『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない』第1章 どんな人でも必ずリーダーになれる(2/4) | 『宇宙兄弟』公式サイト

『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない』第1章 どんな人でも必ずリーダーになれる(2/4)

2018.06.06
text by:編集部コルク
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リーダーシップを発揮しようと思っても、どうすれば無理をせずに自然体で発揮できるのかわからない……。第2回では、この壁を乗り越えるためのシンプルな習慣「Want思考」を紹介する。また、リーダーとフォロワーの関係性や、フォロワーに生じる責任についてもわかりやすく解説。

「Want思考」でリーダーシップを磨いていこう

リーダーシップは、チームや組織を束ねるポジションにいるかどうかに関係なく、 組織に所属するすべての人たちが発揮できます。もちろん、あなたも。
ではどうやってリーダーシップを磨くのかと言うと、方法は至ってシンプル。「〜したい(want)」という自分の意志を、周囲に発信することです。

たとえば会議中に、1人の男性が「ちょっと休憩にしませんか?」と、提案したとします。
このとき、彼はこの場におけるリーダーの役割を果たしています。さらに、別のメンバーが「だったら私、コーヒーを買ってきたいな」「では、 分ほど休憩にしましょうか」などと提案すれば、その人たちもまたリーダーになるのです。メンバーそれぞれが「〜したい」という意志を発信することによって、チームの合意形成や意思決定が成されるので、これらすべてが、立派なリーダーシップと呼べるのです。

従来の「リーダーは常に固定された人物」という考え方ではなく、チーム全員がリ ーダーであり、状況に応じて誰かがリーダーシップを発揮する。リーダーというバトンを、メンバーのあいだでクルクルと回している状況をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。

この「Want思考」で語るという習慣は、リーダーシップを磨く最高のトレーニ ングになります。しかし、実際の世の中はと言うと、「Should(〜しなければならない)」で溢れています。

・勉強しなければならない。
・その仕事をやらなければならない。
・◯日までに、結果を出さなければならない。

など、僕たちは物心ついたときから「〜しなければならない」と言われ続け、それを疑うこともなく受け入れ、あらゆる課題に追われています。結果、「Want思考」が麻痺状態に陥っています。

まずは日常生活の中で、「私は、◯◯したい」という感情を掘り起こしましょう。
自分の「Want」をノートに書き出してみてもいいですし、すでにハッキリしているのなら、さっそく発信してみましょう。
同じ行為でも、言葉の使い方を変えるだけで成果が大きく変わります。

私は、リーダーシップを磨かなければならない。
私は、リーダーシップを磨きたい。

後者のほうが、明らかに前向きな気持ちになり、成果も出ると思いませんか?
「Want」がクリアになれば、そのためにはどう動けばよいのかも明確になります。

『宇宙兄弟』の六太も、この「Want」を自覚することによって人生が大きく動き出しています。

六太は当初、心の奥底に「自分も宇宙飛行士が夢だった」という気持ちがありながら、それを自ら打ち消してしまっています。自らの「Want」を忠実に実行し、宇宙飛行士となった日々人を応援したいと思う反面、「〝兄〟とは常に、弟の先を行っていなければならない」という、自分で勝手に作り上げてしまった「Should」的コンプレックスに苦しんでいました。就職活動も難航し、実家では自分のデザートだけイチゴの数が少なくなり、そこまで追い詰められてやっと、「自分は本当は何がしたかったのか?」と、自らに「Want」を問いかけたのです。

そして、忘れたふりを続けていた本当の気持ちを再び掘り起こしました。

「俺は宇宙へ行きたい」

この思いを取り戻した瞬間から、六太は自分の生き方・人生そのものに対して、リ ーダーシップを発揮していくことになります。

自分をリードしてくれるのは、いつだって「〜したい」という思い。
「〜したい」がある人はそれだけでもう「リーダー」なのです。(1巻#2)

 

六太や日々人の「Want」は宇宙飛行士という大きなものですが、日常生活でも、小さな「Want」はたくさん存在します。
自分は今、目の前にある案件をどうしたいのか——?
いきなり生活のすべてを「Want」で満たすことが難しいのなら、まずは、しなければならない仕事や課題の中から、「Want」を見つけてみましょう。

大事なのは、日頃から「Want思考」 を意識しておくことと、「Want」で 語る習慣をつけることです。 アップル社を設立したスティーブ・ジョブズは、「Want」の連続で世界中の人々を魅了しました。経営者としての評価はまた別のものかもしれませんが、そのくらい、「Want」には強烈なパワーが込められているのです。

ただ、1つ注意しておきたいのは、自分に「Want」があるのと同様に、相手にも「Want」があるということ。

「Want」で語ることは大切ですが、その主張内容を周囲に強制したり、無理やり承諾させて実行したりするのは、リーダーシップではなく、イニシアティブ(主導権) になってしまいます。
「私はこうしたいんだけど、あなたはどうしたい?」
そこで意見が分かれることも、当然あるでしょう。
だからこそ、 「じゃあ、どうすればいいか、一緒に解決策を考えよう」
と、発展的なコミュニケーションが生まれていくのだと思います。

〜心のノート〜
自らを突き動かす強烈なパワー「Want」。 日頃から「Want」で語る習慣を身につけよう!

