第10回 シャロンのレアチーズケーキ
It`s a piece of cake…ケーキ一切れ分。
13巻・#120『一切れのケーキ』に登場するフルーツたっぷりのチーズケーキ。シャロンのことだから、恐らくこのケーキも手作りなのだろう。シャロンが二口ほど食べている間にムッタはペロリと平らげていた。
若き日のドキドキ。
私が夢だった天文学者になれたのはきっと―
若き日のドキドキを信じたからです
天文学者、金子シャロン。子供の頃見上げた満点の星に出会い、胸の高鳴りを信じ、天文学者への道を歩んできた彼女。
その彼女に憧れを抱く伊東せりか。初めてシャロンと会うその時には、シャロンの言葉を読んだあのドキドキが胸を鳴らせていた。
しかし、会話の途中でせりかはシャロンと病気が発覚する前の父の症状と同じものを見つける。
恐る恐る尋ねるせりか。多くの検査を経てシャロンに告げられた病気は―せりかの父・凛平の命を奪った、ALSだった―。
空港での別れ際、それでも笑顔を絶やすことなく陽気にふるまうシャロン。
それは、息子のような南波兄弟への想いと、彼女が持つ強さや優しさなのかもしれない。
材料(19cmタルト型目安)
★チーズケーキ | |
---|---|
クリームチーズ | 200g |
生クリーム | 100cc |
プレーンヨーグルト | 200g |
砂糖 | 70g |
レモン汁 | 大さじ1 |
ゼラチン(今回は粉ゼラチンを使用) | 5g |
80℃程度のお湯(ゼラチン溶かし用) | 大さじ3 |
★台 | |
ビスケット | 12枚程度 |
バター | 40g |
牛乳 | 大さじ1弱 |
★ゼリー | |
ゼラチン(今回は粉ゼラチンを使用) | 5g |
オレンジジュース | 200cc |
お好みの果物(季節もの、冷凍もの、缶詰など) | 適量 |
作り方
【1】
タルト台を作ります。ビスケットをポリ袋などに入れ、麺棒などで細かく叩きましょう。
板ゼラチンを使用する場合はここでふやかしておきましょう。
【2】
砕いたビスケットに溶かしバター(500Wレンジで40秒ほど)を加え、よく揉みこみ、しっとりさせる為に牛乳大さじ1弱を加えます。牛乳はなくても可。
【3】
2をタルト台に敷き詰め、ラップなどで上から押した後冷蔵庫に入れておきます。
【4】
ケーキ部分を作ります。500Wレンジで30秒ほどクリームチーズを温め、混ぜます。
ヨーグルトはあらかじめキッチンペーパーなどで水気を切っておきましょう。
【5】
砂糖を3~4回に分けて入れ、しっかりと混ぜます。
【6】
ヨーグルトを加え、しっかり混ぜます。
【7】
生クリームを加え、よく混ぜます。
【8】
レモン汁を加え、よく混ぜます。
【9】
ゼラチンを大さじ3のお湯で溶かし、8に加えて、全部をしっかりと混ぜ合わせます。
【10】
タルト型に入れ、表面が滑らかになるようにへらなどで整えましょう。18cm台ぴったりの量ですので、フルーツ+ゼリー分の量を3mm~5mmくらい減らしておきましょう。プレーンの場合は全部流し込んでOKです。机の上でトントンと低い位置から優しく何度か落として滑らかにします。そのまま冷蔵庫へ。
【11】
40~1時間ほどしたら取り出し果物を飾り付けます。もちろんこのままの状態でも美味しく食べられます。
【12】
ゼリーを作ります。オレンジジュースを温め、沸騰する手前くらいの泡がふつふつしてきた状態でゼラチンを加えてよく混ぜます。
そーいうウソなら平気でついちゃう人なんだよな シャロンって。
子供時代のある日シャロンの元を訪れていたムッタは、自分がダメ人間だとやさぐれて「僕はいざという時役にも立たないダメ人間です」という英語訳を頼んだ。
It`s a piece of cake.
