宇宙兄弟飛行士のミッションから紐解く宇宙兄弟 <宇宙ばなし ×宇宙兄弟 書き起こし>【2/3】 | 『宇宙兄弟』公式サイト

宇宙兄弟飛行士のミッションから紐解く宇宙兄弟 <宇宙ばなし ×宇宙兄弟 書き起こし>【2/3】

2023.11.16
text by:編集部コルク
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2023年9月、Spotify独占配信中の人気Podcast「佐々木亮の宇宙ばなし」と、『宇宙兄弟』のコラボ第2段!再び佐々木さんと担当編集ユヒコの対談が実現しました。

公式サイトでは、「宇宙飛行士の仕事」をテーマに、3回に渡って行われた対談の内容をスペシャル記事として公開します!今回はコラボ②をお届けします。

コラボ②では、宇宙飛行士が『宇宙兄弟』を読んでいるかどうかや、現場で原稿を待つ編集者の目線からのエピソードなど2人が熱く語ります。

↑宇宙兄弟コラボ全3回を最初から音声で聞きたい方はこちらからどうぞ!
宇宙の専門家で熱心な『宇宙兄弟』ファンの佐々木さんと担当編集ユヒコの熱量をより感じられます!(笑)


宇宙飛行士も『宇宙兄弟』を読んでいる?

佐々木:宇宙飛行士も『宇宙兄弟』読むんですか?

ユヒコ:読んでくださってる方もいます。油井さんが、Twitterかなにかで昔読んでる風なことつぶやいてくださったとか、そういうの私たちも見てるんで

佐々木:めっちゃ嬉しくないですか?

ユヒコ:めちゃくちゃ嬉しいです。

佐々木:そうですよね。

ユヒコ:あと試験の時に、大西さん、金井さん、油井さんかが受かった際の宇宙飛行士選抜試験があった時に丁度『宇宙兄弟』が連載してて、選抜試験を受けようとした人たちの中で、『宇宙兄弟』読んでますか?っていう会話があったんですって

佐々木:へぇー!

ユヒコ:それは今、JAXAのフライトディレクターの内山崇さんが当時試験を受けられてたので、その方に聞いたんですけど、読んでる派と読んでない派がいて、理由が、読んでると影響されてしまうから意識しちゃって、わざと読んでないって人と、予習にもなるから見てるっていう人と分かれていて、内山さんは読んでる派だったんですけど、て言ってました。

佐々木:そこでなんか変わんのかな?確かにでもなんか入っちゃいますよね。

ユヒコ:情報ちょっと入っちゃうんで。ていう、おもしろいなって思って。

佐々木:誰かが変な動きしたら、カード出されたのかなこいつみたいな(笑)

ユヒコ:グリーンカードかなって(笑)

佐々木:そしたら全然ただ変なやつだったみたいなパターンも絶対あるじゃないですか。逆に疑っちゃうみたいな。

ユヒコ:あんな風に(漫画のように)グリーンカード実際は出ないらしいですけどね。あれはちょっとフィクションで、小山さんがグリーンカードって仕組みおもしろいって聞いたのを漫画にうまく入れ込んだんで。

佐々木:本当はたまーにあるないかぐらいのものみたいな。

ユヒコ:ああいう出し方はないって言ってましたね。試験時に出されるミッションの難易度を上げるために、ハプニングが起こるようなことをJAXA側がすることがあるんですって。例えば、ローバーの何かが繋がらなくなりましたとか。そういうのはJAXA側から起こすんですけど、中身(受験者同士)で起こすことはあんまり聞いたことないです

佐々木:そうか、なるほど、なるほど。まあでも先入観入っちゃうか、入るよな。

ユヒコ:読みますか?もし佐々木さんだったら。同じ立場にいて、『宇宙兄弟』に選抜試験の内容が書いている。でも佐々木さんはそれを今、受験生として受けようとして、未読の状態だった時どうしますか?

