せりか基金助成金から初! 第一回受賞者・浅川先生の研究が成果に。 | 『宇宙兄弟』公式サイト

せりか基金助成金から初! 第一回受賞者・浅川先生の研究が成果に。

2020.02.21
text by:編集部コルク
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宇宙兄弟は「せりか基金」を立ち上げます。
シャロンが患って闘っているALS、せりかのお父さんが患って亡くなった病気であるALS。未だに十分な原因解明や根本的治療法がなく、徐々に体の運動機能を失っていく恐怖や、知力、痛み、かゆみ、寒さなどの体の感覚が保たれたまま意志を伝えることができなくなる恐怖、自分の命の意味と闘うALS患者の方の、希望を叶える支援をしたいという想いがあります。せりかの夢の実現を現実のものに。
<お知らせ>
浅川先生が研究成果をあげられたことを記念して、せりか基金より、ゼブラフィッシュモチーフのチャリティTシャツを発売いたしました。
浅川先生がALS研究を前に進めるために使われたゼブラフィッシュ を”希望の魚”と見立て、表面から裏面まで大胆なせりかブルーのボーダーが入ったデザインとなっています。せりか基金ストアにて、お買い求めいただけます。ゼブラフィッシュ モチーフTシャツ販売ページ:
https://serikafund.stores.jp/items/5ecf829bbd217839fbccfe40

こんにちは、せりか基金代表の黒川(@krikuro)です。

3回目のせりか基金賞の授賞式を12月に終えて、
今回も3名の研究者が受賞され、
1年目から数えて合計8名の研究者にALSの研究資金として助成を行うことができました。

研究が前に進むお手伝いが継続してできていること、
せりか基金の仲間が増えていくこと、
そんな小さな喜びの余韻の中に飛び込んできた、ニュースに興奮しています。

どうしても誰よりも早くせりか基金の仲間の皆様に私の口から伝えたいと思って、PCに向かっています。
(はやる気持ちを抑えきれず、誤字脱字があったらすみません…)

前置きが長くなりましたが、

せりか基金始まって以来の、ビッグビッグニューーーース!!!

第一回せりか基金賞を受賞された研究者、
たった今、浅川先生の研究論文が掲載されました。

英国科学雑誌「Nature Communications」に2020年2月21日19時(日本時間)に掲載。

詳しい概要については
下に浅川先生と研究グループが発表されたものを記載しますが、

浅川先生ら研究グループは、TDP-43の塊が形成される前に、運動ニューロンが機能を失い始めることを、世界で初めて示しました。

それによって、TDP-43の塊が形成される一つ前のステップの「TDP-43の集合」を防ぐことがALSの有効な治療法になる可能性が出てきたという、手がかりが少ないALSの中で画期的な前進が期待される大きな成果なのです。
TDP-43は『宇宙兄弟』の中で伊東せりかがISSの中の実験で結晶化に成功したタンパク質です。

ALSの患者さんの運動ニューロン(運動神経)にTDP-43の塊を形成している現象があることが14年前に発見されていましたが、

神経の中のTDP-43を研究することはとても困難なことで
なぜTDP-43が集合をして塊を形成するのか、
塊を形成することが原因で運動ニューロンの変性を起こしているのか
運動ニューロンの変性が原因で、TDP-43が塊を形成するのか
因果関係がこれまで解明されていませんでした。

これが、浅川先生が今回開発した、光を使って徐々にTDP-43を集合させて塊を形成させる技術を使うことで、
実は、TDP-43がはっきりとした塊を形成する前に、運動ニューロンが機能を失い始めていることがわかったのです。

そしてその研究方法も(素人の私の目から見て)ユニーク。
ゼブラフィッシュという透明の小さな魚を使って研究されています。

取材に伺った時にたくさんのゼブラフィッシュを見せていただいたことがあります。

すごい!!!
ALSは原因不明と言われていますが、
そろそろ、原因不明とは言えなくなりそうですね。

この素晴らしい成果を、
どうしても、みんなには一番に知ってほしい。
でも論文発表の時間より早くは発表できない。

それで、浅川先生に許可をいただいてこの記事は論文発表とぴったり同時に公開できることになりました!

