【イベントレポ】未来の宇宙での働き方を考える2-宇宙兄弟

未来の宇宙での働き方を考える【イベントレポート】

2015.12.08
text by:編集部コルク
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    「企業」と「働く」の関係を見直す、もしくはステップアップするためのイベント『「企業」と「働く」の関係を考える supported by WISDOM』のなかで「未来の宇宙での働き方」をテーマとしたセッションが開催されました。この気になるテーマをスタッフがレポートします。前編はこちらから。

    超小型衛星が生み出すビジネスチャンス
    アクセルスペースでは現在50キロほどの小さな人工衛星を開発しており、2016年春に打ち上げを予定しています。作りが複雑で開発に時間とコストを要する大型衛星に対し、小型衛星は開発期間も費用も少なく済むため、数億円のコストダウンが可能です。ヘリコプター1機(約3億円)と同じくらいの価格で購入できるため、民間企業でも人工衛星を持つことができるようになります。このためビジネスチャンスも多く生まれ、例えば最近では北極海の氷を観測するために株式会社ウェザーニューズと共に超小型衛星を開発したそうです。日本からヨーロッパに物資を運ぶ際、北極海を通ると時間もコストも大きく節減できるなど、小さな衛星だからこそ成り立つビジネスがあります。

    小型衛星は、コストも開発期間も大幅に削減できる

    小型衛星は、コストも開発期間も大幅に削減できる

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    北極海の氷を観測し航路とすることでコスト削減が可能

    人工流れ星が作る新しいエンターテインメント

    株式会社ALEは、人工の流れ星を開発しているベンチャー企業です。こちらの動画を流していただいたのですが、あえて音声は消して、岡島さん自身の言葉で人工流れ星についてご説明いただきました。流れ星を人工的に創るなんて、多くの方が考えたこともない発想かと思いますが、「人工の流れ星」とは一体何なのでしょう?
    まず、小型の人工衛星をとばし、その中に含まれた「つぶつぶ」が流れ星のもとになるそうです。大気圏に飛び出した「つぶつぶ」は、摩擦熱でプラズマ発光し、地上から見ると流れ星のようになります。花火よりも多くの人に見てもらえるこの流れ星を、1個や2個流すのではなく、無数に流れる流星群を作りたい、と岡島さんは語りました。3000万人が同時に見れる流星群、とても素敵だと思いませんか?テーマパークでのイベントやプロジェクションマッピングと組み合わせることで、いままでにないエンターテインメントが生まれるでしょう。

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    さらに、人工の流れ星はエンターテインメントとしての魅力だけではなく、科学・工学にも様々な還元ができるという魅力があります。人工の流れ星を流すことによって、天然の流れ星のメカニズムが分かるようになり、さらに、エンターテインメントの力で資金が集まれば、公的資金に頼らなくても良くなり、科学・工学に還元することが可能なのです。「エンターテイメントと科学・工学の両輪で回していくこと」を目指したいと岡島さんは語りました。

    未来の宇宙の働き方はどうなるの?
    アクセルスペースは、今後まず3つの新しい衛星を打ち上げ、2022年までに50機の衛星打ち上げを目指すそうです。それによって、世界のどこでも毎日衛星の画像が更新されます。Google earthの画像も、現在は陸地の2%くらいしか撮れていないため一年以上前の写真がアップされていたりと、時差があります。しかし今後、アクセルスペースの人工衛星が50機打ち上げられれば、地上の45%の映像を撮影でき、重要な経済的なエリアはほぼカバーできます。そうなると、農業や森林、海外の工場・プラントの工事の進捗、資源面での活用がさらに進み、大きなビジネスチャンスが生まれます。そして「宇宙ビジネス」はこれから特別なことではなくなり、より幅広い職種が必要になってきます。例えば、人工衛星が捉えた画像やビックデータの解析やソフトエンジニア、衛星を持ちたい世界中の企業への営業、広報など…広がりは無限です。

    株式会社ALEでは、技術者だけではなく、クリエイターやプロデューサー、モデルなど、これまで宇宙事業とは無縁だった方々も事業に参画しています。あえて技術寄りではない人がチームに加わることで、思いもよらないアイデアが生まれるそうです。ALEという会社をつくっているのは、「どうやったら流れ星をより魅力的に楽しんでもらえるか?」を一緒に考えてくれる人たちなのです。今後は、2018年にサービスインし、流れ星をエンターテインメントとして提供する会社として世界に拠点を持つ企業を目指します。

    これから10年後、20年後は、もっと宇宙は私達にとって身近な存在になっているかもしれません。これからの宇宙ベンチャーの活躍に期待が膨らむセッションでした。