地球から40光年離れた宇宙の、水瓶座の片隅に、数年前までは名前も与えられていなかった暗い星がありました。
その星に、7つもの地球サイズの惑星が見つかりました。しかも、そのうち3つはハビタブルゾーン(惑星の表面に液体の水を湛えることのできる温度にあるゾーン)にあったのです。ひとつの恒星系で見つかった地球型惑星の数、ハビタブルな惑星の数、ともに最高記録だそうです。
さらに面白いのは、この恒星系が非常にコンパクトなこと。7つの惑星の全てが、太陽系の水星も小さい軌道を回っています。TRAPPIST-1という仮称を与えられたこの星は太陽よりもずっと小さく、暗く、赤い。ハビタブルゾーンも恒星にずっと近い位置にあるのです。
さらに、2018年に打ち上げ予定のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使えば、これらの惑星の大気を通ってくる光を分光分析解析して、バイオシグネチャー(酸素など)、つまり生命の存在の間接的証拠をつかめるかもしれません。
もし、3つの惑星のそれぞれに生命が誕生していたら・・・そしてそのそれぞれが知的生命に進化していたら・・・恒星系のサイズが小さいから、行き来も太陽系よりずっと簡単でしょう。それぞれの星の知的生命は、平和に共存しているのでしょうか?それともどこかの第三惑星の愚かな住人のように、血みどろの殺し合いをしているのでしょうか・・・?いつかその「愚かな住人」の技術がもっと進歩して、40光年先のこの世界を訪れる日が来るのでしょうか?
想像力を掻き立てられる発見でした!
〈著者プロフィール〉
小野 雅裕
大阪生まれ、東京育ち。2005年東京大学工学部航空宇宙工学科卒業。2012年マサチューセッツ工科大学(MIT)航空宇宙工学科博士課程および同技術政策プログラム修士課程終了。慶應義塾大学理工学部助教を経て、現在NASAジェット推進所に研究者として勤務。
2014年に、MIT留学からNASA JPL転職までの経験を綴った著書『宇宙を目指して海を渡る MITで得た学び、NASA転職を決めた理由』を刊行。
連載『宇宙人生』はこの作品の続きとなるJPLでの宇宙開発の日常が描かれています。
また、コラム『一千億分の八』も連載中!
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