非常にお忙しい真っ只中の浅川先生ですが、
せりか基金のみんなに伝えたいとおっしゃってくださってコメントをいただくことができました。

正常に働いていた運動ニューロンが、ALSで機能を失い始めるしくみは、謎に包まれています。このTDP-43の光操作技術を使うことで、ALSの運動ニューロンでゆっくり起こる変化に似た状態を、「早送り」で再生することが可能になったのではないかと思います。

「光を使ってALSを再現する」という実現性がとても低そうな研究提案を、「できるだけ大きな失敗をして欲しい」と、支援してくださったせりか基金に深く感謝いたします。この研究は、せりか基金を支援してくださったみなさんの研究です。

ーー浅川和秀

せりか基金賞審査員長の井上先生からもお祝いのコメントをいただきました。

第一回「せりか基金」賞(平成29年度)を受賞されました、浅川和秀先生らは、ゼブラフィッシュという新たな動物モデルを用いて、ALSにおける病因タンパク質TDP-43の凝集メカニズムと運動神経細胞の変性の因果関係を明らかにされました。ゼブラフィッシュは、脊椎動物でありヒトとの共通点が多く、体が透明で、生きたままで運動神経細胞の観察が可能です。浅川先生らは、光を外部から照射することによってTDP-43の凝集を生じる新たな技術を用いて、ALSの病態解明に取り組まれました。浅川先生らの研究によって、TDP-43の明らかな凝集ができる前、細胞核から細胞質への移行によって、ALS病態が生じることが明らかになりました。本研究で開発されたゼブラフィッシュALSモデルは、これまで観察できなかったALS病態を直接観察できる非常に有用なモデルであり、新たなALS創薬への応用が期待されます。

浅川先生の「せりか基金」へのご提案の研究は、異分野からのALS研究への参入であり、審査員一同、第一回「せりか基金」賞にまことにふさわしい研究であると考えました。

ーー井上 治久

せりか基金が形になった瞬間です。
そう、この日を、
みんなと一緒にお祝いできる日を待っていました。

もちろん、治療薬にはここからまたたくさんの困難があるしょう。
それでもこうやって一つ一つ解明していってくださる研究者がいることと、
その研究者の方々の成果を、こんなに早くせりか基金のみんなと、この目で見ることができたことが嬉しいです。

今日は『宇宙兄弟』の新刊、37巻の発売日でもありました。
そんなところにも縁を感じて幸せです。
作者の小山宙哉からもこの素晴らしい成果へ「希望になりますね!!」と喜びの声が届きました。

これからもスピードを加速しながら、
研究が前に進む一助にも二助にもなるように、せりか基金もより一層パワーアップしていかねばならぬ。と決意を新たにいたしました。

どうぞ変わらぬご支援をお願いいたします。

せりか基金 黒川 久里子

<お知らせ>
浅川先生が研究成果をあげられたことを記念して、せりか基金より、ゼブラフィッシュモチーフのチャリティTシャツを発売いたしました。
浅川先生がALS研究を前に進めるために使われたゼブラフィッシュ を”希望の魚”と見立て、表面から裏面まで大胆なせりかブルーのボーダーが入ったデザインとなっています。
せりか基金ストアにて、お買い求めいただけます。ゼブラフィッシュ モチーフTシャツ販売ページ:https://serikafund.stores.jp/items/5ecf829bbd217839fbccfe40

<引用:国立遺伝学研究所/東京医科大学 プレスリリース>

難病ALS、光操作で再現
〜発病メカニズムの解明と創薬に期待〜

■概要

意識や五感が保たれたまま、体を全く動かすことができなくなる難病、筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう、Amyotrophic lateral sclerosis、以下、ALS(エーエルエス)と略す)は、根本的な治療法がない最も過酷な病の一つといわれています。ALSで障害をうける神経細胞「運動ニューロン」が、いつ、どのように機能を失い始めるのかについては明らかになっておらず、そのことが治療法の開発を妨げています。

この問題を解決するために、本研究グループは、光を使ってTDP-43(ティーディーピー43)というタンパク質を操作する技術を開発し、ALSにみられる様々な運動ニューロンの異常を光照射によって再現することに世界で初めて成功しました。

浅川和秀准教授らは、ALSの運動ニューロンで塊を形成することが知られているTDP-43に、青い光を吸収すると塊を形成するように改変を加え、塊の形成を光照射によって自在に調節する技術を開発しました。光の照射を開始した後、TDP-43の塊が形成される前に照射を停止しても、運動ニューロンに異常が現れることが明らかになり、これまで予想されていたよりも早い段階で、TDP-43が運動ニューロンに障害を及ぼしていることがわかりました。塊の形成に先立つTDP-43の集合を防ぐことが、有効なALSの治療法になると期待されます。

本研究の成果は、英国科学雑誌「Nature Communications」に2020年2月21日19時(日本時間)に掲載されます。本研究は、東京医科大学ケミカルバイオロジー講座の浅川和秀准教授、半田宏特任教授、情報・システム研究機構国立遺伝学研究所の川上浩一教授による共同研究グループによって実施されました。

図1:ALSでは、運動ニューロンが障害を受け、筋肉がやせ衰える。

■成果掲載誌

本研究成果は、英国科学雑誌「Nature Communications」に2020年2月21日19時(日本時間)に掲載されます。

論文タイトル:Optogenetic modulation of TDP-43 oligomerization accelerates ALS-related pathologies in the spinal motor neurons