佐々木:僕、すぐ読むタイプ。

ユヒコ:そうなんですね(笑)

佐々木:僕、結構そういうの材料を揃えたくなるタイプ。多分読んでない派の人は、結構ピュアに自分のまま雑念無く行きたいみたいな。

ユヒコ:はい。

佐々木:僕、ちょっとずつでも判断材料みたいなのを揃えたいタイプなんで読むと思いますね。

ユヒコ:データを集めるのが好きだから(笑)

佐々木:めちゃめちゃ集めると思います(笑)それこそ今だったら宇宙飛行士の人とかが関わった本とかもめっちゃあるじゃないですか。

ユヒコ:そうですね。

佐々木:そことかにヒントないかな、とかはめっちゃ調べる気がする。

ユヒコ:じゃあ調べるタイプ。

佐々木:逆にめっちゃ調べると、埋もれるような気もする感情が若干あるじゃないですか。そこどうしようかなみたいな。あえて全部読まないっていう選択肢、もしかしたらするかもしれないですけど。なんか確率は上がりそうな気がしますもんね。

ユヒコ:そうですね。私も準備できるものはしたいタイプなんで、私も絶対読むと思います。

佐々木:受かった人たちがどっち派が多かった気になりますね。

ユヒコ:気になりますね。もしまたその奇跡的に宇宙飛行士の人とラフな会話できる機会が出た時に聞いてみたいですね。読んでたんですか?とか。

佐々木:そうですね。宇宙飛行士を職業として捉えてるじゃないですか、『宇宙兄弟』って

ユヒコ:はい。

佐々木:てなった時に、宇宙飛行士の人が読んでておもしろいとかってなるんだったら、ちゃんと要所要所を抑えられてるってことになるじゃないですか

ユヒコ:そうですね。

佐々木:医者の人が医者のドラマ見ると、すごい気持ち悪く感じるみたいなのがあるとか。あと僕、前回のコラボの時話したと思うんですけど、科学的な将来のミッションとかが結構硬く、ちゃんと押さえられて入ってるところ。月面のミッションとか、あ、こういうの本当にあるよねとか、それこそ太陽フレアの話とかおさえられてるから、より深く好きになるみたいなパターンがあるから、宇宙飛行士のパイなんてもう本当に数十万人だけど、その人たちが納得できる内容だったら、より忠実だからおもしろい感じるのかな、みたいな

ユヒコ:確かに、自分たちがしてる仕事があまり世間に説明しにくかったりするのを『宇宙兄弟』がめちゃくちゃ説明してくれてるから。そういう素材としてはいいかもしれないですね


編集者視点で読んだ漫画の違和感

佐々木:たまにないっすか?編集の人目線の作品とかあるじゃないですか?

ユヒコ:あれですか?プロが見たら違和感あるとかもみたいな

佐々木:そう、どう思うのかなみたいな。漫画とかの編集の人が登場して、割と重要な役割になったりするとか。

ユヒコ:うんうん、漫画の中で?

佐々木:そう。とか、漫画作ってる人目線の漫画とかあるじゃないですか。ああいうのを見たときの、自分が編集やってる視点とか

ユヒコ:ありますよ。特にあの漫画家さんって、自分の周りの範囲のことをやっぱ書きやすいじゃないですか。

佐々木:はい。

ユヒコ:だから漫画家さんが描く漫画の中に出てくるお仕事、編集者めっちゃ多いんですよ。私いつも思うんですけど、そんな世の中に編集者いないけどなって思ったり、銀行員とか保険会社の営業とか不動産とかの方が世の中で会うし。

佐々木:間違いないです。

ユヒコ:漫画家さん描く編集者の割合の多さにビックリしていて。

佐々木:特殊な仕事だから余計ですよね。

ユヒコ:やってる内容も、紙の出版社の内容とか多いですけど、そう見えてるんだって思うことはあります。漫画家さん視点でこう見えるんだみたいな。逆に広告代理店出身の人が漫画家だった場合は、本当に会社の内容とかリアルに描かれていて、この人社会人経験あるなとか。

佐々木:たしかに(笑)そっか、それ読んだらわかりますよね。

ユヒコ:結構わかりますね。

佐々木:そこにじゃあ、ちょっとエッセンス入れて行くのも編集者の仕事してあるんですか?

ユヒコ:私はそういうタイプの漫画を担当しないですけど、いらっしゃるんじゃないですか。これはしませんとか多分あると思います(笑)

佐々木:たしかに、たしかに(笑)


編集者の人は本当に締め切りを現場で待つ?

