インタビュー記事

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宇宙飛行士 油井亀美也さんや、スペシャルゲストへのインタビュー!

【金井宣茂宇宙飛行士×小山宙哉】 スペシャル対談・後半

【金井宣茂宇宙飛行士×小山宙哉】 スペシャル対談・後半
油井亀美也宇宙飛行士、大西卓哉宇宙飛行士に続いて、2017年12月に国際宇宙ステーションでの長期滞在が予定されている、金井宣茂宇宙飛行士。海上自衛隊で外科医師・潜水医官として活躍されていた経歴を持つ金井宇宙飛行士は、「健康長寿のヒントは宇宙にある」をテーマに、いよいよ旅立ちます。訓練も佳境の中、貴重なお話を伺ってきました!(対談前編はこちら!

言い争っても最後は握手!? ロシア流コミュニケーション

小山宙哉(以下、小山) 最近もロシアに行かれたそうですが、文化の違いなど、驚かれた点はありますか?

金井宇宙飛行士(以下、金井) NASAの座学では、ハンドアウトがあって資料に沿ってスライドなどを使いながら行いますが、ロシアの授業はとてもアカデミックですね。ハンドアウトなしで、教授みたいな先生が入ってきてひたすら喋る。授業が終わったら、モックアップ(※実物大の模型)で説明して、最後に試験があります。口頭試問で、試験官が5人くらい並んで、「○○について説明せよ」とお題を出すので、それに答えるんです。最初はこのシステムに驚きました。しかも、ロシアの方は議論するのも好きみたいで。

小山 うわあ、それは大変そう(笑)。

金井 オフィシャルな試験の時には、試験官としてロシアの宇宙庁からエンジニアが派遣されてくるんです。でもたまに授業でやっていないことを聞かれるので、「先生、そこは聞いてないよ~」と、日頃お世話になっているインストラクターに目で訴えると、彼らが「それについては、教育マニュアルにないので教えていません」と、我々の代わりに戦ってくれて。

でも、試験官も「なんで教えていないんだ。これは宇宙船ですごく大事なところなんだ!」と引き下がらないので、こうなるともう、試験を受けるべき宇宙飛行士を放置して、宇宙庁のエンジニアと「星の街」のインストラクターが激しい言い合いを繰り広げます。

はたから見ていると、「怒っているのかな……」と心配になるんですが、わけがわからないうちに、いきなり2人でグッと握手をして解決しているんですよ! 「よし、じゃあ次の問題に行くぞ!」と(笑)。

小山 むしろ関係が深まってる!(笑) そういえば、ソユーズに乗る時って自分用のシートを作ると聞いたのですが、どのようにして型を取るんですか?

金井 ちょっと恥ずかしい、モジモジ君みたいな全身タイツを着て、エンジニアに抱えられて石膏にジョボーッと浸けられます。

小山 意外とアナログなんですね。3Dプリンターみたいなシステムで、できちゃいそうですけど。

金井 結構アナログですよ。ソユーズでは、船長は真ん中の席で、宇宙船の操作を補佐するのが左の席に座るクルーです。私は右席なので、ほとんど座っているだけ。唯一の仕事が、コンデンセーションといって、クーラーの水がたまるタンクを手こぎポンプでキュポキュポと送ることですね。これを3、4時間に1回。

小山 以前、大西さんが、「右の席の人は眠らないようにするのが仕事」って言っていました(笑)。

金井 あはは! 確かに! なので私は、なるべく手順書を追って、野球のスコアラーみたいに2人が忘れていることがないかを確認していますね。「今、エンジン壊れて忙しいみたいだけど、酸素濃度は大丈夫?」といった具合です。少しでも2人の作業負担を軽くさせたいので、できる部分はフォローしようと思っています。

「世界中の研究者にデータを」医学の発展を願う、金井さんの想い

小山 今回、金井さんと一緒にソユーズに乗るクルーは、どのようなメンバーですか?

金井 船長はロシア人のアントンさんで、もう一人がアメリカ人のスコットです。彼は、2009年のクラスメイトなんです。10歳くらい年上のベテランですが、同じ訓練をする機会が多かったですし、お互いのやり方もわかっているので安心です。船長のアントンさんは、豪快なキャラクターでお酒好き。飲むとすごく楽しくなります。

小山 やっぱりお酒好きですか(笑)。国も文化も違う3人が一緒になるのは、面白い体験ですよね。クルーとは、愚痴とか悩みごとを言い合ったりします?

金井 しますよ。「あの先生には気をつけろ」とか(笑)。スコットはレフトシーター(船長の補佐役)なので、勉強することが多くて大変なんです。毎日ずっと遅くまで勉強しているので、「勉強するな~。もう勉強するな~」と、私が耳元で囁いていました。

小山 ロシア流の乾杯もやりました?

金井 やりました! 実は大西さんから乾杯する時のセリフ一覧集をもらっていて、それが活躍しました(笑)。こういうことを言って乾杯すればいいんだな、というのを頭に入れておいて、あとは自分でアレンジします。

具体的には、「ご指導ありがとうございました」とか、「親愛なるインストラクターのみなさん」とか、ロシア語での言い回しですね。

小山 ロシア流の、かしこまった言い回しがあるんですね。

金井 乾杯する前の決め台詞というか。その決まり文句をいくつか覚えておいて、あとは自分なりに単語を組み合わせました。下手なロシア語でも、真心をこめて伝えれば喜んでもらえますよ。お酒を飲んでしまえば、口は回りますから(笑)。

小山 その乾杯が、何周も回ってくるんですよね……。

金井 とりあえず、出ているウォッカのボトルがなくなるまではやります。私は結構お酒が好きなので楽しいですよ。ロシア語はわからない部分もありますけど、真心や仕事にかける情熱、宇宙開発が好きだという心は通じ合います。