 

リーダーの責任、 フォロワーの責任とは

リーダーに対してフォロワーという関係性があるように、リーダーシップと表裏一 体で存在するのが、「フォロワーシップ」です。
フォロワーシップは、誰かがリーダーシップを発揮したとき、別の人がそれに共感し、「参加する」と決めた時点で発動します。

たとえ1人でも共感してくれたなら、リーダーとフォロワーが出会い、チームが発生するのです。

ただし、ポイントはフォロワーが「自分でついていくと決めた」ということ。
社会では、「発言や反対をしないのなら、決定したことに従うべき」という暗黙のルールが存在していることがありますが、自分の意思がないままに、ただ従うのは「依存」であって、フォロワーシップを発揮しているとは言えません。

この、依存とフォローの違いに気づかず、「やらされている」「してあげている」「こちらが合わせてあげている」と考えてしまい、ストレスを抱えている人は多いのではないでしょうか。

「私は本当に、この人が言ったことをやりたいと思っているのだろうか? もしやらされていると感じているのなら、自分だったらどうしたいのか?」
そう自問してみるといいのかもしれません。
リーダーにはリーダーの責任が生じますし、フォロワーにはフォロワーとしての責任が生じるのです。

たとえば、ある営業部の社員が、「会社のホームページをリニューアルしたい」と発言したとします。その場にいた何人もがそれに同意したので、上司は「じゃあ、君たちでやってみてくれないか?」と依頼しました。
すると提案した社員は、「それは、私たち営業部の仕事ではない。広報の人間がやるべきだ」と断りました。リニューアルに同意していた社員たちからも、「では自分がやります」という申し出はありません。 この場合、営業部の社員はリーダーシップを発揮したように見えて、自身の「Want」ではなく、ただの他者への要望だったことがわかります。ほかのメンバーも、同調しただけでやろうとしてはいないので、フォロワーシップにはなりませんでした。残念ながらチーム結成には至らず、です。

つまり、リーダーでもフォロワーでも、自分が決めて納得して動かないかぎり、「チ ーム」として機能しません。
リーダーシップとフォロワーシップは表裏一体なので、誰もが両方を内包しています。ですから、リーダーが主役でフォロワーが脇役ということでもありません。
六太は、主役になれない自分のことを、「ホームズとワトソン君で言ったらワトソ ン君の方だよ。バットマンとロビンで言ったらロビンだよ俺は」と表現していました。 さらには、「かきピーん中のピーナッツくらいのもんか……」とも。
ですが、かきピーの中にピーナッツがなければ、ただの「おかき」ですよね。ホームズもバットマンも、フォローしてくれるワトソンやロビンがいなかったら、事件を解決したりピンチを切り抜けたりすることはできなかったでしょう。リーダーシップとフォロワーシップが組み合わさることで、1つのチームが成立す るのです。そこに優劣や上下関係はありません。

ちなみに、「Want」を発信しているにもかかわらずフォロワーが現れない場合、 その要因の1つとして、伝えるべき人に伝わっていないという可能性があります。居酒屋の店長に、自分のやりたい社内プロジェクトを熱くプレゼンテーションしても、 応援はしてくれるでしょうが、フォロワーになる確率は低いでしょう。 「自分の〝Want〟に共感してくれる人は、どこにいるのかな?」
などと見直してみると、発信するべき場所が見えてくるはずです。

〜心のノート〜
リーダーシップとフォロワーシップは表裏一体。 それぞれの責任を果たせば納得感が生まれる。

 

(つづく)

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宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない。

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<著者プロフィール>
長尾彰・ながお あきら
組織開発ファシリテーター。日本福祉大学社会福祉学部社会福祉学科(心理臨床カウンセリングコース)卒業後、東京学芸大学大学院にて野外教育学を研究。

企業、団体、教育現場など、20年以上にわたって3,000回を超えるチームビルディングをファシリテーションする。

文部科学省の熟議政策に、初の民間ファシリテーターとして登用され、復興庁政策調査官としても任用されるなど幅広い分野で活動している。