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〈宇宙兄弟リアル〉佐孝大地・中村大地/フライトディレクタ ~宇宙飛行士をサポートする地上管制チームの指揮官~
最初で最後の涙
フライトディレクタになる前、私はFLATという管制官だった。『きぼう』の空気や温度の環境管理を担い、火災などの緊急事態に対処する、云わば飛行士の命を守るポジション。そのFLATの最終認定テストで、私はすんなり合格できず、1回落とされている。
それはシミュレーションの終盤だった。ちょっとした思い違いで、宇宙飛行士の安全を脅かすような判断を下してしまったのだ。長時間に渡るテストの緊張と疲れもあってパニック状態にもなっていたのだが、宇宙飛行士の命を守るというFLATの役割に使命を感じ、気合いを入れて臨んだテストだったのだが、不合格になったことよりもその気合いとは裏腹に自分が単純な判断ミスしてしまったことが悔しかった。
その日、帰宅して玄関のドアを開け、部屋の電気を付ける直前に、『仕事で泣くことなんてあるのか!?』と思っていた自分の目から不思議と涙がぽろぽろと出てきたことを覚えている。仕事で泣いたのは後にも先にもその時だけ。それくらい若くて本気だったということだろう。
時が過ぎフライトディレクタになった自分が先輩からあることを教わった。
『自分で何かを判断しなければならない時、一番怖くてデキる上司を目の前に思い浮かべろ。その人にどうゆう根拠でその判断に至ったかを説明し、返ってくる質問も想定してそのすべてに答えられるのなら、その判断は正しい』
最初で最後だったが若くて本気だった証のあの涙と、先輩から教わったこのアドバイスは、今も大切にしている。
『宇宙兄弟リアル』次回登場のリアルは!?
JAXA有人宇宙技術部副部長/星加正、のリアル!
次回の『宇宙兄弟リアル』は、JAXA有人宇宙技術部副部長/星加正のリアル、上垣内茂樹さんが登場。
宇宙飛行士選抜試験閉鎖環境試験で、ムッタら候補生たちをグリーンカードで翻弄し、鋭くも温かい眼差しで宇宙飛行士としての適性を見極めていた星加正。同じく2009年の選抜試験で審査員も務めた上垣内さんは、JAXAの前身であるNASDA時代から長年、有人宇宙開発の分野で宇宙飛行士を支援する業務を中心に活躍してきた。その功績からNASA宇宙飛行士室より『シルバー・スヌーピー・アワード』も受賞している、『ザ・マン・オブ・JAXA』とも言える男である。果たして上垣内さんは、選抜試験で候補生の椅子のネジをリアルに緩めていたのか!?上垣内さんだから知っている深いイイ話を聞く!!
ご本人に質問したい事があれば、筆者ツイッター(@allroundeye)に書き込み下さい。読者の皆さんから頂いた質問内容を可能な限り反映してインタビューを進めて参ります!また連載に関して感想・希望などあれば合わせてお寄せ頂ければ幸いです。頂いたご意見を交え、さらに充実した連載にしていきます。
『宇宙兄弟』に登場する個性溢れるキャラクターたちのモデルともなったリアル(実在)な人々を、『JAXA』の中で探し出し、リアルな話を聞いているこの連載が書籍化!大幅加筆で、よりリアルな宇宙開発の最前線の現場の空気感をお届けいたします。
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<筆者紹介> 岡田茂(オカダ シゲル)
東京生まれ、神奈川育ち。東京農業大学卒業後、農業とは無関係のIT関連の業界新聞社の記者・編集者を経て、現在も農業とは無関係の映像業界の仕事に従事。いつか何らかの形で農業に貢献したいと願っている。宇宙開発に関連した仕事では、児童書「宇宙がきみをまっている 若田光一」(汐文社)、インタビュー写真集「宇宙飛行 〜行ってみてわかってこと、伝えたいこと〜 若田光一」(日本実業出版社)、図鑑「大解明!!宇宙飛行士」全3巻(汐文社)、ビジネス書「一瞬で判断する力 若田光一」(日本実業出版社)、TV番組「情熱大陸 宇宙飛行士・若田光一」(MBS)、TV番組「宇宙世紀の日本人」(ヒストリーチャンネル)、TV番組「月面着陸40周年スペシャル〜アポロ計画、偉大なる1歩〜」(ヒストリーチャンネル)等がある。
<写真(きぼう管制室内のW大地)> 八幡 宏
フォトグラファー。「古民家、はじめました。」https://umimachi-kominka.tumblr.com / ホームページ http://hirosy.com/
<連載ロゴ制作> 栗原智幸
デザイナー兼野菜農家。千葉で野菜を作りながら、Tシャツ、Webバナー広告、各種ロゴ、コンサート・演劇等の公演チラシのデザイン、また映像制作に従事している。『宇宙兄弟』の愛読者。好きなキャラは宇宙飛行士を舞台役者に例えた紫三世。自身も劇団(タッタタ探検組合)に所属する役者の顔も持っている。