宇宙兄弟賞|心にメモった2人の言葉【エッセイプロジェクト】 | 『宇宙兄弟』公式サイト

宇宙兄弟賞|心にメモった2人の言葉【エッセイプロジェクト】

2025.11.12
text by:編集部コルク
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宇宙兄弟はじまりの年を記念して、六太がミラクルカーを退社した5月15日に募集開始した宇宙兄弟エッセイプロジェクト みんなの心のノート

「心のノートにメモった言葉」がテーマとなった第2回の入賞作品から、六太賞/日々人賞/宇宙兄弟賞の受賞作品をご紹介していきます!

今回は宇宙兄弟賞受賞作品その2。
受賞者の方には賞品として、小山宙哉サイン入り色紙を後日お送りします。

心にメモった2人の言葉(chieko・50代)

長男と年子で、双子の男の子が産まれた。

元気いっぱいなのはとても嬉しいことだけど、その育児は高齢出産の私にとって想像以上に過酷なものだった。1才8ヶ月と0才児の双子が同時に眠るなんてありえない。せめて泣かないでほしいと、私はあぐらをかき、右腕に次男、左腕に三男を抱き、右太ももに長男をのせ、全員を揺らしながら歌を歌う技を習得した。

子供達の笑顔が私の気持ちを絶好調にしてくれる。だけど体力は正直で、今日一日をこなすだけで精一杯だった。

そんな環境でも子供達が成長するにつれ、時間管理ができるようになってきた。工作、実験、昆虫採集、仕上げは絵本の読み聞かせ。

ドラゴンを色紙で折って欲しいと、リアルな見本と折り図を見せられた時は、さすがにヤバいと思ったがやりきった。子供達が喜んでくれるたび、理想の母親像に近づけた気がした。

子供達が眠った後はご褒美タイム。おやつを食べながら宇宙兄弟を読む。遠ざかっていた大人の会話にコレコレと感動しながら思いを馳せる贅沢な時間。ケンジがヒューストンで、家族とどう向き合えば良いかと、立ち止まりながら前に進む姿に「分かるわ〜」と、少々上からの目線で共感したりもした。

今なら分かる。私はイタイ奴だった。

そして、そんな私にいちばん大切なことを「分かっていない」と、そっと教えてくれたのは長男だった。

長男はおしゃべりが大好きで目を輝かせながら私を追いかけてきてくれる。弟達にも、昆虫や恐竜の話を優しく紹介し、弟達も大喜びで兄の後を追う。子育てがうまくいっていると実感できる瞬間でもあった。

ある日、いつものように台所で洗い物をしていると長男が話しかけてきた。

「ねぇねぇ」「どうした?」
私は洗い物をしながら言葉だけで応答した。

「あのね」「どうした?聞いてるから言ってごらん」
洗い物をしながら伝えた。

いつもなら話し始めるのに黙っている長男。おかしいと思い視線を向けると、静かに泣いていた。「どうしたの、どこか痛いの⁇」慌てて身体をチェックしても、首をふるばかり。そしてやっと口を動かしてくれた。

『ぼくは、何かをしながら話を聞かれるのがイヤなんだ』

胸がツーンと痛くなった。長男が生まれて初めて私に訴えた。全身で悲しんでいた。

長男を抱きしめながら、私も涙が止まらなかった。
「ごめんね。お話しする時は顔を見て聞くね」

現在息子達は、中学3年生と2年生。狭いお風呂で仲良くポルノグラフィティの「サウダージ」を歌いあげている。

長男は忘れているだろう。でも私はあの日から、揚げ物をしている時以外は、呼びかけられたら体ごと息子のほうを向き返事をするようになった。どうしてもダメな時は「10秒待って」と伝えてから。

私はまだ頑張っている。心のノートに書き込んだシャロンの言葉をいつか息子達に伝えたいから。

『そんなつもりはなくても 人はね 誰かに 〝生きる勇気“を与えるために生きてるのよ    誰かに 勇気をもらいながら』

って、シャロンが言ってたよと。

シャロンのように深い言葉は私の中にない。だけど息子達の勇気になりたい。たくさんの笑顔をありがとう。

シャロンの言葉と長男の言葉を心のノートであっためながら、私は家族と生きていく。


ほかの受賞作品はこちらから読めます
六太賞|「悩むなら、なってから悩みなさい」
日々人賞|ひとりきりで見つけたもの
宇宙兄弟賞|宇宙に咲く花
宇宙兄弟賞|地球人
宇宙兄弟賞|1番最初に決めた夢
宇宙兄弟賞|シャロンに救われた過去
宇宙兄弟賞|母親で、父親で。

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