日々人賞|心に秘めた約束【エッセイプロジェクト】 | 『宇宙兄弟』公式サイト

日々人賞|心に秘めた約束【エッセイプロジェクト】

2026.03.03
text by:編集部コルク
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宇宙兄弟はじまりの年を記念して、六太がミラクルカーを退社した5月15日に募集開始した宇宙兄弟エッセイプロジェクト みんなの心のノート

「約束」がテーマとなった第3回の入賞作品から、六太賞/日々人賞/宇宙兄弟賞の受賞作品をご紹介していきます!

今回は日々人賞受賞作品。
受賞者の方には賞品として、小山宙哉サイン入り複製原画(南波日々人ver.)+KENNさんによる朗読音声を後日お送りします。

心に秘めた約束(20代/やまかず)

「操縦室よりご案内いたします。現在巡航高度41000ft 約12500m京都市の上空を順調に飛行しております…」

お客様へのアナウンスをしながら、眼下に広がる地元京都をコックピットから眺めるといつもカズマを思い出します。

小学生の時から宇宙や空が好きで星空やロケットの本を読み育ちました。インフルエンザの時に母が買ってくれた宇宙兄弟からたくさんの大切なことを自身の心のノートに記しました。私のパイロットになる約束は、そんな人生の教科書「宇宙兄弟」とカズマがくれた物でした。

私が6歳の時に出会った幼馴染の兄カズマは、「筋ジストロフィー(筋肉が萎縮していく病気)」を患っていました。出会った時すでに車椅子に乗っていて、握力は6キロ。3センチの小さな段差を車椅子で超える事もやっとな彼は、大きな笑顔で明るく「筋ジストロフィーは僕のトロフィー」だと言っていました。

小学4年生の夏休みに初めて私は筑波宇宙センターへ足を運びました。気象衛星やきぼうのモックアップ、ロケットエンジンなど大きな心躍るものがたくさんありました。しかし当時ボクの頭に鮮明に残ったのは展示物の中にあった研究紹介の小さな小さなパネルでした。

「筋ジストロフィーには有効な治療薬・治療法がない。」の文字と実験記録の3枚の写真。JAXAのパネルを見た瞬間、カズマの病気を宇宙飛行士になって研究していつか治したい。照れ臭くてカズマには直接言ってあげられなかったけれど、「宇宙飛行士になってカズマの病気を僕が治してあげるからね。」と心の中でカズマと約束を交わしました。

せりかが凜平さんを治したいと想ったように、それが幼いボクの大きな夢になりました。

宇宙飛行士について調べる中で、油井さん・大西さんはパイロット、若田さんは整備士から宇宙飛行士になられたのを見て、航空関係の仕事から宇宙飛行士への夢へ近づけると思い、そこから空と宙を目指しました。

第222話ブライアンは「人生にはいくつもの夢のドアがある」と教えてくれました。

大学生になりアメリカでの飛行訓練に励む中、試験に上手くいかない時、同じ部屋の仲間たちとの訓練の進捗に差が出た時、コロナ禍で航空業界が下火になり会社への就職がなかなか決まらない時、ようやく夢が叶う直前の副操縦士デビューする直前カズマが亡くなった時、一人で開けるには重たいドアたちを家族や仲間が一緒に開けてくれました。

成功や賞賛よりも失敗のドアの方が多かった。けれど泥臭く手探りで開け続け、気づいたらパイロットとしてカズマに一番近い場所をマッハ0.8で飛んじゃってます。

カズマをお客さんとして乗せたいという約束や筋ジスを治す約束を叶えられなかった、悔しい想いがあるからこそ、大事な人が待つお客様をお運びする事を一便一便大切にしています。

夢のドアはいつでも誰のそばにも等しくあり、そのドアに向かい合い、毎日ただひたすらに手を伸ばし開け続ける。いつかボウズが出来たら、ハナクソみたいなスピーチをカズマの笑い話と一緒に伝えたいと思います。笑


ほかの受賞作品はこちらから読めます
六太賞|私を大人にした、先生の「保証」
宇宙兄弟賞|約束の山

第1回・第2回の受賞作品はこちらから