バックアップクルーとして参加した時に感動したのが、準備で忙しいプライムクルーの代わりに、我々バックアップクルーが色々な所に挨拶回りに行くんですが、ロケットや射場、宇宙船の担当の方たちが、本当に親身になって言葉をかけてくれるんです。「お前たちも次のロケットで飛んで行くんだからな。このロケットは絶対に大丈夫だから、任せておけ!」と、心からの言葉を贈ってくれる。そんな言葉を聞きながら一緒に乾杯すると、「この人たちが手掛けたロケットなら心配はないな。このロケットで爆発してしまったら、それはもうしょうがない」と思えるくらい。

小山 確かに、そうやって実際に関わっている人が見えてくると安心しますよね。

金井 彼らにしてみれば3ヵ月ごとにやってくる流れ作業のはずなんですけど、決してそうじゃない。まるで自分の孫や子供のように迎え入れてくれて、一緒にお酒を飲む。彼らにとってはそれが信頼の証であり、仲間として認めてくれることなんです。日本にもそういう文化はありますけど、ロシアでも違和感なく、温かい気持ちになりました。そういう気持ちでプライムクルーの打ち上げを見るのは、感慨深いものがありましたね。

小山 『宇宙兄弟』の中で、せりかというキャラクターが、タンパク質の実験を行っているんですが、金井さんもやられる予定はありますか?

金井 せりかのように自分で結晶化の条件を調整することはないですが、地上から上がってきたサンプルを、結晶化が始まるよう処置を整える作業はあると思います。また、まだ全てのリストはもらっていませんが、自分の体を材料にしてやる実験にも多く参加しています。これは自ら志願したことなんです。

たとえば、乳酸菌を飲んで腸内環境や免疫力がどうなるかの調査をしたりします。そのほかに、宇宙では視力が変わることがあるのですが、その原因がまだ解明されておらず、脳圧が影響しているのではないかという説があります。そこで、超音波をあてることで間接的に脳圧を調べる方法を編み出した日本の先生の研究に参加して、自分の頭に超音波をあてて脳圧を測る実験をやります。

小山 金井さんはやはり、医師ならではの視点で宇宙を見ているんですね。様々な訓練や実験の中で、医師として驚いたことはあります?

金井 私はやらないですけれど、フィールドテストという米ロの共同リサーチがあって、たとえば地上に帰還したばかりの宇宙飛行士に目を閉じて歩いてもらうなどの運動テストがあるんです。ただでさえフラフラの状態なので、結構過酷らしいですよ。宇宙飛行士への負荷は高いですけれど、そういったデータを取らないと、将来、人類が火星に行った時に、誰もサポートする人がいない状況で、自分たちだけで仕事をしなければいけないですからね。

フィールドテストはNASAの試験ですが、カプセルが到着するのはロシアなので、NASAの技術者たちがそのために出張して、着地点の横に設営したテントの中で行うそうです。

小山 宇宙飛行士はテントの中で寝ているかと思いきや、実はまだ過酷なテストが行われていたんですね。これは、全員がやるわけではないですよね?

金井 はい。私もやりたいなと思ったのですが、別のテストに参加しているので、そこで過酷な運動をしてしまうと、体調が崩れてサンプルが取れなくなってしまうんです。

私は、種別は問わないので、できるだけたくさんの医学実験に参加させてくださいとリクエストを出していて。その結果、筋肉のサンプルを採取するテストに参加することになりました。

小山 それはOKしたんですか!? そっちのほうがつらそうですよ!(笑)

金井 もちろん麻酔はしますよ。飛行前の筋肉サンプルは先日ヨーロッパ宇宙機関に訓練に行った際に、研究担当者の先生に採取してもらいました。宇宙飛行する人の数は限られていますから、私は、1回のチャンスでできるだけたくさんの世界中の研究者の方にデータを提供する必要があると考えています。

そこは日本人でも外国人でも関係なく、どんな実験でも自分の体を使ってくださいと。……でも、筋肉のサンプル採取はちょっと痛かったです(笑)。

小山 金井さんは、宇宙ステーション滞在のほかに挑戦したいミッションはありますか?

金井 月とか行ってみたいと素直に思います。日本人にとって月って特別な存在ですし。でもまずは、宇宙ステーションで自分の仕事をしっかりと務めて、そこから先、その経験をもとにどうやって貢献できるのかを考えていきたいですね。

小山 金井さんの経験や研究結果が、いずれ月や火星の探査に繋がっていく――。そういう感じになれば素晴らしいですね。宇宙ステーションでの滞在報告も楽しみにしています。頑張ってください!

金井 はい、ありがとうございます!

【金井宣茂宇宙飛行士×小山宙哉】 スペシャル対談・前半はこちら!


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【大西卓哉宇宙飛行士×小山宙哉 1-1】スペシャル対談ー宇宙への旅立ち編ー (前半)

【大西卓哉宇宙飛行士×小山宙哉 1-2】スペシャル対談ー宇宙への旅立ち編ー (後編)

【大西卓哉宇宙飛行士×小山宙哉 2-1】スペシャル対談  ~国際宇宙ステーション滞在編~(前半)

【大西卓哉宇宙飛行士×小山宙哉2−2】スペシャル対談  ~国際宇宙ステーション滞在編~(後半)

【大西卓哉宇宙飛行士×小山宙哉3-1】スペシャル対談  ~帰還&宇宙の未来編~(前半)

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『宇宙兄弟』特別企画 「六太、新人宇宙飛行士 油井 亀美也に会いにいく。」(2009年掲載記事)

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