異世界の空/『宇宙に命はあるのか 〜 人類が旅した一千億分の八 〜』特別連載27 | 『宇宙兄弟』公式サイト

異世界の空/『宇宙に命はあるのか 〜 人類が旅した一千億分の八 〜』特別連載27

2018.07.20
text by:編集部コルク
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「私」はどこからきたのか?1969年7月20日。人類がはじめて月面を歩いてから50年。宇宙の謎はどこまで解き明かされたのでしょうか。本書は、NASAの中核研究機関・JPLジェット推進研究所で火星探査ロボット開発をリードしている著者による、宇宙探査の最前線。「悪魔」に魂を売った天才技術者。アポロ計画を陰から支えた無名の女性プログラマー。太陽系探査の驚くべき発見。そして、永遠の問い「我々はどこからきたのか」への答え──。宇宙開発最前線で活躍する著者だからこそ書けたイメジネーションあふれる渾身の書き下ろし!

『宇宙兄弟』の公式HPで連載をもち、監修協力を務め、NASAジェット推進研究所で技術開発に従事する研究者 小野雅裕さんがひも解く、宇宙への旅。 小野雅裕さんの書籍『宇宙に命はあるのか ─ 人類が旅した一千億分の八 ─』を特別公開します。

書籍の特設ページはこちら!

地球の空は青く、白い雲が浮かんでいる。他の世界の空は、どんなだろうか?

金星の空は常にオレンジ色の雲に覆われている。太陽は見えない。昼はおよそ60日続く。雲に覆われて星の見えない退屈な夜も約60日続く。もしこの世界に雲がなければ、太陽は西から昇り東に沈む。

火星の一日の長さは24時間40分。あなたは毎日40分ずつ寝坊できる。一日は青い朝焼けで始まる。昼間の空はクリーム色。そして太陽は青い夕焼けを纏って沈む。夜空には地球と同じ星座が見えるが、北極星は北にない。代わりに天の北極近くにあるのは、はくちょう座のデネブである。

ガス惑星である木星には明確な地面というものはないが、雲の上に浮かべば四つの月が満ち欠けを繰り返すのが見えるだろう。その一つ、エウロパの氷の地表に立てば、巨大な木星が空にじっと動かず、威圧感を持ってあなたを見下ろしている。

土星もガス惑星だ。その雲の上から見れば、美しい輪が地平線から反対の地平線まで架かる雄大な光景を見ることができるだろう。

土星最大の衛星タイタンの空も、金星と同じようにオレンジの雲で覆われている。そこから冷たい雨が降る。マイナス180度のメタンの雨だ。地に落ちた雨滴は集まって川を成し、メタンの湖に注ぐ。

天王星のほとんどの場所では常に白夜または極夜である。昼は42年続く。夜も42年続く。平均的な人間の寿命では、日の出を一度しか見ることができない。

太陽系からもっとも近い系外惑星、プロキシマ・ケンタウリbの太陽は昼間も赤い。赤い光に照らされ、この世界の景色は常に夕焼けのように見えるだろう。

そんな光景を人類が目撃する日は、いつか来るのだろうか?

 

(つづく)

 

<以前の特別連載はこちら>


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【第1回】〈一千億分の八〉はじめに
【第2回】〈一千億分の八〉ガンジス川から太陽系の果てへ
【第3回】〈一千億分の八〉地球をサッカーボールの大きさに縮めると、太陽系の果てはどこにある?
【第4回】〈一千億分の八〉すべてはSFから始まった〜「ロケットの父」が愛読したSF小説とは?
【第5回】〈一千億分の八〉なぜロケットは飛ぶのか?〜宇宙工学最初のブレイクスルーとは
【第6回】〈一千億分の八〉なぜロケットは巨大なのか?ロケット方程式に隠された美しい秘密
【第7回】〈一千億分の八〉フォン・ブラウン〜悪魔の力を借りて夢を叶えた技術者
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【第11回】〈一千億分の八〉月軌道ランデブー:無名技術者が編み出した「月への行き方」
【第12回】〈一千億分の八〉アポロを月に導いた数式
【第13回】〈一千億分の八〉アポロ11号の危機を救った女性プログラマー、マーガレット・ハミルトン
【第14回】〈一千億分の八〉月探査全史〜神話から月面都市まで
【第15回】〈一千億分の八〉人類の火星観を覆したのは一枚の「ぬり絵」だった
【第16回】〈一千億分の八〉火星の生命を探せ!人類の存在理由を求める旅
【第17回】〈一千億分の八〉火星ローバーと僕〜赤い大地の夢の轍
【第18回】〈一千億分の八〉火星植民に潜む生物汚染のリスク

〈著者プロフィール〉

小野雅裕(おの まさひろ)

NASA の中核研究機関であるJPL(Jet Propulsion Laboratory=ジェット推進研究所)で、火星探査ロボットの開発をリードしている気鋭の日本人。1982 年大阪生まれ、東京育ち。2005 年東京大学工学部航空宇宙工学科を卒業し、同年9 月よりマサチューセッツ工科大学(MIT) に留学。2012 年に同航空宇宙工学科博士課程および技術政策プログラム修士課程修了。2012 年4 月より2013 年3 月まで、慶応義塾大学理工学部の助教として、学生を指導する傍ら、航空宇宙とスマートグリッドの制御を研究。2013 年5 月よりアメリカ航空宇宙局 (NASA) ジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory)で勤務。2016年よりミーちゃんのパパ。主な著書は、『宇宙を目指して海を渡る』(東洋経済新報社)。現在は2020 年打ち上げ予定のNASA 火星探査計画『マーズ2020 ローバー』の自動運転ソフトウェアの開発に携わる他、将来の探査機の自律化に向けた様々な研究を行なっている。阪神ファン。好物はたくあん。

さらに詳しくは、小野雅裕さん公式HPまたは公式Twitterから。