JAXA宇宙飛行士。ムッタの先輩にあたる。トレードマークはメガネで、TPOによって使い分けてる。中高ではバスケ部に所属。フェイントが得意だった。

ちなみに紫はムッタが宇宙飛行士になる前からアメリカでいつも聴いていた『モーニングレディオ』のDJパープル（DJパーポー）でもある。
訓練もしている忙しい紫が、一体いつどのタイミングで収録しているのかは謎である。

常に明るくJAXAでもNASAでもムードメーカー的存在。イタズラが大好きでNASAの仲間たちからは“ニンジャ”と呼ばれている。
宇宙飛行士選抜試験のときから何かとイタズラを仕掛けられていたムッタは、紫のことを「カツオくん」と呼んでいた（アニメでは「いたずラッコ」）。

紫のイタズラ遍歴はあげていったらキリがない。
初期の頃はイスのネジを緩めたり、ムッタとケンジにだけ家からブルースーツで来るようにメールをしたり、コーラの瓶にコーヒーをいれてみたり、コーヒーに大量の砂糖を入れたり。

面接のイスのネジは緩め過ぎた結果ネジが外れてムッタが後方に転倒してしまうというやりすぎの面もあり、この時は同期の宮田、木崎にたしなめられた。

一方で大変後輩想いであり、ムッタをはじめケンジたちともよく話し面倒をみている。ISS存続をかけた署名騒動では段ボールに隠れてムッタを脅かすなどイタズラっぷりを披露するが、ノート三冊分めいっぱいの署名を集めてムッタのもとに届けた。

ISS存続と自分のアサインがかかっていたこのときのムッタにとって、どれほど力強く感じるものだっただろうか。
紫自身が走り回り集めたたくさんの署名は、紫自身の行動力や人徳を想像できるエピソードである。

話はさかのぼり、ムッタらがJAXAに入社したその年。
茄子田理事長のあいさつでは「人」という文字を用い、“宇宙飛行士として支える側”の想いが語られた。
紫はそこへサプライズゲストとして登場し、支える側の想いに応えることが自分たち宇宙飛行士の仕事だと伝える。

イタズラが大好きで常に笑っているイメージのある紫だが、彼自身何年も“宇宙飛行士”と名乗りながら宇宙という舞台に立てていない期間があった。
アスキャンの訓練前、紫はムッタやケンジにこう話している。

――自分たち宇宙飛行士は舞台役者である。
――室長というスポンサー、訓練教官という演出家がいる。
――誰を舞台に立たせるかはスポンサーの好みによる。

アスキャンでは毎年数名が「自分は宇宙飛行士に向いていない」と脱落するが、本当にしんどいのはその先。宇宙飛行士となってから舞台に立てるまでの長さ――。

深刻な表情の会話をしたこんな日でも、紫はイタズラを忘れない。
その日のムッタのコーヒーは砂糖が大量に入ってやたらと甘かった。だがその甘いコーヒーはアスキャンに臨むムッタにとって、しっかりと覚えておく味だった。

しばらく後、紫はCES-56クルーとして日本人として3人目の月面ミッションに参加。トイザらスで購入した蜘蛛型宇宙生物のおもちゃを月面基地に持ち込み、他のクルーを慌てさせた。

ムッタが月面滞在中の現在も大活躍中のQT-4Xことブギーがいまの性格になったのは紫が設定を変更したからである。ダミアン曰く、ブギーは元々は従順な性格だったらしい。

「ムラサキ様は私ノ“父”デス　宇宙一カッコイイ！」
そう話すブギーの声もどことなく紫っぽいのである。

紫が参加したCES-56ミッションは、後々ムッタたちにとって重要な拠点となる月面の小型基地ハビタットの建設も行った。
地球帰還を目指し月面基地からルナランダーへ向かうムッタとフィリップは、中継地点としてこのハビタットに滞在することとなる。

ハビタット建設以来、ここを訪れるのはムッタとフィリップが初めて。
…の筈なのだが、なんと先客がいた。
「ヒューストン誰かいます！」
イスに座っている“人”に驚くムッタとフィリップだったが…その正体は紫が建設時に帽子とかつらをかぶせ座らせていた管理用ロボット旧型ジョックであった。

2年越しのイタズラが成功し、管制室からその様子を見ていた紫は体を震わせて笑う。
このイタズラのためだけに管制にいるのかと訝しむムッタとフィリップだったが、さすがにそれだけでは怒られてしまう、と紫は話す。

紫はムッタとフィリップを地球へ帰還させるためのサポートの一人として、月面の機器やロボットを遠隔操作する仕事を任されたのだ。

「『真面目に　緊張感を忘れずに　大胆かつ繊細に　素早くかつ確実に　余裕を持って』楽しくいくぜ」

タイガーチームが導き出したルートをサポートするため、ビートルとスティッチを固定する。紫が遠隔操作するジョックが、難しい作業を地上とのタイムラグすら感じさせずにあっという間に進めていく。
まさに忍者のような凄さを目の当たりにしたムッタとフィリップ。
軽やかな操作技術で“予定通り”“シミュレーション通り”ビートルは壁を超えることに成功した。

紫が遠隔操作するジョックがあまりにも機敏な動きをするため、ムッタはこっそり管制室のビンスに尋ねる。一体いつからこの操作訓練をしていたのかを。
そのとき、ムッタは紫がどれほどの訓練を重ねてここに至ってるのかを知り、その道のりを想像し、ムッタは思い出した。

かつて紫が自分に言った「宇宙飛行士は舞台役者に似てる」という言葉。

“元々の運動神経”とか“才能”だけで片付けちゃだめだ。
紫さんが舞台で活躍できるのは誰より準備をしているからだ。
フェイクに見せて“本物”だ。

「さあ　始めようぜ」

紫三世はそう軽やかに言う。

ロシアからはヒビトたちマクシム４が打ちあがった。同時に地上でも数多くのミッションが同時進行する。
紫は引き続き遠隔操作でムッタたちのアシストを続ける。
ムッタとヒビトの再会をジョックで一緒に見守っていた紫は、「今日はいい日」と言うクジョーにこんな言葉を返している。

「俺らにとっても“節目”って感じがしたな　俺ならNASAの宇宙史に今日のこと全部書くね」

紫はいつでも最大級の準備をし、当たり前のように自分のミッションを完了させる。“舞台役者”は、これからも“そのとき”のために準備を怠らないだろう。
周囲を巻き込む笑いの“信念”を持ちながら――。

紫のワッペンには彼の“信念”ともいえるイタズラっぽい笑い顔が描かれている。