手のひらサイズの「ブギーのラジコン」が完成…!プロのクリエイターと『宇宙兄弟』×FabCafeのコラボ企画を大公開☆ | 『宇宙兄弟』公式サイト

手のひらサイズの「ブギーのラジコン」が完成…!プロのクリエイターと『宇宙兄弟』×FabCafeのコラボ企画を大公開☆

2018.06.03
text by:西谷涉
アイコン:X アイコン:Facebook

こんにちは。スタッフのアユミです。

先月23日に発売された『宇宙兄弟』最新33巻、みなさんはもうごらんになりましたか?
今回も色んなドラマがつまっていて、昨年12月のファンイベントで小山さんと佐渡島が話していたように、いよいよクライマックスが始まったのかなと感じさせる進展もあり、早くも次の巻が読みたい気持ちでいっぱいです…!

33巻の発売を記念して、東京・渋谷のFabCafeでは、4月中旬からGWにかけて、宇宙兄弟×FabCafe コラボレーション第3弾が開催されました。

GW中にはスペシャルファンデーとして、33巻の読書会が行われ小山さんの仕事場から生中継が入るなど、とても盛り上がって開催されました♪
宇宙兄弟×FabCafe コラボレーションにご来場いただいたみなさん、どうもありがとうございました。

会場の様子はこちらの記事をごらんください。

そして、じつは、今回会場まで来られなかったファンの方にもぜひご紹介したい、とっておきのクリエイターコラボアイテムがあるんです…!
それがこちら、「ブギーのラジコン」です。

アプリで操作できる、手のひらサイズのブギー。
飾っておくだけでも十分愛らしい見ためのブギーは、おもちゃながら、しっかりロボットにつくられていて、原作のように、言葉をしゃべったり、モニターに映る顔を変えることも、操縦することもできます。

このブギーを作ってくださったのは、元ソニーでAIBOやQRIOの開発に携わっていたロボットエンジニアの山本 隆司さんと、先行開発に従事する自動車デザイナーの、西川 満生さん。機械部分の設計やアプリ開発を山本さんが、外装のデザインを西川さんが担当。ロボットづくりとプロダクトデザインの第一線でご活躍されているおふたりが、ほとんど趣味のような形でつくってくださったのです。

液晶や機械が入る前の外装デザイン

わずか15体の、とっても貴重なミニチュアブギー。
もともと、山本さんが『宇宙兄弟』の大ファンだったという背景もあり、先日おふたりから、しあがったブギーのラジコン1体を小山さんに直接プレゼントしていただくという機会がありました!

そのときに、ブギーのラジコンづくりのエピソードや、山本さんと西川さんの作り手としてのこだわり、『宇宙兄弟』への熱い思いを聞かせていただいたので、こちらでもご紹介いたします^^

左から、山本隆司さん、小山宙哉さん、西川満生さん

ブギーらしい見た目と機能があわさった、
小粋な小型ロボットができました。

デザイン案

つるんと透明な球体のなかには、ブギーの顔である液晶モニターがしっくりはめこまれ、原作のブギーがそっくりそのまま出てきたかのような、クオリティの高さ!クリアの球体だけが既製品で、その他はすべて3Dプリントで、7分の1スケールで作られています。

驚くのは、見ための再現度だけではありません。
このブギー、山本さんがつくったオリジナルのアプリ、その名も「bgwgBoogie」(ブギウギブギー)で操作することができます。

好きなブギーのセリフを選んで、声質も変えて、しゃべることができるほか、胸元のライトをつけたり、顔の表情を変えたり、移動することもできちゃうんです。

コストが上り過ぎず、なおかつ、操縦して遊べる最小限の大きさということで、決まったのがこのサイズ感だったと言います。

山本さん「もともとベースになる動きがここ(本体の機械の部分)にあって。これにLCDをつけて、押し込んでつくるんですけど、頭の球体の大きさが決まってるんで、それにあわせて、手乗りができるサイズにしようぜ、というのでサイズ感が決まりました。」

山本さん「色んな機能がないと、持ってる人も納得がいかない。どうしても材料がかかって高くなってしまうので、なるべくちっちゃく作りたかった。ちっちゃくて、ブギーらしさというか、表情を変えて声を出したいと考えていました。」

プロフェッショナルな現場で多くのものづくりを経験をされているおふたり。
今回のブギーのラジコンづくりでは、どんな点に苦労されたのでしょうか?

山本さん「作ってるときにいちばん大変だったのは、声ですね。ブギーの声ってアニメに登場してないので、どんな声か分からず、7種類から選べるように設定しました。」

西川さん「僕の方は、中身(モニターや電池など)が決まってるんで、漫画から外れないバランスにするのがけっこう難しくて。そこが楽しかったですね。色々見させていただけたので。」

西川さん「案外大変だったのがこのモニターの下の部分。漫画だと、この球の一番下って狭くなってると思うんですけど、こっちは四角いモニターに見えて、じつは下の方に半分くらい隠れてるんです。ふつうの長い液晶が入ってるんですよ。これがそう見えないように工夫しました。」

山本さん「首を細くするのは物理的にできないので、それを西川さんがデザインでうまいこと黒で隠してくれたんです。「あ、デザイナーの仕事すごいな」と思いました。」

西川さん「3Dプリントで全部つくっていますが、ブギーの外側のペイントは、全て手塗り。ハンドクラフトで作ってるので、個体差があるのもミソかなと思ってます。全部僕が腕とか塗ってるんで、逆に言うと、既製品と違って、まったく同じものがないです。」

