『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない』第3章 自分らしいリーダーシップを発揮するコツ(3/3) | 『宇宙兄弟』公式サイト

『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない』第3章 自分らしいリーダーシップを発揮するコツ(3/3)

2018.07.06
text by:編集部コルク
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「フロー(夢中)」な状態であるためには「チャレンジの度合い」と「能力」の相関性が重要という「フロー理論」と、自分の強みを客観的に把握するためのツール「ストレングスファインダー」とは? そう、Amazonの書籍ランキングでも常連となっている、あのベストセラーです……!

「夢中」な状態を作り出す 「フロー理論」とは

「1.1」の概念は理解できたとして、肝心なのは、具体的にどうやって「1.1」の 状態に自分を持っていくか、です。 そこでぜひ取り入れたいのが、「フロー理論」によるフローマネジメント。

「1.1」の状態とは、「挑戦してみよう!」と思える適度な「チャレンジ」のレベルと、その人の現実的な「能力」とのバランスによって成り立っています。

たとえばロールプレイングゲームで、まだ「レベル1」のあなたの前に、いきなり ボスキャラが出てきたら、戦う気をなくしませんか?レベル相応の強さのキャラと 戦い、レベルアップすることで、前に進もうという気持ちになるのです。反対に、「レベル100」にもなって、雑魚キャラばかりが延々と出てきても、やる気をなくしま すよね。手ごわい敵を倒すからこそ、おもしろい。
「チャレンジ」と「能力」のバランスが取れているからこそゲームを楽しめるし、夢中になってステージを進めようとするわけです。

この、何かに夢中になっている状態のことを、「フロー」と呼びます。 言葉の由来は、心理学者のミハイ・チクセントミハイ博士によって提唱された、時間や身体感覚すらも忘れるほどに何かに没頭している状態を指す「フロー体験」からきています。
「チャレンジ」のレベルが「能力」よりも高すぎると「不安」が大きくなり、フロー状態にはなれません。また「能力」が「チャレンジ」のレベルよりも高すぎると、今度は「退屈」に傾きます。
「チャレンジ」と「能力」の相関性を、チクセントミハイ博士の著書『フロー体験 喜びの現象学』を参考にアレンジしたものが、次の図です。
図の中心、③の部分が「フローゾーン」です。

フローマネジメントとは、このエリア内に目標設定を置き、課題や仕事のチャレン ジレベルを調整することで、その人のパフォーマンスを引き出すというもの。
多くの人は、①の「不安ゾーン」からの始まりになるでしょう。
しかし、試行錯誤しながら続けるうちに能力や習熟度が上がり、フローゾーンへと突入。それまで不安だったことが、今度は楽しめるようになります。この状態が続くと、頑張らなくてもこなせてしまうので、徐々に退屈さを感じるように。そこで、新たな課題を用意したり、チャレンジのレベルを少し上げたりすることで、再びフローゾーンに戻していきます。

チクセントミハイ博士が、『ビズジン』という事業開発者向けのウェブメディアで語ったインタビューによると、125年間、赤字を計上していたスウェーデンの州営交通会社が、マネージャー全員に部下のフロー面談を実施させました。
フロー面談の内容は、
「その部下が仕事に飽きていないか?」
「自分の仕事に不安を感じていないか?」
「フローでいるか?」
を中心にヒアリングします。その結果にもとづき、それぞれに合った仕事や仕事環境、トレーニングなどを調整したところ、仕事をさぼったり、仮病で会社を休んだりする従業員が激減し、生産性が向上。1年後に黒字となったのです。

このフローマップは、マネジメントクラスの人だけでなく、チームのメンバーも共有・理解することでより活用できると思います。
たとえば、こんな会話が生まれるようになるかもしれません。
「あなたは今、フローマップの、どのエリアにいると感じる?」
「私は今、不安ゾーンにいます」
「そうなんだ。じゃあ、どんな能力・スキルを学習すればいいと思う?」
または、 「私は今、退屈ゾーンにいます」
「では、目標設定を少し上げてみよう。あなたは、どんなチャレンジをしたい? これからしばらく不安な時期が続くけれど、能力が上がればきっと、フローゾーンに入るよね。だから頑張ろう」
などと、共通言語として会話ができれば、お互いの信頼関係が築けるはずです。

注意すべき点は、不安ゾーンからフローゾーンに入ったからと言って、すぐに目標設定を上げてしまわないこと。
せっかく楽しめるようになったのに、また不安ゾーンへと逆戻りし、常に不安な状態になってしまいます。
目標管理制度を取り入れている会社で、離職者が多い、常に不安を感じている社員 が多いというのは、まさにこのパターンに陥っている可能性が高いと思います。
目標設定を上げるのは、フローゾーンの③を経て、退屈ゾーンへと入ってから。
「あなた(私)は今、退屈ゾーンに入っているので、もう少しチャレンジのレベルを上げてみよう」
この意識を持っているのといないのでは、不安ゾーンでのパフォーマンスも大きく変わります!

