地球と月が重なる瞬間を、ひとつの財布に。MOTHERHOUSE×宇宙兄弟 ものづくり対談 | 『宇宙兄弟』公式サイト

地球と月が重なる瞬間を、ひとつの財布に。MOTHERHOUSE×宇宙兄弟 ものづくり対談

2026.07.27
text by:西谷涉
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こんにちは。スタッフのアユミです。

『宇宙兄弟』とMOTHERHOUSEのコラボレーション第2弾として、
月と地球、そして宇宙空間を表現した革小物、
「Earth & Moon Wallet」「Earth & Moon Card Case」が誕生しました。

夢に向かって一歩を踏み出すキャラクターたちの姿を描く『宇宙兄弟』と、
「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という道なき道を歩んできたマザーハウス。
「夢に向かって挑戦する人を応援したい」という共通する想いが重なり、今回のものづくりがはじまりました。

製作秘話は別の記事でもご紹介していますが、今回はマザーハウスのものづくりに込められたこだわりや想いをお聞きして、その魅力を掘りさげます。

スタッフさとうめと、マザーハウスの革小物担当・工藤理恵子さんの対談をお届けします。

MOTHERHOUSEの「プレイフル担当」が生み出す、遊ぶ心あるものづくり

さとうめ 今日はよろしくお願いします。みなさんにお聞きしているのですが、工藤さんが『宇宙兄弟』で好きなエピソードや、共感できるキャラクターはありますか?

工藤 15年ほど前に、夫が「おもしろい」と言って持ってきて、初めて『宇宙兄弟』を読みました。
序盤の方ですが、閉鎖空間でみんなで白いパズルをやるところや、ヒビトが宇宙へ行って大ピンチになって空気をもらうシーンが、いちばん印象に残っています。

工藤 どのキャラクターに似ているかは、私は会社の中では「プレイフル担当」と言われていて(笑)
代表の山口が、マザーハウスの中心的なものづくりをしているのに対し、私はアニマルシリーズなど、
ちょっと遊び心のある、みんながクスッとするようなものをつくったり、伝えるのが好きなんです。
そういう意味では、紫三世とか、ムッタのお父さんに近いかもしれません。

さとうめ そうなのですね!素敵です。工藤さんがご担当しているマザーハウスのアニマルシリーズは、どのように生まれたんですか?

工藤 もともとは山口がジュエリーも含めて、もう少しおもしろく、肩の力を抜いて純粋に楽しめるものづくりをしてみたいというところから始まりました。そこから私が革小物担当になって、新しいアニマルをつくり始めています。おもしろさとかわいらしさがあって、工場の技術の成長にもつながるかを毎回考えながらやっています。

さとうめ 一つひとつが動物の特徴をしっかりおさえながら、かわいくデフォルメされていますよね。ハリネズミのハリの部分が細かくて表現するのがむずかしそうです。

工藤 ハリネズミは一段ずつ重ねては縫う、非常に手間のかかる作業でした。バングラデシュの工場でつくっていますが、現地のスタッフもやりがいを感じてくれているようです。

さとうめ いつかアポもつくってほしいです…(笑)

工藤 アポ!いいですね~。

最終巻を意識した、地球と月が重なり合うデザイン

さとうめ それでは、少しずつ今回のコラボ商品の話に移っていきたいと思います。春ごろに「革小物」というお題で、マザーハウスさんの方から商品案をいくつか出してくださったんでしたよね。

工藤 7月に最終巻が出るということで、革小物を絶対やりたいと思っていました。
過去のコルクさんの企画書などを拝見して、物とエピソードのつながりが素晴らしいなと思ったんです。漫画のストーリーと連動して、物を通じてフラッシュバックできるという体験がいいなって。
それで地球と月をテーマに、宇宙空間をロケットが発射するというコンセプトで、今回提案させていいただきました。

さとうめ どうもありがとうございます。『宇宙兄弟』最終巻発売という時期的にもぴったりなコンセプトだと思いました。どのようにデザインに落とし込んだのでしょうか。

工藤 地球と月の行き来みたいなものを表現したかったのです。そこで、黒いレザーを宇宙空間に見立てて、をイメージしたシルバーのレザーと、地球をイメージしたブルーのレザーを重ね合わせてつくりました。

工藤 地球にも月にもそれぞれ人がいて、月のことをみんなが思って、地球から応援しているという原作のストーリーを、お財布やカードケースを閉じたとき、地球と月がそっと触れ合うような形で表現したいと思いました。

さとうめ カードケースの方はロケットの発射をデザインで表現していますが、お財布は宇宙船のドッキングをイメージして、土台から小銭入れを取り外せる仕様にしようという話になりましたね。

さとうめ 今回の商品では、技術的に一番のポイントはどこですか。

工藤 カードケースの方の、ロケットを表現している小さなパーツをはめこむ、象嵌(ぞうがん)という技術です。パーツが非常に小さいので、いかにきれいにできるかということ。また、地球から月に向かって軌跡の延長線上に、このロケットがないと絶対にダメという、位置の精度です。そこは「すごく難しい」と言いながら、工場のスタッフががんばってくれています。

さとうめ 象嵌(ぞうがん)は、どのような作り方なのですか?