3Dプリントの試作
1体1体、手塗りでしあげています。

本体と箱にシリアルNo.をいれた、世界にたった15個のブギーのラジコン。
ムッタがブギーをかわいくみせようと、マジックで胸元に描いたハートマークも今回はあえて入れなかったのだとか。「自分たちで描いてもいいかな」という、おふたりの粋な計らいがありました^^

さらに、本業がものすごくお忙しいなか、西川さんがこだわり抜いてつくってくださったのが、木箱のデザイン。これがまた、めちゃくちゃかっこいいんです。

西川さん「箱は、レーザーカッターというFabCafeにある設備で、データ通りにカットしてくれるというものでつくりました。テーマは、おかもち(ラーメン屋さんの)です(笑)裏側に、山本さんが設計してくれたものをX線のような形でグラフィックにして、表側にシリアルNo.を入れました。レーザーで加工してるので、表面は焦がしてるというか、焼いてる状態です。」

『宇宙兄弟』24巻が、
すべての巡りあわせの始まりに。

今回、FabCafeからのお声がけという形で実現した、山本さんと西川さんと『宇宙兄弟』×FabCafeのコラボレーション。その背景には、じつは山本さんの個人的な強い想いもありました。

『宇宙兄弟』24巻が発売した、4年前の9月。心臓の病気を患った山本さんは、機械を入れるという話があがり、なかなか踏ん切りがつかずに落ち込んでいたそうです。

山本さん「24巻が9月の頭に出ましてね、読んでいたら、シャロンが人工呼吸器をつけるという話がありました。目が悪くなったらメガネをかけるのと、ALSで呼吸が苦しくなったら人工呼吸器をつけるのは何も変わらないし、宇宙飛行士が宇宙に適応するためにスーツを着るのも何も変わらないんだと。この話がもうすっごく、心に染みたんです。」

そして、その9月に手術をすることに。

山本さん「これがなかったら、なかなか手術をするのに踏み切れなかったので、感謝感謝です。本当に助けられました。『宇宙兄弟』はずっと好きで読んでたんですけど、4年前の9月は、ドンピシャなタイミングでそのシーンがあって。泣きましたね、あのときは。」

「ブギーのラジコン」のプロトタイプ
機械部分とアプリの試作中

ロボットづくりを専門としていることもあり、原作にブギーが登場した頃から「これならつくれるかな」という秘かな思いはあったのだそう。一昨年の12月に、一念発起して、ブギーを作ろうかなと動き始めたところ、FabCafeから今回の相談が来たそうです。

山本さん「すべてが恐ろしいくらい、漫画みたいなタイミングで巡ってきたんです。本当に。こうやって今日小山さんとお会いする機会もあって。今後も何かあればね、ぜひ1分の1ブギーを作らせてください(笑)」

お話を伺っていると、1分の1(実寸大)ブギーも技術的には十分実現可能なんだそう!ただし、予算がフェラーリ1台分くらいかかってしまうのだとか……。
でも、みなさんのとても楽しそうな熱いロボットトークを目の当たりにして、もくもくと夢が膨らんできました^^

最後に、おふたりにとっての『宇宙兄弟』とは? それぞれの印象なシーンについて伺ってみました。

山本さん「ピコがすごく好きです。同じエンジニアとして、けっこう言いたいことを言ってくれてる。「図面があるからといってできるもんじゃねぇんだよ」とかね。エンジニアのアドバイザーがついてるのかなと思っていました。

ものづくりには失敗すること大事っていうのも。ものつくってる人みんな、あれはしびれますよ。あとは、やっぱり僕も会社を辞めるときに、ケンジの「ここが一生の仕事として誇りをもって言えるのか?」に、すっごいしびれましたしね(笑)」

西川さん「僕は、自動車デザイナー(ムッタの前の職業)なので、第1巻でムッタがなにくそで会社を辞めて、宇宙飛行士を目指されたので、そこでハッとしましたね(笑)

じつは自動車デザイナーって、わりと狭き門なので、夢で職業にされてる方がすごく多いんです。本当は車のデザインがやりたいけど、小さいプロダクトのデザインをしていたりする。だけど、漫画では、早々にムッタが自動車デザイナーから、宇宙飛行士を目指すという展開で。さらに上を目指すのは大事だなと、しみじみ感じましたね。僕は自動車デザイナーとして、さらに上を目指そうと思いました。」

ちいさなブギーを囲んで、和やかな雰囲気のなか、『宇宙兄弟』は「ものづくりをしている人に響く言葉が多い」と盛りあがっていたおふたりでした。

今回の7分の1サイズのブギーを受け取った、小山さんからもメッセージをいただきました。

「ここまで、すごいですね。嬉しいです。ものすごくこだわって作られたのを感じます。実際にしゃべったり、十分に楽しめますし、これがブギー第1号という感じですよね。これが”QT-1X”でもいいかもしれないですね。リアル版の。」

ブギーのラジコンは、宇宙兄弟公式ストアで近日発売予定です。(世界に15台しか存在しないうち、11体の抽選限定販売を予定しています。詳細は後日発表します)

山本さんと西川さん、トップクラスのものづくりを極めているふたりの大人の“本気の遊び”。製作時にあわせてつくってくださった動画を最後にお届けします。ぜひこちらもご覧ください^^