宇宙兄弟賞|六太と私【エッセイプロジェクト】 | 『宇宙兄弟』公式サイト

宇宙兄弟賞|六太と私【エッセイプロジェクト】

2025.08.26
text by:編集部コルク
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宇宙兄弟はじまりの年を記念して、六太がミラクルカーを退社した5月15日に募集開始した宇宙兄弟エッセイプロジェクト みんなの心のノート

「あの人とわたし」がテーマとなった第1回の入賞作品から、六太賞/日々人賞/宇宙兄弟賞の受賞作品をご紹介していきます!

今回は宇宙兄弟賞受賞作品です。

六太と私(20代 ふくしー)

私も六太と同じ、男兄弟の兄だ。
弟は小さい頃から頼りがいがあり、いつも全力で夢に向かって走っていた。そんな弟を心から大切に思いながらも、どこかで自分と比べ、複雑な気持ちを抱えてきた。

私は周りの人からは明るくてムードメーカーとして見られるが、実際はとても人の目を気にしてしまう。私は周りの人には恵まれてきたが、中学時代には度を超えたイジリを受け、裏では「調子に乗ってる」と言われ、誰を信じていいのか分からなくなった。それ以来、何かに挑戦するときにはまず「人間関係で失敗しないだろうか」という不安が頭をよぎるようになった。

高校では仲間に恵まれ楽しく過ごしたが、所属していたバスケ部ではレギュラー入りは果たせず、大学では改めて全国大会を目指してバスケに打ち込みたいと思った。

しかし、新しい人間関係への不安が先行し、言い訳を並べてブレーキをかけてしまった。一番情熱を持ってやりたかったことを選ばなかった自分を、その後四年間ずっと責め続け、苦しんだ。

一方、弟はプロになると宣言し、強豪校でサッカーに打ち込んでいた。ものすごい量の努力をしており、その姿が誇らしく嬉しかった。

けれど同時に、自分が努力もせずどこにも進めていない現実を突きつけられる鏡のようでもあり、余計に苦しかった。

私は弟が金銭面の不安を抱えずサッカーに集中できるよう、バイトを掛け持ちして仕送りした。これは弟のためでもあったが、それ以上に自分の劣等感を埋める行為だったのかもしれない。

そんな時期に出会ったのが『宇宙兄弟』だった。兄の六太は子どもの頃、弟の日々人よりも先に「宇宙飛行士になる」と宣言した。

けれど成長するにつれ、夢に向かって突き進む日々人に追い越され、自分だけが取り残されてしまう。弟を心から応援したいのに、悔しさや焦りを抱えてしまう六太の葛藤は、夢を見ないふりをしていた自分そのもので、読んでいて胸が痛かった。

だから六太の「俺の敵はだいたい俺です」という言葉が心に深く刺さった。
結局、一番自分を縛っていたのは自分自身だったのだ。

それでも六太は、周りに背中を押されながら、ずっと見ないふりをしてきた宇宙飛行士の夢にもう一度挑戦した。試験に落ちて恥をかくことも、弟より後に宇宙飛行士になることよりも自分が本当にやりたいことへ踏み出した姿は、私には眩しくとても羨ましく感じた。

だから私も、就職を機にもう一度挑戦しようと決めた。

その矢先、大切な家族が山での事故で命を落とした。山岳救助隊に救助されたときには、もう手遅れだった。私は何度も「もし自分にもっと力があったら」と思い、その悲しみから人命救助に携わる道を選んだ。

家族の思いを胸に、自分の中で目標を立て、就職後は仲間に恵まれながら順調に歩み、ようやく目指していた救難の特殊部隊が見えてきた矢先、長期で体調を崩してしまった。

そこから思うように回復できず、仕事にも復帰できない日々が現在も続いている。

そんな今、改めて宇宙兄弟を読み返した。体調がどうなるかわからず目指していたポジションには戻れないかもしれないが、シャロンが六太に「なってから悩みなさい」と言ったようにまずは目指していた救助部隊へどうしたら入れるかを前提に歩んでいきたいと思う。

閉鎖空間で六太が「ここにいたんだ」と感じた素晴らしい仲間に私も現在の職場で出会った。

これからも私にとっての金ピカを大切にしながら、人の笑顔や幸せを守っていきたい。そして人に囲まれて笑っていたい。宇宙兄弟と六太は、これからも私の道標だ。


ほかの受賞作品はこちらから読めます

六太賞|つまずきながら、前へ。
日々人賞|心の中にムッタを
宇宙兄弟賞|スプーンの上の砂糖つぶ
宇宙兄弟賞|足下の日々と、遠い空の向こう
宇宙兄弟賞|私とムッタと挫折と夢

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