ユヒコ:本当に締め切りを現場で待つのか、とかもフィクションだろって思ってたんですけど、『宇宙兄弟』の場合は、5年ぐらい前まで本当にやってました。いつもなかなか上がらなくて、上がりますって言われた時間に行ってから3時間とか。まだかな…って(笑)私はいつ上がるかなって立ってるんですけど、アシスタントさんとかからしたら、それがプレッシャーになるらしくて。待たせてるって思うんですって。だったら全然あと2時間後に呼んでいただいて大丈夫だったんですけど(笑)

佐々木:確かに、それはそう。

ユヒコ:そういう事とかは結構何度もあって、でもいると早く描けるから、それはそれでいいっていう話も。

佐々木:やっぱ締め切りって大事ですよね。

ユヒコ:締め切りめちゃくちゃ大事です。

佐々木:締め切りあるとたどり着けるクオリティみたいなありまもんね、きっと。いやー、それおもしろいな。

ユヒコ:それが今デジタル化されたんで『宇宙兄弟』が。今はデータ納品で、その場に立って待つがなくなりました。

佐々木:そうなんだ(笑)あれは昔というか。

ユヒコ:はい。(笑)

佐々木:今もやってるところはある可能性は。

ユヒコ:あると思いますよ。紙でまだ書いてる人とかは。

佐々木:へえー、おもしろ。


『宇宙兄弟』のキャラクターたちの仕事の決め方

佐々木:ちょっとじゃあ宇宙飛行士の仕事の話も。

ユヒコ:そうですね。

佐々木:はい、いろんな仕事のところにピックアップして行きたいんですけど。さっき話したみたいに、宇宙飛行士をめっちゃ僕、何か特定の目的の為に作業している割と職人のような感じだと思ってるんですけど。結構『宇宙兄弟』の中でも、細かくそれぞれの人のミッションとかって描くじゃないですか。あの仕事の決め方みたいな、ところを。

ユヒコ:本当に質問めちゃくちゃおもしろいですね(笑)。

佐々木:そこ知りたいなーみたいなのがあって。

ユヒコ:思った以上に細かく決めてると思います。

佐々木:具体的には、じゃあこの人ここで実験やってる裏でこういう風に動いてるんじゃない、ぐらいな感じですか。

ユヒコ:描く必要がない場合はそこまで決めないんですけど、例えばムッタとエディが船外活動してる間に、月面基地に残った人たちは何をしておくべきですかっていうのが質問できたりはします

佐々木:暇でいるわけないじゃんみたいなね(笑)。

ユヒコ:そういうフリが来た時もムッタとエディは、スーパーコンピューターシャロンを取りに行って、その間残りのクルーは何してるの?を描かないといけないので。

佐々木:なにしてましたっけ?

ユヒコ: とにかく電源切ってました(笑)。

補足情報
例えば29巻271話「このために来た」では、エディとムッタが船外活動をし、スーパーコンピュータSHARONを取りにいくことに。その際に他クルーの役割も決めていて、この話では、ムッタとエディが船外に出るために宇宙服に着替えている間、カルロとベティはムッタたちの船外活動のサポート準備。フィリップとアンディはムッタたちが乗るためのバギーを準備する。などセリフで説明はしていないが、登場人物たちは与えられた役割をこなしている。

佐々木:あー!

ユヒコ:太陽フレアでコロナ質量放出がきた時に影響されそうな物を全部切るとか、そういうことをしますとかもやったりしてます。

佐々木:そうだよなー、でもなんか宇宙飛行士の人って、いろんな実験のタスクが決まってるじゃないですか。あれって例えばせりかさんだったら、宇宙ステーションでこういう実験やるためのキャラぐらいの感じというか作りじゃないですか

ユヒコ:たしかに(笑)。

佐々木:あれってミッションと人柄もがっつり決まってなるけど、チームを編成して月に行きますってなった時に、NASAみたいに決めるのかなーみたいな。この人とこの人でまずチーム組んで、この人たちにこういうタスクやらせようみたいな感じなのか、このタスクやりたいからこのキャラに足すみたいな感じなのかとか。

