自分の弟・カズヤのことについて話し始める。

アマンティの占いで弟はいないと言った新田だったが、本当は一人弟がいた。けれども南波日々人と比べられるのが嫌で言い出せなかった。

ムッタと出会ったころからムッタのことをいちいち『兄』と強調していた新田。そこにあった想いは、何とかしたいけれど何もできずにいるひきこもりの弟への、兄としての複雑な感情だったのだ。

子供の頃は自分よりもずっと宇宙が好きで詳しかった弟。その弟が今ずっと部屋に引きこもっていること、それをどうにかしたいこと、その弟から今夜電話がかかってくるかもしれないこと―。

仲の良い南波兄弟が羨ましい…思いがけない新田の告白に、ムッタは新田の抱えていた想いを感じ取り、正直な気持ちを話す。

優秀すぎる弟っていうのも考えものだ、いなければいいと思うこと数知れずだ―…。

一度だけ殴り合った時の感触。互いの痛み。殴り掛かられた時に殴る価値もない、と言い放ってしまった新田は、激しく後悔した―…。

そして、昼間蛇に襲われそうになった場所で、暗闇の中チカチカと光る携帯電話を発見する。弟からの着信が確かにあった。しかし…。

タイミングを逃してしまった新田は、キャンプ地へ戻り、皆にすべてを告白した。

材料-野菜炒め-(2人分目安)

作り方

【1】
ショウガ、ニンニクを薄切りにします。なければチューブを小１ずつで可。

【2】
人参は短冊に、ニラは5cm程度ずつに切っておきます。

【3】
熱したフライパンにゴマ油をひき、ニンニク、ショウガ、人参を入れ中火で炒めます。

【4】
人参の色味が変わってきたらもやしを入れます。もやしが半透明になってきたらニラを入れます。

【5】
さっと油が回る程度に回し炒めましょう。オイスターソースを回しかけ、さらにさっと混ぜたら完成。

材料-卵焼き-(2人分目安)

作り方

【1】
容器に卵を割り入れ、調味料をすべて入れ、水を入れます。黄身に箸を指すようにして割り、全体を混ぜます。

【2】
熱した卵焼き器に油をひき、卵液をおよそ1/5入れます。最初の卵液は中～強火で熱し、大きな気泡ができたら潰すようにして端から巻いていきます。

【3】
片側に寄せたら再び卵液を流し込み、先ほど巻いた卵焼きの下側にも卵液が回るよう卵焼きを持ち上げて流します。

【4】
弱火にして、流し込んだ卵液が半熟の状態になったら再び巻きます。

【5】
この手順を何度か繰り返し、最後まで巻ききったら火を止め、余熱で固めます。自宅にあれば巻き栖で巻いておくとしっとり落ち着きます。これで完成、切り分けましょう。

材料-豆腐となめこの味噌汁-(2人分目安)

作り方

【1】
なめこを洗います。今回使用したのは大きい生なめこのため、適当な大きさに切り洗いました。

【2】
水400ccにほんだしを入れ、中火で温める。なめこを入れ、一旦沸騰させた後、味噌を溶かし、豆腐を入れる。輪切りにした長ネギを入れて完成。

それこそが、外に飛び出す原動力です

たった一度だけカズヤからレイジへかけられた電話。それが繋がることはなかった。子どもの頃のカズヤは兄よりもずっと宇宙が好きだった。流星群が大好きで、流れ星にたくさんの願いをかけたかった。

弟の影響で宇宙に興味を持ち、宇宙飛行士を目指した新田。宇宙をずっと眺めているような仕事につくであろうと思っていた弟は、中学の頃一度不登校になる。だがその時は半年で済んだ。だが大学を中退してバイトも辞めて以来、もう部屋から出ることができなくなってしまった…。

確かなきっかけがあったかもしれない。そうではなく、小さなものが蓄積していった結果かもしれない。自分の世界に閉じこもってしまったカズヤ。

NASAニュースなどを見ている途中、新人宇宙飛行士からの　メッセージを見つけた。そこにいる兄・レイジのメッセージ。キラキラと眩しく見えた兄の言葉を途中で閉じようとした時、この言葉が聞こえた。

昔の僕にとっては学校と塾と……家の中だけが……世界のすべてでした
とても小さくて狭いと感じていました

大人になるにつれて、この言葉が本当にその通りだ、と感じはしないだろうか。子供の頃の世界はとても狭い。それは、密度の濃い思い出深い時代にもなるし、そこに馴染めなければとても辛い世界となる。
どうしたら良いのか、自分でもわからない。
けれど―…。

それこそが
外に飛び出る原動力です

大事なのは動くこと
何もせずに止まっているのは道端の石コロです

動いて動いて輝く石は―流れ星……
「生きた石コロ」です

生きた石コロ。子供のころ兄に言った言葉が、いま、時間を超えて兄から自分に投げ返されたのだ。
外出していた母がふと見上げた2階の窓は、カーテンが開き、風が舞い込んでいた―。

毎年「今夜は○○流星群が極大です」という情報を見たり聞いたりしないだろうか。
流星群とは宇宙空間にあるチリの粒が地球の大気と衝突し、気化したチリの成分が光を放つ現象のこと。地球がいつ彗星の軌道を通るかわかっているので、流星群の時期もいつかわかるのだ。
近年は流星群を観るためのツアーなども旅行代理店で組まれている。街中は明るすぎたり、月明りや天候などによってなかなか見えない時もあるが、風邪をひかないように体をあたためながら、「見えたらラッキー」くらいの気持ちでたまにはのんびりゆったりと空を見上げてみるのも良いだろう。流星群以外にも、たくさんの星が夜空を煌いているのに気が付くかもしれない。新田兄弟が命名した「生きた石コロ」、見つけたらあなたの願いをかけてみよう。

国立天文台ホームページ　http://www.nao.ac.jp/
AstroArts　http://www.astroarts.co.jp/


毎年流星の数がほぼ安定しているのが「しぶんぎ座流星群」「ペルセウス座流星群」「ふたご座流星群」でこれらは三大流星群と呼ばれている。一番多く流星が観られるとされる極大日は年によってことなるので、詳しくは国立天文台のページやアストロアーツなどを参考にしてほしい。

「理想だよ。俺にとって南波兄弟は」新田の胸の内を聞いたムッタは、兄としてこうありたかったことや弟に対しての想いを吐露した。仲間にいきさつを告白した新田。一方新田の残したメッセージを見たカズヤには変化が―。その日の夜は、流星群が流れていた―。
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樹咲リヨコ（きさき・りよこ）
デザインやイラスト、ナレーションなどを仕事にしているフリーランス。宇宙兄弟や宇宙が大好きで、宇宙兄弟や宇宙の魅力をもっとたくさんの人とわかちあいたいと思っている。特に好きなキャラクターはムッタ、好きなセリフは「人生は短いんだ。テンションのあがらねえことにパワー使っている場合じゃねえ」。いつか宇宙に行ってみたい。
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