こんにちは。スタッフのアユミです。
『宇宙兄弟』15周年を記念して、アーティストとのスペシャルコラボ企画として制作した、グラフィックアーティストのマサヤ・イチさんが手がけるアートワーク「Casual Promise」がついに完成!
世界でたった66枚のコラボアート作品を抽選応募制で販売いたします。一つひとつマサヤ・イチさんの直筆サインが入り、シリアルナンバー入りの証明書も付いて、それぞれが1点ものの作品です。
月面天文台の完成を見守るムッタとシャロンが描かれた、美しい青と白い光が神秘的な一枚。作品づくりの背景をファンの方にもお届けできればと思い、アーティストのマサヤ・イチさんにお話を伺ってきました。
> 限定66枚!『Casual Promise』は7/5(水)から抽選受付開始!
マサヤ・イチと
2度目のコラボレーション
タカラトミーのゾイド40周年キービジュアルや、ももいろクローバーZのアルバムジャケットなど、華々しい活躍を見せるグラフィックアーティスト、マサヤ・イチさんと『宇宙兄弟』がコラボするのは、今回が2回目。
4年前に、第1弾コラボアートとして、ムッタのロケットロードを見守るヤンじいの背中を描いた「Last Rocket Road」を制作いただき、その美しい表現力だけでなく縁起のいい、パワーを感じる作品が大きな話題となりました。
写真、3DCG、手描き、特殊メイク、AIと、時代の先を行く様々なテクノロジーを駆使して、漫画やアニメ作品のワンシーンがまるで実在するかのように、アート作品として再現してしまうイチさん。
グラフィックのエキスパートであるだけでなく、幼少期からデッサンや油絵に親しみ、小学校でも数々の賞をとったり、美大もデッサン力がいちばん評価される油絵科に進学するほど、頭のなかのイメージを描きあげることが子どもの頃から得意だったそう。
そんなイチさんは、『宇宙兄弟』を1巻からリアルタイムで読み続けているほど、原作の熱心なファンのひとり。このたび、宇宙兄弟連載15周年を記念して、2度目のコラボが実現しました。
原作1巻から描かれてきた
ムッタとシャロンの“何気ない約束”
2回目のコラボアート企画が決まり、イチさんが迷わず選んだのは、35巻のムッタとシャロンの月面天文台の完成のシーン。子どもの頃に何気なく交わした約束を、ついに実現させてしまった瞬間の二人。原作では、座っているムッタに背後からシャロンが近づくイメージが描かれていますが、イチさんはあえて横に並んだ二人の後ろ姿を作品にしました。
ーーーなぜ今回はムッタとシャロンを選んだのですか?
マサヤ・イチさん(以下、イチ)「シャロンは、1巻の最初から登場して、ムッタとヒビトに次ぐ重要人物だと思いますし、病気や夢などいろんなものが背景に描かれているので、ムッタとシャロンをテーマにした作品に挑戦してみたいと思いました。
あと、僕個人としては、やっぱりムッタが好き。いつもヒビトに対して二番手なことが多いムッタだけど、シャロンに関しては、ムッタが一番。ムッタの方が、一歩も二歩もシャロンに踏み込んでいて、ヒビトが手伝わせてもらうような立場。そういうところも自分のなかでは対比があります。」
ーーー月面天文台の完成のシーンは、ムッタとシャロンの物語のクライマックスでもありますが、「Casual Promise」というタイトルに込めた想いを聞かせてください。
イチ「『Casual Promise』は前回同様、原作のなかから一番いいと思うタイトルをつけました。
シャロンの「何気ない約束」という言葉です。
シャロン月面天文台は、小学生の頃のムッタがシャロンと何気なく交わした約束。二人ともそれが現実になるとは思っていなかったし、ムッタ自身は大人になるまで約束をすっかり忘れていたような状況でした。それが、シャロンがもう長くは生きられないというのも感じてきて、ムッタにとっては時間との戦い、命懸けの約束になっていった。
そんな1巻から描かれてきた“何気ない約束”を叶えてしまった瞬間。“何気ない約束”で、人類の偉業を成し遂げてしまうムッタ、かっこよすぎるやろ。『Casual Promise』といってしまうギャップがいいなと思ったし、『どこがやねん』ってゆうツッコミが入りました(笑)」
ーーーどうしてこの構図にしたのですか?
イチ「後ろ姿にしたのは、前作のヤンじいも後ろ姿だったので、シリーズ化したいというのもあった。ムッタの背中は有名ですし、二人が一緒に景色を見ているというイメージがありました。」
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シャロンの心象風景として描いた
美しいアートワーク
イチ「作品づくりをする大前提として、美しいものを作りたいと思っています。
ただ、月面をリアルに描こうと思うと、月には空気がないので、絵の美しさに欠かせない空気感を表現することができません。青い光やレンズフレアのようなものも発生しないし、遠くに見えるクレーターのラインもボヤけたりしません。月の絵を描くにあたって、空気感がないという時点で美しくなりえないのです。
そのため今回はリアルな月面ではなく、シャロンがムッタと見ただろう景色を、あくまでシャロンの心象風景として描くことで、ある意味ファンタジーと捉えて美しさを重要視しました。」
AIを巧みに操り、
リアリティを追求した作品づくり
前回も高度なフォトコラージュと手描きで、いきいきと美しいアートピースを作り上げたイチさん。
画像生成AIが登場した昨年からは、いち早くAIに取り組み、補助ツールとして上手に活用することで、仕事の効率をあげ自らのリソースづくりに大いに役立てているといいます。
ーーー今回のアート作品では、AIも活用されているそうですが、主に、どの部分で使われているのですか?