僕のワークショップでは、この一連の流れを課題解決ゲームによって実際に体験し てもらっていますが、目標設定を人から決められるのではなく、チームのメンバーが自分たちで行えるようになることを目指しています。
自分で目標設定ができて、そのための能力を得る機会が保証されている ——。
これぞ、最高のチームが生まれる環境だと思います!

〜心のノート〜
チャレンジと能力のバランスで、仕事はおもしろくなる!
自分は今どの状態なのかを、把握することが大切。

あなたの「強み」を診断する最強ツール


「自分の強みを活かすことが、リーダーシップの発揮につながる」

では、 「あなたの強みはなんですか?」
と言われて、すぐに返答できる人って、どのくらいいるのでしょう?
自分の強みを主観的な立場から正確に分析するのはなかなか難しいもの。
でも、知っておいて損はありません。

そこで、みなさんにぜひとも体験していただきたいのが、アメリカの世論調査や組織コンサルティングを行っているギャラップ社が開発した、「ストレングスファインダー」というツールです。

これは、ギャラップ社の専用ウェブサイトにアクセスして170問以上の質問に答えることで、 種類の資質の中から自分の強みである上位の5種類を知ることができるというもの。 資質のカテゴリーは、「アレンジ/運命思考/回復志向/学習欲/活発性/共感性 /競争性……」など、多岐にわたります。

「ストレングスファインダー2.0」のウェブテストを受けるには、公式サイトからアクセスコードを直接購入する方法もありますが、書籍『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版』(日本経済新聞出版社刊)を購入すると、カバーの裏にアクセスコー ドが記載されており、同様にサービスを受けることができます。 アマゾンのベストセラーランキングに入っていることも多いので、「ああ、あの本か!」と、ご存じの方も多いかもしれませんね。
公式サイトでアクセスコードを購入する場合は、自分の5つの強みに対するレポートは出ても、「34の強み」についての細かな説明はありませんのでご注意を。書籍の アクセスコードを利用するほうが、「34の強み」の特性がすべて本の中に詳細に記載されているので、理解しやすくてオススメです。

僕はこれまで、セミナーや研修などで紹介して2万人以上の人に「ストレングスファインダー」を受けてもらっていますが、実感としてはとてもよくできていると思います。

ちなみに、僕の5つの強みは次のとおり。
①戦略性
②ポジティブ
③最上志向
④学習欲
⑤運命思考

「ストレングスファインダー」によると、僕の一番の強みは「戦略性」。これは、さまざまな企業や組織のチーム作りをお手伝いしているファシリテーターとしては、強みとしてだけでなく、説得力にもなりますね。また、基本的に何事も「なんとかなるさ!」と前向きに捉えて生きていますが、それが「ポジティブ」として強みにも出て いるようです。
どうです?
強みを知るって、すごくおもしろいしワクワクしませんか?

客観的な視点から知る「自分の強み」は、自信にもつながるし、仕事だけでなく生き方そのものへのヒントにもなるはずです。
リーダーシップに対しても、どのようなシーンで発揮すればより自分らしさが出せ るのか、自らの強みとマッチングさせることも可能です。
たとえば僕なら、「戦略性」が求められるシーンでリーダーシップを発揮する、といった具合です。
僕は決してギャラップ社の回し者ではありませんが、「自分の強み」という漠然とした概念を客観的な視点で分析でき、かつ言語化してくれた「ストレングスファインダー」は、やはりすばらしいツールだと素直に感じています。

みなさんも、こうしたツールを利用して自分の「強み」を把握しておくといいでしょう。

〜心のノート〜
自分の強みを知ることで、自分らしいリーダーシップを発揮していこう!

(つづく)

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宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない。

カリスマ的な存在感もなく、リーダーとは無縁のタイプ。でもなぜか“彼”がいると、物事がうまくいく……。累計2000万部を誇る人気コミック『宇宙兄弟』に登場するキャラクターや数々のエピソードを、「リーダー」という視点から考察した書籍『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない』。目まぐるしく変化し先が見えない現代で、「正解」を模索する人たちへの生き方・働き方のヒントとなる話題の本書を、『宇宙兄弟』公式サイトにて全文公開!

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<著者プロフィール>
長尾彰・ながお あきら
組織開発ファシリテーター。日本福祉大学社会福祉学部社会福祉学科(心理臨床カウンセリングコース)卒業後、東京学芸大学大学院にて野外教育学を研究。

企業、団体、教育現場など、20年以上にわたって3,000回を超えるチームビルディングをファシリテーションする。

文部科学省の熟議政策に、初の民間ファシリテーターとして登用され、復興庁政策調査官としても任用されるなど幅広い分野で活動している。