(光遺伝学を用いたTDP-43の多量体化は、脊髄運動ニューロンのALS病態を促進する)

著者: Kazuhide Asakawa, Hiroshi Handa, Koichi Kawakami(浅川和秀、半田宏、川上浩一)

■研究の詳細

⚫ 研究の背景

ALS(エーエルエス、Amyotrophic lateral sclerosis、筋萎縮性側索硬化症、きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)は、知性や五感が保たれたまま、全身の筋肉が徐々に衰える神経難病です。10万人におよそ2人の割合で発症することが知られており、日本では、約9,200人がこの病気を患っています。発症から平均2〜3年で死に至る、難病中の難病ともいわれる過酷な病です。

ALSは、筋肉を収縮させる「運動ニューロン」と呼ばれる神経細胞が変性することで発症します(図1)。90%以上のALSは、家族や近親者にALS を患った人がいない孤発性(こはつせい)とよばれるタイプであり、1つの遺伝子変異が原因ではないため、発症の仕組みの解明が特に遅れています。

今から14年前に、孤発性ALSの運動ニューロンに形成される塊の主成分が、TDP-43というタンパク質であることが発見されました。しかし、体の奥深くにある運動ニューロンのTDP-43を研究することは非常に困難であり、TDP-43の塊と運動ニューロンの変性の因果関係を検証するには至っていませんでした。

⚫ 本研究の成果

本研究グループは、光照射によって塊の形成を調節できる改変型ヒトTDP-43を開発し、ALSの状態によく似た運動ニューロンの異常を、モデル生物ゼブラフィッシュ(1)の生体内で再現することに成功しました。TDP-43の塊の形成は、タンパク質の集合による「細胞核(さいぼうかく)から細胞質(さいぼうしつ)への移行(2)」、「細胞質における塊の形成」の2つのステップからなることが明らかになりました(図2)。このうち、光の照射量を調節して「細胞核から細胞質への移行」を誘発するだけでも、運動ニューロンが萎縮し、筋肉との結合が弱くなることがわかりました。さらに、長期にわたって光を照射し続けると、泳ぐことが困難になる魚が現れました。

運動ニューロンは、複雑な形をした大きな細胞であるため、ヒトや、マウスなどの大型の実験モデル動物では細胞の全体像を捉えることが難しく、ALS研究の障壁となっています。一方で、体が小さくて透明に近いゼブラフィッシュは運動ニューロンの観察に適しています。本研究グループが、過去10年にわたって独自に開発を積み重ねてきたゼブラフィッシュの操作・観察技術(図3)により、「体の奥深くにある運動ニューロンの中のTDP-43を、光を使って遠隔操作すること」と、「それにともなって運動ニューロン全体に現れる変化を経時的に詳しく観察すること」が可能になり、今回の研究成果につながりました。

図2:TDP-43の細胞質への移行によって、運動ニューロンは障害を受け、筋肉との結合が弱まる。

図3:動物を生かしたまま、運動ニューロンの全体像と、その中で活動するTDP-43を観察できる。

今後の期待

本研究によって、TDP-43の塊が形成され始めると、それがきっかけとなって、運動ニューロンが機能を失い始めることが、世界で初めて示されました。塊の発達に先立つTDP-43の集合(オリゴマー化(3))を防ぐことが、ALSの有効な治療法になると考えられます。本研究で開発されたゼブラフィッシュALSモデルは、このプロセスを直接観察できる非常に有用な研究材料であり、ALS創薬への応用が期待されます。

■用語解説

(1)ゼブラフィッシュ

インド原産の体長4cm ほどの小型の熱帯魚。生後数週間の稚魚期には、体の組織が透明に近く生体内の細胞の観察に適していている。ヒト遺伝子のおよそ7割に対応する遺伝子を持っている。

(2) 細胞核と細胞質

細胞核(さいぼうかく)は、細胞の中にある、遺伝情報を含んだ膜に囲まれた球形の構造。細胞質(さいぼうしつ)は、細胞核の外側の領域。

(3)オリゴマー化

比較的少数のタンパク質などの分子が、結合を介して集合し小さな塊を形成すること。

■研究体制と支援

本研究は、東京医科大学ケミカルバイオロジー講座の浅川和秀准教授(国立遺伝学研究所客員研究員)、半田宏特任教授と、国立遺伝学研究所の川上浩一教授による共同研究グループによって実施されました。

また、本研究は、せりか基金、「生命の彩」ALS研究助成基金、加藤記念難病研究助成基金、第一三共生命科学研究振興財団、武田科学振興財団、文部科学省の科学研究費補助金(JP16K07045、JP19K06933、JP15H02370)、ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP[AMED])の支援を受けて実施されました。


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★小山宙哉とALS患者の方との対談をこちらに掲載してます。
★私の名前は酒井ひとみです ーALSと生きるー