自分はケーキ一切れ分の価値しかないあっけないダメ人間です
と受け取ったムッタだったが、後にそれがまったくネガティブな言葉でないことを知る。
飛行機の中で文字を書くシャロン。何度も綴った「It`s a piece of cake!」はあまりにも下手くそな文字だった。一度は紙をくしゃくしゃにしてしまうシャロンだったが、それを捨てることなく決意の表情でポケットに入れる。
一方思い悩むムッタは、何の根拠もない言葉をシャロンに言ってしまったこと、テストの結果が最悪だったことなど、ヒビトに整理しきれない気持ちを吐露する。
「シャロンを安心させるつもりであー言ったんだろ?」
「シャロンの別れ際の笑顔もそーいうことだろうよ」
ずっとシャロンと共に過ごしてきた兄弟二人。どちらかが迷っているときはどちらかが引っ張ってくれる―そんなことをいつかシャロンは言っていた。
ヒビトからムッタへの言葉は、そんなことも感じさせるシーンだった。
NASAの食堂でせりかさんと話すムッタ。ムッタがせりかとシャロンについて話すこのシーンでは、せりかの食後の″別腹″である「一切れのケーキ」にも注目したい。
「It`s of a piece of cake.」それは「楽勝だよ」ということ。
ネガティブな訳を頼んだはずのムッタにシャロンがついた、堂々としたウソ。
そーいうウソなら
平気でついちゃう人なんだよな
シャロンって
月面望遠鏡を作ると約束したムッタ。
父を苦しめたALSをこの世からなくしてしまいたい、シャロンの病気に効く薬を私が生み出してみせると約束したせりか。
それは決して咄嗟の軽い気持ちや同情のウソではなく。
信念と願いと希望を込めた、大切な人へのエールと、自分を奮い立たせる言葉ではないだろうか。
翌日、月面望遠鏡についての建設計画を3年後か4年後に届けるというシャロンからのメールがムッタのもとに届く。
「覚悟はいい?」
シャロンを元気づける言葉は考えても考えてもみつからなかったムッタが返したメール。
「It`s a piece of cake!」
シャロンを想い、悩み考えたムッタの想いは、きっとこのひとことにめいっぱい込められていることだろう。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)。せりかの父の命を奪い、シャロンを襲っている病だ。日本国内では宇宙兄弟によってこの病気を知った人は多いだろう。
10万人に1~2人というこの難病は運動ニューロン(運動神経細胞)が侵される病気で筋肉が働かなくなる。しかしFacebookを中心に行われたアイス・バケツチャレンジで約100億円の寄付金が研究機関にもたらされた。
先日報道されたALS治療に効く遺伝子の発見のニュースは残念ながら誤報だったが、これから先も研究が進められ、難病ではなくなる日がくることを願ってやまない。
なお、宇宙兄弟公式サイトではALS患者の一人である酒井ひとみさんのエッセイを連載中だ。時に笑いを織り交ぜながら酒井さんがALSとどう向き合い、付き合ってきたのか、付き合っているのかが綴られている。
自分が、家族が、友人にもしかしたら明日訪れるかもしれないALSという病気。酒井さんの想いを、ぜひじっくりと読んでほしい。
私の名前は酒井ひとみですーALSと生きるー
LIVE TODAY FOR TOMORROW(ALS疾患啓発委員会)
ALSだと告げられたシャロンだったが、笑顔を絶やさず陽気に日本へと帰って行った。ネガティブ意味合いの英語を聞いたムッタに対し「It`s of peace of cake」と教えたシャロン。「そういうウソなら平気でついちゃう人」なのだ。彼女の夢を叶える為、ムッタは新たな訓練へと挑む。群が流れていた―。
宇宙兄弟13巻、好評発売中!
樹咲リヨコ(きさき・りよこ)
デザインやイラスト、ナレーションなどを仕事にしているフリーランス。宇宙兄弟や宇宙が大好きで、宇宙兄弟や宇宙の魅力をもっとたくさんの人とわかちあいたいと思っている。特に好きなキャラクターはムッタ、好きなセリフは「人生は短いんだ。テンションのあがらねえことにパワー使っている場合じゃねえ」。いつか宇宙に行ってみたい。
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