ユヒコ:それで言うと、私も驚いたんですけど、ジョーカーズの5人?6人?5人かな(笑)役割が決まってなくて。

佐々木:そうなんですか。

ユヒコ:月に入ってから、カルロが医者って知りました。

佐々木:え?そうでしたっけ。

ユヒコ:多分医者でしたっけ、みたいな感じで必要な役割が出てきた時に誰がやるとベストかで漫画はけっこう描かれていて。月面のトンネルをジョーカーズたちが発見した時に、最初にトンネルにみんなで入った時に地質調査をする必要があるっていうのが分かったんですね。トンネル見つけたら、何するかどうか知らなかったんで。

佐々木:あー、そうなんだ。

ユヒコ:トンネル見つけたら、まず何をする必要がありますかってJAXAの方と話していたら、やっぱりそこの地質を調査するって話が出た時に、地質学をやってるのはジョーカーズだと誰だってお題が出て、それだったらアンディですねってなるんですよ。

佐々木:はいはい。

ユヒコ:そのキャラが相性がいいっていうか。

佐々木:たしかに土っぽいっすね(笑)。

ユヒコ:地質学者だからアンディが行ったわけじゃなくないんですよ。そこが不思議で私、それでストーリー出来てるのが不思議で。

佐々木:たしかにたしかに、奇跡的な組み合わせっぽい感じがしますね、そうすると。土っぽいやついないなーみたいな(笑)

ユヒコ:いなかったとかあるかもしれないですね(笑)でもそれがしっくりくるんですよ。

佐々木:きますね、たしかに。

ユヒコ:必要な動作とかを地質学者の人に聞いて、地上だとどういうふうにトンネルを検査しますか?みたいな。 じゃあ、こういう手順で見ますみたいなのを聞いたら、実際にアンディが多分そんなにコマ使われてないと思うんですけど、トンネルに入った数ページでちゃんとやってるんですよ

佐々木:そういうことなんだ。これめっちゃ余談なんですけど、僕今回の宇宙飛行士の現実を選抜試験、絶対月の研究やってた地質学者みたいな人選ばれると思ってたんですよ。

ユヒコ:そうなんですね。

佐々木:理由は全く同じで、月に行く人を今回選んだじゃないですか、宇宙飛行士。その人たちは絶対アルテミス計画に引っ張られて仕事やるっていうのがほぼ決まってたから、そうしたら月ガッツリ見れる人のほうがいいだろうなみたいな感じで、地質学者とか現場に行ったときにその場で解釈ガッツリできる人とかを選ぶんじゃないかなってちょっと思ったんですよ。そしたら全然、めっちゃシンクタンクの人とめっちゃ医者の人だったっていう。

ユヒコ:全然違いましたね(笑)でも今後は絶対に選ばれますよね。

佐々木:なんかいそうな気がするんですよね。やっぱある程度作業する内容決まってても、本職の人がやったらまた違うじゃん、みたいなのきっとあるじゃないですか。いくらガチガチに決まったスケジュールの中だとしても。てなるから、そういうメンバーがいてもいいのになと思ってたんですよね。

ユヒコ:行って欲しかったですけどね。2人だと選びきれなかったんですかね。

佐々木:そうするとまあ、確かに医者の欲しいよな。医者ほしいですよね(笑)

ユヒコ:医者はほしいです(笑)

佐々木:それこそね、『宇宙兄弟』みたいなことになりかねないじゃないですか。だからまあ医者だよな。

ユヒコ:そうですね、カルロにも本当にいてくれてよかったなって(笑)。

佐々木:本当ですよね(笑)、そう、それはマジで思ったな。

ユヒコ:本当はそんな感じでシーンで出てきた要所要所で決めていくことが多いので、本来のJAXAの人が発表されるようなタスクみたいなのが7項目とか。これを今回のミッションをクリアしますみたいな決め方はしてないです

佐々木:あー、そうなんだ。ああ、そういうことか。


最終話となるコラボ③では、現実世界と漫画がリンクする『宇宙兄弟』や最終話に向けて盛り上がる『宇宙兄弟』のこれからの読み方について編集者目線で語っています。ファン必見の内容となっていますので、お楽しみに!

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