工藤 黒いレザーのところに穴を開けて、カラーのレザーにも穴を開けてパーツをつくります。その小さいものをレザーのところに埋め込むのです。ちょっとでもずれたらはまらなくなってしまうので、非常に精密な作業です。

さとうめ すごい…。

工藤 あとは、宇宙空間の中で、立体的に月と地球をボコッとさせているところを、いかにきれいにできるかも今回のチャレンジングポイントかなと思っています。

さとうめ 閉じたときに、段差が起きないみたいなところですよね。

工藤 そうそう。最初のデザインでは、地球のシルエットがもう少し大きくて、月が重なる分厚いところの部分が閉じたときに少し浮いてしまっていたので、それが重ならないように直しました。

さとうめ そうだったんですね。この月と地球をイメージしたレザーの色合いも印象的です。

工藤 月の方は、私たちがもともと「ツキアカリ(月明かり)」というシリーズを作っていて、その時に使っていたレザーがぴったりだということで使うことになりました。ちょっとシャイニーな感じが、すごく月らしいと思います。

「it’s a piece of cake!」に込めた思い

さとうめ 『宇宙兄弟』のものづくりでは、日常使いや機能性を大切にしながらも、どこかで物語を感じられる要素をさりげなく散りばめることが多いのですが、今回でいうと、小銭入れの差し込みパーツをちらっとめくったところに、「it’s a piece of cake!」という名言と、14巻の表紙のムッタとヒビトのシルエットをエンボス加工でいれていただきました。

工藤 じつは、「it’s a piece of cake!」という言葉が、マザーハウスの考え方ともよく似ているなと思っていて。会社が大きくなって、社員数も増えて、みんなが何考えてるかわからなくなるのではないかということで、「マザーハウス語」というのをつくったんです。ルールではなく、キーワードを通して会社にとって大切な価値観を考える取り組みです。

工藤 例えば、「Let me try first」という言葉があります。「まずはやってみよう」と言う感じですね。バングラデシュの工場長がマムンというのですが、マムンがよく言ってる言葉で。バングラデシュは、物的に足りない物がいっぱいあるんですよね。これもない、あれもない。だけど、まずはどうにかやってみようという姿勢が、「It’s a piece of cake」とすごく似ているなと思っています。

さとうめ へぇ。マザーハウス語、面白いですね。先ほどの「playful」も入っていますね。
「keep walking」「1mm」など、『宇宙兄弟』とも通じるワードがたくさんありますね。

「機能的であること」の一歩先へ

さとうめ 今回ものづくりをご一緒させていただいて、個人的にとても興味深かったのが、『宇宙兄弟』とマザーハウスさんでの「機能的であること」への捉え方のちがいでした。

『宇宙兄弟』では、収納性や耐久性など、実用性を軸にした商品づくりをしてきましたが、マザーハウスさんは、ものの出し入れをする所作の美しさや立ち振る舞いまで考えて、設計されているのが印象的でした。

工藤 そうですね。とくにバッグは、持つ人がどういう動きでここの角度がどうなるのかとか、手が入れやすい角度とか、そういったところまで考えながらつくります。ポケットの位置がここに、この大きさのものがある意味は何なのか、どんな人が背負うからどのくらいの長さなのか。本当に一個ずつ、細かく話し合いを重ねています。

さとうめ 『宇宙兄弟』でも、宇宙で採用された技術や素材や、テック系の超高機能なものとのコラボレーションなど、特殊な素材をつかった商品開発については色々と掘りさげてきたのですが、持つことによって動きまでスムーズになるという視点はあたらしい気づきでした。

工藤 今回の商品でいうと、身体的にもユニバーサルなものができたなと感じています。

さとうめ ユニバーサルですか?

工藤 そうです。お客様によって、右利き左利きの違いや、ずっと使ってきたお財布の癖などで、みなさん使いやすいと感じるお財布の開き方の向きが異なるんですよね。今回は、小銭入れを左右のお好みの方向に入れられるので、いろんな人に使いやすいかもしれません。

さとうめ なるほど! 私も社内でいろんな人に見せていたのですが、小銭入れの差し込む方向は、地球側(ブルー)に入れたい人と月側(シルバー)に入れたい人とさまざまでした。

離れた場所にいる相手を思い、長く寄り添うものを

さとうめ 最後に、今回の商品に込めた思いを聞かせていただけますか。

工藤 はい。宇宙兄弟とマザーハウスの共通点として、頑張ろうと一歩を踏み出す人の背中を押す、挑戦を応援するところがすごく親和性があると思います。これを使うたびに思い出したり、うまくいかない時にがんばろうかなと思ってくれるようなものであってくれたら嬉しいです。地球側と月側、すごく遠く離れている場所であっても、お互い思いやっているところも伝わったらと思います。 ‎

さとうめ そうですね。私も今日工藤さんのお話を伺って、月には月でがんばる人たちがいて、地球には帰還を支える人たちがいて、その人たちが、お財布やカードケースを折りたたむことで重なり合うのがすごく素敵だなと改めて感じました。

工藤 あとはバングラデシュのみんなも、ちょっとでもストーリーを知って、同じ気持ちで生産をしてもらえたらなと思います。今月末に出張に行くので、きちんと伝えてこれたらなと思いました。

さとうめ どうもありがとうございました。