日々人賞|ひとりきりで見つけたもの【エッセイプロジェクト】 | 『宇宙兄弟』公式サイト

日々人賞|ひとりきりで見つけたもの【エッセイプロジェクト】

2025.11.05
text by:編集部コルク
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宇宙兄弟はじまりの年を記念して、六太がミラクルカーを退社した5月15日に募集開始した宇宙兄弟エッセイプロジェクト みんなの心のノート

「心のノートにメモった言葉」がテーマとなった第2回の入賞作品から、六太賞/日々人賞/宇宙兄弟賞の受賞作品をご紹介していきます!

今回は日々人賞受賞作品です。

ひとりきりで見つけたもの(20代 優奈)

友達を作るのが苦手で、小学生の時は休み時間の度に図書館へ逃げ込んで机の下で本を読んでいた。
高学年になるとさすがに椅子に座って読むようになったけれど、それでも人目につかない1番暗いところにある椅子に体を丸めこんでいた。

そんな私を、図書館の司書のおばさんは静かに見守っていてくれた。
わたしが貸出表にタイトルを書いて持っていき、司書さんに日付印を押してもらう。事務的な一言二言のやり取りだけを交わした5年間だった。

引っ越す前、最後に借りていた本を返しに行った時に、司書さんへ「遠くへ引っ越すからこれが最後です」とお礼を言った。

すると司書さんは私に貸出表の挟み込んであるファイルを手渡してくれた。わたしがその小学校に通った5年間で借りた1000冊以上の本、全ての記録だった。

そしてカウンター越しにわたしの頭を撫でて、私にだけ聞こえるぐらいの小さな声で言った。

「たくさんの人と話して、たくさんの物事に触れて、たくさんの考えを知って、たくさんの価値を見つけなさい。あなたが好きになれるものを、たくさん誰かから教えてもらいなさい。
でも、あなたが本当に大好きになるものは、あなたがきちんと一人きりで見つけたものだと思うよ」

あのとき、誰も知らない土地に引っ越すのが不安で仕方なかった。
今でも1人はさみしい。でもそれを怖いとは思わなくなった。


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六太賞|「悩むなら、なってから悩みなさい」
宇宙兄弟賞|宇宙に咲く花

ただいま第3回の募集中!テーマは「約束」
「大切な人と交わした約束」「果たせなかった約束」「自分との約束」など…………あなたの中の「約束」の話を教えてください。

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