イチ「今回は、自分で手を動かすと物理的に時間がかかりそうな、宇宙服と車椅子にAIを活用しました。
『宇宙兄弟』は未来の話なので、ムッタの宇宙服も、車椅子のデザインも現代とはちがって未来チックなデザインをしているんです。さらに、シャロンが乗っているのは手動の車椅子ではなくて、指先で簡単に操作ができる電動車椅子。そのようなことも考慮しながら、AIで何百枚と出してみて、そのなかから組み合わせてつくりました。
背景やライト、全体的な空気感をつくる作業は、従来とおなじ方法で、写真のコラージュと手作業でしあげていきました。」
ーーー背景の青の美しさや、白い光とのコントラストも印象的ですね。
イチ「背景は、実はラフでは茶色にしていたんです。光のつぶも大きくて、黄色いライトで、あたたかい気持ちになる感じでした。
けれど、ベストなものを探して手を動かしているうちに、青になりました。美しいというのが一番ですが、多くの人にとって宇宙の色は青だと思うので想像のしやすさと、青には神秘的なイメージもあるので、シャロンの心象風景ということで、少し神々しい雰囲気もでるかなと思いました。
青だけでは少し寂しい印象になるので、ライトは温もりのある白熱灯のような光であってほしいと思い、ほんのり茶色がかった光にしています。」
ーーー今回の作品づくりの一番のこだわりは?
イチ「一番は、ムッタの宇宙服とシャロンの車椅子ですね。
やっぱり一気にゴールに行くわけではなくて、できた作品だけをみると、最短距離で向かっているように見えますが、作りながら回り道もしているんですよね。
例えば、月面のシーンを描く前に、シャロンのイメージを掴みたくて、シャロンが部屋や病室にいるシーンなど、いろんな場面を想定してみます。その際に、AIを活用して異なるシチュエーションのイメージを描きました。シャロンの寂しさ、孤独をよく表している、切ない夕焼けですよね。
AIのおかげで、こういう考察を可視化しながら、作品によりリアリティを持たせることができました。」
途方もない夢を
ついに叶えた瞬間
夫が生前に見つけ、“約束通り”自分の名前をつけてくれた小惑星を、いつの日かその姿を見ることを心の支えにして、生きているシャロン。
そんなシャロンを子どもの頃から慕い、彼女の夢を叶えるために、「月に行ってシャロン望遠鏡を建てるよ」と約束したムッタ。
ムッタとシャロンのとても個人的な約束だったものが、だんだん二人だけの問題ではなくなって、いろんな人の思いや夢をのせながら、壮大なプロジェクトになっていき、ついに現実のものになりました。
このアート作品に切り取られた奇跡の瞬間のように、だれかを喜ばせたいとか、だれかを勇気づけたいというような、ごく身近な気持ちを大切に持ち続けることが、もしかしたら、みんなの大きな夢に育っていくのかもしれません。
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頭の中のイメージを具現化できる、
AIの上手な活かし方
インタビューの最後に、AIにいち早く取り組み、AIクリエイターとして仕事にも積極的に活用しているマサヤ・イチさんに、AIについてのお考えを伺いました。
イチ「画像生成AIが生まれたのは一年前で、僕が使っているツールはすでに5回アップデートされていますが、現時点ではまだAIだけでグラフィックの仕事をするのは難しい。
いっさいグラフィックを触ったことのない、今から勉強する人にとっては、ものすごくクオリティアップに役立てると思いますが、ある程度、自分でもクオリティの高いものをつくれる人にとっては、クオリティアップというより、自身のクオリティを維持したまま、作業効率をあげることができるツールだと思います。」
イチ「また一方で、AIの登場によって、今までだと表現できないことまで挑戦できるようになりました。
まだまだアナログでのコントロールは必要ですが、上手に支配下に置くことで、今までは脳内イメージだけで終わらせていた想像の部分もAIのおかげで具現化できるようになりました。作品をつくるうえでの考察など、最終的なゴールである作品によりリアリティを持たせることができるようになったのです。
AIを活用することで自分の仕事が楽になるということではなく、今までであればそこまで突き詰められないところまで、何度も繰り返し試行錯誤ができるようになりました。回り道をすることにより、より高みを目指すことができるようになったと実感しています。
今後もAIをうまくツールとして活用していきたいですね。」
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<アーティストプロフィール>
【マサヤ・イチ】
グラフィックアーティスト・AIクリエイター。3歳から絵画を始め、6歳で油画の道へ。 京都造形芸術大学に進学し、卒業後はLONDON Central Saint Martinsに留学。在学中にMacに触れて以来Photoshopにのめりこむ。 現在はアートディレクション・グラフィックデザインを中心に活動する他に、アートプロジ ェクト「ANIMAREAL」にて漫画やアニメを題材とした公式アートを制作し、多くの雑誌表紙 を飾る。クリエイターとしてUUUMに所属する傍ら、京都芸術大学と大阪成蹊大学にて講師 を務めた。現在は画像生成AIを研究しグラフィック技術との融合に没頭する。 著書として、スタン・リー推薦のアートブック「ART of ANIMAREAL」(パイインターナシ ョナル)・「クローズ生誕30周年記念写真集 武装戦線 THE REAL」(秋田書店)が発売中。